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78羽

 疾ちゃん家に到着し、疾ちゃんが私を抱きしめるから、雪たちががみがみ言うも、真昼くんが止めに入っていた。千ーちゃんも、紗良も、翠もいてくれて、それぞれハグする。

 すると翠だけちょっと長い気もして、翠と声をかけるもなかなか離れてはくれなかった。

 そしたら真昼くんに火がついてしまい、そろそろと翠の腕を掴み離れるも、翠と真昼くんはばちばちしている。

 

 疾ちゃん家の応接室に案内してもらい、疾ちゃんはお父さんを呼んでくるみたいだ。


「陽羽、心配したんだよ」

「ごめん。ばたばたしてて連絡するの遅くなっちゃったの。紗良、お姉ちゃんどうだった?」

「結構落ち込んでた。そばにいられなくてごめん」

「いいよ。紗良と翠もお疲れ様。まるさんから事情は聞いてたから」


 そしたら二人は苦笑いしつつ雪を睨んでいて、本当は手伝いたかったんだろうなと感じてしまった。話していたら疾ちゃんと疾ちゃんのお父さんが入ってきて座ってもらう。


「陽羽ちゃん、話と言うのは?」

「はい。昨晩、鯨波流史郎と話し合い、ゲームを行うことになったんです」

「それ聞いてないよ!」


 紗良が言うものだから、落ち着いてと翠に言われる。疾ちゃんはどんなゲームをと私に聞き、お兄ちゃんが代わりに話を進めていく。


「五日間。春陽が昏籐組の縄張りを逃げ回り、鯨波流史郎が指名した五名が春陽を確保したらゲームは終了。仮に春陽が勝った場合、春陽の要望を聞いてもらう形となっています」

「もちろん、私が指名した五名は鯨波流史郎が指名した五名を全員確保できたらゲーム終了にもなります」

「逃げ切れる自信はあるの?」


 千ーちゃんに聞かれ、逃げ切れる自信はあると千ーちゃんに伝えた。


「逃げ切れる自信はある。そこで学園長に協力してもらいたいことがあります。その五日間だけ学園を使用させてもらっても構わないでしょうか?」

「全校を休ませると言うことか?」

「できればそうしたいです。抗戦になる可能性もあるので、生徒たちは休ませてもらいたい。私は守城学園に五日間、身を潜めようと思っていて」


 無茶なことを言っているのはわかってる。疾ちゃんのお父さんは少し悩み、難しいのならば町中を駆け回るしかない。すると疾ちゃんのお父さんが結論を出してくれた。


「よかろう。陽羽ちゃんの体力面を考え、学園を使用させる。日程は決めているのか?」

「いえ」

「なら夏休みの間にしてくれ。そのほうが生徒が使用しないようにできる」

「はい。日程が決まり次第、ご連絡させていただきます。それからもう一つ、私はこれから朝峰陽羽としてではなく、星霜春陽としてやっていきます」


 そうかと疾ちゃんのお父さんは少し寂しそうな顔立ちでいた。紗良も翠はだからかと呟き、その場にいられなかったのはもう私は朝峰家の人間ではなくなったという意味を示している。


「なら春陽ちゃん、絶対に負けないでもらいたい」

「全力で逃げ切って見せます」


 学園の許可も得られたことで後はどうやって逃げ切るかが肝心となる。そしたら疾ちゃんが私に質問して来た。


「ちなみに春陽は誰を指名するつもり?」

「えっと、真昼くん、雪、お兄ちゃん、透に夕哉さんを指名するつもりだよ」


 ならと名乗り出したのは疾ちゃんと翠で、俺たちも参加したいと言い出したのだ。


「俺は黙って見てられないし、真昼が参加するなら参加したい」

「僕も犬の面倒は見飽きたし、春陽を全力で守れる自信はある」


 翠の言葉で雪に火がついてしまい、まるさんとお兄ちゃんが必死に留めていた。真昼くんは笑いを必死に堪えている。


やつがれのペットは貴重な存在だ。翠は黙ってやつがれのペットの面倒だけを見とけ」

「嫌だ。そもそも僕は密偵組織の一員。こんな貴重な情報が取れそうな時に犬の面倒なんで見てられない」


 今でも翠に襲い掛かろうとしている雪で、雪も引き下がるつもりはないんだろうな。そう考えると誰かと入替する必要がある。そしたら真昼くんのお父さんがある提案をした。


「春陽ちゃんが一人で逃げるとまでは言っていないんだよね?だったら春陽ちゃんを守る側を決めて、その五名は鯨波流史郎が指名した五人の確保をすればいいんじゃないかな?」


