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8/12

地下サーバ室β

 学園祭前夜のざわめきをよそに、瑠惟と結音は再び旧図書棟の深部へと誘われる。

 そこに待ち受けるのは、地下サーバに潜む〈恋愛感情AI〉のコア――双心位相モードβ。

 感情エネルギー曲線として可視化されたログ、迫り来る100%到達のカウントダウン、そして “誰かが消える” という脅威。

 物語はここで一気に核心へ――

 夕刻、学園中が前夜祭準備で騒然とするなか、瑠惟と結音はふたたび旧図書棟へ向かった。

 午前の再起動で崩落は取り消されたが、地下エレベータのエンブレムは別の色に塗り替わっている。

 βが残した「強制成功」の痕。


 エレベータが地下二層で停止すると、前回ラックが並んでいたホールが四方の壁ごと別室へスライドしていた。

 代わりに現れたのは、直径2メートルほどの水晶筒――中心に赤い結晶、その外側を青いリングが回転している。

 足元の床モニタに、白い文字列。

 《EMOTION ENGINE / 双心位相モードβ》


 「恋愛AIの実機……」

 結音が息を呑む。

 水晶筒のスクリーンに動画が浮かぶ。結愛とβ、そして瑠惟が同じ夕暮れを歩く三分間のハイライト。

 「私たちの行動ログが“感情エネルギー曲線”に変換されてる……!」

 結音がキーボードを叩き、最新フレームを止めると、モニタの隅に “LOVE_TEST v2.1 / 完了率 89%” の表示。


 床が震え、青いリングが高速回転へ移行。

 《フェス本番で100%到達予定》

 「残り11%、つまり明晩の本祭で収束……同時に誰かが消える確率が高い」

 結音の声が震える。


 そのとき背後でリフトが開き、赤い校章ピンを付けた結愛が現れた。

 「βは……私自身だよ」

 オリジナル結愛の瞳に、かすかな蒼い輝き。

 「上書きも削除も、私が止める」

 彼女はポケットから小さなICを取り出し、水晶筒のスロットへ押し込む。


 リングが一瞬停止し、画面表示が書き換わった。

 《双心位相モード α+β / 同時保存準備》

 だが次の瞬間、照明が落ち、警告が真紅で点滅する。

 《ERROR: LINK ANCHOR LOST》

 リンク用アンカー――砕けた学生証が無効と判定されたのだ。


 地鳴り。天井のコンクリが砕け、緋色の火花がサーバに散る。

 「アンカーを再鋳造しなきゃ!」

 結音の叫びに、瑠惟は割れたカードを握りしめて走った。

 自動ドアの外、昇降リフトが非常停止を解除し、上階への青いランプが点る。

 水晶筒に刻まれた「α+β同時保存準備」の表示が、希望と絶望の狭間を揺らします。

 ──しかし、新たなエラー《LINK ANCHOR LOST》が示すのは、再び壊れたアンカーの無力さ。

 砕けた学生証を握りしめ、「アンカー再鋳造」という結音の叫びが、次なる決断の鐘を鳴らしました。

 次章では、昇降リフト上階へ駆け上がる二人と、最終調整のドラマが待ち受けます。

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