87羽
俺は一度VIPルームを出て、透がいるから大丈夫だと思うが、早めに戻ったほうがよさそうだな。若、いいですかと組員に言われ、いいわけないと伝える。厨房で仕込みをしている鶫は顔を出さないようだ。
「会わなくていいのかよ」
「会ったとしても今は春陽を救うことはできない。せめて我が輩の料理を味わってもらえたら十分だ。それで藤太郎は元気になったのかい?」
「思っていた以上に元気だった。昼秋さんにこのこと告げてほしい。それから冬月と雪にも」
「伝えておくが、春陽に本当のこと言わなくていいのかい?」
鶫に言われ春陽に打ち明けるかどうかは、俺に任せられている。ただ今の現状で伝えたとしても、春陽を困らせるだけだから、もう少し様子みてからにしよう。
「いや、まだ話すつもりはないよ。言ったところで困惑させるだけだし、それに今は」
言葉を積もらせ、それを察しした鶫はほれっと俺の前にイチゴタルトを置いてくれる。
「夕哉がぐずぐずしていると、春陽は藤太郎にとられてしまう。それに春陽が戻って来たって知らせが入れば、真昼も動くはずだ。先を越されないように」
わかってると人数分のいちごタルトを持ち、VIPルームに戻った。そしたらお前ら何してんだと呆れるほどで春陽がめちゃくちゃ引いてんじゃねえかよ。
藤太郎は翠と、純連は透と、想は疾太と歪み合っていてやめんかいと六人に拳骨を与えた。
「なぜ俺がいなくなった隙に歪み合ってんだよ。春陽が引いてる」
だって翠たちがと指を指しながら言う藤太郎で、指差さないと純連と透が指摘している。ドスンと六人が座り春陽に鶫の苺タルトだよと伝えたら、パッと花を咲かせ美味しそうに頬張った。
それをみた藤太郎は目を光らせ鶫今すぐ呼んでと言われるも、無理だとはっきり言わせてもらう。
「鶫は空の上だから会えねえよ。これは鶫チェーン店で組員が買って来たやつ」
「ふうん。まあモノクロ男には用ないからいいや」
今頃グサッと刺さって倒れてそうな予感がするも、鶫が今会うべきじゃないって言ってたからそこはフォローしといた。そろそろまるが来るか分からずとも、苺タルトを頬張っていたら、若と光太が焦りながらやってくる。
「夜瀬組が抗戦し始めて来ました!」
「玲には?」
「報告済みです。しかも夜一がいるそうで」
あの裏切り者を排除せよと直々に言われてるが、俺は排除ではなく警察に差し出す派だからな。
「透、ここは任せた。光太、行くぞ」
行こうとした時、待って夕哉さんと春陽の声がかかり後ろを振り向く。陽っちゃん、めって藤太郎が言っているも、俺の前に来て教えてくれた。
「夜一くんが変わっちゃったのは私のせいなの。あの日、私が鯨波邸に行ってその翌朝。夜一くんが来てくれた」
「あぁそういや来たな。途中で千夏と夜一に巻き込まれたけど」
「その時、夜一くんが後ろに来て伝言メモを渡したの。内容は鯨波さんが病であることを伝えてもらうように」
だからか、夜一が鯨波邸に仕掛けようよと提案を持ちかけたが、実際、夜一は夜瀬組として俺らに攻撃してきたな。
「なんでなのか分からない。ただ烏丸さんが言ってたの。その日、私のお父さんと接触したって。お兄ちゃんが消えたわけもお母さんと接触したからなんじゃないのかな」
確かに春陽の実母にはあったけれど、鯨波邸を奇襲するっていうのは夜一自身が持ちかけた話。だから春陽の両親が悪いとは思えない。
それから実際、冬月は雪と一緒にいるが、どこにいるかはまるぐらいしか知ってはいないからな。
「まあ確かに俺らは春陽のお袋には会ったけど、そんな計画は立てていなかったし、そう仕掛けてきたのは夜一だ」
春陽の親父さんは会ってはいないが、なぜその伝言メモが関係しているのか。すると純連がなるほどなと言い出す。
