数字「55」が示す象徴 ― 二重の断裂
リトアニアの司祭の記録によれば、この年のベラルーシでは
「雪が降り積もり、木々の梢を覆い尽くした」という。
気温は氷点下三十度まで落ち込み——
小氷期は、誰にも気づかれぬまま、静かに忍び寄っていた。
司祭はその記録の中で、こう記している。
「その夜は、半日以上も続き、太陽の光はほとんど姿を見せなかった……」
「寒いよ、父さん……」
「……ああ……」
それは、父と子の、あまりにも長い最後の夜の描写である。
二人は、窓一面に氷が張りついた部屋の中で、眠っては目を覚まし、また眠りについた。
毛皮の毛布と小さな暖炉はあったが、それでも足りず、彼らは互いの体温に頼るしかなかった。
毛布の下で、二人は何も身につけていなかった。
それは欲情ではなく、ただ生き延びるための、最後の選択だった。
それでも、息子の声は次第に弱くなっていった。
夜通し語り合っていたはずなのに、今では疲れきり、父にこう告げる。
「大丈夫だよ、父さん。ピロトは、まだ死んでない」
それは、最後の慰めだった。
少年は手を伸ばし、父の顔に触れる。
その身体はあまりにも苦しく、涙と震える声で
「行きたくない」と懇願したいほどだったのに。
それでもピロトは、
自分の愛するこの男の涙を、見たくはなかった。
ベルーノルは、できることはすべてやり尽くした。
それでも……気づいたとき、彼はただ、息子のそばにいることを選んだ。
もう、どこへも行かずに。
「父さん……
もっと、ぎゅっと抱きしめて……」
その声は掠れて低く、父の耳には届かなかった。
それでも彼は、その願い通りにした。
いつもより強く抱きしめる。
爪が息子の皮膚を裂き、
自分の手が再び赤く染まっていくのにも気づかぬまま。
それでも、ピロトの手は父を抱き返していた。
眠りについたあとも、
もう少しだけ、こうしていたいと願いながら。
――最後の駒が、静かに倒れた。
男は涙を浮かべ、最後の言葉を待っていた。
けれど、自分が怒っていることを知っていた息子は、
ただ、眠ってしまったふりをしただけだった。




