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死神と人間
初めて小説みたいなものを書きます。勘弁してください。
もうすぐ死に逝く者の前に現れ、死後その魂を『向こう』へ連れて行く。それが私たちの勤め。
仕事柄、死神だとか何だとか言われることもあるが、そもそも私たちに呼称は無い。そんなものをつける必要なければ意味も無い。
死神と呼ばれてもかまわないが、私は何もしない。死ぬのは人間の勝手だ。それなのに私たちを恐れる意味がわからない。
日々の生活の中、命に限りがあることを考える者は少ない。死というものを意識の奥底に沈め、その他どうでもいいことに悩み、苦しむ。それなのに私たちが現れると、途端に死を意識し、恐れ、死を目の前にして初めて今までの悩みや苦しみがいかにくだらないことかを理解する。
なぜ?死はいつも身近に在るのに、それが目に見えるカタチにならなければ考えられないのか。理解できない。ただ死ぬことの無い私には理解できないだけなのか。知らないが。
人間は不可思議な生き物。
それだけは理解できる。