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86羽

 桜が舞う季節となり、東京に戻って来た私たちであって、藤ちゃんは再発の病を無事に克服し元気を取り戻した。藤ちゃんが早く早くと私たちを急かし、待ってよと追いかけて藤ちゃんの手を繋ぐ。

 一年半が経っているも、私には情報をくれなかった純連たちで、何も起きていないことをひたすらに願っていた。


 空港から出ると千花さんが待っていて、藤ちゃんの元気な姿を見てほっとしているようだ。


「千花ちゃん、ただいま」

「お帰りなさい、藤、それから春陽ちゃんたちも。あのお方がお待ちしてます」


 車に乗り全員乗ったことで、千花さんがエンジンをかけ出発する。藤ちゃんは鼻歌を歌いながら私の手を握っていて、上機嫌すぎていた。


「早く歌いたい。岩ちゃん、これから忙しくなるよ」

「まだ安静にしてろって言われてるだろ。もう少ししてから。仕事はもらっておくからさ」

「早くファンの人たちに元気になったこと教えたいから早くね。純連も想も、準備忘れないで」


 藤ちゃんがこんなに元気に鳴るのは嬉しいけど、お兄ちゃんたちが少し心配だ。後で許可とって家の様子見に行かせてもらおう。時差もあり着くまで私たちは睡魔に襲われた。


 


