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悪役令嬢の母は娘をモブにして乙女ゲームの余波を生きる  作者: 二木公子


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糸を垂らす

領地に来てから一月ほど経ち、食料保存庫の見回りなども収穫の早い地域からぽつぽつと始まりだしました。


 この(かん)、夫からの手紙は定期的に届いており、毎度わたくしたちを安心させてくださいます。


 夫の手紙によりますところ、不穏な集団は増えつつあるが動きはないとのことでございます。

 それと以前に夫が言っていたように、エドワード王子殿下とその周りの方々は捕らえられることなくつつがなくお過ごしとか。


 お友だちからもお手紙が届きます。お母様へのお見舞いと、お茶にお誘いできなくて寂しい、などのお言葉をくださいました。

 お母様を見舞う品々はとても数が多く、お母様の人望を改めて知ることとなりました。

 昼食会からあまり日が経っておりませんのに、噂が広がるのはとても早いことです。お母様のことがもう王都に回っているとは。



 お母様と相談しながらお返しの品を検討しておりましたところ、いただいた品の目録に違和感を覚えたのでございます。


 いただいた品々はどれも素敵なもので、見舞いの品としてそぐわないものはないのですが、なんというか、一部に偏りがあるような気がいたします。難しい違和感です。


 気のせいかと思いましたが、お母様も違和感があるとおっしゃいます。

 お母様はこういったことに長けておられますから、わたくしが何かするよりもお母様におまかせすることにいたしました。


 お母様は、お父様が亡くなる直前、床に付きはじめの頃にいただいたお見舞の目録を出してこられました。二つを見比べ、眉間に皺を寄せ、考え込んでしまわれます。


 しばらく考えこまれた後、わたくしに教えてくださいました。


「装飾品が少ないのよね。」


 確認いたしますと、確かに数が少ないのです。

ケープや膝掛け、柔らかい髪飾りなど、病床であっても使えるような装飾品は見舞いの品としてよく贈るのでございます。女性であればなおのことです。

 ですが、今回いただいた装飾品は、お父様のときより割合が低いのです。


 そして、よくよくみると王都から送られた見舞いの品だけに見られた偏りでございます。


 脳裏に一人の女性が思い浮かびました。


「ねぇ、セシリア、実験してみない?」


 お母様から提案がございました。わたくしが思い至った方に、お母様もたどり着かれたようでごさいます。

 お母様も彼女の事をお調べになっていらっしゃったのでございましょう。


「実験でごさいますか?」


「そう。我が家から垂らした糸がどこで紡がれどこで織られ、誰に渡るのか。気になるのよ。」


 それはわたくしも気になります。いったい誰が買い誰に届け、最終的に手にするのは予想通りの方なのか、など知りたく思います。


「でしたら、これなどいかがですか?」


 わたくしがお母様にみせたのは、嫁入りの時に作らせた品です。宝石がちりばめられた美しい首飾りです。その模造品でございます。

 模造品と申しましても、台座にはまっているのは宝石でございます。ただ、本物の首飾りに使われているものよりは大分安いものです。


「あら、いいわね。私のものも何点か流しましょう。」


 それから、いくつかの宝石と、この領の端で作られる伝統的な紋様の珍しいレースなども、王都にも拠点を持つ宝石商を中心に売り払ったのでございます。


 商人の皆様が「本当に買わせていただいて良いのか」と一様に念を押されるのがなんだかとても面白く、よい気晴らしとなりました。


 どこへたどり着くのでしょうか。結果が楽しみでございます。


お読みいただきありがとうございます。

誤字報告感謝いたします。

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