9羽
合宿当日となり、新幹線に乗って伊豆に到着し、そこからバスに乗ってホテルへと向かう。海に近いホテルらしく、みんなは勉強のことを完全に忘れているようだった。
凄い綺麗で立ち止まって写真撮りたいなと感じてしまうも、透が遊びに来たんじゃないからなと軽く注意している。
「朝峰さん朝峰さん」
「ん?」
「気になってたんだけど、南雲くんと一緒に大学受けようとかは思わなかったの?」
「うん。守城学園のほうが私のことよく知ってくれてるから、守城大学を受けようかなって。新しい場所に行くのって、私にとっては大きな勇気がいるし。それに真昼くんは行きたいって思ってる大学があるから、そっち選んでもらったの」
清寺さんはほへえと軽く驚いていて、あれ見てとクラスメイトの子がいるからそっちに向けた。わっと一面が海で、受験合宿どころではなく、遊びたい気持ちが出て来てしまう。何人かは遊びたいと言っていた。
ホテルに到着し、まずは荷物を各自運ぶことになっているけれど、私の分を透が運んでくれる。よかったのにと思いつつも部屋まで運んでくれて、筆箱持って会議室に集合だぞと言い、部屋を出て行った。
もうっと思いながらもリュックから筆記用具を取り出し、清寺さんと一緒に会議室へと向かう。
「受験合宿って言っても、守城大学希望と他大学希望に分かれるんだよね」
「そう聞いてるけど、あの海見たらなんだか集中できなさそう」
「うちも半分寝そうな勢いだから、寝てたら起こしてね」
わかったとそんな話をして、会議室一のところには守城大学第一希望者と書かれてあり、その中へと入った。大半の生徒は守城大学を希望しているらしく、守城大学の先生たちも何人かいて、入江さんもいたのだ。
てことは星河教授もいるのかなと周囲を見ていたら、端っこに突っ立っている。
席に着席して教授たちに教わるとは思いもしなかったけれど、ちゃんと勉強に励もう。そしたらなぜか前に座る氷雨くん。
「え?氷雨、何やってんの?違う大学受けるんじゃ」
「それは第二希望に変更した」
「朝峰さんを散々いじめてたくせに、よく言える。しかも仲良くなるだなんて、朝峰さん。こいつを簡単に許しちゃ駄目だからね」
私がそもそも気づかず、永遠といいね押しまくっていたからと、なぜか清寺さんには言えなかった。氷雨くんは大体、雨の写真をばかり撮っていて、その美しさに私は惹かれていることを、真昼くんにも言ったらなんと言うか想像ついちゃう。
これは氷雨くんと二人だけの秘密にしようと氷雨くんのアイディアなのだ。
先生が注意事項を言い、プリントをもらって開始という合図で、私たちは問題を解いていった。
午前が終了しお昼となったことで、旅館の食堂にはバイキングとなっており、どれも美味しそう。トレーにお皿を乗せ、どれにしようかなと迷っていたら、真昼くんが来て僕が取るから言ってねと言ってくれる。
じゃあ、これとこれに、これっと伝えて、お皿に乗せてくれた。後はパンかなと真昼くんと一緒にパンコーナーへと行く。クロワッサンに一口サイズのメロンパン、キャラメルパンやロールパンなど、多種多様のパンが置かれてあった。
どれも美味しそうだけど、合宿だから今日の気分で選び、席に座る。いただきますと伝えて、昼食を食べていった。
「そっちはどうだった?」
「問題集解いてるから、すんなり解けた。それに守城大学の教授たちもいてびっくりだったよね」
「びっくりした。ただうち、全然予習してなくて、全然解けなかったよ。これで守城大学に進学できるかわからない」
とほほと清寺さんは少し落ち込んでて、後で教えるよと伝えたら、ありがとうとハグされた。氷雨くんは氷雨くんグループで食べているものの、なぜか氷雨くんはこっちを向きながら食べている。
