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エピローグ:終わらない冬

終わりのない冬を、私は見ている。 猛吹雪のような激しさではない。 空気は凪ぎ、霧は低く立ち込め、あらゆる音が吸い込まれていくような寒さ。 まるで世界中が、息を潜めているかのように。


屋敷は、そこに佇んでいる。 巨大で、静寂に満ちた、昏い色。 それは「恐ろしい」場所ではない。 ただ、一度入れば誰も逃がしてはくれない、そんな場所。


内側には、灯りがある。 暖炉の温もり。 紙の擦れる音、ペンの走り、カップの触れ合う音。


その暖かさは、本物だ。 そしてそれが本物であればあるほど、恐ろしさは増していく。


私は、あの父と子を見ている。 あまりにも近くに、寄り添う二人を。 真実が入り込む隙間など、どこにも残されていないほどに。


固く握りしめられた、その手。 守るためなのか。 それとも、逃がさないためなのか。


父の微笑みは、問いかけることさえ許さないほどに温かく。 子の眼差しは、年齢にそぐわぬほど聡明で、あまりに優しく…… そして、全てを知りすぎている。


――見守り続ける妻より、あの父子へ。


「私は、愛しているわ。この地獄を」

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