84羽
鯨波流史郎の家に到着し鯨波流史郎とご対面する。庭には鯨のアートが飾られていて、豪邸の中へと入った。そしたら色白の女性が立っていて、お待ちしていましたと軽く会釈する。髪飾りが雪の結晶でこの人が雪の婚約者だとはっきりした。
「流史郎さんがお待ちしています、こちらへ」
案内してもらい、ここに真昼くんのお母さんや昼奈ちゃんもいるのだろう。入りますと雪の婚約者が言い、扉を開けどうぞと言われたから中へと入った。
そこには私が返してほしいと伝えた人たちが集まっていて、すでに荷物を持っている。真昼くんのお母さんは私に頭を下げ、行くわよと昼奈ちゃんの手を握り行ってしまわれる。
「小雪、雪に伝えておけ。お前との取引はしばらくやらないと」
「伝えておきます。雪恋行きましょう」
雪の婚約者、小雪さんも雪恋ちゃんの手を握りこの部屋から出て、残るは玲さんと佐田さん。二人は複雑な感情を持つも、必ず助けに来るからと佐田さんは私とハグをして去っていき、玲さんは荷物を持って何も言わず去って行く。
「純連」
「はい」
「一週間後、アメリカに立つ。想にも伝えておけ」
承知しましたと純連くんは一度部屋から出て行き、二人きりになったところで鯨波流史郎はこちらに振り向いた。
「春陽の望みは叶えてやった。次は私の望みを叶えてもらおうか」
私の前に来て私の頬に触れる鯨波流史郎であり、何をされるのかと思えばいきなり苦しみ出す。そして倒れてしまった。
「鯨波さん!鯨波さん!誰か!誰か来て!」
大声で叫んだことにより、紫蛇組長と夜瀬組長が入って来て、鯨波流史郎を寝室へと運ぶ。鯨波流史郎に何かが起きているのは確かで、行こうとしたけれど賢介くんに止められてしまった。
「追いかけないでほしい」
「何か病患ってるの?」
「俺たちには言わない人だ。ただ弱まってるのは事実だよ。だからだと思う。残された時間をなんとしてでもやらなくちゃならないことが」
鯨波流史郎がやろうとしているのは一体なんなのか、まだわからなくとも今は身体を休んでもらうのが一番だ。
少しして紫蛇組長と夜瀬組長が戻って来て、賢介くんはどこかへと行ってしまう。
「初めましてと言うより赤子の時一度会ったぐらいだ。純連の父、紫蛇泰巳と申す」
「私は夜一の父、夜瀬烏夜だ」
「初めまして。あの鯨波さんの容体は?」
部屋で話そうと言われソファーにお互い座り、泰巳さんが話をしてくれる。
「あのお方は末期の癌を患っていてな。自分がいられる時間に息子の病を治せるように動いている」
「それと息子の幸せを望んでいると言うことだ」
「ならなんで私の育て親を殺害したの?」
そのことを告げると二人は少し悩み、烏夜さんが辛そうな顔立ちで教えてくれた。
「春陽の育ての親、凛太郎と灯里に指示を与えていなかったのに、星霜家を排除しようとしたのがきっかけだ」
「排除…」
「あのお方の指示では二人を生かし、暗殺の手助けをしてもらう予定だった。無論、春陽はあのお方が育てる予定だったが、春陽は朝峰家に奪われたということだ」
つまり私は引き取られたのではなく、誘拐されたということなの。
「しかしその日待機していたが何者かによって先手を打たれた。何者かは知らん。今もそいつを追っている」
ヴァイオレットが待機していたとしても、先をいかれたことによったから犯人じゃないことははっきりした。
「春陽、それであのお方の望みは、ただ一つ、藤太郎に寄り添い、絶対に裏切るなと仰った。一週間後、藤太郎と一緒にアメリカへ立て」
「純連くんたちは?」
同行してもらうと言ってくれるから少し安心ができる。泰巳さんから藤色のスマホを渡され、これが新しいスマホらしい。
「今日は疲れただろう。千花に部屋を案内する。そこで休め」
まだ聞きたいことがあるも、疲れが出ているため、遠慮なく身体を休ませてもらうことにした。
◇
アジトに入るとずんとしたオーラが出ており、守り切れなかったことが悔しそうだった。これ話しかけても平気かと迷っていると、失礼すんぞと破島の声が聞こえ玄関まで行ってみる。
そしたら破島と陽空がいて、雪はと聞かれたからそれがさとかくかくしかじか説明すると雪とリビングへと入っていく破島。
