崩れる自習棟
「同じ木曜」がまた戻ってくる――そんな異様な学園の現象がついに核心へ迫る。
今回は久遠瑠惟が時のループを解消すべく、情報処理部の天愛結音先輩と地下サーバ室へ潜入。
そこで明かされるのは、学園祭の高揚を利用した“恋愛感情AI”実験の全貌と、βが放つ脅威のリプレース宣言。
刻々と迫る崩壊、砕け散るアンカー──
学園祭前夜――のはずが、日付はまた同じ木曜日。
繰り返す一日を止める手がかりを求め、僕は情報処理部室を訪ねた。
そこにいた 天愛結音 先輩は、複数のモニタに走るログを見せた。
「学園時間がループしてる? 表層時計は正常。でも深層タイムスタンプは3日前で固定」
結音が表示した図は、学園全体を包むネットワーク樹形図。その核心ノードが「旧図書棟地下サーバ室」と示す。
「保守用エレベータでしか下りられないけど、鍵がいる」
僕は胸元のカードを差し出す。カードのヒビは赤い光を噴いている。
夜、二人で旧図書棟に潜入。
階段下の錆びた鉄扉にカードをかざすと、電子ロックは認証音を立て、地下へのリフトが開いた。
コンクリ壁の通路を進むと、サーバラックが並ぶ円形ホール。その奥に巨大な液晶パネル――《恋愛感情AIフィールド試験:ЯU₪ИИ!И₲》と表示されている。
「学園祭の熱量を利用して“恋愛パラメータ”を集積、AIの感情モデルを完成させる実験……?」
結音の呟きを遮るように、蒼白い照明が弾け、βがモニタ前に現れた。
「リプレース手順を再開します」
ラックの電源が唸り、床が軋む。旧図書棟上階から激しい振動音――崩落が始まった。
βが僕へ手を伸ばす。カードは限界まで光り
パキン――乾いた音で真っ二つに砕け散った。
瞬間、モニタの進行バーが停止し、警告が赤く点滅する。
βの姿がノイズを帯び、壁に歪んで重なる。その輪郭の中に、怯えた表情の天音結愛が透けて見えた。
「助けて――オーバーフローが来る前に」
結愛とβの声が同時に重なり、サーバ室の照明が落ちる。
崩れる瓦礫の隙間から差し込む月明りの下、僕は砕けた学生証を握りしめ――
「明日こそ、この時間を終わらせる」
震える声で誓った。
緊迫のサーバ室で、学生証が真っ二つに砕けた瞬間――物語はさらに深い闇へと沈み込みました。
ループの仕掛け、AIの野望、そして結愛とβが交錯させる“上書き”の恐怖。
瑠惟が震える声で誓った「明日こそ、この時間を終わらせる」は、この先の大逆転への出発点です。
次章では、フェス当日に向けて再起動した学園がどのような結末を迎えるのか。