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8羽

 終業式となり明日から夏休みだけれど守城学園では受験に向けての合宿が毎年行われている。教室でそんな話題が聞こえつつ、守城大学の問題集を解いていたら前の席に真昼くんが座った。

 みんなはそれを見て、ひそひそと話していても、真昼くんは分常大学の問題集を見ている。


 気にせずそのまま問題集を解いていくと、学級員の子が始まるから体育館に急いでと言われ、真昼くんと一緒に体育館へと向かった。


「夏休みはほとんど合宿で潰れちゃうけど、空き時間にどっか行けたらいいね」

「行けたらいいけど、グループで動かなくちゃならないでしょ?」

「透先生なら、きっと許してくれるよ」


 そうかなと笑いながら、ここ最近は透が真昼くんのことも下で呼ぶようになり、真昼くんも透先生と呼ぶようになったな。真昼くんから聞いたけど、昼奈ちゃんは、本当の父親に引き取られ、今はお母さんと二人暮らし。

 いつかはご挨拶しに行きたいけど、なかなかお母さんに会わせてくれないのは、きっとこの前言っていたことが原因なんだろう。だから私は真昼くんが会わせてくれるまで、待つことにした。


 体育館に到着し終業式が始まって、長い長い校長のお話を聞いていくことに。 



 終業式が終わって学級員が合宿のスケジュールを再度私たちに知らせていき、合宿楽しみだねとみんなの声が聞こえる。真昼くんは少し席から離れているけれど、スマホの通知で楽しみだねと来たから、そうだねと返す。

 そのやり取りを見ていたっぽい氷雨くんが冷笑し、私のスマホを奪い、返してよと取ろうとも、氷雨くんは身長が高いから取り返せない。


「ちょっとやめてあげなよ」

「伊宮がなんで南雲を下で呼ぶようになったのかやっとわかった。この二人マジで付き合ってる。南雲、ヒーローにでもなったつもりかよ」


 男子たちや氷雨くんグループの女子が笑い出し、真昼くんは立ち上がってスマホを取り返してくれる。


「だから何?誰と付き合おうが自由じゃん。それにさ、こんなことしても、自分のためにならないことぐらい、氷雨が一番にわかってんじゃない?それともやっぱり、陽羽ちゃんのことが」


 うるせえと氷雨くんが真昼くんを殴ってしまい、やめてと言うも氷雨くんは何度も真昼くんを殴り、男子たちはやれやれと言っている。早く先生呼びに行かなくちゃと行こうとしたら、氷雨くんグループの女子に肩を掴まれた。


「なあに、逃げてんの?先生呼ぼうとか勝手なことしないでくんない?他の女子たちもヘマなことしたら、どうなるかわかってるっしょ?」


 透、助けてと強くスマホを握ったことだ。何してると透が到着し、現場を見て氷雨やめろと透が止めに入ってくれる。真昼くんとそばに寄り、顔が酷い状況になっていた。


「陽羽、真昼を保健室に連れて行けそうか?」

「うちも手伝います」


 そこに清寺さんも手伝ってくれることになり、立てそうと真昼くんに聞き、ゆっくり立ち上がって寄り添いながら保健室まで同行する。

 保健室の先生は酷い有様ねと真昼くんに治療していった。


「どうしたらこうなるのか説明してちょうだい」

「僕が悪い」

「あれはどう見ても、氷雨くんが悪い。朝峰さんのスマホを奪うんだもん。始業式の時、クラス替えできないのかな」

「それは無理よ。とにかく氷雨くんのご両親と南雲くんのご両親には伝えるけどいいかしら?」


 はいっと言う真昼くんで、私と付き合ったからこうなっちゃったんだ。傷つけたくないと強く思っていたら、治療し終えた真昼くんが優しく触れる。


「陽羽ちゃんを守るために、もっと強くなっておかなくちゃね。先生、ありがとうございます。清寺さんも付き添ってくれてありがとう」

「全然平気。うちも勇気を出して、氷雨くんグループの女子たちに立ち向かえるような強さ持てるように頑張ってみる」


 いいお友達できてよかったわねと保健室の先生に言われ、なぜか照れてしまう私であった。



 教室に戻ってみると氷雨くんの姿はなく、氷雨くんグループの子たちは苛立ちを放っているせいで、教室が重く感じてしまう。

 透がきっと氷雨くんを生徒指導室に連れて行ったんだろうと思い席に座った。早くホームルーム終わらせて、帰りたいと思った矢先、先生がやって来て、ホームルームが始まる。

 

