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91羽

 藤が咲く時期となり、私は藤色のドレスを着て、藤ちゃんも藤色のタキシードを着て、藤の花が咲く場所で撮影を行っていた。笑って笑ってとカメラマンに言われながら、ポーズを取ったりお互い藤の花を持ったりする。

 事前に賢介が腕前がいいカメラマンを用意してくれて、ヘアリストはなんと催花ちゃん。いつの間に資格取ってたのと思うも、私と会うために事前に資格を取ってくれていたらしい。


 一度休憩しようかとカメラマンさんに言われ、催花ちゃんと千花さんに手伝ってもらいながら椅子に座った。


「あと何枚か撮ったら衣装替えだね。それにしてもおめでとう」

「ありがとう。推しの人と結婚は夢だったから、正直驚いてはいるの」


 もし何もなくて藤ちゃんと巡り会えていたら、毎日が幸せだったんだろうなと藤ちゃんのほうを向く。藤ちゃんは幸せオーラを出しながら、純連たちと話していた。

 千花さんが咳払いして、ごめんなさいというポーズをしたら、千花さんに言われる。


「確かにそうかもしれない。組織が存在しなくて、芸能人と結ばれたら最高」

「千花さんは押しの人とかいないんですか?」


 すると千花さんはスマホを取り出し、私と催花ちゃんに見せてくれた。その人がなんと虎次さんであり、この前撮られた写真はすでに全国に出版され、五冊ほど買ったらしい。


「そんなに好きなんですね」

「猫目が好きで」


 言われてみれば猫目のような瞳だったかもと思い返していたら、噂をすればと虎次さんからメッセージをもらった。


 藤太郎から激怒のメッセージもらったからしばらく会いに行かない。けど会いに行くから覚悟しておいてね。キラーンというスタンプ付きで、NOスタンプを送り出す。


「懲りないね」

「うん。千花さん、なんとかなりません?ブロックしても来ちゃって」

「こういうのは流葉が対処してくれてたから、私は何もできないかな」

「そうですか。お義父さんに直接、相談してみます」


 報告しておいてあげると言ってくれて、じゃあ遠慮なくと千花さんと話していたら、再開するよと言われ再開することにした。

 

 藤ちゃんと笑い合っていくつか撮ってもらい、衣装替えをするため控室へといき、パンプスを脱ぐと靴擦れができてしまっている。


「あちゃ。ちょっと待ってて」


 催花ちゃんが絆創膏と探していると、どれと私の足に触れる人がいた。全身赤くなりそうで、夕哉さんが絆創膏を貼り、事前に持ってきたらしいパンプスを履かせてくれる。


「靴はそんなに写らないと思うから、こっち履いといて。ちょっとカメラマンに言っておくから」

「ありがとう」


 なんで夕哉さんがいるのとびっくりしちゃったけど、違うドレスを着付けてもらった。


 着替え終えた私は催花ちゃんに手伝ってもらい、戻ってみると、夕哉さんの姿はない。てっきり想が呼んだのかと思ったけれど、お忍びで来てくれたのかなと思ってしまった。


 藤ちゃんは私の姿を見て頬を染めていて撮影をていき、カメラマンが兄ちゃん、それ取ってくれと言われ、その兄ちゃんがなんと夕哉さんだった。

 それでも藤ちゃんたちは気づいていないから、どうやってお忍びしたのと聞きたいぐらい。


 夕哉さんがいるからちゃんと笑顔になれているか、不安になってしまった。


 


 撮影が終了しカメラマンにお礼を伝え、後日出来上がった写真とデータを送ってくれるそうだ。夕哉さんはカメラマンと一緒に行かれてしまい、気づかれなかったのが幸いだったかもしれない。


「楽しかったね。もう少し陽っちゃんのドレス姿見てたかったな」

「私も楽しかったよ。藤ちゃんの姿、かっこよかったよ」

「また特別な日できたら、撮ろう。今度は純連や想たちも混ぜてさ」


 そうだねと手を繋ぎながら藤が咲く場所を歩いていく。


 ◇


 車に機材を乗せて行き、カメラマンは助手席で撮った写真をチェックしているも啜り泣きをしていた。賢介から連絡をもらった時、本当は断ろうと思っていた。

 けれど本人に聞いたらやるよと言っていて、賢介に報告し撮影会が無事に終えた途端、本人は泣き出す。


 機材を全てしまい行こうとしたところ、春陽の友達である清寺催花が走って来た。


「夕哉さん、カメラマンさんは?」

「ちょっと話せる状況じゃないかな。何か伝えておくことある?」

「これ、春陽ちゃんからではないんですけど、受け取ってくれたら」


 春陽はポケットから取り出しそれは手紙の束で、それを受け取る。


「春陽ちゃん、実はアメリカにいた時、お兄さんに送ろうか迷ってたみたいなんです。けど勇気が出せなかったぽくて」

「そっか。わざわざありがとな。春陽のことこれからも頼むな」


 はいと催花は言って春陽たちのところへと戻って行った。

 運転席に座り、春陽からだぞと冬月に渡してあげ出発をする。本当は連れて帰ってやりたいものの、あちこちにはヴァイオレットと紫蛇組もいたから、二人でやるにはさすがに無理だった。