どうかしたのかなと思っていても、私たちは昼食を食べていると、真昼くんの隣に座る透。
「伊宮先生、なんでここに座ってるの?」
「どこも埋まっててな。ちょうどここが空いてたからだよ」
そう言いつつも、透はきっと心配でここに座ったんだろうな。
「伊宮先生、聞いてもいいですか?」
「どうした?清寺」
「毎年、受験合宿は山のほうにある旅館って聞いてたんですけど、今年はどうして海のほうにある旅館を選んだんですか?」
清寺さんの言葉で確かに守城学園では自然溢れる山がある旅館と聞いてた。今年になって変わったのかなと透を見ると透がこんなことを言う。
「毎年行ってた旅館が休館したらしくて、急遽このホテルになった。まあ気にせず受験に向けて頑張れ」
透はカレーを頬張りそう言い、私は理解してしまったこと。それは以前、誘拐されそうになり、山だと危険性が高いから海が見え人通りが多い場所を選んだ。
みんなはどっちがよかったんだろうと考えてしまうも、そこまで計算に入れていたとはとパンを齧る。
「そうだった四日目は気をつけて行動しろよ。丸一日自由時間とはいえ、門限にはちゃんとホテルに帰って来い」
「透先生、また車出してくれません?」
「俺は仕事でお前たちに構ってる時間はない。陽羽、ごめんな」
「別に気にしてないです。仕事、頑張ってください」
おう、陽羽たちも頑張れなとカレーを食べ切った透は仕事に戻るらしく、トレーを持って行かれてしまった。
「いつかはうちも催花って呼ばれたいな。なんで南雲くんは下の名で呼ばれるようになったの?」
「それは陽羽ちゃんの彼氏だから、そう呼ぶようになったんじゃない?僕も詳細は知らないけど、陽羽ちゃんは何か知ってる?」
「多分、私の彼氏だから親しみやすく言ってるだけじゃないかな。伊宮先生、直すつもりはもうないみたいだから。いずれ清寺さんの呼び方も変わるんじゃない?」
そうかなとなぜか目を輝かせていて、彼氏さんいるのにと私たちは思ってしまう。
午後も受験に備えての講義が始まり教授が直々と問題について詳しく説明してくれて、しっかりとどの部分が出るのかも把握していった。
一日目が終了となり疲れたと清寺さんは机に突っ伏して、目の前にいた氷雨くんはお疲れと私たちに言った後、会議室を出ていく。
「終業式以来、なんか氷雨めちゃくちゃ朝峰さんに優しすぎない?新幹線の時も写真に映り込んでたし」
「なんでだろうね。私にもわからない」
「なんか企んでそうだったら、伊宮先生にチクリに行こう。お腹すいたけどまだ夕飯の時間じゃないから部屋に戻ろう」
うんと筆記用具を持って夕飯ができるまで、恋バナをしていった。
◇
今日は今のところ大丈夫そうだなと、先生たちと軽く会話をした後、浴衣姿の星河さんが立っていた。すでに温泉浸かってたのかいと近くに寄る。
「明日はお願いします、星河さん」
「言われなくてもわかってる。ざっと生徒の親御さんを調べてみた。透の生徒である氷雨疾太。学園長の息子らしいね。だから自分が大きいからと身体を張っているわけか」
「そうでもないらしい」
「余からの目線から言わせてもらうけど、氷雨は何かを隠している。もしかすると十年前に起きた現場に居合わせたかもしれない。さっきも昼休憩の時、陽羽ちゃんをずっと見ていたから。透は自分の生徒をちゃんと見とくんだよ。そう言うところ、透の悪い癖だから」
うっ胃が痛いと感じてしまうのは、自分の悪い癖を知っているからで、俺は陽羽ばかりを気にしていた。そのせいでクラスの子たちをちゃんと見ていなかったのは事実。
じゃあと星河さんは部屋へと戻って行き、夕飯も近くなっているから生徒も着々と食堂でご飯食べているだろう。俺も夕飯食って、部屋で仕事すっかなと行こうとしたらスマホが鳴る。