 真昼くんは居残りとなってしまい、待ってよっかなと教室で待っていたら、氷雨くんが来ちゃった。どうしようと視線を机にしていたら、おいっと呼ばれ恐る恐る氷雨くんの方を向く。


「連絡先教えろ」

「え?」

「いいから早く教えろ」


 何いきなりと思っていても、逆らったら何されるかわからないし、渋々連絡先を交換した。SNSのアプリにも入ったことが確認とれる。


「俺のアカ見てみ」


 氷雨くんは少し頬を染めていて、なんでだろうと氷雨くんのアカウントを見てみると、これはと氷雨くんをつい見てしまった。私がいつもいいね押しているフォローさんで、私は数秒固まりそして全身が赤くなってしまう。

 まさか氷雨くんだっただなんて知らなかった。氷雨くんはずっと私だって気づいてくれてたのに、なんで今まで気づかなかったんだろう。


「今までしてきた行為は許さなくていい。揶揄っていたのは、その、朝峰に気づいてもらいたからだ。それにこの前の夕日の写真、すげえよかった」

「ごめんなさい、気づけなくて」

「いいって。それじゃあ合宿でな」


 鞄をとり帰って行く氷雨くんで、氷雨くんの一面が知れてよかった。ちょうどすれ違いで真昼くんが教室に戻って来る。


「氷雨に何か言われなかった?大丈夫?」

「平気だよ。帰ろう」


 真昼くんはまだ言いたげそうな表情であっても、一緒に帰って合宿のことについて話してた。


「合宿中はスマホ禁止なんだよね。写真、撮りたかったな」

「自由時間は返してくれるみたいだから、その時に写真いっぱい撮ろう。合宿先って伊豆だから絶景な場所たくさんありそう」

「うん。楽しみすぎて、なかな寝付けそうにないかも」


 僕もと話していて合宿中は何も起きないよねと思いながら、真昼くんと一緒に寄り道をしていく。そうだったと私は鞄から取り出し、あるクーポン券を渡した。


「これって」

「知り合いがね、クーポン券の束を貰ったらしくて、いろんな人に分けてるみたいなの。私も何枚か貰ったからお裾分け」


 本当は本人から貰ったとは言えず、ありがとうと少し小さく言う真昼くん。本屋さんで見たあの表情を思い出し、渡さないほうがよかったかな。

 そう思っていたら、真昼くんがやきもちを焼いていたことを言い出す。


「この前、陽羽ちゃんが見てた人がかっこ良すぎて、こういう人がタイプなのかなってやきもち焼いてた」


 ぽっと赤くなり、恥ずかしすぎて真昼くんに勘違いされていただなんて。勘違いを正すために伝えてあげる。


「たまたま、靴を作ってくれた店長さんなの。デートの時に履いてる靴」

「そう言うことだったんだ。僕、こう見えて嫉妬しちゃうから、陽羽ちゃんに近づいている男が気になりすぎちゃって。特に透先生は」

「伊宮先生はただの知り合いだからなんもないよ」


 冗談混じりで言ったんだろう真昼くんと笑い合い、駅に到着してしまって、合宿でとお互い言い合いながら、電車に乗った。夕哉さんとあれから全然会えてないけど、元気にしてるかなと、ふとSNSを探してしまう。

 お店の公式アカウントがあり、私はフォローをした。お洒落な靴がたくさん載っていて、今度はどんな靴を頼もうかなと見ていく。



 陽羽のことを忘れようと依頼を増やしてみるも、陽羽のことを忘れることができず、しかもあいつの顔が夢に出やがった。しかも連続で夢に出てくるってことは何かの暗示しか考えられない。

 ベッドから降り、カーテンを開けると夏だと言うのに怪しい雲空となっている。


 顔を洗い食卓へ入ってみると、親父が朝食を頬張りながら新聞を読んでいた。その一方姉貴はまだ寝ているようでここにはいない。玲と飲みすぎたんだろうと、俺の席に座りいただきますと言って朝食を頬張る。


「夕哉」

「なんだ?」

「陽羽ちゃんの学校が受験合宿で伊豆に行くそうだ。お前は行かなくていいのか?」

「接触禁止命令受けてるから会いたくても、会わせなくしたのは親父じゃんかよ。伊豆まで行く必要がどこにあんだ」


 夜瀬組が行くとしてもかと言われ、どうせこっちも動いてんだろともぐもぐする。俺は少し気になったことがあり、親父に聞いてみた。


「あのさ、陽羽の彼氏の情報って手に入ってる?」

「紗良から情報貰っているが、ごく普通にいる一般人だとしても、家庭に事情を抱えているらしい。父親は他界し、母親は遊びまくっているようだ」


 そういう家庭に育ったからとはいえ、あの表情は一体何を意味している。夜瀬組と関わりがあるとかはないから大丈夫だとしても、もやもやが晴れない。


「玲から貰った情報も掴めたとか言ってた?」

「陽羽ちゃんを連れ去ろうとした連中は一般人だったそうだ。しかも盗難車だったらしく、紗良がすでに通報をしたから問題はないだろう。ただ油断はできない。あれが序盤だと考えれば、夜瀬組が必ず動き出す」

