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カオス系

(ง ˙˘˙ )ว(ง ˙˘˙ )ว(ง ˙˘˙ )ว

作者: 七宝

 さっき食べたラーメン、なんか苦かったなぁ。なんで苦いんだろう。稀に苦い醤油ラーメンに出会うことはあるけれど、味噌ラーメンでは初めてだったなぁ⋯⋯


 などと考えながら逆立ち指歩きで校内を散歩していると、プププ学の黴井(かびい)教授に声をかけられた。


「チミ、逆立ち指歩きなんてしてたら指全部折れちゃうよ」


 そう言って黴井教授は近くを歩いていた女子学生を吸い込むと、しっかり20〜30回咀嚼して飲み込んだ。


 俺は「怖」と思った。


 それにしても、苦い味噌というのは一体誰がなんのために作っているのだろうか。そしてなぜあそこの店主はそれを採用しようと思ったのだろうか。「どうせ大人はコーヒーばっか飲んでるんだから苦けりゃいいんだろ」とでも思ったのだろうか。俺が大人じゃないから美味しく感じなかったのだろうか。もしかしたらうんこなんじゃないか。徳川家康も味噌って言ってたし。


 またそんなことを考えながら歩いていると、自販機の前に同じゼミのマリちゃんがいるのに気がついた。

 マリちゃんはいつも赤い帽子を被っていて、みんなのアイドルような存在でとても可愛い。チャームポイントは鼻下の立派なヒゲだ。


 せっかくだし話しかけてみよう。


「おーいマリちゃ〜⋯⋯ん?」


 なんか踏んでる。茶色い。うんこか?


 違う、デカめのキノコだ。マリちゃん、なんで自販機の前でデカめの茶色いキノコを⋯⋯?


「うぅ⋯⋯」


 キノコからうめき声が聞こえた。よく見ると顔がついていて、苦しそうな顔をしている。やめさせないと!


「マリちゃんやめなよ! キノコ苦しがってるよ!」


「ダメだよ、ちゃんと踏んで殺さないと」


「マリちゃん何言ってんの!?」


「何言うにもマリちゃんマリちゃんって頭につけるの、なんかキモいからやめてくんね?」


「なんでそんなこと言うの!?」


 とにかくキノコがかわいそうだ! 無理やり助けよう!


 そう決意し、俺はキノコに手を伸ばした。


「牧野君ダメっ!」


「えっ?」


 キノコに触れた瞬間、「グシャ」という音が自分の中から聞こえた。

 体の中のもの全てが縦向きに圧縮されるような、これまでに感じたことのないレベルの激痛に耐えられずその場でのたうち回っていると、マリちゃんがどう見ても毒アリの赤いキノコを口に突っ込んできた。


「ほら、あたしのキノコあげるから、食いな?」


 こんな赤に白い水玉のデカいキノコ食えるわけないだろ。キモすぎる。モゴゴッ!


「モゴモゴゴゴッ!(マリちゃんやめて!)」


「やめない! ちゃんと食え! 全部口ん中に入れろ! あたしのキノコ!」


「モモモゴゴ〜!(こんなの入れたくないよぉ!)」


「奥まで咥え込め! オラァ!」


「モモ〜!(らめぇ〜!)」


 こうして俺はマリちゃんのキノコを無理やりねじ込まれ、なぜか身長が元に戻った。


「すんごい辛かった。さっきのなに? 激辛のキノコ?」


「うん。レンガ殴ったら出てきたの」


「ヤバ」


 そんなことを話していると、向こうから緑の帽子を被った細長い顔のヒゲが歩いてきた。


「あ、ルイちゃんだ」


「ルイちゃん?」


「うん、あたしの妹」


「妹いたの!?」


「いたけど、なに? 妹いる人間は新しい人に会う度に『妹います』『妹います』って言って回んなきゃいけないわけ? そういう法律でもあんの? もうさ、そういう反応する奴ばっかでクソ腹立ってんだよね。殺すぞお前」


 えっ、こんな言われんの?


「おーい君たち! そろそろ授業始まるぞ〜!」


 遠くの方で()(のん)(どろ)教授が呼んでいる。


「あたしら次空きコマなんで!」


「ほーん」


 せっかく心配したのに、という顔をして蛾飲泥教授は教室に入っていった。


「さて、あたしはルイとキノコ狩りに行くけど牧野くんはどうする?」


「キノコってさっきのやつ?」


「おん」


「やめとくよ、怖いから」


 人生最大の激痛だったからね。


「ふにゃちんが」


「えっ」


「タマナシが」


「マリちゃん⋯⋯?」


「来いよ」


「やだよ」


 人生最大の激痛だったからね。


「⋯⋯チッ」


 マリちゃん、なんで君はそんなに⋯⋯あっ、あっちにすげー細長い体の人がいる。めっちゃ紫だけど、あんな人いたかな。


「あ、悪胃(わるい)くんだ」


「知り合いなの?」


「うん。彼は悪胃くんといって、胃が悪いことで有名なの。だからあんなに細いのよ」


「名前と因果関係あるんだ」


「そろそろキノコ狩り行くよ」


「俺は行かないって」


 人生最大の激痛だったもん。


「ねぇ牧野くん」


「なに」


「あたしのヒジ、見て」


「?」


 ヒジ⋯⋯


 マリちゃんのヒジ、すごいツルツルでスベスベだ。ちゃんと毎日ヒジケアしてるんだろうなぁ。


 ヒジをこんなに真正面からまじまじと見たことないから新鮮だなぁ。片目閉じて2Dで見てみるとまた違った面白さがあるなぁ。片目だとこれヒジって認識できないよ。


「行くよ」


「うん」


 俺はマリちゃんについて行くことにした。


 いきなりヒジを見せてきて怖かったからだ。ヤバい人間には逆らわない。それこそが世の中を上手く渡っていく術なんだと思った。


 それにしても、なんであんなに苦かったんだろう。もう味噌ラーメンがうんこにしか見えないよ⋯⋯

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― 新着の感想 ―
[良い点] 任天堂オールスターだ... [気になる点] ドンキーコングも出して欲しかったです。
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