考察
一息ついてから、また話を再開いたしました。
わからないことがあるのよ、とお母様がおっしゃいます。
「例のご令嬢の周りの学生たちは何がしたいんでしょうね?」
これは、わたくしもわからないことですので、首を横に振ります。
「学生に関しては、えーと、彼女を守りたいとか安い正義感なんでは? みんなで守ろう!って結託しちゃったんですよ、きっと。あの年頃はまぁ、そういうところありますし。」
アルフレッドが自分の中の予想を教えてくれました。
しかし、あの年頃、だなんて、
「アルフレッドも大して変わらないでしょう?」
わたくしが言うとアルフレッドはおどけて肩をすくめます。刮目してくださいですって、おかしいこと。
「そんなものかしら。」
「多分そんなものですよ、伯母様。」
それよりも、とアルフレッドは続けます。
「学生集団の周りにいる大人はどうなんでしょうね。伯母様は先程、様子見派の人たちが立太子派になったと言いましたけど、本当に全部がそうだと思います?」
集団のことが腑に落ちないというアルフレッドに、お母様は教えるように話します。
「いいえ、全部じゃなくて一部だと思うわ。けど、第一王子は卒業したら本格的に政治に参加するでしょ。何より、立太子するだろうし。
クリアハート嬢に近づけば、おのずと第一王子殿下に近くなるでしょう? 横領するほど入れ込んでいるのだから。
第一王子と側近たちに追随したい、おもねりたい、ただ何となく長いものに巻かれとく、はたまた追い落としたい。そんなふうに、いろんな人が動いているでしょうね。おそらく、その動いている人たちが学生と例のご令嬢を利用しようとしているのよ。」
うへぇ、と声をもらすアルフレッドをお母様はねめつけます。
わたくしはアルフレッドのおかしな声に少し笑ってしまいました。笑いながら、わたくしもお母様の考えを補足します。
「ただ、多くの方がまだはっきりと本心を出していない段階なのでございましょう。お母様がおっしゃった事の探りを入れている段階かと思います。」
わたくしは、だからお茶会の参加者が、とさらに具体的なことを言おうとしてやめました。
アルフレッドは脱力して背もたれに体重を預け、白旗を上げております。今はこれ以上、考えたくないのでしょう。
対してお母様は少し懐かしむような表情をなさっております。きっと、以前にご経験なされたのでしょう。
こ度は、お母様にもご相談申し上げて本当に良かったことと思います。
わたくしだけではアルフレッドにきちんと伝えるのにもっと時間がかかってしまったことでしょう。
それにしても、王都に行く回数もかなり減っていらっしゃるはずですのに、ここまでの情報を有しておられるとは思いもよりませんでした。お母様は、これらの情報をいったいどのように得られているのでしょうか。
今回は前侯爵夫人とは斯くあるもの、とお見せくださったように思います。わたくしも、後年にこうありたいものです。
夫は、アルフレッドだけでは心配だとおっしゃっておりましたが、このように情報収集に長けたお母様がいるのでしたら領は問題ないのではないでしょうか。
領を頼む、とおっしゃったのはわたくしを領にやる口実だったのかもしれません。
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