「伊豆で何かが起きてもおかしくはないってことだよな。玲たちがもちろん伊豆に行ってくれるんだろ」

「玲ちゃんのこと呼んだ?夕坊」


 いるじゃねえかと玲に飛びつかれ、気配消されていたことに気づき、やめろと言うも玲は俺から離れてはくれなかった。


「飯が食えねえから、離れろ」

「玲ちゃんが作ったご飯、美味しい?美味しい?」


 親父なんとかしてくれと言うも、平然とお茶を飲んでいて、これは助けてくれないパターンだな。少しして玲が離れてくれて

、シャーッと威嚇しながら残りの朝食を食べる。


「玲、支度はできているんだろう」

「準備は整ってますよ、組長。夕坊は安心して靴屋やってな。組長直々が動いてくれるし、ついでに伊豆温泉にも入って来るから、お土産待っててね」

 

 完璧、旅行気分で行くなら俺も行きたいし、温泉入りたい。ただ旅館は刺青厳禁だから、裏をとって入るんだろう。


「それとたっぷり陽羽ちゃんの写真撮ってきてあげる」

「盗撮はやめておけ」


 自分が言うのもあれだったが、親父と玲と組員は伊豆へと向かってしまい、なんか腑に落ちねえと思いつつ、仕事場へと向かった。


 店を開けていると夕哉と紗良の声がして、こんな時間帯に来るだなんて珍しいな。


「よっ紗良。もしかして靴依頼か?依頼が殺到してて、作るのに時間かかりそうだけど」

「違う。これを夕哉に渡したくて」


 なんだと角形封筒を渡され、中に入れよと言いつつ、中身を確認した。それは陽羽の彼氏情報で、名前が南雲真昼。真昼という名に見覚えがあるような、ないようなって感じだ。

 親父が言っていた通りの内容が記されていて、なんでこれを俺に託そうとしたのか。


「もちろん、陽羽の彼氏を疑ってるわけじゃない。ただ妙なんだよね」

「妙?」

「うん。あたしも曖昧な記憶だから、あんま覚えてないけどさ。南雲と言うのは母親の名字。父親が誰なのか探ろうとも、その情報は全く掴めない」

「父親が他界したからじゃないか?」


 それを告げると紗良は思い詰めた表情をしていて、仮に夜瀬組が知られたくないから情報を掴ませなかったとしたらどうだろうか。


「他界したとしても情報は必ずあるから、お母さんに今、頼んでる。どれくらいかかるかわからないけど、情報が掴めたら夕哉に伝えるね」

「わざわざありがとな。陽羽は今頃伊豆に行ってるから、接触することはねえよ」

「あたしが送っといた写真みてみ。お友達が増えたみたいだよ」


 まじでと喜びが溢れつつ紗良が送ってくれた写真をみると、やけに男増えてないかとカチンと来てしまう。なぜならうるさい伊宮透に、陽羽の彼氏である南雲真昼。それから身長高めの男子に、女子が一人写っていた。


「陽羽が言うにね、この男子は陽羽が以前からフォローしている男子だって発覚したっぽい。そんで最近仲良くなった女子なんだって。それに陽羽から言われてることがあって、彼氏がどうしてもあたしに会いたいらしいの。だからさ探りを入れるために、一緒に会わない?」

「いや、やめとく。以前、こいつに言われたんだよ。付き纏い続けるなら通報するって」

「あたしがいるから大丈夫じゃない?」

「俺が昏籐組であることを知ってた。ここで会ってしまったら、嫌なことが起きそうだから、会ったらどんなこと聞かれたのか教えてくれるか?」


 紗良は結構驚いていて、表向きは暮地としてやってるにも関わらず、南雲真昼は昏籐と発していたからな。必ず何かが起きるかもしれないから、できるだけ早めに解決はしておきたいものだ。


