89羽
あれから何日かして、藤ちゃんたちは復帰ライブのため準備をしていて過ごす時間は減っていた。私は海星大学に通い始め、理学部の講義を受けている。
学生たちにちらほらと噂が流れるも気にせず、講義を受けていたら後ろから突かれ後ろを振り向く。猫のような瞳をしていて、お洒落な髪型をしている人。えっとどちら様と首を傾げていると、メモを渡されその内容を見た。
藤太郎元気になったと疑問系で書かれてあって、藤ちゃんが再発したことは公表していない。なんでこの人は知っているのと困惑してしまう。
名前も知らない人でどうしようと考え込んでいると講義が終わるチャイムが鳴ってしまった。
「講義終わったね。初めまして、小生は猫田虎次。藤太郎のライバル。よろしく」
藤ちゃんのライバルとなれば芸能界の人でいいんだよね。ここにいない藤ちゃんだから、なんとも言えないけど握手する。
「ねえねえ、この後時間あるでしょ?せっかくだし、お茶でも行かない?」
「ごめんなさい。知らない人とは、その」
「大丈夫だって。ほら行こ」
腕を掴まれまだ片付けてないとささっと鞄に詰め、講義室を後にした。こんなところ見られたら藤ちゃん怒っちゃうと、待ってくださいと言っても、猫田さんは鼻歌を歌っている。
なんとかしたくても、賢介は藤ちゃんたちに付き添ってるし、千花さん連絡しようとも千花さんはあの人の秘書として動いてた。
「猫田さん」
「虎次でいいよ。えっとまずタクシー」
タクシーを呼んでもし夜瀬組の縄張りから抜けたらとタクシーに乗る気にはなれない。それでも何もしないよと腕を引っ張られ結局、タクシーに乗り、目的地を教えた。
「猫カフェに連れてってください」
運転手さんはナビで検索し、そこに向い始めて、混乱しつつ、藤ちゃんにメッセージを送ろうとしたらスマホを取り上げられてしまう。
「返してください!」
「小生の前ではスマホいじるの禁止。言ったでしょ?何もしないから」
「それでも藤ちゃんに報告しなきゃ」
「だーめ。電源オフと」
何度やっても私の顔に手を当て、私のスマホは虎次さんのポケットに入ってしまった。
「そんなに威嚇しなくてもいいんじゃない」
虎次さんは私のおでこにデコピンをして、それがもの凄く痛くて手で押さえる。この人絶対に許さないんだからとそっぽを向いた。
帰ったら藤ちゃんに泣きつこうと決め、猫カフェに到着したのかタクシーが止まる。虎次さんはスマホ決済で会計を済ませ降りてと言われ、渋々タクシーから出た。
猫カフェに入りいろんな種類の猫たちがいて、常連さんなのか別室に案内された場所でも猫がまったりしている。虎次さんが座った瞬間、猫たちが虎次さんのところへといき甘えていた。
よしよしと猫たちと戯れ合う姿に、帰ろうドアノブに手をやるも鍵がかかっている。逃がさないってことなんだと知り、片隅に座った。
「隅っこに座らなくても」
「警戒するに決まってる。虎次さんは何が目的なんですか?」
「目的なんてない。藤太郎が元気なのかを知りたいぐらいかな。藤太郎、こう見えて一人で抱え込むからさ。どんな時でも」
「…藤ちゃんは元気です。復活ライブ開くために準備してる」
やっぱりと私の前にきて目を輝かせ、芸能界というよりこの人は藤ちゃんのファンということでいいのだろうか。虎次さんはよかったよかったと立ち上がり、虎次さんはスマホを取り出して誰かに連絡をし始めた。
何をする気なのと虎次さを見ていたら、通話を終えたらしく店員が紙袋を持ってくる。
「小生たち、部屋出てるからこれに着替えて終わったらノックして」
「ちょっと」
私に紙袋を渡し、ささっと退散する虎次さんと店員。紙袋を確認してみるとそれは猫のコスプレ衣装だった。これ完璧に嫌がらせだよねと扉を開けるもまたもや鍵がかかっている。
