王妃とのお茶会1
王都に着いてから数日、本日、わたくしは王宮に上がっております。
王妃様がわたくしを迎えてくださった場所は温室でございます。それも、見通しよく膝下高の植物が植えられた美しい場所です。
何でも、王室の方々が幼い頃はこの温室でお遊びになられるのだとか。
「改めて、ギルシュ侯爵夫人、よくいらしてくれたわね。」
「お招きいただき、恐れ多いことでございます。」
向かいのソファに座るのはたおやかに微笑まれる王妃様。
椅子でなくソファがおかれているということは長いお話しになるのでしょうか?
そして案の定、同席者はいらっしゃいません。わたくしだけとお話しされたいことを隠すつもりがないということです。
「急なお誘いでごめんなさいね。」
「いえ、お構いになさらないでくださいませ。こちらこそお返事が遅くなりまして申し訳ございませんでした。」
領地にいたのだから仕方がないわ。と、王妃様はわたくしにお茶を勧めてくださいます。
「マーガレット叔母様の…前侯爵夫人のお加減はいかが?」
「お気遣いいただき、ありがとうございます。今は、大分落ち着いております。」
王妃様にまでご心配いただけるとは恐れ多いことでございます。
王妃様にとって、ずっと頼りにしてきた叔母様の不調はとてもご心配なことなのだと思います。
王妃様とわたくしはお母様にまつわる話や、思い出話などをいたします。
途中に何度か、「今後、叔母様に不調があれば個人として助力したい」などと仰ってくださいまして、王妃様が本当にお母様を思っていらっしゃるのだとひしひしと伝わってまいりました。
いくらかお母様の話をしたあと王妃様が話題を変えられました。
「本当に、病を期にマーガレット叔母様が気力を落とされてしまうことが心配だわ。何か、気が晴れるような話題があれば良いわね…。そういえば、エリザベスがそろそろ帰ってくるのではなくて? 顔をみたらマーガレット叔母様がお喜びになるのではないかしら?」
どうやら、王妃様はエリザベスちゃんの留学が延長される話しをご存知ないようでございます。
このところ色々とありましたから、些事まで気に留めることはできなかったのでしょう。
当たり前のことでございます。
「お母様はエリザベスちゃんも、王妃様と同様に大切にしてくださっておりますから、卒業の知らせは喜ぶことと思います。」
エリザベスちゃんは帰って来ませんので、王妃様の問いには少しばかりずらしてお答えいたします。
帝国の学園の卒業式と、王立学園の卒業式は少しばかり時期がズレております。ちょうど今の時期に、帝国の学園では卒業式が行われるはずです。
王妃様はわたくしの言葉に、そうね、と同意されてからお話しを続けます。
「それにしても帝国の学園を卒業するなど、優秀なこと。帰ってきたらどんなところか話しを聞きたいわ。こちらに帰ってきたらどうするの? 婿を取るのかしら。」
「まだまだ先になるかと思いますが、それも踏まえて色々と考えております。多感な年頃でございますから、娘の意見もその時々で変わると思いますので。」
「そう、一人娘だものね、色々考えるわよね。…子供の意見ねぇ。聞くことが前提なのが流石というところね。」
「恐れ入ります。」
少し呆れたような、茶化すような、王妃様の溜息にわたくしはにっこりとお応えいたしました。
お読みいただきありがとうございます。
誤字報告感謝いたします。
アフリカ、バングラディシュ、インドから総勢90万人の労働者を迎えると聞いて、この物語に移民問題を反映したらどうなる?とか余計なこと考えていたら書くのがギリギリになってしまいました。先週に続き遅くなりましてすみません…。




