本屋で・・・。
雅之は図書館で貸し出しのアルバイトをしていた。仲間とか、希望とか・・・うざいだけ。奇麗事言ってても、どうにもならないんだ。
駅のホーム。
「まもなく○○行き、二番先から発車いたします。お乗りの際は・・・」
駅員のアナウンスがながれると、人の出入りはいっそう激しくなった。
藤原雅之。僕は、夕方の満員電車の中にいた。学校の帰り道、バイトの時間だった。
僕は通っている高校から、少し離れた本屋でバイトしている。そこは、本屋であって、図書館でもある。つまり、貸し出しはしているけど、決して販売しているわけじゃない。
とにかく、変った店長と、何万種類もある本で成り立っている。
次の駅で僕は降りた。
そこから、徒歩10分のところに『第一私立図書館 空虚の本屋』はある。
(なんじゃ、そりゃ!)
図書館なのか、本屋なのか。
しかし、ここに来る客は少なくない。むしろ、へたな本屋より、数十倍多いだろう。
『おはよ』
僕は同じバイトの女の子に声をかけた。
「おそよ。あんた、ここに来るまでなっん時間かかってんの?」
彼女の名前は須川結衣。ここのバイトは三人。範子の仕事は、貸し出しの受付だった。
『ゴメンナサイ』
「別にいいけど・・・」
髪はたぶん、長い。うしろでキレイにまとめてあった。言葉から解るように、結衣は気が強い。その上、わりと几帳面で、1分・1秒だって遅れない。
もう一人は男。相良サンは、僕より二歳も年上だ。バイクを買うとかで、その資金集めにバイトを始めたらしい。
「よぉ、雅之じゃ〜ん」
相良サンは品出し専門で、この広い敷地の本の場所は全部しっている。ある意味、神技といえる。
「よかった。お前、もう来ないかと思ったよ」
本棚の掃除をしていたらしく、雑巾を持っていた。
「昨日、おふくろさんに反対されてただろ?そうとう、怒ってたじゃん」
「あ〜、親の言う事なんて気にしてたら、高校生なんてやってられないっスよ」
相良さんの問に、僕は正直に答えた。
僕の仕事は特に決まっていない。
「キミ、しばらくのあいだ見習い!」
店長であるマスターは僕にいった。
「あんた、突っ立ってないで、仕事したら?」
範子は『ここではねぇ、仕事は自分で見つけんの』と教えてくれた。
バイトは6時半で終わり、家に着いたのは7時をちょうど過ぎた頃だった。
第二部。稜子の話はまたべつの話で…今度は雅之の話です。「一人っきりじゃ、人生つまんないじゃない」と言うセリフをいれたかったな〜というか、一番それが伝えたいです。