「陽空、平気か?」
「平気じゃない。それに春陽の行動、見てないけどわかる。春陽は誰一人失わないために勝手に決めたことぐらい。頼ってほしいのに、全部一人で決める癖」
陽空だって一人で決めることあるじゃんかよと思いながらも、雪と破島が言い争いにならないか行こうとしたら、ピンポーンではなくベルが鳴った。
そうだった。この家、インターホンではなくベルが鳴るんだったっけ。はーいと俺が出てみると、なんとタクシーでここに来たっぽい小雪さんと雪恋ちゃん、それから知らない親子と玲に佐田さんもいたのだ。
勝ってもいねえのになんでと固まっていたら、真昼が来て昼奈とびっくりするも昼奈ちゃんという子をハグし、父さんと真昼の親父さんを呼んでいた。
真昼の声でこっちに来る真昼の親父さんも最初はびっくりするも、昼奈ちゃんのお母さんを抱きしめている。そして雪は一発殴られた感あるも小雪さんが靴を脱いで雪に飛びついたのだった。
状況読めないとその光景を見ていたら星河さんも来て、佐田ちゃんと星河さんも佐田さんに飛びつく。うん、一旦俺はリビングにいるみんなのところに戻ろうとしたら、夕坊と玲に引き止められた。
玲の顔はすげえ後悔しているような顔をしていて、一服するかと外に出す。煙草を渡し火をつけてやって俺も一服する。
「春陽ちゃんがゲームする前に鯨波流史郎と取引していることがはっきりした」
「どんな内容か聞いてるか?」
「大切なものを守る為に自ら犠牲となった。こんなのしなくても俺たちは平気なのによ。助けることもできなかった」
春陽は誰にも言わずに行っただろうけど、俺だけには教えてくれた。全てを終わらせるには一度私があっちに戻らなきゃみんなの命が危ないと。
「玲、自分を責めんなよ」
ふうっと煙草を吐きながらそう伝えると、玲は煙草を捨て俺の胸ぐらを掴み怒鳴った。
「なんで夕坊はそんなに冷静でいられるんだよ!夕坊の女だろうが!」
玲の顔は今でも崩れそうな勢いで、俺が大事にしてる春陽を守り切れなかった後悔。携帯灰皿に煙草を捨て玲の腕を掴む。
「俺は春陽を信じてるからこそ、やらなくちゃならねえことがあるんだよ。姉貴も、玲を信じてるからこそ、待っててくれてんだ。姉貴のためにもまずは親父に頭を下げろ。それからだ」
腕を下ろし肩を叩いて中に入ると、それを聞いてたらしい真昼たちが、夕哉の女にはまだなってないと拗ねていた。それくらい元気になるなら、もう大丈夫そうだなとリビングへと入る。
子供たちはすでに夜でもあり、別室で小雪さんと真昼のお袋さんが見ているらしい。
佐田さんが俺が戻って来たことで、状況を説明してくれた。
「昨日、私が星河さんに連絡している最中に襲われ、急遽鯨波流史郎の本家に連行されました。そこで打ち明けられたんです。本来ならば裏切った者は消される身。それでもそうならなかったのは、春陽ちゃんのおかげです」
「春陽ちゃんはこのゲームをやる前に、事前にあの人と連絡を取っていた」
そこに寝かしつけ終わった小雪さんが登場し、そんな馬鹿なと落ち込む雪。そこで佐田さんが春陽のスマホをハッキングし、見せてくれたやり取り。
それは純連とのやり取りで藤太郎の容体についてやり取りをしていたっぽい。
「私もすぐ気づけばよかったです。春陽ちゃんは純連くんの思いを受け、あっち側についた」
「純連はそういう一面は見せないから、気づいた時にはもう…」
藤太郎の病が半年前に再発していたとしても、ライブとかはすごい生き生きとした姿だった。だが裏では相当辛かったんだろうと感じる。
「藤太郎のそばにいることを条件に私たちを今後一切、干渉しないと言ってくれたけど、納得してない」
小雪さんも何もできなかったことで悔いているようで、みんなも藤太郎がかなり酷い状況だと知り、言葉を失っていた。夜一がいきなり立ち上がり、家を出ようとしていて紗良が止めに入る。
「漆月、今行っても無駄だよ。それに何されるかわからないんだよ」
「紗良先輩、離して。俺様は行かなくちゃならない。平気だよ、俺様があの程度でやられたりはしないし、佐田ちゃん」