 到着したらしく目を擦り車から降りたら、何これと唖然としてしまうほどだ。なぜなら鯨波邸が崩壊しており、鯨のアートも辺な形へと変わっている。

 つい藤ちゃんの服を掴み、大丈夫だよと藤ちゃんは私の手を握ってくれた。


 千花さんについて行き、鯨波邸の反対側を歩き出す。純連たちが何も言わなかったのは激しいことが巻き起こったことで、心配を増やしたくなかったんだと知る。

 なぜならアメリカについてすぐに藤ちゃんは生死の狭間にいたからだ。


 少し進むと以前よりは小さくなってしまった鯨波邸が存在し、今はそこに住んでいるらしい。中に入り中庭にあるロッキングチェアに座っている鯨波流史郎が本を読んでいた。

 お父さんと藤ちゃんが声をかけ、鯨波流史郎は本を閉じ、おかえりと言う。しかし立ちあがろうとするも、うまく立てなさそうで千花さんが支え立たせた。


「お父さん?」

「平気だ、藤太郎。千花、杖を」


 千花さんは杖を渡しそれを使って、部屋で話そうかとゆっくりと歩き出す。部屋へと入りそれぞれ座って、千花さんはみんなの分の飲み物を持ってくるようだ。


「藤太郎、伝えておかなければならないことがある」

「何?」

「私はもう長くはないということだ。そこで私が築き上げたものを藤太郎が受け継いでもらいたい」

「家族だから?」


 そうだと鯨波流史郎が言っていて、藤ちゃんは少々悩んでしまう。鯨波流史郎がやって来たことは裏社会を動かす人間。それを藤ちゃんに務まるとは私は思っていなかった。

 純連たちはそれを望んでいるわけじゃないのに、藤ちゃんがやると決めたら支える。


「んーもう少し考えてもいい?」

「構わない。純連たち席を一度外してくれるか?」


 はいと純連たちが席を立ち、私もと立とうとしたら春陽は残れと言われ座り直した。純連たちと千花さんも席を外したことで、鯨波流史郎に聞かれる。


「藤太郎、春陽、二人の関係を教えてもらおうか」


 私と藤ちゃんは顔を見せ合い、お互い顔が赤くなっていて、藤ちゃんが話を逸らそうとするも、どうなんだと言われてしまった。


「純連たちから聞いてるんじゃないの?」

「本人二人から報告はもらっていない」


 藤ちゃんが照れくさそうにして恥ずかしそうにしているから、私が報告を上げた。


「お義父とうさんを裏切るようなことはしていません。これが証拠です」


 私の左薬指を見せ、藤ちゃんからのプロポーズを受けたことを示す。


「ならば復帰と婚約したことを公にし、私が生きているうちに式を上げろ」


 無茶振りなことを言う人だと思っていても、藤ちゃんはそのつもりでいるようだった。


「そのつもりだよ、お父さん。それで一つ許してほしいことがあるんだけど」

「なんだ?」

「その順序って言うものあるでしょ?絶対却下って言われるかもしれないけど、陽っちゃんのお兄さんに報告しに行ってもいいよね?」


 藤ちゃんが言うと鯨波流史郎は黙ってしまい、日本にいなかった期間にお兄ちゃんに何かがあったんだと理解する。そうだとしても鯨波流史郎はよかろうと許可が出た。

 意外だった。てっきり会うなって言われると思っていたのにな。


「行ってもいいが驚かないことを勧める」


 どう言うことなんだろうと疑問に抱きつつ、少し休むと言われたことで寝室まで寄り添ってあげ、眠ったのを確認し純連たちと合流する。


「報告したの?」


 ニヤニヤする純連でうん、したよと笑顔で言う藤ちゃん。


「ねえ純連、お兄ちゃんのところに行くんだけど、さっきお義父とうさんに言われて。驚かないことを勧めるって言われたの。何か知ってる?」


 あーっと純連と想に、健介が言うから何なにと藤ちゃんが聞き返す。すると想にあることを言われた。


「直接、家に行って確認したほうがいいかもしれない」


 余計に気になるも許可が出たことで、ばれている星霜家の家に訪ねることに。もうアジトとして使わなくなったのかは定かではないけれど、まだ雪たちいるのかな。

 あんな形で別れてしまったから、私を憎むかもしれないと感じる。




 星霜家に到着するもそこは更地となっていて、売り出し看板が立っていた。てことは実家のほうにいるのかなと住所を教えて行ってみるも、そこも更地となって売り出し看板が出ている。


「あれ?おかしいな。舎弟から聞いた時はまだあったらしいんだけど」

「催花に連絡してみる。ちょっと待ってて」


 賢介は何度か日本と行き来して催花ちゃんと会っていたらしいから、何か情報を持っているのかもしれない。


「あっ催花。うん、俺だよ。あのさ、今陽っちゃんの自宅前にいるんだけど、二つとも更地なんだわ。うんうん、えっわかった。ありがとう。後でそっち行くな」 


 何か掴んだらしく、通話を終えた賢介から言われた。


「半年前、山崩れで二つの家が潰れたらしい」

「お兄ちゃんは?」

「いや、催花が言うに山崩れが起きて以来、姿を見せてないってさ。それと真昼たちも姿を見せてないっぽい。ただ夕哉は普通に営業してるらしい。そっち行ってみる?」


 お兄ちゃんたちが行方がわからないだなんて信じられなくて、とにかく夕哉さんに会いに行ってみるしかないと行ってみることに。

 緊張してしまうも、藤ちゃんと行ったらきっと落ち込んじゃうよね。少しもやもやしつつも、夕哉さんのお店であるHAN・RA・SHOESへと数分後に到着する。


 変わらないお店で緊張のあまり足が止まっていると、夕哉さんがお店から出てきた。笑顔ちゃんと作れてるかなと思っていても、夕哉さんは状況からにして帰れとか言い出しそう。

 声をかけようとしたら、夕哉さんが藤ちゃんに言った言葉。


「病気、もう治ったの?」

「あっうん」

「春陽を悲しませてないならいいよ。中入れば?用があって来たんだろ」


 うんと少々気まずさがありながらも、お邪魔させてもらって、想は目を輝かせながら夕哉さんが作った靴を見ていた。打ち合わせスペースで麦茶をもらいつつ、夕哉さんは笑顔を見せず語ってくれる。


「春陽の兄貴は半年前から会ってないから状況は説明できねえ。けど一つの事件で春陽の兄貴は変わっちまったかもしれない」

「事件?」

「あぁ。鯨波邸凄いことになってただろ?あれやったの俺らなんだ」

「俺らと言うのは?」


 藤ちゃんが聞いて夕哉さんは一度席を立ちタブレットを持って来てある記事を見せてくれた。それはシルバーウルフと夜瀬組が抗戦した記事。その記事の内容には数人の死者が出たらしい。


「ここに名前が載ってない組がある。それは昏籐組と紫蛇組、それからレッドクレインと昼秋さんの組織もいて、数人とあるけど実際かなり死者が出たんだよ」

「場所は迂生のお家?」


 あぁと夕哉さんは言いながらタブレットを閉じ、大きなことが起きていたんだと知れた。


「本当は春陽の帰りを待っていたかった。だが夜一のせいで雪たちはそれに乗っかってしまったんだよ」

「真昼くんも?」

「シルバーウルフの一員でもあったから動くしかないだろ。昏籐組はシルバーウルフを止めても止められず、雪は今どこで何してんのかは知らない」

「ハス喫茶は?」


 一応あると閉じたタブレットで検索をかけてくれて見せてくれた。店長は真昼くんだから何か知れるかもしれない。


「一応真昼が店長だけど会うのはやめといたほうがいいかもな」

「どうして?」

「抗戦があった日、鯨波流史郎に言われたんだよ。春陽はお前ではなく、藤太郎を選んだ。春陽にこれ以上付き纏うなってな。それで真昼の怒りが出ちまって、それが罠だとは知らず、翠が庇った」


