休息
それから三日間、わたくしはほとんど何もさせてもらえませんでした。
のんびりと過ごしたことで、夫の身の安全への不安は、おそらく今すぐにどうなることではないと気が付くことが出来ました。
少しだけ心の余裕が増えたように思います。
そしてもう一つ、大事なことにも気が付きました。
エリザベスちゃんが王立学園の制服で泣き崩れることなどにはならないと言う事です。もう卒業でございますから、こちらに帰ってきて編入する、などということにはなりません。
昔の嫌な夢、そのうちの一つが起こらないのです。
気がついた時はとても安堵いたしました。思わず座り込んでしまったほどです。
かわいい娘が笑って学生を終える。今が楽しい、進学して学びたいと踊る文字で綴れる。本当に嬉しいことです。
もう十年以上前のあの時、帝国への留学を促して本当に良かったことです。
わたくしは当時のわたくしを、よくやった、と褒め称えます。自画自賛はこういった時にすべきです。
しかし、しかしながらまだ、処刑や幽閉の可能性は残ります。あれらの絵で着ていた服は、制服などではなく、簡素なだけの普通の服です。
ですから絵に描かれていたエリザベスちゃんの年頃が終わるまで、わたくしの不安は消えないことでございましょう。
わたくしは拳を強く握りしめ、自分に喝を入れました。
エリザベスちゃんが危機的状況になる前にそれを見定められるよう、今しばらくはたち続けねばなりません。
その後、昼食会までの二週間はゆっくりと諸事を進めていきました。
昼食会の支度はわたくしが休んでいる間に、アルフレッドとお母様が担ってくださった部分が多く、わたくしはほとんど最終決定をするだけでございました。
また、昼食会の準備と平行して、領内の軍事の見直しもいたしました。
アルフレッド、領兵長、担当の領官に相談しながら進めていきます。
領兵長、担当の領官にも細かいことをお話ししたいところですが、夫が「内密」と言ったことですので、結果をどのようにしたいかだけを伝えます。
二人は急にどうしたことか、と訝しんでおりましたが、大きく変えるわけではありませんので特に反対などもせずに聞いてくれました。
変えたのは伝令の速度でございます。今よりも少しだけ、伝令が速く届くようにしたのです。何かあった時に急がねばならないのは、各地の関所を閉じることでございますので。
お読みいただきありがとうございました。
誤字報告、感謝いたします。
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アルフレッド:伯母様、セシリア様は大丈夫でしょうか。
母:だめでしょうね。多分、ここに来るまでの数日、ろくに眠れていないんじゃないかしら。
アル:何か俺にできることありますかね?
母:そうね…昼食会の支度、全部やんなさい。
アル:えっ!やったことないですよ。いつもセシリア様がいるときにしか…
母:勉強よ。教えてあげるから。
アル:えっ伯母様が?
母:なによ。前侯爵夫人を甘く見ないでくれる?流行り以外は何とでもなるわ。
アル:あ、はい…。ヨロシクオネガイシマス。(逃げたい…セシリア様に教わりたかった…)