 

 明るい曲を流しつつ、運転をしていたら冬月が俺に伝える。


「夕哉宛の手紙、混じってた」

「なんだろう。後で読むよ。カメラマン引き受けたけどさ、その写真どうすんの?」

「もちろん、ちゃんと送るつもりだよ。カメラマン引き受けたからには、ちゃんとしたアルバム作る」


 兄としてちゃんと送り出したかったんだろうなと感じつつも、俺と同様に連れ去りたい気持ちがあったんだろうな。


 雪が入院している病院へと到着し、冬月を届けた後、駐車場でその手紙を読んでみる。


 夕哉さんへ

 お元気でしょうか?私は元気と聞かれるとそうでもないです。

 あの日のことは今でも忘れたりはしません。私がみんなのこと裏切ったことを。

 日本に帰ってみんなと出会って、軽蔑されるんじゃないかと常に不安を抱いています。

 夕哉さんももしかしたらと思い、なかなか勇気が出せなくて、ようやく手紙を書けてるって感じです。

 夕哉さん、以前約束してくれたこと覚えてますか?


 覚えてるに決まってるだろと、その続きを読んだ。


 夕哉さんが待っててくれると言ってくれたから、藤ちゃんと向き合ってるつもりです。

 ただ藤ちゃんの姿を見て、辛くなり、夕哉さんに会いたいという気持ちが強くなってしまいました。

 藤ちゃんは不安定の時、いつも暴れて、そばにいるよと支えるも、落ち着いてはくれず、逃げ出したい気持ちが強いです。

 そんな時、偶然と玲さんが藤ちゃんのお見舞いに来てくれたことで、それ以来藤ちゃんが不安定になることはなくなりました。


 そういや何日か玲、家に帰ってきて来なかったのは、アメリカに行ってたのかと納得する。


 純連も想も、賢介も藤ちゃんを落ち着かせられなかったのに、玲さんがとった行動は、よく夕哉さんにしてたことをしたと言ってました。


 ん?と考えるも玲はいつもべったりくっついてばかりのことしかしてないけどと読む。


 玲さんに聞いてみたら、夕哉さんが小学生の時。藤ちゃんと同じ行動を取っていたからと仰ってたんです。

 私のことを心配してくれて、それでも会えない日々が続いて不安定になって暴れていたと。


 玲、恥ずかしいこと春陽に言うんじゃねえよと照れつつ、春陽の文面はこう記されていた。


 夕哉さんの時は私は会うことはできなかったけれど、今は藤ちゃんのそばにいるから恐れることはないよと玲さんが告げ、そうだったと藤ちゃんが落ち着いてくれて順調に回復してます。

 その時、感じた感情。私も夕哉さんに会いたくて堪らなかったんだと帰ったら涙が止まりませんでした。

 会いたくて会いたくて、ずっと探していた人なのにまた離れ離れになる選択肢を選ぶだなんてと。

 

 夕哉さんはずっと影から見守ってくれていたのに、本当にごめんなさい。


 春陽…。


 夕哉さん、できるなら、日本に帰ったら、私を奪い返してくれませんか?

 藤ちゃんがこの先、どんな運命を選ぶとしても、私は夕哉さんの隣で笑っていたいです。

 身勝手なのはわかってます。この思いがどうか夕哉さんに届きますように。


 やべえと涙が手紙に濡れてしまい、なんか入ってると出してみるとそれは夕焼けのハガキで裏を見たらこう書かれてある。


 夕哉さんみたいな夕焼け見つけたので送ります。


 俺みたいな夕焼けって涙が吹っ飛んじゃったじゃねえかよと笑ってしまう。春陽の願い聞いてやらなきゃなと手紙を封にしまい、車を回して親父に報告しに向かった。



 まるが一生懸命、雪に思い出話をしていて、効果はあるんだろうかと見ていながらも、僕は春陽が僕宛に送ろうとしていたらしい手紙を一つずつ確認していった。


 お兄ちゃんへ

 突然といなくなってしまったこと、本当にごめんなさい。 

 みんなきっと怒っちゃってるよね?


 本当はね、勝つ前提で考えてはいたの。

 けどあの人が考えていることは私の言葉は伝わらないと感じてこうするしかないなって。

 それとね、お兄ちゃんと真昼くんには黙っていたことがあって。


 薄々は感じていたし、藤太郎が再発したというのは僕も知っていた。


 純連からメッセージをもらって、最初は断るつもりだったの。

 それでも毎日のように藤ちゃんの容体を教えてもらって、そばにいなくちゃ治療を受けないと言われたの。

 最初はお兄ちゃんに相談しようと思ってたけど、絶対に止めるだろうなって。

 

 当たり前だよ。春陽は僕の妹であり、わがまま藤太郎には渡したくない気持ちがあるんだから。


 ただ私、藤ちゃんのファンでもあることはお兄ちゃんもよくわかってるよね?

