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83羽

 鯨波流史郎との決戦日三日目


 昨日はセライヴニで待っていたら、玲さんと黎明さんが登場するも、十八時ぴったりに到着したことで、二日目終了となった。さっさと帰れと昏籐組の皆さんが言い、悔しそうな顔立ちで帰られたっけ。

 二日目、なんとか乗り切れたから、三日目も乗り越えられそうと、顔を洗いリビングへと入る。


 すでに作戦会議が始まっていて、昨日や一昨日のようにはうまくいかないかもしれないと真昼くんのお父さんは言う。


「一つの町に絞る可能性がある」

「昨日のように学園に絞る可能性も高くはないと思う」


 真昼くんのお父さんとお兄ちゃんが言っていても、星河教授の様子が少々おかしかった。きっと佐田さんが心配なんだろうと星河教授のそばに寄る。


「どの町に春陽をいさせる?」


 夕哉さんが聞いてそれぞれ考え込み、リスクがあるとしても、みんなは二日間走り回って疲れが取れていないのはわかっていた。そこで私が提案をする。


「学園に絞りませんか?学園だったら騒いだり暴れたりできますし、もちろん私も学園にいます」

「捕まるリスクが高まる」

「雪、大丈夫。くれのさん、以前教えてくれたこと。行事の時、私と夕哉さんが制限時間までに隠れ切った場所なら、大丈夫かもしれない」

「しかし今は真夏だ。そこに長時間はいさせられない」


 鶫が却下していたとしても、やる価値はあるかもしれないと真昼くんが言い出す。


「どれくらい時間が稼げるかわからないけどその五人が一斉に来てくれたらその五人をすぐ確保すればいい」

「そうかもしれない。長時間あちこち町を探すよりも学園で探す方が楽だ」


 真昼くんと翠も言っていて、だなと疾太も賛成する。真昼くんたちはまだ納得していない部分があるとしても、わかったと真昼くんのお父さんが言ってくれた。


「夕哉と一緒に行動していることはおそらくばれている可能性がある。だからここは雪、頼める?」

「もちろんだ。この一日を必ず乗り越える。だから真昼たち、全員を捕まえろ」


 もちろんと雪に言う真昼くんであり、それぞれ準備して、私も準備をすることに。支度をしていると夕哉さんが入って来た。


「夕哉さん」

「できるだけ早めに終わらせるからな。それにしても行事のこと覚えだした?」

「うん。夕哉さんが秘密基地だぞって教えてくれた場所。やっと思い出した。夕哉さん、以前話したこと」

「わかってるよ。みんなには言わねえよ。ただちょっとチャージしてもいい?」


 うんと頷くと夕哉さんは私を抱きしめて、夕哉さんやみんなのために、そして藤ちゃんのために私は動くことに。



 開始十分前… 

 

 守城高等学校の校舎の前に五人は立っていて、俺と透は校舎の中にいた。来なかったらまず校舎に入ってもらうもちょうど防犯カメラがあり、透と同じ部署だった佐田流葉が確認し、来るのではないかと予想している。


「やっぱり日陰で待機しててもらったほうが良さそうなんだけどな」

「まあ五人が待つって言うんだし、いいんじゃねえか。さすがに五人で来るとはわかんねえけど」

「九時ぴったりに来なさそうだが、もう少し様子みて指示出すか。春陽、そっちは大丈夫か?」

『平気だよ。クーラーも効いてるから大丈夫』


 透は疑問に思ったのか俺に聞いてきた。


「春陽が隠れてる場所ってさ、どこなの?」

「教えねえ。俺と春陽の秘密基地だから絶対言わない。それにどっかから盗聴されてたらアウトだろ」


 そう言うと透はニヤニヤしながら秘密ねえと言い出し、うるせえと赤っ恥になる。まあ雪が知っちゃったから秘密基地にならなくなっちゃったけど、あそこなら安全だと思いたい。