佐田さんに何かを投げつけ見せてもらうとそれはUSBだった。
「俺様のスマホを盗聴させるように作っといた。佐田ちゃんなら使えるっしょ?俺様があっちに戻って、春陽先輩の本音聞き出す。だからそれまでは再会した家族で時間を大切にしなよ」
紗良を一度抱きしめた後、夜一は鯨波流史郎の家へと向かい、紗良は翠の胸で泣いてしまう。
「今日はひとまず、休もうか。明日、また話し合おう」
真昼の親父さんがそういうもんで、それぞれの部屋へと行かれ、玲は俺の言葉で俺ん家に戻って行った。
◇
翌朝、鯨波流史郎の家に来ちゃったんだなと思いながらも、ベッドから降り机に洋服とメモ書きが置かれてあった。これを着てあのお方の寝室へと向かってと入江さんからで、それに着替え寝巻きを畳んだ。
えっと鯨波流史郎の寝室ってどこだっけといくつも部屋があるから、迷っているとこっちと純連くんが教えてくれる。
「藤ちゃんのそばにいなくていいの?」
「うん。想がいるし、俺はほら、一応紫蛇組の一員でもあるからさ」
そっかと相槌を打ちながら寝室に案内してもらい、ノックをして春陽入りますと告げてから中へと入った。棚には藤ちゃんの写真がいくつもあり、ベッドには鯨波流史郎が座っている。
「すまないな。よく眠れたか?」
「一応眠れました。お身体の具合は?」
「この通りだ。いつ死んでもおかしくはない身体と言ってもいい。アメリカには同行できないから、藤太郎のこと頼む」
「はい」
少し寝ると言われ、横になる鯨波流史郎に布団をかけ、寝るの早いと思いながらも、そっと扉を閉めた。親子共々病に侵されて、少々心が痛む。
大丈夫と純連くんに言われ、うんと答えながら寝室から離れた。歩いていると夜一くんの登場で純連くんが私を後ろにやる。
「何しに来たんだよ」
「あの人は?」
「睡眠の邪魔するんじゃない。こっち側に戻んなくていいってあの人が言ってんだ。さっさと失せろ、そして帰ってくんな」
「断る。親父、どこにいる?親父に用事があんだけど」
部屋にいると純連くんが言うと夜市くんはさっさと行ってしまい、何しに来たんだかと純連くんは呟く。
「陽っちゃんを奪いにとかじゃなさそうだからいいか。朝食食べたら藤に会いに行こう」
うんと言いながら朝食を食べにリビングへと入り、朝食を食べていった。朝食を食べていると黎明さんが眠たそうな表情で入ってきて、賢介くんはきっと催花ちゃんと一緒にいるのだろう。
そう思っていたけれど、賢介くんも寝巻きのままで入り、冷蔵庫から水を飲んでいる。
「春陽ちゃん慣れないこといっぱいあると思うけど、僕ちんがいっぱい教えてあげる」
いきなり黎明さんが言うもんだから、ぱこんと叩く賢介さんでつい笑っちゃう。すると黎明さんがやっと笑ってくれたと笑顔で言われ、純連くんも賢介さんも頷いた。
「もしやっぱり辛いとか思ったら遠慮なくいいなよ。まあ逃すことは流石にやったら消されるから駄目だけど話は聞いてあげられるから」
「うんうん。僕ちんは基本日本にいるから夕坊が恋しいとか思ったら、写真いっぱい取って送ってあげるからね」
「そこまではしなくていいです。ただ」
言おうとしたら大きな音が聞こえ、びっくりしてしまい三人の瞳が鋭い目つきで怖い顔立ちをしている。
「侵入?」
「いや、さっき夜一来てたから夜一の親父と争ってんだろ。俺、ちょっくら見てくるから、陽っちゃんのことよろしく」
パンを咥えながら純連くんはリビングから出て行き、気にしないと黎明さんが普段の声に戻って食べようともぐもぐし始めた。
夜一くん、平気かなと少々心配になるも、朝食を食べていくことに。
朝食を食べ終えた頃、純連くんが戻ってきたけれど服は乱れ、髪型も爆発したかのような髪になっていた。賢介さんと黎明さんは数秒固まりそして大笑いする。
おかしなことじゃないと思うんだけどと思っていたら、純連くんが教えてくれた。
「夜一の元カノが来てて、めちゃくちゃ夜一に甘えてたんだよ」
「夜一くんの元カノ?」
すると夜一くんの叫び声が響き渡り、一体誰なんだろうと思っていたらリビングに入ってくる夜一くんで私の後ろに隠れる。そしてもう一人入って来たのが、なんと千ーちゃんだった。