きっと藤ちゃんに送って怒らせるパターンだと紙袋を置いて体育座りになり顔を伏せた。
すると着替えたと虎次さんが聞いてくるも返事はせず扉が開く。
「着替えてないじゃん」
着替えられるわけないでしょと顔を上げたら、ぷっと思わず笑っちゃって虎次さんもコスプレをしていた。どうって見せびらかしていて、笑いが止まらない。
「カメラマン待たせちゃってるから、早めに着替えてね」
「カメラマンいるんですか?」
「うん。一応雑誌の撮影だから早めに」
どんな雑誌の写真撮影なのと思うも、カメラマンを待たせちゃったら迷惑かけると思い、虎次さんが部屋を出たところで着替えることに。
着替えたはいいものの恥ずかしさがあり、これ絶対藤ちゃんに見せられない状況だった。着替え終わりましたと顔だけ出すと女性のヘアリストがメイクをやってくれる。
カメラマンはいいねとグッジョブサインを出して、カメラマンに言われた通りに虎次さんと一緒に動いた。
後で虎次さんの詳細を検索するとして、できれ藤ちゃんと写りたかったな。いくつか撮ったところで休憩が入り、今度は違う衣装で撮影が入るっぽい。
メイクを一旦落としてもらい、次の衣装は猫のコスプレではなく、ファッション雑誌に載るような服を用意してもらった。しかも靴が夕哉さんのお店だったからびっくりしちゃう。
夕哉さんがこれ知ったら後々なんか言われそうと思っても、それに着替えて靴を履き、メイクと髪型もセットしてくれる。
今度は猫と戯れ合ったり、虎次さんと楽しく談笑してる風にと言われ、絶対に無理と思っても、虎次さんが笑わせてくれたのだった。
バッチリとカメラマンにお褒めの言葉をもらい、撮影は終了となる。虎次さんがありがとうと私に飛びつこうとするから、避けると虎次さんは壁に激突した。
「いたたたた。小生のわがまま聞いてくれてありがとね」
「これいつ出るんですか?」
「それは秘密。さてそろそろお迎えが来るかな」
虎次さんがそう言うと虎次と大声で叫ぶ純連の声が聞こえた。来た来たと虎次さんは言っていて、純連が目を光らせながら私を引き寄せる。
「何もしてねえだろうな?」
「してないけど、撮影には協力してもらった」
なっと純連はカメラマンを探すも、カメラマンはすでに撤退をしていた。
「可愛い写真いっぱい撮ってもらったから、出来上がり次第送ってあげる」
「送らなくていい。藤が暴走するに決まってんだろ。陽っちゃん、帰ろう。こいつといたら何するかわからない」
そう言わずにさと言うも私を引っ張っていて、待って純連と止まってもらう。
「虎次さん、スマホ返してください」
「はい。また写真撮ろうね」
結構ですとスマホを取り返し店を出て、純連が乗ってきたタクシーに乗り家へと向かった。
「後であのカメラマンとっ捕まえておかないと」
「虎次さんって一体何者なの?藤ちゃんの病のこと知ってたし」
「あぁ。俺らのライバル関係で張り合ってたんだよ。Wizuteria活動休止にした時、根掘り葉掘り聞かれてさ。それで少し教えただけ。本当にあいつから何もされてない?」
「うん。ごめん。成り行きで参加しちゃった」
いいよと私の頭を撫でる純連で、藤ちゃんにこのこと告げるか聞いてみる。
「藤ちゃんには?」
「言ったら陽っちゃん、外に出さないかもしれないから、様子見て俺から話すよ。それにしてもなんで虎次が陽っちゃんのこと知ってたのかが不思議だ。また接触する可能性があるから、あの人には報告しておく」
「ありがとう、純連。復活ライブの準備は順調?」
「順調だよ。それに陽っちゃんとの婚約発表もするから、見守っててあげて」
復活ライブに婚約発表。ファンはどんな気持ちでいるのかはわからずとも、決定事項だからその日は藤ちゃんのライブを見届ける。私も緊張してきたなと感じながら、少し気になっていたことを打ち明けた。