 藤ちゃんの再発は公にしないにしても、藤ちゃんの容体をよく知ってる私はファンとして、寄り添いたいって思えたの。

 どんなに辛くても、藤ちゃんを支えて、再びステージに上がってほしいという思いでお兄ちゃんたちから離れた。

 こんな妹で、本当にごめんなさい。

 藤ちゃんの病が治ったら、藤ちゃんたちと一緒に日本に帰ります。

 その時に話せたら嬉しいです。


 なんとなくそうなんだろうなとは感じてたけど、ちゃんと相談してほしかったよと二つ目、三つ目を開けるもそれはお兄ちゃんに会いたいと泣きながら書いたんだろう。

 そして四つ目の手紙を広げ、読んでみることにした。


 お兄ちゃんへ

 お元気ですか?私は少々元気がなくとも、なんとか藤ちゃんを支えてます。

 藤ちゃんが不安定で、何回か怪我しちゃったことで、純連にストップがかかった時。

 息抜きとして純連がある場所へと連れてってくれたの。  


 その場所というのはシルバーウルフの本拠地。初めてみる場所で入り口で立っていたらね。

 なんと雪と遭遇したの。


 雪からそんなこと一言も聞いてないと雪を睨むも、今幼い雪だから泣き出してしまい、まるにぱこんと叩かれる。しっしとやられ、一度病室から出てその続きを読んでいく。


 雪と会ったとき、すぐさま純連を襲って私を日本に連れ戻すんじゃないかと思ってたの。

 そしたら雪は藤ちゃんの容体をあの人から聞いてたらしく、今は連れ戻さないって言ってた。

 藤太郎がよくなったら連れ戻すから覚悟しておけと純連に圧を与えて雪は日本へ帰ってったの。

 それを聞いて雪が恨んでいないってわかって、ものすごく安心が持てたから、日本に帰ったら雪のおねだり聞いてあげるって伝えといてね。


 四つ目の手紙はそれだけで五つ目はと手紙を拝見すると、書き途中の手紙で文面はこうだった。


 お兄ちゃんへ

 どうしよう、お兄ちゃん。

 藤ちゃんかプロポーズもらっちゃって、おっけーしちゃったよ。

 嬉しい半分、どうしようの半分があって、日本に帰ったら、夕哉さんにどんな顔すればいいのかな。

 私、夕哉さんのことが


 で止まっていて、夕哉のことが大好きって書きたかったんだろうと封にしまう。


 雪の現状を春陽に見せたらきっと悲しむはずだから、もう少し様子を見てからのほうが良さそうだ。夕哉宛にはなんて書いてあったのかは不明であっても、なんとか春陽を救って夕哉と一緒にさせてあげたい。

 そうなればまずはさっき撮った写真を印刷にかけて、最高のフォトアルバムを作ってあげよう。


 病室に戻り雪を笑わせた後、まると廊下に出す。


「いきなりなんや」

「雪に刺激な写真見せてあげて」

「刺激的とは?」

「春陽だよ。さっき撮った写真を見せれば効果が出ると思う」


 まるはんーと考えていて、大好きな春陽を見せれば何か変化が起きるかもしれない。待っていると真昼が翠と疾太を連れて雪のお見舞いに来た。


「雪叔父さんは変わらず?」

「変わらずだよ。ねえ三人はこれを見てどう感じる?」


 さっき撮った写真を見せてあげると声を荒げ近くにいた看護師さんに静かにしてくださいと注意を受け謝罪する。


「逆効果だと僕は思うんだけど」

「いやいけそうじゃない?」

「やってみなくちゃわからないだろ」


 真昼、翠、疾太の順番で言っていて、かけてみる価値はありそうだよねとまるがまだ悩んでいるも、病室に戻り雪に見せてあげた。


「この女の子誰だかわかる?」

「わかんない」


 春の太陽だよと言ってみるも、わからないと言っていて、やっぱり難しいかと諦めかけた時だ。真昼がこういう。


「春の太陽に羽根が降り注ぐ」


 なんだそれと疾太が言うと雪は真昼の言葉を何度も繰り返していき、頭を抱え始めた。真昼の言葉で元通りになるのは嬉しいこと。そしたら雪が倒れてしまい、至急ナースコールを押した。

 主治医と看護師さんが来てもらい、雪の容体を確認してもらって、主治医に聞かれる。


「何か刺激的な何かを見せましたか?」

「いえ。ただ言葉を伝えたら、苦しみ出してしまって」

「おそらくですがその言葉が雪昼さんを動かす鍵となったんでしょう。異常はないので目を覚ましましたら、再度お呼びください」


 主治医は僕たちに一礼をして他の患者さんを見に行かれ、真昼に問う。


「その言葉、誰から聞いたの?」

「雪叔父さん。父さんの葬式の時に、雪叔父さんが言ってたんだ。春の太陽に羽根が降り注ぐ。その時はどんな意味って聞いたけどいずれわかるって言ってた。その意味がはっきりしたよ。春陽ちゃんのことを意味してた」


 昼秋さんの偽葬式には僕も参加してたけど、雪がそんなこと言っていたとは知らなかった。雪が起きたらどんなことを言うのだろうと思いながらも、起きるまで病室に散らかっているハスキーグッズを片付けていくことに。

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