 九時となりいよいよかと思っていても、来る気配を感じなかった。


 三十分経過し熱中症になる恐れがあるため、一旦校舎に入ってくるよう透が指示を与え五人が校舎の中へと入ってくる。


「光太、そっちはどうだ?」

『他の町に配置している組員から報告は受けてません。妙ですよね』

「了解。五人の誰か発見したら随時報告を頼む」

 了解ですと光太とやり取りし、俺と透がいる教室には春陽の兄、冬月が来た。


「真昼たちは?」

「水分補給してもらってる。てっきり九時ぴったりくると思ってた」

「同感。昨日のように九時から来るのかと思ったけどな」


 他の町にいるという情報はまだ取得できておらず、体力温存のために朝っぱから来るとは限らない。夜一が何か掴めていたら助かるけど、紗良が捕まった辺りからいつものノリじゃない。

 今は真昼の親父さんに従って情報を手にしてくれている。これが終わり次第、ちょっと話聞いてやるか。




 一時間、二時間と午前中様子を見ているも来る気配が全くなかった。このままお昼になり、一旦春陽を秘密基地から出してご飯食べさせるか。


「そろそろ昼だしなんか頼むか」

「それなら鶫がすでに昼食の準備してたからそろそろじゃない?」


 するとくれのと叶恵が料理を持ってきてくれた。見るとカツサンドでみんなはげっと言うような表情だ。うまそうなのになんでそんな顔するんだよと一つ頬張る。


「夕哉、あまりそれは食べないほうがいい。結構食べると胃もたれが凄い」

「勝つためにカツサンドであってもこれはなさすぎ。僕、コンビニ行ってくる」

「ちょっとせっかく、鶫が用意してくれたんだから」


 真昼は断固拒否していても、くれのと叶恵が止めに入るため、渋々食べ始める真昼であった。


「春陽呼んでくるよ」


 タッパに何個かいれ俺しか知らない秘密基地へと向かった。高等学校にある旧校舎の清掃員部屋へと入る。そこから壁紙を少しずらすと取っ手があり、開けて中へと入った。


「春陽、雪、昼食持って来た……」


 そこにいたのは雪がぐったりと倒れていて、春陽の姿がなく、タッパをつい落として雪と呼びかける。おいしっかりしろとゆすっても起きようとはしない。

 無線イヤホンで緊急事態だとみんなに報告を上げ、至急春陽がどこに行ったのか、探すことになった。



 みんな今頃焦ってるよねと車から見える景色を眺め、玲さんは複雑な気持ちで運転をしてくれている。


 数日前……


 私が星霜家の家で過ごして間もない頃。お兄ちゃんと真昼くんが手合わせしている時に純連くんからメッセージをもらった。


 藤の病が半年前に再発した。陽っちゃんに会うまでは治療しないって言ってて、やっと会えたと思っても、藤は陽っちゃんと思い出作ってからって言い出して。だけどこれ以上、藤を見てられない。陽っちゃん、頼む。藤のそばに寄り添ってほしい。


 最初は信じられず、放置していたとしても、純連くんから何度も藤ちゃんの容体が危ないという報告をもらった。

 メッセージは見られる可能性もあり常に消し、純連くんとやり取りして、一度鯨波流史郎と話せるか問い合わせたところ、話せる時間をもらえた。


 ちょうどお兄ちゃんと真昼くんが買い出しに行ったことで、すぐ連絡を取った。


『お前から電話をかけるとはな』

「純連くんから容体は聞いた。鯨波さん、藤ちゃんのそばにいる代わりに返してほしい人たちがいる」

『ほう。返してほしい人たちとはどいつだ?』

「雪の恋人とお子さん、それから真昼くんのお母さんと妹。それと玲さんと佐田さんにお姉ちゃんを返してほしい」


 全員を返してくれるとは限らない。それでも大切な人の人たちを取引で返してくれるなら、私はなんだってする。

 身勝手なのはわかってるし、一緒に相談したくても、お姉ちゃんの大事な人たちのように失ったら、私はきっとと庭で手合わせしてる二人を見た。


『雪たちにそれを告げたら、止める気だぞ』

「そう思う。だから鯨波さん、一芝居してもらえませんか?雪を脅し、雪が暴走しそうなタイミングで私が取引の内容を伝える。それを引き受け最初は私たちが勝つように仕向けてください」