「通りでこっちの読みが読まれていたってわけか。夜一が帰って来たら話してみるしかなさそう。俺、先に帰るから気をつけて帰って来い」
そう言って純連は先に帰って行き春陽は少し悔いている表情だった。なんとかして春陽を元気づけさせようとしたら、藤太郎が言い出す。
「なんか状況読めないけど、夕哉、夜瀬組のところへ連れてって」
「は?」
「いいからいいから。迂生がいればなんとか抗戦は落ち着くんじゃない?」
「純連がいないのに危ないところ勝手に行かないって約束」
平気だよ、想と藤太郎は立ち上がり、連れてってと言われ、少し迷いがあるも藤太郎を連れて、抗戦が起きている場へと急いだ。セライヴニから比較的近いところで抗戦が起きていて、夜一は倒した組員の上に乗っていた。
夜一と藤太郎が声をかけていて、それに気づく夜一は驚きつつ夜一を殴ろうとしている組員を殴って止まれと夜瀬組の攻撃が止まる。
「何、藤太郎と連んでるわけ?」
「迂生が連れてって夕哉にお願いしたんだよ。夜一、迂生はこんなこと望んでない。だから組員連れて去ってよ」
「それは俺様が決める。それにさ、藤太郎はあの人の息子だけであって、なんもしてなくただ音楽活動してるだけじゃん。俺様はあの人の指示で動いてんの。藤太郎の指示で動いてるわけじゃねえんだよ。怪我したくなかったら帰れ」
藤太郎は夜一に言い返せずにいて、そんな言い方しなくてもいいのによ。
「あぁなんかやる気失せた。てめえら、藤太郎が来てるから解散」
夜瀬組は藤太郎に一礼して去って行き、大丈夫かと倒れている組員を起こしていく。藤太郎は拳を作って我慢していて、その拳が春陽に当たらなければいいなと恐れていた。
セライヴニへと戻り、救急箱で待機していた組員が手当をしていく。藤太郎は夜一に言われた言葉が刺さったのか一言も喋ってこなかった。
「藤太郎」
「せっかく呼んでくれたけど、今日は帰らせてもらう」
「…気にすんな」
小さくうんと頷きVIPルームに入ると、なんとまるがいたのだ。
「まる、来てたのか」
「ちょうど来たところで、組員にVIPルーム入れって言われた時は驚いたや。春陽ちゃんがおるんやもん。藤太郎、体、もう大丈夫なん?」
「平気…」
「どないしたん?元気ないんやけど」
ちょっとなとどうすると再度聞いてみると、春陽の横にちょこんと座り、冷めたフライドポテトを頬張る。
「そういや、翠と疾太は?」
「バイトの時間になったから帰った。俺も仕事に戻るよ。春陽またな」
またと春陽が言い透も仕事に戻って、春陽がまるに聞いた。
「お兄ちゃん、どこにいるか知りませんか?」
「冬月?あっそうやったね。今はボスとおるから心配はいらへんよ。鯨波邸の一件もそうやけど、他にもあってなぁ。心の傷が癒えてへんのや」
「心の傷?」
「そうや。夕哉、あれ話しておらんの?」
いやと伝え、まるは伝えるべきか迷っているようで、何があったのと想が尋ねる。まるは一瞬俺をみるも春陽たちに告げた。
「ボスが意識不明の状況でもう半年も起きておらへん」
「半年前…」
「その時まだ某たちがアジトとして使わせてもらっておってな。地響きが来た時すぐ家から出よったんよ。けど冬月が何かを思い出して引き返してしもうた。ボスは冬月が危険だと感じ、追いかけてしもうて。そんで二回目の地響きで地震が起きよって家ごと流されてしもうた」
「俺はその場にいなかったから、状況は読めてなかったけど、真昼が言うに絶望的だったらしい」
春陽はそれで雪とお兄ちゃんはとまるに聞いてみると、教えられへんとまるは言う。
「教えられへん。けど二人とも元気やで。心配しなくても大丈夫や。冬月に伝えたいことがあるなら、某から伝えるで」
本当は直接、冬月に会って話をしたかったんだろうなと思う。藤太郎が春陽の手を握り伝えてもらおうと提案をした。うんと少し落ち込んでいる春陽であってもまるに伝える。
