#99 最後の礼拝──悪しきを知りながら、なお愛す
降り始めた雪の結晶は、まるで天の涙のように落ちてきた。
父はかつて、それを「世界の傷を癒すための霊薬」だと言っていた——。
十歳の誕生日。
まだ隣の人には告げていない。
けれど僕は、ゴシックの窓辺に取り憑かれた語り手のように、父へ物語る。
「もうすぐ世界は雪に覆われて蒼白になっていく。
人類は滅び、
その時、すべてを焼き尽くして生き延びる者は“火”なんだ。
その火は身体中に炎をまとって歩き、
愛した者にも、傷つけた者にも、燃料となり、糧となるんだよ」
幼い顔をした少年の幻想。
その瞳は、頬を刺す冷気とともにきらめいていた。
「…最後の礼拝に、
父さんもピロトと一緒に、闇へ降りてきてくれるの?」
どうか、愛していると言ってほしい。
彼は僕の太陽。
長い夜の中で、微かな光を与えてくれる者。
「ついていくよ……」
……その言葉、気をつけなさい。
「父さんは、お前を愛してる。」
僕が死ぬ時に……あなたは、そうはしてくれないでしょう.
窓辺に並んで雪を眺める二羽の雛鳥。
一羽はただ無邪気に喜び、
もう一羽は心の奥でそっと思う――
「……そんなに幸せにならないで。」
なぜ、そんなふうに思ってしまうのか。
――それは、「ピロトは父さんを愛しているからですよ」。
#99
月と太陽が世界を脱ぎ捨て、
ふたりで寄り添ったその日に、
滅びた人間たち。
「知らないふりをしておきなさい」と
そう言ったのは、
月なのでしょうか。
それとも太陽なのでしょうか。




