数字「99」が示す象徴 ― 不完全な月
ピロトは部屋の隅に立ち尽くしていた。
闇の影に沈んだ、ひどく寂しげな表情のまま――
ムーヴィエンナの亡骸を片づけている父の背中を見つめて。
ベルーノルは時折、ピロトの方を振り返った。
まるでそれがこの子の罪であるかのように。
だが本当は、
まだ息のあった彼女の背から、
うっかりとナイフを引き抜いてしまったのは
ベルーノル自身だった。
だから赤い液体は床いっぱいに広がり、
毛布も、紙束も、すべてを汚していた。
この沈黙に耐えきれなくなったピロトは、
闇の中で、そっと言葉を落とす。
「……パパのせいだよ」
ベルーノルは手を止め、
息子を見つめ、
やわらかな声で答えた。
「パパは……怒っていないよ……」
月は空高く昇っていた。
窓から光が差し込まないほどに、
月はすでに頭上を越えている。
月の下に生きる者の記録によれば、
今はもう、ひどく夜更けだった。
――けれど。
「……あーん……」
記録者は、
まだ息子に食事を与えていた。
月が高くなる前に眠るべきだと、
自分で言っていたにもかかわらず。
翌朝は、誰にも気づかれぬまま訪れた。
暖炉の火は消えていたが、
ぬくもりだけが残っている。
ベルーノルは外で、
ピロトに靴を履かせていた。
今夜壊してしまったものの代わりに、
今日は何か新しいものを探しに行くつもりだった。
ベルーノルはそっと自分の手を、
ピロトの手の上に重ね、
指の位置を丁寧に導く。
それから、家の扉に鍵をかけた。
ピロトの手は震えたが、
それでもやり遂げた。
褒められると、彼はベルーノルに微笑み、
父から預かった大切な鍵を、
大事そうに自分のポケットにしまった。
「……行こうか」
「……うん」
彼らは主要な商業地区、ドゥヤへと到着した。
ラトビアとリトアニアの国境に近いことで栄えた、
かつては素朴な町だった場所。
ベルーノルは何度もピロトに、
自分の故郷の話をしてきた。
だが今の表情を見る限り、
すっかり忘れてしまったのだろう。
彼は、
衣の裾から手を離した瞬間に
消えてしまいそうだった。
か弱い身体など気にも留めない、
その輝く瞳に、
ベルーノルは思わず苛立ちを覚える。
「ダメだ、言うことを聞きなさい」
そう叱りながら、
抱きしめ、掴み、持ち上げる。
二人の汗が混じり合う。
「ぁー、ぁー……!」
ピロトも負けてはいなかった。
自分では走り回れなくても、
人々の中を歩きたいと、
必死に父に訴える。
ベルーノルはため息をつく。
今日はきっと、
玩具でいっぱいの荷物を抱えて
馬車を呼ぶことになるだろう……。
帰り際、ベルーノルは思った。
もう少し、この空気に触れさせてやりたかったと。
新しい目標と活力は、
ピロトの成長を助けるはずだった。
だが、あまりに窮屈で、
世話もしづらい。
そう判断し、彼はその考えを捨て、
ピロトを家へ連れ帰ることにした。
それでも、
いつかは一緒にキャンプへ行こう――
そう心に決めている。
ムアンタを吸い、
薬草を啜り、
本を読む時間を思い浮かべただけで、
彼は今すぐ帰りたくなった。
ピロトもきっと、
静かな場所を望んでいるのだろう。
――二人きりで。