「この前のNoveの動きってあれからわかったの?」
「いや、何も収穫は得てないって親父から聞いてるから、陽っちゃんも十分に気をつけて」
「うん。気をつけるね」
あれ以来、Noveの人たちは現れずとも、何かが起こりそう不安になりながら、藤ちゃんがいる事務所へと向かう。
◇
猫と戯れ合いながらさっき撮ってもらった写真を見ていて、これが噂の春の太陽ねえ。なんというかいじり甲斐があって、もっといじってたかったな。アルバムにして藤太郎に送ろうか迷っていると、部下から報告を受ける。
シルバーウルフのボスが入院している病院突き止めましたと報告を受け、監視を続けろと送る。まあどの道、シルバーウルフのボスは、春の太陽の存在を忘れているから好都合。
後は昏籐組と夜瀬組を潰せれば一番いいけど、簡単にはいかない。そうとなれば奥の手使うかと背伸びをして、電話をかける。出るかなと鳴らし続けると出てくれた。
「夕佑の出番が出てきた。家に帰ってさ、夜瀬組を潰すよう仕掛けてくれる?」
『夜瀬組を潰しても、紫蛇組が残る。それはどうする?」
「蛇は小生がやるからいい。じゃっよろしく」
夕佑に伝え猫を抱え、さっきの写真を春の太陽に送り、仕事へと向かうことに。
◇
藤ちゃんたちが練習している姿を見ていたらスマホが鳴り、誰だろうと確認したらアルバムが届きましたと通知を受ける。まさかと恐る恐るタップした。
いつの間に連絡先入れたのよと思いながら、さっき撮った全ての写真が入っている。削除したとしても見ているのか、再び送られてきて消しても無意味だよと送られてきた。
ムキッとなってしまい、連絡しないでと送るも既読スルーされてしまう。
やり取りをしていたことで藤ちゃんが目の前にいるのに気づかず、スマホをチェックされた。純連がフォローする前に、何これと私に言い出す。
「何これ?」
「それはその…」
「藤、落ち着け。陽っちゃんは虎に無理やり」
「純連に聞いてない。陽っちゃんに聞いてんの。ねっ迂生の許可なく、他の男とツーショットって何?」
藤ちゃんやっぱり怒っちゃって、正直に藤ちゃんに報告する。
「講義中に虎次さんが話しかけてきて、藤ちゃん元気って言われたの。それでなぜか講義終わって猫カフェに無理やり」
「なんで断らなかったの?」
「断ったし連絡しようとしたの。そしたらスマホ奪われて、連絡できなかった」
藤ちゃんはドンッと壁につき、鋭い目で私を見て怒りを抑えていた。藤と純連と想が止めようとしていて、藤ちゃんを落ち着かせるにはと勝手に口が開く。
「藤ちゃん、怖かったっ。何かされるんじゃないかってっ」
恐怖を出し藤ちゃんは我に返ったかのように、怖かったねと私を包む藤ちゃん。二人はほっとしていて、私は藤ちゃんにしがみつく。
「講義に集中できなくなる。藤ちゃんどうしたらっ」
「接触させないように、お父さんに手配させるから陽っちゃんは心配しなくていいよ」
藤ちゃんとしばらくこうしていて、今日は一緒に帰ることにした。
ふうっと藤ちゃんの機嫌が悪化しなくてよかったと、部屋へと入り机に置いてあるノートパソコンを開く。猫田虎次と検索をしどんな人なのか調べてみた。
ソロシンガーをしていて、藤ちゃんと同じ時期から活動を始めているらしい。それに何度か藤ちゃんとドラマや映画で共演をしているようだった。
藤ちゃんのドラマや映画は全て見たけど、虎次さんいたっけと過去作品でキャストを調べていくと本当にいる。
だから藤ちゃんのライバルって言ってたんだと理解し、あの写真はただの遊びじゃないのはなんとなく感じてた。絶対に雑誌とかになったら、きっと夕哉さんや真昼くんたちの目に入る。
ついもらった写真を見て、虎次さんに確認しようと思ったけどやめといた。
