エンドへの近づき3
わたくしは、そういえば、と思い出したことを夫に伝えます。
「思い返してみればでございますが、最近の社交界の友好関係にも変化が起きております。このお方が、このお茶会にいるのは、変ではないけれど少々意外だ、という程度ですが。」
「その情報、詳しく知りたいな。頼める?」
「よろしゅうございます。明日、まとめておきましょう。…あの、こういうときこそ、社交をして情報を集めるべきではありません?」
領地に帰ってはそれはかないません。
「前に王子との縁談を断っただろう? そのときから、私は王宮内で中立の扱いでね。君が茶会に出ることでそれが崩れてしまうかもしれないんだ。」
わかりました。今、情報よりも中立の立場の方が必要なのでございますね。
その立場を守るために、訪問などの親密な接触は避けた方が良いということですね。誰が味方なのか敵かわかりませんから。
そういうことでしたら、すぐに領地に向かうことにいたしましょう。
遠地にいるというのは、角を立たせずに社交を断る良い理由でございます。
「しばらくは母に体調を崩してもらう。それに、アルフレッドだけでは領地が心配だ。頼んだよ。」
アルフレッドとは夫の従兄弟でございます。
わたくしと夫の間にはエリザベスちゃんしか子がありません。そのエリザベスちゃんにやりたいことができたとき、家の仕事が足かせになっては困ります。
ですから、三年ほど前より、我が家の跡取り候補として領地で教育しているのです。
従兄弟と申しましても、夫より大分年若いかたですので跡取りに足り得るのです。
しかしまだ三年、大きな変動は荷が重いことでしょう。しばらくはわたくしが彼の補佐に付き、支えることにいたします。
ちなみに、夫のお父様は二年ほど前に亡くなっておりますが、お母様は大変にお元気でいらっしゃいます。
それにしても、領地の差配について、夫に頼っていただけるとは嬉しいことです。わたくしはしっかりと微笑んで夫に諾をお伝えいたしました。
「ええ、わかりました。できる限り領地に混乱のないようにいたします。」
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