『途中で放棄するということか?』

「みんなを騙してやるのはこれしかないと思うので」


 みんなを裏切りたくはないけれど、こうでもしないと終止符を打てなくなるような気がする。


『お前の望みを叶えてやろう。ただしお前の望みを叶える代わり私の望みを叶えてもらおうか?』

「わかりました。鯨波さんの望み叶えます」

『交渉成立だな。準備が出来次第、千花からメッセージを送らせる。では』


 鯨波流史郎と取引が成立し、私はその日まで待っていた。


 現在……


「春陽ちゃん、こんなことしたら夕坊や春陽ちゃんの兄貴が怒るはずだ」

「そうかもしれません。それでも大切なものを守るためにはこの方法しかなかった。玲さんも家に帰れます。夕莉さんをこれ以上、悲しませないであげてくださいね」


 玲さんは啜りながら運転をしていてすまねえと呟き、助手席に座っていた黎明さんがWizuteriaの音楽をかける。


「運転代ろうか?」

「黎明、無免許だろ。運転させられるか。春陽ちゃん、夕坊に伝えておくことってある?」

「大丈夫です。夕哉さんは私のこと待ってくれるって言ってくれたので。できれば紗良や翠たちが凹む可能性があるので、透たちと励ましてほしいです」

「透には言ってあんのか?」


 いえと伝えたら二人は想像して夕坊より暴れてそうな気がすると呟いた。


「それにしてもなんか渋滞してない?後もう少しで昏籐組の縄張り範囲から抜けられるのに」

「言われてみればそうだな。迂回するか。黎明迂回ルート探して」


 この道はそんなに渋滞する感じではないのにと様子を見ていたら、前のほうで検問している姿が見られる。


「玲さん!検問してる!」

「検問…まさか」

「あちゃー先手されたっぽいね。どうする?僕ちんが囮になろうか?」


 よりによってタイミングが良すぎないと思ってしまうほどで、三日目のタイムリミットは後三時間。



 春陽が考えていることぐらい、僕には伝わっていて五つの町に検問をあちこちに配置してもらった。まだ昏籐組の縄張りにいたら、春陽を救えるチャンスがあるからだ。


「輝さん、手配ありがとうございます」

「いい。じいちゃんの力借りないつもりだったけど、じいちゃんに話したら協力するって言ってくれたから存分に使わせてもらってるだけ」

「警視総監に今度お礼の品持って行かないとな。できるだけ時間を削らせ春陽を探し出すぞ」


 透の掛け声で組員は徒歩やバイクで移動し、僕たちも春陽を探すことにした。



 もしかしたらお兄ちゃんが私が考えていることをすでに知ってこのような形になっても私は負けないよ。


「ほとんど検問で車は動かせないのはわかりました。そこで黎明さんと私を降ろしてもらって、佐田さんか賢介さんに連絡してください」

「なんて伝える?」

「予備の車を用意するように」


 伝えとくと言ってくれて私と黎明さんは車から降り、歩道へと入った。すでに情報がいくかも知れないけど、鯨波さんが教えてくれた店へと急ぐ。

 