私がいるのを忘れていたらしく、全身赤くなって、賢介くんの後ろに隠れてしまう。
てっきり疾ちゃんのことが好きなのかと思ってた。
「陽ーちゃん、疾太には言わないで」
「うん」
「絶対だよ」
「うん」
すると千ーちゃんは賢介くんから隠れるのをやめても、私とは目を合わせずそして後ろにいる夜一くんは猫のように威嚇している。
「夜一、その」
「この裏切り者!俺様の女を人質にとってまですることじゃない!」
紗良が誘拐された意味がそんな理由だったとは、つい笑ってしまう。復縁を千ーちゃんは望んでたってことなんだ。
「春陽先輩、そこ笑わない。あの女は魔性すぎたから、別れたんだよ」
「夜一のお願い何度も聞いたのに、うちのお願い一つも聞いてくれないの。ずるくない?」
二人がいい争いをし始め、はいはい陽っちゃんを巻き込ませないと終止符を打とうとも、過保護は黙っててと二人に言われたことにより、純連くんは固まってパタリと倒れてしまう。
純連くん、その言葉を聞くと駄目なんだねと苦笑していたら、入江さんが登場し、騒がしくしないのと千ーちゃんと夜一くんに拳骨を与えたのだった。
深く反省している二人であり、入江さんは千ーちゃんを連れて退散していく。
「夜一くんがおかしいなって思ってたのって」
「魔性千夏に会うのが嫌で、憂鬱になってただけ。それで春陽先輩」
「ん?」
「いつこの檻から出よっか。俺様が力になってあげるよ」
えっと固まってしまい、純連くんが私を引き寄せて、ヴァイオレットたちが顔を出してきた。ふうんと夜一くんは周りにいる人数を確認して、冗談だよと立ち上がる。
「春陽先輩が望んでここに来たのは知ってる。けどそれが本音なのか知りたいんだよね。実際どうなの?」
「本音だよ。私は望んでみんなを裏切ってこっちについた。伝えてよ。私はみんなのところには帰らない。私は藤ちゃんに寄り添うって決めたの」
「なら夕哉を捨てるってことでいいの?」
うんと小さく頷き、そっかとトーンを落とし、お幸せにとぶっきらぼうに言って夜一くんは帰っていく。これでいいと純連くんと賢介くんに、お見舞い行こっと伝え、藤ちゃんのお見舞いに行くことにした。
◇
あの人の容体が悪化したと親父から聞いたけど、俺はキッパリと縁を切ることを告げにいった。本当は烏丸を連れて帰りたかったけど、春陽先輩からの伝言メモもらえたからラッキーかな。
ぐーんと背伸びをしてあの人の家を出たら、烏丸が待っていた。
「烏丸」
「破門をいただきました。今は自由の身。これからも坊ちゃんについてってよろしいですか?」
泣かせんなよと烏丸をパンチし、行くぞと止めていたタクシーに乗って、アジトへと向かう。
「烏丸、あの人、春陽先輩たちをアメリカに居させる間、何するか聞いてる?」
「計画を実行すると仰っていました」
「やっぱりそう来たか。ヴァイオレットもアメリカにいるだろうから、夜瀬組と紫蛇組が中心となって動くって認識でいいんだよね?」
「おそらく」
となればこれから東京に最悪な出来事が起きるってことでいい。
「とにかくこのこと真昼先輩の親父さんに言わないと。運転手さん?何してんの?」
いきなり停車してタクシーを囲むほどの車が到着する。
「降りていただけませんか?」
「は?何言って」
「坊ちゃん、あのマーク」
烏丸に言われ、到着した車についているマークを見て、嘘だろと運転手の顔を見る。運転手は口元をあげ俺様と烏丸はタクシーから出た。
車に乗るよう合図をもらいその車に乗ると、高級のスーツを着てワインを飲んでいる中年のおっさんがいる。
出せと車が動き出して、自己紹介をもらう。
「夜瀬夜一くん、初めまして。僕の名前は星霜月人。冬月と春陽の父親」
「なんで俺様を?冬月が一番会いたがってるんじゃ」
「それなら妻が会いに行っている。時は来た。夜一くんに力を貸してほしくてね。今から起きようとしていることを塞がなければならない。夜一くんならわかるはずだ」
あの人がやろうとしているのは大体把握できている。星霜家の人間が現れたということは、やっぱり起きる前提なんだとわかり、やりますと伝えた。