「夕哉の正体を暴ける奴って警察か夜瀬組以外考えられないけど、何かやらかしたの?」

「なんもしてねえよ」


 基本手荒な行動は起こしていないから、気づかれないことが多い。ただ南雲真昼は俺の正体に気づいていたことになる。


「了解。探っても普通だったら、ちゃんと認めてあげなよ」

「わかってるよ。んじゃ仕事入るから、気をつけて帰れな」


 うん、それじゃと紗良は帰って行き、この資料は大切に保管することにし、靴を作成していった。



 夕哉、本当に大丈夫かなと少々心配になりつつ、夏休みが始まったと言うのに、陽羽は受験合宿に行っちゃった。あたしの学園はそういうことはないから、独学で勉強しなければならない。

 図書館に行って受験勉強に励もうかなと歩いていたら、あれはとつい尾行をしていく。あれって夕梨さんが言っていた破島淡だよねと尾行し、路地裏っぽいところに入ったから、行ってみると破島淡の姿がなかった。


 見失ったと引き返そうとしたらプシュッとスプレーをかけられ、倒れそうな時に目の前にいた人が支え眠りについてしまう。




 目を覚ました場所は使用されていないクラブっぽい場所で、んんっんんっと縛られた紐を解こうとしても無理だった。目の前には上品なスーツを着てオールバックにサングラスをかけた破島淡がいる。破島淡は煙草を吸いながらあたしの頬を掴んだ。 


「あんたの尾行はなかなかだった。人通りが少ない場所は気をつけろと言われなかったのか?」


 煙草の煙をあたしの顔に吐き、喋りたくても口が塞がれていて喋ることができない。破島淡は煙草を吸い殻に入れ、手をポキポキと鳴らし始める。

 何をする気なのと、恐怖心が大きくなるばかりで、目を瞑った時のことだった。


 見知らぬ男性の悲鳴が上がり、バタンと倒れる音が聞こえる。恐れがありながらも、目を開けたら知らない男性が目の前に倒れていて、その上に破島淡が座っていた。

 

「それで我をつけてきた訳を聞かせてもらおうか?おい、外してやれ」


 はっと破島淡の仲間がいたらしく、口が自由になったのはいいけれど、話したところで解放されるかわからない。それに夕哉を誘き出すためにこうなっているのなら、相当危険だ。

 

「そんなに我を恐れているとはな」

「違う」

「ほう。なら言え。状況次第であんたをどうするか決める」


 選択肢を間違えれば、あたしは絶対破島淡に殺されるのは確実。この短期間で探偵として動いていたから、絶対に間違えないようにしなくちゃ。慎重にと唾を飲み込み、発言する。


「セライヴニは会員制のはず。なぜ入れたの?あそこは昏籐組が仕切っている店。入ったとしても店員に止められた。前科があるあなたは入ることは許されていない」


 煙草を再び吸う破島は煙を吐きつつ、どうやって入ったのかを教えてくれた。


「あそこは隙がある。その隙を使って入った。それだけのこと。それともなんだ?依頼主がまさか朝峰陽空か」


 名前を出していないのに、破島淡はいかれた笑い方をし、あれを見せてやれと何かを指示している。何とタブレッドを見せられた写真に、言葉を失った。

 破島淡何を考えてるのと、噛みつこうとしたら、あたしの上に破島の仲間が乗り、口を再び塞がれてしまう。


「買取主が陽空をご要望なんだ。いい身体しているし、倍に稼げる。あんたはそれに気づいてしまった。だからあんたは」


 こんなことしていいはずないし、これは人身売買で違法だ。このこと陽羽のお父さんに報告しなくちゃならない。


「消えてもらうか、それとも生きていたいのなら、言うことを聞いてもらおうか」


 絶対に破島淡の言いなりにならないと、破島淡を睨んでいたら、破島淡の仲間がサツが来ましたと言う。破島淡は舌打ちをして、最後にあたしに告げた。


「我と話したことを警察に流したら、あんたの身内がどうなるか覚えておくんだな」


 そう言って破島たちはいなくなり、刑事がぞろぞろと入って来て、女性刑事が紐を解いてくれて、口は自分で外す。


「この人に襲われたでいいかな?」

「目を覚ました時には倒れていた状態でした」

「そう。あっ朝峰警部、こっちです」


 陽羽たちのお父さんも来てくれたことで、他の刑事さんはまだ周囲にいるかもしれないと探しに向かった。


「紗良ちゃん、大丈夫か?」

「はい」

「みる限り、あの人が犯人ではなさそうだが、覚えている限りで構わない。教えてもらえないか?」

「破島淡を見かけて、尾行したんです。でも破島淡じゃない人だとわかり、立ち去ろうとした際、襲われて」


 どれくらい信じてもらえてくれるかわからずとも、陽羽のお父さんはそうかと言う。本当は陽空ちゃんのこと言いたいけれど、例の場所を突き止めてからちゃんと伝えようと決めた。

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