「お兄ちゃんに伝えてほしい。私と藤ちゃん、婚約して近々式を挙げることを」
「そう言うことだから、陽っちゃんのことは諦めてよ」
さっきまで藤太郎も落ち込んでいたのに、俺の顔を見て冷たい笑顔を見せられた。なんか腹立つと思っていても、まるは冷静で伝えとくでと言う。
「じゃあ迂生たちもそろそろ帰ろう。ねえ夕哉、想のお願い聞いてよ」
「わかってるよ」
春陽たちを連れて店へと戻って、想の願いを聞いてやることにした。
◇
春陽ちゃんたちが帰ったことで、深いため息が出ながら深くソファーに座り直したや。あの日、夜一が鯨波邸に乗り込もうと言った日。某は猛反対したんや。それでもボスは今がチャンスかも知れへんと思い込み、乗り込んだ結果。
それは嘘だということがはっきりした時は手遅れやったんや。死者を多く出しその死者がほとんどシルバーウルフの構成員。
抗戦が終わった時のボスの顔は目に焼きついておって、その表情は狼のような怒りの瞳やった。そして夜一があっち側についたことで、怒りはしばらく続いたんや。
ハス喫茶のこともあり、そこは気を遣って真昼がなんとか店を回してくれているから大丈夫やとしても、失った代償は大きくボスはアジトから出ることはできへんかった。
いわば引きこもりで、小雪はんも心配するも、八つ当たり。あの姿を雪恋ちゃんに見せれへんということで、昼秋はんの家にいてもらってるっちゅうことや。
そんで某がなぜセライヴニにちょくちょく来ているのかというと、息が詰まり来てるっちゅうこと。ボスのそばにいたとしても、何もできへんし、目を覚ました時が少し怖いということもあるんや。
冬月に伝えなきゃあかんし、帰ろうと立ち上がって、帰ろうとした時のことや。小雪はんが来よって、まる大変と言いよるから恐れていたことが起きたかも知れへん。
ボスが入院しておる病室へと行ってみると、そこには冬月もおった。そしてボスは目を覚ましているも、少し様子がおかしかったんや。
「ボス、ボス某のことわかるん?」
聞いてみるもぼーっと某を見ていて、重症だということが判明する。そしてボスの口が開き、言ったんや。
「昼兄」
「昼秋はんは?」
「まだだけど、すぐ来てくれるって言ってた」
「昼兄はどこ?僕の人形」
人形ってと口元を手で押さえ後退り、ボスが幼くなってしまったと理解した。ということは小雪はんも雪恋ちゃんのことも覚えてへんということか。
「ボス、某のこと覚えてへん?」
「お兄さん誰?」
どないしよう。まるやと認識してへんくて、その一方冬月は違かったんや。冬月を見てボスが笑顔になる。
「星霜さんがいる。こんにちは」
それでつい冬月は笑いを必死に堪えていて、笑うところじゃないとバシッと叩いたんや。この状況、どう説明すればええんか。
冬月はボスに寄り添い、久しぶりだね、雪昼くんと言い寄って、とにかく冬月に任せて、小雪はんと一緒に病室を出よった。
「どないします?」
「シルバーウルフのボスがあの状況だと知れたら、最悪な状況になるかも知れない。ねえ雪昼が言っていた人形って?」
「昼秋はんがボスが小さい頃にあげたハスキーのぬいぐるみなんや。トランクルームにまだあると思うやから行ってくる。何かボスが欲しいもの言ってたら連絡してや」
お願いと小雪はんに言われ、この状況伝えるべきか分からずとも、グループチャットを開き、ボスの状況を説明しといたんや。タクシーに乗って借りているトランクルームの場所へと急ぐ。
到着し鍵を開めちゃくちゃ埃まみれになっておるハスキー犬のぬいぐるみを見つけよった。これちゃんと洗ってからのほうが良さそうやとケホケホし、後何か持って行けるものはないか探したんや。
