王妃とのお茶会4
エドワード殿下の功績を受け入れた王妃様は俯かれてしまわれました。
様子を伺っていると、次第に肩が震え出し、小さな嗚咽が聞こえてまいります。
わたくしは席立ち、そっと王妃様の隣に腰掛け扇を全て開きました。
そしてぎゅっと縮こまり小さく見える背に手を置きましす。
「あ、ありがとう。」
俯いたまま小さく呟く王妃様の声も、先ほどより震えが大きくなりました。
わたくしは王妃様の背をさすりながらささやきます。
「扉からの視線は遮りました。ご存分に。」
はっとしてこちらを振り向く王妃様のお顔はすでに涙で濡れておりました。
王妃様は数秒間わたくしを見つめてから、大きく手を振りかぶり、再び俯かれます。
わたくしが座ったのは、使用人達が外に控えるガラスの扉と王妃様の間でございます。
わたくしがここに座ったことで、外でこちらの様子を伺っている使用人たちから王妃様のお顔が見えにくくなったのです。
温室ですから、回り込めば王妃様の姿が見えてしまいますが、今手を振ったのは問題ないと伝える合図だったのでしょう。使用人たちは動きません。
始めは押し殺されていた王妃様のお声が次第に大きくなってゆきました。
わたくしは背中をさすることしかできません。
いくらか溜まっていたものを吐き出されたのでしょう。しばらくすると、王妃様の嗚咽は小さくなり、体の震えも無くなりました。
ただ、少なくなりましたが、涙は未だお流しになっておられます。
「セシリア、ありがとう。」
「とんでもございません。ため込み過ぎるのはご負担になりますから、流し出せてよろしゅうございました。」
「ええ、少しすっきりしたわ。」
そう言って小さく笑った王妃様は、深い呼吸を二つなさいました。
「最近、忙しすぎてあまり眠れていなかったから、不安定になりやすいのかも。みっともないところを見せたわね。」
「無理もないことでございます。ほんのわずかの間に色々とございました。」
「ほんとにね。この二ヶ月と少し、とても忙しかったわ。子供の尻拭いをするのは親の仕事かもしれないけれど、本当に骨が折れる。」
やはりエドワード殿下の行いは王妃様のご負担となっていらっしゃるようです。
「これから、どうなさるのです?」
「セシリア、あなたはだいたい知っているんじゃないの? どこまで知っているの?」
どさくさに紛れて探りを入れたわたくしに、王妃様も弱い笑みを見せながら探ってこられました。
涙は収まったようでございます。
王妃様が知りたいのは、わたくしが立太子式が行われることを知っているか、ということでしょうか?
「あなた、この二ヶ月は領地にいたじゃない? でも、色々あったことは知っているんでしょ?」
「噂程度でございます。」
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