 それを提案したことでここにいる全員が私を守る側に回りたいと言い出す。ここにいない透と夕哉さんも含めて話し合う必要があるようなと感じてしまった。


「ならくじ引きとかでもやれば?」

「そうだよ。透も夕哉くんも絶対、春陽ちゃんを守る側に回りたいはずだもん。ここは平等に」


 叶恵ちゃんとくれのさんが言ったことで冷静さを取り戻す真昼くんたちであり、電話に出てくれるかなと夕哉さんに連絡してみる。

 少ししてどうしたと夕哉さんの声が聞こえ、さっきのことを打ち明けた。そしたら夕哉さんがある提案を持ちかける。


『昏籐組の縄張り内だとしても油断はできねえぞ。あっちには裏切りの玲と黎明がいる。どう仕掛けてくるかはわからないが、春陽を偽った人物を用意するのも手の一つだぞ』

「だけど春陽はハンデがあって」

『そこは車椅子とか使えば良くないか?春陽の体力は前半持たせつつ、五つの町にばらばらになってさ。もちろん、春陽は隠れたい学園にいればいいんだし。後半になったら相手が確実に絞ってくると思うから、春陽を守るために近くで待機するとかもいいかもしれない』

「なるほどね。車椅子に乗ってハズレを与えればいいってことか。なら叶恵と紗良ちゃんにも協力してもらおうかな」


 私はそこまで考えてはいなかったけれど、いいかもしれない。


『んで春陽はどうしたい?』


 夕哉さんからの質問で、全員が私を見た。私が出す答えはーーーーー。



 藤の病室にいて、このまま目を覚さないんじゃないかと大きな不安が出てしまう。想も珍しくクマが出ていて、あまり寝れていないんだろう。


「想、家に帰って少しは休め」

「純連も休まないと」

「俺はもう少しいたい。藤が起きた時、誰もいなかったら困るだろ」


 陽っちゃんが一日でも早く来てくれれば、藤はきっと目を覚ましてくれる。そう感じてた。それでも陽っちゃんが来れない理由が存在し、陽っちゃんの連絡が来るのを待つしかない。 

 藤の寝顔を見ていると、引き戸が開きオーラ暗すぎだろと賢介が入ってくる。


「二人ともそんな顔してたら、藤太郎が起きた時、ショック受けるぞ」

「賢は呑気すぎ。少しは心配してあげてよ」

「心配してるに決まってるだろ。あのお方からメッセージをもらった」


 賢介は俺たちにスマホを見せてくれて、その内容を確認した。それは春陽との勝負らしく、あのお方が指名した五名は春陽を確保する側、そして陽っちゃんが指名した五名がその五名を確保したら終了となるらしい。

 その五名に注意しつつ、陽っちゃんを捕まえればいいってことか。


「それであのお方が指名した五名って誰だ?」

「玲、黎明、俺、純連、流葉になった。想は藤のそばにいてほしいんだと」

「日程は決まってんの?」

「まだらしい。陽っちゃんかもしくはシルバーウルフのボスからの連絡待ち。とにかくその五名は召集かかってるから、想一人でも平気か?」


 任せてと言うも想も休んでもらいたいところだった。行ってくるなと想とそれから藤に伝え、賢介と一緒に病室を後にする。


「本当に陽っちゃんがあの人と取引を?」

「らしい。なんで俺が指名されたのかは知らないけど、藤のためにやんぞ」


 珍しい。いつもなら藤のためにとか言わないのにな。まあ彼女の影響かはわからずとも、賢介がいてくれるのは心強かった。




 ヴァイオレットのアジトへと行き、すでに玲たちが集まっている。あのお方はいないようでおそらく親父と一緒にいるのだろう。

 適当に座り流葉が会議始めますと部屋が多少暗くなりスクリーンを見ながら説明を聞く。


「昏籐組の縄張りはこの五つの町を仕切っています。まず一つ目が朝峰家がある町、二つ目は玲さんが経営していたセライヴニがある町、三つ目は昏籐組若頭が経営しているHAN・RA・SHOESがある町、四つ目は夜一くんと真昼くんがバイトしていた町、そして五つ目が守城学園がある町」