するとまるへという文字を見つけよって、なんやろうと手にする。中身を出しそこには春陽ちゃんがつけておるペンダントやった。
まるへ
もし僕に何かが起きた時に、まるがこれを管理しておいて欲しい。
すでに冬月の両親が復活したから、春陽のペンダントは不要かも知れないが、念のためだ。
あの時、まるの意見を聞いてやれなくて、本当にすまないと思っている。
あの人が弱まっていれば春陽を救えるのではないかと思ったことで、夜一の意見に賛同してしまった。
本当に僕は情けないと感じるも、まるはそれでも僕から離れずそばにいてくれたこと感謝する。
管理方法はまるに任せるが、要注意しておいてほしいことがあってな。
ペンダントはUSBとなっていて、一度中身を拝見させてもらったが、長時間見ていると自動的に削除されるから注意しろ。
それから春陽が帰って来た時、プレゼントを用意してある。青とオレンジの包みを春陽に渡してほしい。
どれやろうと漁ってみると青とオレンジのストライプ柄の包みを見つけたんや。これかと手紙の内容を確認する。
春陽はおそらく最悪な状況で日本に戻ってくるだろう。本当はこんなの送りたくはないが、渡してくれると助かる。
中身が気になるもちゃんと渡すでと、最後の文面を見た。
いつも僕のそばにいてくれて感謝する。迷惑をかけるが、春陽や小雪たちを頼むぞ、迅。 雪昼
いつもまるまるで某の名前忘れてるんやろうなって思ってたやけど、やっと名前言ってくれたや。涙が出そうやと腕で拭き取り、某の箱に一応ペンダントをしまっといたや。
どれくらい時間がかかるとしても、ボスを元通りにして、一緒に春陽ちゃんを救う。
そのためにもまずはこのぬいぐるみとボスが喜びそうなおもちゃ買わないと行けへんな。構成員にこのことは言いづらいんやけど、ハスキーのグッズを至急集めてもらうよう一斉送信したや。
そしたら真昼から着信が入り、シャッターを閉め鍵をし、真昼がどうしたのと聞かれたや。
「説明は病院に行ってからのほうがえぇと思うやけど、ボスが起きたんや」
「なら店任して様子見に行ってみるね」
「覚悟しといたほうがえぇよ」
わかったと真昼は嬉しそうに言っているも、見たらショックを受けそうやな。これから忙しくなりそうやとハスキーのぬいぐるみを持って一度帰って洗いに行ったんや。
◇
雪叔父さんが目を覚ましたって言われて、お見舞いにハス喫茶で売り始めたクッキーを持って病院へと向かった。まるさんは覚悟しておいたほうがいいって言ってたけど、どういう状況なんだろうか。
病院に到着し雪叔父さんの病室へと向かっていると廊下には、父さんと小雪さんがいるも小雪さんが泣いていた。
「父さん」
「真昼、今日は入らないほうがいい」
「どうして?」
「幼少病と言って言わば自分がまだ幼いと認識している障害。雪昼の場合、強い感情の関係で昔の雪昼に戻ってしまったことで、今までの記憶が思い出せない。そこで真昼が現れたら、混乱する。今は雪昼のために我慢してくれ」
それって治るよねと父さんに聞くと分からないと言われてしまい、ボトっとクッキーの袋を落としてしまう。
「冬月さんは?」
「冬月と春陽の父親と認識しているらしいから、今寄り添ってもらってるよ」
僕も寄り添いたい気持ちがあるも、今日目を覚ましたこともあり、あまり混乱をさせたくはない。落としてしまったけれど、袋についた埃を払い、父さんに渡す。
「これ、雪叔父さんに渡して」
「渡しておく。小雪は付き添うから、雪恋の面倒見てあげてね」
はいと父さんに返事をして、病院を出るも、受け入れられなくて、春陽ちゃんに会いたいと立ち止まり嗚咽する。災害が起きていなければ、こうなることもなかったと涙を零していたら、真昼くんと声をかけられた。
そこには夕哉のお姉さんである夕莉さんで、光希を連れている。僕が泣いていることで夕莉さんは僕の背中を摩り、座ろっかとバス停のベンチに座った。