 鯨波さんが教えてくれたお店へと到着し、中へと入ってそこには入江さんと純連くんが待機していた。


「予想以上に早かったな」

「検問があるから車の移動はできなくなった。入江さん、お願いします」

「これを抜ければ、晴れてこっち側につく。後悔はしない?」


 はいと返事をし入江さんはそこ座ってと言い、そこに座って特殊メイクをやってくれる。その間に純連くんと黎明さんも変装の服に着替えていた。


 特殊メイクが完了しウィッグをつけると着替え終わった二人が頬を赤くしていて、そんなに変わるものと鏡を見た。普段やらないメイクでこんなに変わるものだと知れる。

 デニムワンピースにサンダルを履き、一瞬スニーカーを見てしまった。このスニーカーは捨てられないように交渉しようと入江さんに着ていたものを渡しておく。


「これ藤に見せたい。一枚写真撮っていい?」


 うんと純連くんと黎明さんもパシャリと撮り、写真は後ででもいいんじゃないと車椅子を出してくれる入江さん。それに乗り純連さんが車椅子を押す。

 行ってらっしゃいと入江さんに言われながら、慎重に町から出ようと動くも警察官がちらほらと歩いていた。


 それでも私に気づかずに行ってくれて、警察も動くとなればものすごい緊張感がある。このまま上手く町から抜け出せそうな時に、目の前にはがくがいた。

 素通りしたくても完璧に私たちを見ていて、近くに来ようとするから黎明さんが前に出る。


「純連、走れ!」


 黎明さんの合図で私を押しながら走り、がくの声が響き渡った。


『諸君!私の名は浪杜鶴ろうずがくである!私はいくつもの罪を重ね、そして太陽の空に執着した!そして警察官二名及び焼死遺体の事件の犯人も私である!』


 がく、何言っちゃてるのと後ろを振り向きたくても、がくが姉を庇う姿。警察官ががくの方へと行き、がくの声はまだ続く。


「冬の月と春の太陽、霜に星する!たとえ春の太陽を失ったとしても、必ずや冬の月、夕暮れに指す光が君を照らすだろう!」


 次の瞬間、銃声の音が聴こえ純連くん止まってと言うも止まってはくれなかった。また一人、私のせいで死が訪れてしまうだなんて、嫌だよとギュッと服を掴む。

 警察官を引き寄せてくれたのは嬉しかったけど、こんなの間違ってる。結構走ってくれたことで純連くんのスピードが落ちて行き、次第に止まった。


「純連くん…」

「平気。なんであいつ、俺たちを庇ってくれたんだろう」

「わからない…」


 鶴が言った言葉はどういった意味なのか正直わからない。


 冬の月と春の太陽という意味はお兄ちゃんと私が意味していて、霜に星するというのはきっと霜月家のこと。私が失ったとしても、お兄ちゃんや夕哉さんが助けに来てくれるっていう意味でいいんだよね。

 がくに聞きたいけれど、がくのために、私たちは昏籐組の縄張りから抜けることに成功した。


 ◇


 はあっはあっと銃声が聞こえた方角へと走ってみると、警察官が誰かを囲むように立っていた。行こうとするも腕を掴む破島であり、がくが死亡するだなんて信じられない。

 鯨波流史郎の指示でがくを射殺したということでいいのだろう。


「淡、行こう」

「陽空は何もしなくていい。さっきの言葉聞いただろ?あれが真実だ」

がくに全てを背負わせるつもりはない。とにかく署に」

「駄目だ。これはがくの償いでもある。がくの思いを受け止めろ」


 がくの気持ちは受け止めたいよ。それでもなんで死ななくちゃならないのとあの人を憎みそうだ。見ていたら淡のスマホが鳴り、淡は電話に出る。

 すると淡は私の顔を見て青ざめていて、電話を終了するとあたしに告げた。


「陽空、あの人からで、陽空は用済みとなったらしい。自由に生きろと下された」

「えっ?せっかく宗教作ったのに?」

「なくす方針だ。とにかく陽空、シルバーウルフと接触するぞ。何かわかるかも知れない」


 予想外な展開でまだ受け入れられなくても、シルバーウルフのボスに会いに向かった。



 十八時となり警察を使っても春陽を見つけることさえできなかった。そして真昼の親父さんから報告を受け、鯨波流史郎のもとに春陽が行ったことを知らされ、俺たちは敗北。

 春陽、行っちまったんだなと空を見上げ、頑張ってこいと空に向かって叫ぶ。


 そしたら光太が走って来て大変ですと光太のスマホを見せてくれた。それはがくが射殺される映像が流出しているそうで、がくの言葉になんだよと顔が崩れそうだ。


 冬の月と春の太陽は冬月と春陽を意味し、霜に星するは星霜家。たとえ春の太陽を失ったとしてもは、春陽を失ったとしてもで、必ずや冬の月、夕暮れに指す光が君を照らすだろうは俺や冬月が必ず春陽を救いに行くからという意味。


 かっけえこと言うじゃねえかよと鼻を啜り、がくの言葉を無駄にはしねえからな。


 真昼の親父さんからアジトに集合してほしいとメッセージがあり、光太と一緒にアジトへと向かった。

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