誰だと確認してみると、まじかと声が出そうになり、通知にあった部屋番号へと向かった。
最上階のVIPルームの部屋でよく取れたもんだなと失礼しますと告げ、入れと指示が出たもんだから部屋へと入る。そこにいたのは組長とそして俺の兄である玲がいた。
「やっほー、透。ご飯はしっかり食べているかい?」
「兄貴、それから組長なぜこちらに?」
「まあ一杯飲もうよ」
仕事中だって言うのに、このこと凛太郎さんはこのこと知っているのかは知らない。失礼しますと玲の隣に正座をし女将が酒を酌んでくれる。
女将がいなくなったところで、本題へと入った。
「今日、紗良が誘拐された」
「無事なんすか?」
「あぁ。なんとか紗良は無事だと凛太郎から報告を受けてな。紗良は何かを隠しているようだが、凛太郎が現場を確認した際、珍しい煙草の吸い殻があったらしい。詳細はおそらく透のパソコンに送っているだろう」
「その煙草がね、破島が使用していたことが鑑識でわかったらしい。その場にいたのか、それとも紗良があの現場にいた前にいたのかはまだ断定はできないってさ」
よりによって破島が紗良と接触しているとは信じられない。
「なぜ破島は匂わせるようにしたのか、透はどう感じる?」
「紗良が狙われたってことは昏籐への恨みって考えるべきですが、逆に凛太郎さんに気づいてほしいというメッセージ」
「その現場には居合わせていないが、誘拐された場所が以前、破島が経営していた元キャバクラだ。今は廃墟となっている」
凛太郎さんが破島を逮捕した時も、その場所だった。夕莉が言っていた通り、陽空かもしくは陽羽を狙っての犯行を起こすかもしれない。
「なぜ、俺にこのことを?」
「夜瀨組が今も陽羽ちゃんを狙っている。ここまで来ているから警戒は怠るなよ」
「そうそう。透の先輩一名いるようだけど、さっきロビーで烏丸を見かけたよ。だから組長と自分が来たってわけだ」
烏丸火代で夜瀨組を支えている人物であり、陽羽が以前SNSに写っていた。烏丸がいるということは、夜瀨組の連中がすでに配置している意味を示している。組長と玲二人で夜瀨組を払う気なのかよ。
「本来ならこの手はやりたくはないんだが、烏丸がいる以上、陽羽ちゃんが襲われるリスクは大きい」
「就寝時に襲うか、それとも外出するタイミングで襲うかもしれないから、透。陽羽ちゃんから目を離すなよ。夕坊は店で待ってるから、ここで狙われたら夕坊は暴走しかねない。ここは透たちに委ねて、自分たちは夜瀨組と接触し離れさせる」
「二人だけで平気か?」
「自分と組長はここにいるけど、他の連中は外で見張っててくれてるから。今んとこ、このホテルにいるのは烏丸のみ。部屋に侵入して、接触するつもりだ。おそらく拳銃を手にしてる可能性大だから、もし銃声がなったら任せたよ」
烏丸と何度かやり合った兄貴だとしても、烏丸は確実に殺す奴だ。心配すんなよとぽんぽん肩を叩かれ、だとすれば陽羽の部屋の前で待機はしといたほうがよさそうだな。
軽く飲んだ後、玲から夕坊愛を聞かされ、べろんべろんになっていたが、平気だろうかと部屋を出た。凛太郎さんが話を通してくれたおかげで、久しぶりに組長と飲めてよかったな。
後で凛太郎さんにお礼を伝えるとして、問題はすでに始まっているということだ。ホテルマンと成り済ましている可能性が高く、星河さんに念のため警戒するよう送っといた。そしたら星の擬人化の了解スタンプがきて、星河さんも仕事モードになってくれていることを願いたい。
◇
「組長、透には本当のこと打ち明けなくてよかったんですか?」
「言ったところで、変わりはないだろう。あっちに夕哉を残したのは意味があるからな」
「すでに夜瀨組の息子が動き出しているってことですよね」