お風呂でも入ってリラックスしようと画面を閉じ、お風呂に行こうと扉を開けたら、想がなぜか行ったり来たりしている。
「どうかしたの?」
声をかけるとはっと立ち止まってもじもじしながらも、陽っちゃんお願いと子犬のような瞳でおねだりしてきた。
「藤、あれ見てまだ拗ねモードに入ってるから、藤が喜ぶようなことしてあげてほしい」
「喜ぶようなこと?」
うんうんと頷いていて、藤ちゃんが喜ぶようなことってなんだろう。廊下で考えていると賢介がやって来て、事情を聞いたらしくある雑誌を見せてくれた。
それはフォトウエディングの雑誌で、なるほどと閃く。
「それ持って藤太郎と相談してみたら?きっと機嫌もっと良くなるよ」
「ありがとう、賢介」
頑張ってとなぜか想に言われ、藤ちゃんの部屋に入ってみた。藤ちゃんはソファーに寝っ転がってクッションを抱きしめている。藤ちゃんと声をかけると拗ねた顔で、みないでとクッションで顔を隠してしまった。
隣座っていいと聞いてみると空けてくれてそこに座るも、藤ちゃんはクッションを下ろそうとはしない。
「藤ちゃん、これ見て欲しいの」
少しだけ顔を出しほら見てとフォトウエディングの雑誌を見せた。
「今度、フォトウエディング撮りに行かない?」
伝えてみると見せてとクッションを膝の上に乗せ手を出すから渡してあげる。藤ちゃんの部屋に入ってこない二人はその場で様子を見ているようだった。
いいかもと言ってくれて、藤ちゃんの予定を確認しながら、どこのお店で撮ろうかと話していくことに。
◇
ただいまと帰宅すると見慣れない靴があり、客がいるのかと靴を脱いでいたら、若大変ですと舎弟たちが馬鹿でけえくらいな声で言われた。
「いきなりなんだよ」
「とにかく居間に入ってください!」
舎弟に背中を押され居間へ入る寸前、親父の怒りが伝わるぐらいの勢いだ。舎弟が慌てているのはこれかと、夕哉入りますと告げ襖を開けた。
そこには知らない男であっても、姉貴たちは知っているような顔立ち。だが誰一人喋ろうとはせず、この空気はどうすりゃあいいんだと思ってしまった。
すると知らない奴が、微笑んでお帰り夕哉と言われ、ただいまと言おうとしたら、お袋が俺の腕を掴み居間を出る。
「お袋?」
「夕哉、いいと言うまで部屋にいなさい」
「なんで?」
「いいから」
疑問があるもお袋が言うもんだから、部屋で待機することにした。俺のことを知っていたとしても、俺は知らない。考えられるとしたら、兄貴とふと思うも、兄貴だったら絶対に歓迎するはずだ。
だから知らない奴なんだろうなと靴の雑誌を見ようとしたら、大きな音がこの家中に響き渡った。
なんだと部屋から出てみると、組長落ち着いてくださいと舎弟たちの声が聞こえる。気になって居間に戻ってみると親父は知らない人を押さえていた。そして床にはナイフが落ちてい、誰かの差金かと思ってしまう。
「親父」
「夕哉は部屋にいなさい!」
「けど」
そしたら姉貴が襖を閉めて部屋にと言われ、なんで俺には教えてくれないんだとイライラしてしまった。それを察しした姉貴は俺の背中を押して部屋へと戻す。
「姉貴」
「おとんが押さえていたのは、あたしたちの兄、夕佑。夕佑が言った言葉に、おとんは怒ってるの」
「怒る理由って?」
「夕哉を下ろして、自分が若頭になりたいと。おとんが押さえた時にナイフが出てきて」
そう言うことかと納得し、帰ってきたと思えばそんなことを言うから、親父は激怒したのだろう。あれじゃあと俺は再び居間へと行き、親父話があると伝えるも、親父は部屋にいろと言われるばかりだ。
「親父、Noveと関わりを持ってる。何しに来たのかは知らねえけど、情報は持ってるんじゃねえのか?」
それを告げてみると情報を提供するからと夕佑が言い、半信半疑で親父は夕佑を離した。ありがとう、夕哉と感謝を言われ、情報をもらうことに。




