表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この村の灯り(修正版)  作者: 堺大和
40/50

秋の夜風

朝の空気が少し冷たい

菫はふと思い立って 上司に一言声をかけて 

スマホを持って役場を出た

「今日は ちゃんと自分の目で撮ろう」

クラウドファンディングの支援が

伸び悩んでいる今

伝えることの大切さを改めて感じていた

山道に入ると

落ち葉が足元で軽く音を立てる

赤や橙に染まった木々が

陽を浴びて透けている こんな綺麗な景色 

ちゃんと伝えられてるかな

菫は立ち止まり

光の当たり方を少し変えて一枚

画面に映るのは 秋の匂いがそのまま

閉じ込められたような景色 直ぐに投稿する


「村の朝 空気が冷たくなってきました

紅葉がいちばん綺麗な時間です

#村の秋#紅葉」


投稿してから

しばらく画面をみつめる

いいねが少しずつ増える

「綺麗ですね」

「行ってみたい」

その言葉に 胸が少し軽くなる


次は滝

水の音が近づくと 心がすっと落ち着く

しぶきが細かく光り 白い流れが岩を打つ

ここは 何度来ても好きやな

この風景も 続いていること自体尊い


「水の音は心を整えてくれます

忙しい日々の中でも

深呼吸出来る場所があることに感謝

#滝#深呼吸」


コメントが増えていく

「ここ何処ですか?」

「ホタルの川ですよね?」

村の名前も知らない人も

少しずつ興味をもってくれている


最後に

旧小学校跡地の工事現場に向かう

クレーンが静かに動き

基礎部分がハッキリ見えるようになっている

土の匂いと 新しいコンクリートの匂い

私が現場監督と話している

菫は 少し離れた位置から全体を撮る

まだ建物はない

けれど 始まっている ことが分かる

もう一枚 基礎部分のアップ


道の駅 少しずつ形になっています

秋の工事シーズンが始まりました

来春 この場所に新しい居場所ができます

#道の駅建設中#村の未来


投稿して数分後 通知が鳴る

菫は思わず立止まる

見える って大事なんや


ある日

秋の夜は早い 役場の一室で

菫はパソコン画面を見つめていた

クラウドファンディングのページ

支援率はまだ目標の半分にも届いていない

でも 昨日の投稿から

アクセス数が明らかに増えていた

「…あ」

数字が ひとつ動く

支援総額が 少しだけ上がる

ピロン と通知

「紅葉の写真を見て支援しました

こんな場所が続いてほしいです」

菫はゆっくり息を吐く 届いてる 

また通知

「工事の進捗が見えて安心しました

完成を楽しみにしています」

そのコメントの下に

支援金額が表示される 大きな金額ではない

でも確かに 前より増えている

翌朝直売所

農家の一人が言う

「昨日の写真 ええな」

「娘がこの村って

こんな綺麗やったん?言うてたわ」

菫は少し驚く

「え 本当ですか?」

「SNSで回っとるらしいで」

大袈裟な バズ ではない

けれど 確実に広がっている

昼休み 工事現場

私はスマホを見ながら言う

「昨日から 支援ちょっと戻って来るな」

菫は小さく頷く

「写真 見てくれた人が多かったみたいです」

私は現場を見渡す

「やっぱり 今どうなっているか が

分かると違うんやな」

基礎のコンクリートは乾き始め

排水溝の形も見えてきている

未来はまだ輪郭だけ

でも それを見せることが

人の背中を押す


その日の夜

支援率は 数%だけ上がっていた

目標達成にはまだ遠い

でも 下げ止まった 感覚がある

菫は画面を見つめながら 静かに微笑む

急がなくていい ちゃんと 伝え続けよう

通知がまた鳴る

「滝の写真に癒されていました

完成したら家族で行きますね」

菫は返信を書く

「ありがとうございます

村でお待ちしています」

送信

窓の外では 紅葉の葉が夜風に揺れている

黒板に書かれた数字

「支援率 +3%」

誰かが小さく拍手する 大歓声はない

でも 空気が少し軽い

女将さんが笑う

「写真続けたらええやん」

菫は頷く

「はい 村の今を ちゃんと届けます」

私は静かに言う

「派手やなくてええ 積み重ねや」

重機の音が また静かに響く

道の駅も 支援も 村の未来も

少しずつ 確かに前へ進んでいた


十二月初旬本格的な冬の入り口

空はまだ濃い藍色で

山の稜線だけがぼんやり浮かんでいる

朝七時半

吐く息が白く

地面はうっすら霜をまとっている

旧小学校跡地の現場では

すでにエンジン音が響いていた

鉄骨の骨組みは完成し

外壁の下地施工が始まっている

八時前

作業員たちが整列する

「本日は屋根断熱材の施工と

正面ガラス枠の仮固定まで進めます」

ホワイトボードに今日の工程

断熱材敷設

屋根防水シート固定

外壁ボード搬入

排水溝再確認


私は

「ご安全に!」

作業員の全員が

「ご安全に!」

工程は順調 だが冬は油断できない

屋根材がほぼ減り

外壁の一部にボードがはいる

正面の開口部が分かるようになり

入口 の位置がはっきりしてきた

そこに立つと 未来の景色が想像できる

ここが休憩所の入口

あそこが特産品コーナー

私は図面と実物を見比べる

「ここ少し 勾配調整行けますか?」

「はい 雨水の流れ考えて再確認します」

現場は緊張感があるが

空気は悪くない 作業の一人が言う

「完成したら ここで珈琲飲みたいな」

別の作業員が笑う

「自分らでつくった建物やもんな」

菫はそのやりとりを聞き

胸が温かくなる


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 堺大和さん、こんにちは。 「この村の灯り(修正版) 秋の夜風」拝読致しました。  クラウドファンディングが、伸び悩んでいる。  発信が大事。今、どうなっているか、写真を添えて。  冬に入っても…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