「おそらく動き出している。今回はどっちが本戦かわからない。こっちか、あるいはあっちが本戦か。烏丸の話で状況が変わるだろう」
自分は一度も会ったことがない夜瀨組の息子。組長も実際に会ったことがないから、誰が夜瀨組の息子、つまり次期当主となり組を動かす者が動いているとなれば、自分たちは泳がされていることになる。
組長は立ち上がり、もう会いに行くのかと自分たちは烏丸に接触しに行った。
◇
受験合宿、二日目
朝起きて出ようとしたらなかなか扉が開かず、清寺さんと他二人でせーので押してみた。少し開いて廊下に出てみると、廊下で透が寝ていたのだ。
何やってるのと身体を揺さぶっても、起きようとはせず、多少お酒の匂いがした。透は寝言で陽羽待てと言っていて、全身が赤くなり思わず平手打ちをしてしまう。
そしたらはっと起き上がって、私たちがいることを知り、寝ちまったとノートパソコンを持って、起こしてくれてありがとなと走って行った。
「どんだけ、朝峰さんのことが好きなの。全く。朝食食べに行こう」
他二名は苦笑いしつつ一緒に朝食を食べに食堂へと向かった。しかし食堂の付近では警察官がいて、食堂に入らないでくださいと指示を受ける。
私たちは動転してしまい、どうしようと戸惑っていたら、生徒さんはこっちに来てくださいと言われ、そっちに行くことになった。
気になりすぎてしまうも、違う階で設置されており、ご飯を選んで、席に座る。
「何かあったのか気になるよね」
「警察の人たくさんいたから、事件ってことでいいのかな」
「遺体が運ばれていくところ、男子が見たって言ってた。ちょっと怖いよね」
遺体という言葉に胸騒ぎがして、ちょっとお手洗いと席を外し、透どこと探し回った。探し回っていると警察と話している透で、つい癖で透と声をかけてしまう。
「陽羽、どうした?場所を変えっどどどどうした?」
つい私は透に抱きついて、場所変えるぞと透に引っ張られながら場所を変えてくれる。
「遺体運ばれるの見たって男子が、もしかしたら私のせいなんじゃっ」
「陽羽、それは違う。断じて違うから大丈夫だよ。それに俺がいる以上、陽羽が危険になることはないから安心しろ。事件になってしまった以上、生徒を家に帰らせる方向性でいる。だから部屋で待ってろ。いいな?」
震えが止まらなくても、透の温もりを感じ、少し落ち着いて、朝食を食べた後、部屋で待機することに。
「合宿、中止になっちゃうのかな。せっかく、自由時間楽しみにしてたのに」
「仕方ないよ。こうなってしまったんだし、先生たちは私たちを家に帰らせる方向性で考えてるっぽい」
「賢ちゃんにお土産買ってくるねって言ったのにな。ちょっと残念。朝峰さんは平気?」
「まだちょっと信じられない。なんで食堂で遺体が発見されたのか」
透に聞いた時、何かを隠してた。透はこの事件にもしかして関わってるんじゃないかと考えてしまう。お酒の匂い、夕飯のバイキングにはお酒なんてなかった。
ならどうやってと考えても、思考が膨らまず、このことはお父さんにも伝わってるのかな。すると透が荷物まとめておけと廊下から響き渡り、帰るんだと荷物をまとめていった。
点呼をとり、全員いることを確認して、バスが動き出す。みんなはさっきの件で、少し空気がどんよりしていた。遺体を発見した男子たちは違うクラスだから、直接聞きたくても聞けない。
とても気になると外の景色を見ていたら、透が説明をしてくれる。
「みんなも知っているだろうが、今朝方、みんなが使用する食堂で遺体が発見された。詳細は伝えられないが、合宿は中断せざるを得ない。と思っていたが違う旅館が引き受けてくれることになった。今からそこへ向かってもらっている」
男子たちはよっしゃっとはしゃぎ、女子たちも元気を取り戻したことでよかった。夏休みなのに引き受けてくれる旅館ってどこなんだろう。
