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まだ付き合っていないだけ

作者: 有梨束
掲載日:2026/02/06

「ずばり、理想の告白とは!?」

舞がペンケースをマイクにして、こっちに差し出してきた。

「LINE」

「えっ、文面派っ?」

舞は驚いて、ペンケースが少しだけ元の位置に戻る。

「断るのに楽」

「断る前提かよぉ…、このモテ男め」

口を尖らせて、なぜか睨まれる。

訊かれたから答えてるんだけどな。

「ミステリアス王子様ってことになってるからな」

「自分で言っちゃうの?」

「周りが勝手に言ってるからな。この見た目で声をかけてくる奴は多い」

「ビジュは最高だもんねぇ、翔月は」

やれやれと首を振って、舞は乗り出していた身を引っ込めた。


舞も俺の見た目を気に入っていることを知っている。

初対面で、「君、めちゃめちゃ顔いいね!最高!」と言ってきたくらいだから。

たまーに俺の顔を眺めて満足そうにしている。

俺はそれを意外にも気に入っている。

他の奴だったら、うんざりしそうなものだけど。


「じゃあ、実際に言われたら心動きそうな言葉もないの?」

「なに、誰かに告る予定でもあるの?」

「今後の参考に。てか、人に告白したことないから単純に気になる」

「今のも角度を変えりゃあ、モテ発言じゃないか?」

俺の言葉に、舞は首を捻った。

意味は通じなかったらしい。

「人に聞く前に、自分からどうぞ」

「ええーっ、告られたことないからわかんないよ〜」

「そこを考えるのが、今の議題だろ」

「翔月って、変なとこ真面目だよねぇ。んー、『好きです』で嬉しいと思うけどなあ」

舞は眉間に皺を寄せながら、ありきたりなことを言う。

舞が喋るたびに、ポニーテールの毛先が揺れているのが見える。

「シンプルだな」

「好きな人に言われたらなんでも嬉しいんじゃない?」

「好きじゃない奴に言われたら?」

「えっ、困るね?」

「俺と言ってること変わらないじゃないか」

俺が笑うと、舞はムスーッと顔を歪めた。

「わかった。誰に言われてもときめく言葉、探そう」

舞がこういう時は一歩も引かないから、付き合うが吉。

まあ、舞が楽しそうだから、なんでもいいんだけど。


「『あなたのことがずっと好きでした』とかは?」

「なし。百万回言われてもときめかん、心は揺れない」

「モテ男め…。あ、『月が綺麗ですね』は?」

「綺麗だけど、言われてピンとくるのかな」

「うーん、私だったらわかんないかも」

言った本人がわからないんじゃ、ダメじゃないか。


「翔月もなんか言ってよ」

「えぇ…。『俺を恋人にしてくれませんか?』」

「えっ!翔月、そんな感じなの!?」

舞があからさまに動揺していて、笑ってしまう。

「ひとつの案だよ」

「ええ〜、翔月って好きな子にはちゃんと言うんだあ」

「人の話、聞いてるか?」

「疑問系はいいかもね。『好きって言ったらどうする?』とかさ」

「駆け引きかぁ、俺はあんまり好かないけど」

「わがままだなあ」

ポニーテールの先を見ながら、俺は肘をついた。

「ほーん、じゃあもっといい案くださいよ」

こうやって煽ったら、舞はすぐに食いついてくるだろう。

舞はニヤッとしながら、身を乗り出してくる。

「『私じゃだめかな?』」

「あざといのは好きじゃない」

「『私と付き合ったら、楽しいよ!』」

「ああ、それは好きかも」

「自信満々に言い切り系がいい?」

「そっちの方が好みかもなあって、今聞いてて思った」

「じゃあ、『今日から恋人ね!』は?」

「強引だなぁ」

「わがままだなあ」

その様子にフフッと笑うと、舞は俺の方に視線が固定した。

たぶん、顔を見ているんだと思う。

この『顔』は、好きなんだろうな。


「『初めて会った時から、君しか見えていません』とかは?」

「情熱的だけど、本当なのか?って思う」

「疑り深いなあ」

「なんか『結婚を前提に付き合ってください』ぐらいに聞こえてくる」

「ええ〜、そうかな?」

不服そうな舞の表情がコロコロ変わって、飽きない。

「そこまでいったらプロポーズじゃん」

「『ずっと俺の隣で笑っていてほしいです』とか?」

「プロポーズじゃん」

「『毎日味噌汁作ってくれ』?」

「プロポーズじゃんっ!あと、味噌汁は自分で作れ」

「『あなたの味噌汁を作りたいんです』は、逆プロポーズになるのか?」

「インスタントでいいなら、毎日作るよ」

「それは自分で作った方が早そうだな」

その時スマホが鳴って、雅記から連絡が入った。

「雅記たち、終わったってさ」

「じゃあ、行きますかあ。今日もいつもの居酒屋?」

「そうじゃないかな。んで、舞的にはいい言葉はあったわけ?」

荷物をまとめて、さっさと立ち上がる。

舞の支度が終わるのを待って、歩いていく。

「う〜ん、『隣で笑っていてほしい』は実は好きだったな」

「じゃあ、ずっと隣で笑っててくれ」

「え」

舞が立ち止まったから、俺は振り返った。

たぶん、舞が好きだろうなという笑みを浮かべながら。

「な、なっ、私が告白しようと思ってたのに!」

「あはは」

「わ、私と付き合ったら楽しいよ…!」

「うん、知ってる」

「なんだよ、もう〜」

顔を赤くした舞が追いついてきて、いつものように隣を歩いた。



お読みくださりありがとうございました!毎日投稿37日目。

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