 嘘でしょと口元を片手で覆い、想像したくない映像が生まれてしまう。賢介が翠は今何してんのと聞いていて、今度はスマホを取り出し見せてくれる。

 そこに写っていたのは翠と紗良だとしても翠は元気そうに見えなかった。


「普通に大学は行ってるみたいだが、元気がないって紗良が言ってた。詳しく聞きたければ紗良に連絡してみるといいと思う」

「ありがとう、夕哉さん。透や星河教授は元気にしてる?」

「普通に刑事として働いてるよ。佐田さんも刑事として透と星河さんのサポートをしてる。玲も組に戻って親父の右腕として動いてる。あっ姉貴の子供みる?」


 夕哉さんはスクロールして夕莉さんと玲さんの赤ちゃんを見せてもらう。可愛いと私と藤ちゃんはつい口にしてしまった。


「どっち?」

「男の子で名前は希望の光で光希こうき


 話していたら夕莉さんから電話がかかって来てしまい、すまんと夕哉さんが電話に出る。


「姉貴、今接客中だから後にしてくれねえ?あーうん。あっ姉貴、冬月の居場所ってまだわかんねえよな?うん、うん、さんきゅう。ちなみに玲隣にいる?ちょっと変わって」


 夕哉さんがスピーカーにしてくれて、玲さんの声が聞こえる。


『夕坊?どうした?』

「あのさ、まるの詳細ってわかるか?」

『まる?あぁ伊達丸眼鏡のやつ?それなら最近、セライヴニにちょくちょく顔出してる。後で連絡しておこうか?』

「いやいい」


 話すと私に合図してくれて、藤ちゃんいいと顔を見るといいよと合図してくれたから玲さんと呼んだ。数秒後大きく春陽ちゃんと驚いていて、ご無沙汰してますと伝え、迂生も純連たちもいるよと藤ちゃんが言い出した。


『おっおう。藤太郎、体はもう大丈夫なんか?』

「平気。陽っちゃんが看病してくれたから頑張れた」

「私は毎日お見舞いに行っただけで看病はほぼ純連がやってくれただけじゃない」

「それでも迂生が元気になれたのは陽っちゃんのおかげだよ。ありがとう」


 小さく耳が痛いと聞こえつつ、戻って来たんだなと玲さんが言った。


『それでなんで伊達丸眼鏡に用があるんだ?』

「まるなら雪の最新情報持ってそうだなって思ったからだよ。それと冬月の情報もな」

『あぁそういうことか。なら多分今日もセライヴニに来ると思うから来い。それと春陽ちゃんに会わせておかなきゃいけない人がいてさ』

「あぁ俺から伝えておくよ」


 また後でなと玲さんは元気良さげでよかった。通話が終えたことで、私に会わせておきたい人って誰なんだろうか。


「春陽、会わせたい奴なんだけど」

「うん」

「透だよ」

「え?さっき元気って言ってたよね?」

「元気というよりから元気で仕事してるって感じだよ。いつも仕事終わりにセライヴニで飲んで、春陽に会いたいって言ってるらしくてさ」


 透、まだ私離れしていないだなんて思わなくて、私は大丈夫だよってちゃんと示さなきゃな。藤ちゃんは拗ねそうだとしても、藤ちゃんも状況が知りたいようで一緒にいるみたいだ。


「俺、ちょっと出掛けてくる。催花と会う約束してるからさ」

「いってら」


 賢介は夕哉さんのお店から出ていき、行ってみるかと夕哉さんが店閉めするため一旦外で待つことにした。


「欲しい靴あったのに買うの忘れた」

「後で夕哉さんに相談してみたら?」

「なくならないかな?」

「そういや、想。夕哉が作る靴好きだよな。ネットでも買ってたじゃん」


 すると想は照れながら実はといきなりスマホを見せられ、私たちはそれをみて思わず大声を出してしまう。そんな関係性があったとは知らず、これ夕哉さんに見せたらきっと大喜びしちゃうんじゃないかな。