透はふふふっと笑い出して、なんだよ伊宮と男子たちが言うと、幽霊ポーズをして驚かしたかったんだろうな。
「その旅館は霊がいるらしいぞ」
みんなはポカンとしまって透の発言にしんと静まり返ってしまった。昔、私はそれで夜寝付けなくて、私が寝るまで一緒にいてくれたな。
懐かしいことを思い出していたら、反応がないから透は段々と恥ずかしくなっていき、席へと着席した。
次の瞬間、みんなは大笑いして、霊なんかいるはずないじゃんと言っている。どんまい、透と言っても、恥ずかしさのあまり顔を出さなくなってしまった。きっと空気を変える為にわざとやってくれたんだ。
◇
警察署から出て、家に帰ろうとしたら夕哉が迎えに来てくれたっぽく、助手席に座った。何があったんだよと言いながら夕哉は車を走らせ、これを言ったら夕哉は乗り込む気がして怖い。
狙いは陽空だとしても、陽空を指名している人が誰なのか突き止めなくちゃ。それでも夕哉に伝えるべきか考えていると、夕哉が聞いてきた。
「破島と接触した?」
「なんで…?」
「いや。なんとなく。あいつ、この街をうろちょろしてたのは、あいつらから聞いてた。夏休み期間も、破島の奴らが紗良を見張ってるかもしれないから、俺の部下を張り付かせる」
「そんなことしなくても別にいいよ。さっき、破島に見せられた写真があって。そこに写っていたのが陽空ちゃんだった…。破島は陽空ちゃんを買いたいという買取主の要望で動いてる。その買取主って誰だか、昏籐組は何か情報持ってる?」
夕哉はこう見えてしっかりと組の仕事はやりこなせているし、それくらい情報は頭に入っていると思いたい。少しして夕哉は思い当たる節を教えてくれた。
「俺の読みだと三人が候補だな。一つは夜瀬組の烏丸、二つは日本に滞在しているマフィア、三つは俺は知らないけどとある宗教団体のお偉いさんだろ。三つ目は玲に聞いてくれるとありがたいかな」
「やばい連中に陽空ちゃん狙われてるだなんて。本人に聞くとしてしも、あたしが探偵していること知ってそうだし、絶対に話してくれなさそう…」
「姉貴、なんか知らないけど、たまに陽空と会ってるっぽいから、姉貴ならなんか知ってんじゃないか?後で連絡入れてやるよ」
ありがとうと夕哉に伝えて、今頃、陽羽は伊豆で勉強頑張ってるんだろうな。あたしも頑張らなくちゃと鞄から守城大学の問題集を取り出す。
そしたら夕哉がそこ受けんのと聞いてきた。
「うん。お母さんと相談して守城大学が受かったら、一人暮らし始めようかと思って」
「もう一人暮らししているようなもんじゃん」
まあねと言いながら、問題集を眺め、夕哉に告ぐ。
「夕哉の大事な陽羽から言われるまで、ひどい状況であることに気づけなかった。中学受験も、高校受験も、あたしは逃げちゃったし、だからせめて大学は一緒に通えたらなって。学部は違ってくるかもしれないけど」
「紗良のせいじゃないって」
「幼馴染なのにそばにいられなかったんだよ。陽羽が障がいを持っていたの、知ってたのにあたしは」
「そんなに自分を責めるなよ。気にしてないだろうし、紗良とどんなに離れていようが、陽羽は今まで通りに接してもらいたいと思う。多少ハンデがあって、助けることはあるだろうけどよ、紗良は障がいを持つ陽羽として見るのではなく、普通に接してあげるのが陽羽のためじゃないか?」
夕哉からそんな言葉をくれるとは思ってもみなくて、気持ちが楽になれた気がする。
「どちらにせよ、俺は応援してる。大学が決まったら、お祝いに無償で靴作ってやるよ」
「ふうん。だったらさ、陽羽とお揃いの靴作ってよ。遊ぶ時に、同じ靴履きたいし」
わかった、考えておくと夕哉は行ってくれて、そこからはくだらない話をしながら家まで送ってくれた。