「何かあった?」
「雪叔父さんがっ」
「大丈夫、雪はきっとよくなる」
僕はしばらく涙が止まらず、止まるまで夕莉さんは僕の背を摩ってくれる。
落ち着いたことで、恥ずかしいところ見せてすみませんと謝った。
「いいのいいの。夕哉もよくわんわん泣いてたし、今だって泣いてるわよ。夕哉から聞いたけど、春陽ちゃん、今日日本に戻って来たみたい」
「そう、なんですね」
「冬月に話したいことがあるって春陽ちゃんたちが嗅ぎ回ってるけど、夕哉は情報を与えなかったそうよ。雪がこの病院で入院していることも」
「春陽ちゃんがあっち側の人間だから詳しく教えなかったんですよね」
そうみたいと夕莉さんは言っていて、夕哉はすでに春陽ちゃんと会っているのが羨ましすぎる。
「夕莉さん、一つ頼んでもいいですか?」
「何かしら?」
「春陽ちゃんに会いたいからハス喫茶に来てほしいって。もちろんうざいあいつらもついて来て構わないからって」
「連絡先、夕哉知ってるのか分からないけど伝えとくわね。そうだ、真昼くん」
夕莉さんは何かを思い出したかのように、僕に教えてくれた。
「少し落ち着いてきたらアルバムとか見せて、こんなことがあったんだよって教えてあげればいいんじゃない?」
「逆効果にはなりません?」
「それはやってみなくちゃ分からないでしょ?」
夕莉さんの提案がうまくいくかわからずとも、やってみますねと夕莉さんに伝え、僕はハス喫茶に戻ることにした。
◇
久々に疲れたーとベッドにダイブし、夜一に言われた言葉が気に食わなかった。やっぱり迂生、お父さんの後継者になったほうがいいのかなと天井を見上げる。
陽っちゃんはそんなこと望んでないことはそばで感じてたけど、陽っちゃんの心に迷いが存在していた。
退院してからのデートで、陽っちゃんの瞳は夕哉のことや元カレのことを考えていて、ちっとも楽しそうじゃなかったな。陽っちゃんが迂生のことだけを考えられるように、やっぱりやろうと起き上がると陽っちゃんが入ってくる。
陽っちゃんは迂生のベッドに座り、一日お疲れ様と陽っちゃんの笑顔を見た。
それでも陽っちゃんの笑顔はぎこちなくて、無理して笑顔作らなくていいよと抱きしめてあげる。
「陽っちゃん、無理して笑顔作らなくていいよ。今日はお互い疲れたから早めに寝よ。ね?」
「藤ちゃん、お願い。藤ちゃんはお義父さんが築き上げたものを背負わないで」
「陽っちゃん…」
「藤ちゃんがそれを背負うなら、私は何がなんでも藤ちゃんから逃げるから」
陽っちゃんが強く迂生の服を掴んで震えていることを知る。迂生はまじかでお父さんを見てきたわけじゃないから、どんな人なのかもわかってはいない。いつも迂生の前では優しい人だったとしても、迂生がいない場では恐ろしい人なんだろう。
陽っちゃんは迂生が知らないお父さんを見ているから、迂生がそれを受け継いだことで恐怖が倍となる。
陽っちゃんの背中をポンポンと叩き、約束するよと陽っちゃんに伝えた。
「迂生は陽っちゃんが嫌がることは絶対にしないよ。迂生は今まで通りWizuteriaとして活動していくから安心して」
「本当に?」
「本当だよ。陽っちゃんに隠し事しない。だから陽っちゃんも隠し事は絶対にしないでね」
うんと陽っちゃんは言ってくれて、軽くキスをして、おやすみと陽っちゃんを部屋から出す。少しして純連と想に岩ちゃんが入って来た。
「んでどうする?」
「陽っちゃんに気づかれない程度でやる。そのことお父さんに報告して。帰って来たばかりでもう寝たい」
「了解。お腹だして寝るんじゃねえよ」
寝ないよと言いつつも岩ちゃんと想は笑っていて、もう出てってと伝えお互いおやすみと言いながら電気を消して就寝することに。