 夕哉さんの仕事用ワゴン車に乗せてもらい、夕哉さんにあることを聞いた。


「以前、靴のコンテスト的なのって参加しました?」

「あぁだいぶ前だけど、優勝したよ。それがどうかした?」


 藤ちゃんと純連がほらっと想に言っていて、もじもじしながら夕哉さんに告げる。


「その会場にいて、夕哉の靴に惚れた。それでちょくちょく実はネットで買ってて」

「え?まじか。ネット販売は全て業者に頼んでたから送り主見てなかった。教えてくれれば作ってあげたのに」

「今度作って欲しい。それからさっき欲しいなって思ってた靴があって」

「じゃあ後で店に戻ってやるよ」


 よかったなと純連が想をわしゃわしゃしていて、うんと嬉しそうに笑う想。


「じゃあ迂生にも作って」

「なんでだよ」

「いいいじゃん。けちん坊」


 むうと拗ねる藤ちゃんで不機嫌そうにわかったよと夕哉さんが言うとやったと子供のようにはしゃぐ藤ちゃんだった。


 セライヴニの付近にあるパーキングに止め、組員の皆さん絶対に白い目で見られるかもと不安になる。すると夕哉さんが大丈夫だよと言ってくれて、セライヴニのお店へと入った。

 まだ営業前だと言うのにお邪魔してみると、お疲れ様です、若とここにいる全員が言う。


「VIPルーム使わせてもらう。それから春陽たちに飲み物となんか料理頼む」


 承知と何人かの組員は厨房へと入って行き、こっちと夕哉さんが案内してくれる。ふかふかとソファーで遊び始める藤ちゃんと想で、子供かとなぜか夕哉さんと純連がはもったことで、笑っちゃった。


「陽っちゃん」

「ごめん、純連。息ピッタリだなって」

「あのさ、前々から気にはなってたんだけど、二人の出会いってどこから始まったの?」

「え?てっきり知ってるのかと思ってたよ」


 全然と純連が言うもので、私はうる覚え出しまだ全部夕哉さんとの思い出はピースが足りてないからな。んーと考えていると夕哉さんは耳を赤くして、お前らにはぜってい言わないと言い張る。

 気になる気になると藤ちゃんが急かすも、言わないと一点張り。教えてよと藤ちゃんが言っていると扉が開いた。


 組員たちがお水三つと軽く作った料理を置いて、オラオラオーラを出していた。そして私に対しては笑顔で、春陽さんのはこっちですと豪華な料理とオレンジジュースに乗っているお盆を置いて去っていく。


「迂生たち何もしてないのになにこの差」

「藤、ここで暴れるのはやめておけ。数が多すぎる」

「むう、陽っちゃん少しちょうだい。それから」


 藤ちゃんが言おうとしている言葉を純連と想が必死に止めていて、家に帰ったらねと小皿に分けてあげる。夕哉さんの苛立ちを感じてしまうも、なんとか話題を変えておかなきゃ。

 そうだと夕哉さんの機嫌を取るため、お姉ちゃんについて教えてもらう。


「お姉ちゃんに会ってる?」

「陽空?あぁ今もレッドクレインの長として動いてるって噂では聞いてる」

「まだ宗教やってるの?」

「いや、がくの一件で宗教自体は終止符を打ったらしいけど、違う組織として活動してるって破島から聞いてる」


 やっぱりあの日、撃たれたのはがくなんだとわかり、お姉ちゃんはどんな気持ちでレッドクレインの長として動いているのだろうか。

 オレンジジュースを飲み作ってくれた料理を食べながら、考えていると春陽と声がかかる。


「透。それから疾ちゃんに翠まで」

「連絡もらって。何もされてない?大丈夫?」

「賢介もいるかと思って来たんだけど」

「何もされてないから大丈夫だよ。それにあの時は本当にごめんなさい」


 立ち上がって頭を下げると邪魔なんだけとと声が聞こえ顔を上げた。そしたら目の前には藤ちゃんがいて、緑の腕を掴んでいる。


「陽っちゃんに触れていいのは迂生のみ。気安く陽っちゃんに触れないでもらえない?」

「ハグぐらいさせてもらえない?」

「駄目に決まってる。会えただけで良くない?」

「想の言う通り。俺たちこう見えて我慢してるほうなんだよ。陽っちゃんがお兄さんに報告したいことがあるからわざわざここに来てるだけなんだから」


 なんか余計に場の雰囲気を悪くさせちゃっているような気がしてきた。どうしようとあたふたしていたら、お前らそこまでにしておけと夕哉さんが言ってくれる。


「春陽が困ってる。翠、状況を見ろ。春陽は一応、あっち側の人間なんだ。藤太郎たちが止めるのも良くわかる。会えただけで十分だと思え」

「さっすが昏籐組若頭」

「藤、言っておくがここは昏籐組の縄張りだということ忘れるんじゃねえぞ」


 はいはいと藤ちゃんは座り直し、早くまるさん来てと願うしかなかった。

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