幻獣戦隊ライガルファン第3話
Mixiに連載している小説をマイミクさんたちの名前を借りていたのでマイミクさんの名前を変えて投稿しなおしているものです。
ジンと呼ばれた緑色の幻獣はライオットと呼ばれた熊の幻獣から受け取ったレイラの体をしっかりと抱きかかえ、とっとと逃げ出せとばかりに駆け出した。
『あ!待て!』
後を追おうとするシュンの目の前にライオットが立ちはだかる。
間近で見るとかなりの大きさであることがシュンを圧倒させた。
『君の相手は僕だよん♪』
ライオットの腕がシュンの首に回され、ぎりぎりと締め上げた。
振りほどこうともがくシュンの口から獣の咆哮がもれる。
『逃がさないよ、皇女様をネフェラ様の前に引き出すことが僕らの仕事、あのおばさんには逆らえないからね』
『皇・・・女・・・さま・・・!』
シュンの心に遠い過去の記憶がフラッシュバックしていた。
それは幻獣の記憶だったのか、シュンの記憶だったのか・・・。
護れなかったうつくしい世界。
護れなかった人・・・。
シュンの咆哮が周囲の空気を揺らすように響いていた。
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ぬるぬると滑る水生生物のような緑の腕から逃れようとレイラはもがいていた。
『無駄だよ、逃がしたりしない』
緑色の蛙の幻獣であるジンがよっちーを抱きかかえる腕に力を込める。
『ライオットはああ見えても強いんだ、もう助けは来ないさ』
シュンを戦いに巻き込んだことへの後悔と、自分の役目を果たせないことへの不甲斐なさにレイラは唇をかみ締める。
不意に、ジンとレイラの目の前に男が現れた。
『助けがほしいか?』
男はレイラに向け静かに問う。
『邪魔をするな!』
ジンの一喝に臆す様子もなく男が一歩歩みを進める。
それに合わせてジンが一歩退いた。
人を従わせることに慣れているかのような気迫。
『もう一度きく、助けがほしいか?』
男の声と同時にレイラの腕のブレスレットが金色の光を放った。
『ハピネス!まさかあの人!?』
男の足がふわりと上空高く上げられた。
同時によっちーとケイの目の前から男の姿が消える。
次の瞬間、ジンの腹に男の蹴りが炸裂する。
たまらずジンはレイラを掴む腕を放した。
金色のブレスレットから同じ色の蝶が現れる。
『私はいい、けれどシュンを助けて!』
男が満足したように頷いた。
『ならば我に名を問え皇女よ!幻獣の契約を!』
『けれど、契約すれば貴方も戦いに・・・!』
ジンの腕から逃れたレイラを片手で支え、男は微笑んだ。
『それが古よりの約束、お前が助けを求めるならば遠い日の約束を実行しよう』
レイラの掌に蝶から金色の剣に姿を変えたハピネスが握られる。
『汝、聖なる獣の系脈に連なるものよ、我を護りこの世界を護る血を受け継ぐもの、名を!』
金色の剣を男に向け、力を持つ言葉がレイラの口から紡がれる。
『我が名は勇摩!古よりの契約により皇女を守るもの!』
男-勇摩-の言葉と同時にまばゆい光が勇摩の体を包んだ。
光は勇摩の体を覆い、徐々に勇摩の姿を獣の姿へと変えてゆく。
その姿はシュンの顕現した姿に良く似てはいたが、美しい毛並みは銀の棘のように体を守り、顔は牙を持つ狼のそれへと変化していた。
『ウルフの勇摩、顕現』
名乗りを上げると同時に素早い動きでジンの懐へと入り込む。
ジンもただ黙ってやられてはいなかった。
水生生物-蛙に酷似した外観だった-のようなぬるぬるした表皮が硬く艶やかな表皮へと変わる。
肩口には棘を思わせる緑色の突起がいくつも突き出してきた。
『幻獣の裏切り者が!』
ジンは勇摩への侮蔑の言葉を吐き、突起のついた肩口から勇摩へ体当たりしてきた。
『裏切りはお前達のほうではないか』
片腕でジンの体当たりを受け流し、反対の手でジンの体を掴み空中に放り投げる勇摩。
しかしジンは受身を取ることでダメージを最小限に押さえていた。
両者の間に緊迫した空気が漂った。
『きゃああ!』
レイラの悲鳴にシュンと勇摩の動きが止まる。
レイラの腕は、後方に現れた漆黒の鎧に身を包み、顔の半分をこれも漆黒の仮面で覆われた男の腕に掴まれていた。
『レイラさん!』
『皇女!』
漆黒の鎧の男に向かい、ジンとライオットが叫ぶ。
『SNAIL将軍!』
SNAILと呼ばれた男の腕がレイラの首をぎりぎりと締め上げた。
しばらく苦しげな表情でもがいていたレイラだったが、やがてその体から力が抜け、SNAILの腕に体を預けた。
『ジン、ライオット、目的は達した引くぞ!』
SNAILの言葉にジンとライオットが走り出す。
『待て!!』
『待てといわれて待つ馬鹿なんていないさ~』
2体の幻獣を追おうとするシュンと勇摩の目の前で爆発が起きる。
爆発の煙にまぎれて2体の幻獣と男は姿を消した。
同時にシュンと勇摩の体が光に包まれ、二人の姿が幻獣の姿からもとの姿に変わる。
『逃げられてしまったか・・・』
イカヅチ博士がやれやれといった風に肩をすくませながら物影から出てくる。
『博士!逃げられてしまったかじゃ・・・!』
勢い込んで言うシュンを手で制し、懐からなにやらごそごそと取り出したものは、小さな赤い点が移動するのを映す画面だった。
『こーんなこともあろうかと思ってな、あの子に発信機を付けておいたのだ!』
自信満々で笑顔のイカヅチ博士にシュンの言葉はたった一言だった。
『博士、それ犯罪ですから・・・』
一瞬黙ってしまうイカヅチ博士だったが、そんなことにめげるイカヅチ博士ではなかった。
『と、とにかく追うのだ!このレーダーを追いかけていけばあのこの行く先はわかるだろ!』
イカヅチ博士とシュンが顔を見合わせて頷く。
『勇摩さん・・・でしたか?貴方はどうしますか?』
シュンの言葉に勇摩も頷いた。
『皇女を守るために私はいるのだ、断るいわれはない』
3人の瞳がレーダーに映る赤い点に注がれていた。
第4話に続く・・・。