「おそらく春陽ちゃんは、一日に一つの町に絞ってる。どこの町にいるかは把握できないが一日目はそれぞれの町で陽っちゃんを見かけたら報告のみ」

「すぐ捕まえないってことか?」

「せっかく春陽ちゃんが取引をしてくれたことで、流史郎さん一日は多めに見てあげてほしいと言われたんです」


 意外と優しい一面あるんだなと流葉の話を聞いていく。


「春陽ちゃんに集中したいですが、春陽ちゃんが指名した五名に捕まればアウトです」

「僕ちんが思うに春ちゃんが指名してくるのはこいつらだと思うんだよね。えい」


 黎明がポチッと押し町の情報ではなく写真と名前が入っている映像に切り替わった。

 一人目は陽っちゃんの元彼である南雲真昼、二人目は流葉と一緒に働いていた伊宮透、三人目は両親がFBIである翠、四人目は春陽ちゃんの兄であり俺たちのマネージャーだった冬季、そして五人目は昏籐組若頭夕哉。

 

 予想が当たればいいけど、違う人だとすればどう対処していくかが肝心となる。すると玲があることを言い出した。


「俺の読みだが、夕坊は俺たちを捕まえず春陽ちゃんを守る側に回ると思うから、五人目はシルバーウルフの雪あたりが来るんじゃないかって気がする」

「確かに陽っちゃんが一人で五日間逃げ切れるとは思ってない。誰かの力が必要となれば車椅子か車で移動するかもしれない。組員を使用とかは平気なんだっけ?」

「春陽ちゃんが言うに、春陽ちゃんを捕まえられるのは指名した五名のみ。組員をあちこちに配置し情報を得るのは可能とのことでした」


 さすがに五つの町を五人で探せとなれば五日間じゃ足りないもんな。


「俺はとにかく俺が持っていたセライブニがある町で春陽ちゃんを探してみる」

「了解。ならそれ以外の町を振り分け」

「僕ちん、夜一がバイトしてた町がいい」

「じゃあそこで。流葉と賢はどうする?」


 どこでもいいと言われてしまい、賢介は守城学園にも通ってたくらいだからそこを任せるとして、流葉は警察官でもあったから全て頭の中に地図は入ってるんだろう。だったら俺はと答えた。


「なら俺は夕哉の店がある町にするよ」


 本当にその町にいるかは不明であっても一日の様子を見て、変更していくしかないな。


「一ついい?」

「どうした賢?」

「仮に俺たちの読みが外れた場合も踏まえて言うけど、俺たちが予想している五名が陽っちゃんを守り、それ以外の奴だとすればすぐ捕まるリスクが高いと思う」

「確かにそうですね。春陽ちゃんを守る側がいると想定すれば、私たちを捕まえる五名は別の人物かもしれません」


 確かにこの五人は陽っちゃんを思っているのは確かなことだ。そうなると考えられるのは陽っちゃんやその五人をサポートできる人物。

 鶫や昼秋さん、それにシルバーウルフにいた星河輝に影山迅かもしれない。


「確保されないようそれぞれヴァイオレットと組員は配置につけさせたほうがよさそうだな」

「ですね。私たちの目的はその五名から逃げつつ、春陽ちゃんを捉えることですから」


 玲と流葉の言葉で俺たちは頷き、日程が決まるまでは睡眠をしっかりとっておかなくちゃな。


「ねえねえ、僕ちんたちが勝ったら何かご褒美くれるのかな」

「さあな。確保されたらそのまま連行される場合もあるからなんとしてでも逃げなくちゃならねえ」


 確保ということは署に連行されるということで間違いはないのだろうか。そこは詳しく聞いておきたかったものの、負ける気は全然ない。

 藤のために頑張らないとなと話を進めていると、千花が慌てて入ってくる。どうかしたと賢介が聞いたら、これ見てとタブレットを見せてくれた。

 そこに写っていたのは夫婦であり、その夫婦が何者かすぐわかり星霜家ご夫婦。


「どこから?」

「普通にネット記事見てたら清掃屋として動いていることがはっきりしたの。これあの人が見たら大事になりそうで…」


 仕掛けるというのはこういうことだったのかと思い、清掃屋とはただの清掃のお仕事のようだった。おそらく従業員は叔母さんたちがかき集めた人たちなのだろう。


「あの人が見ないように、流葉削除頼める?」


 任せてとそれに取り掛かってもらい、叔母さんたちも動き出すに違いない。あの人の危険が悪くならないように気をつけなければならないな。



 藤が一日でも早く良くなりますようにと願っていても、藤は限界を超えている気がしている。藤、諦めないでと藤の手を握り、藤の寝顔を見ていたら、誰かが入って来た。この感じと振り向くと、そこにいたのは夜一。


「何しに来た?」

「見舞いに決まってんじゃん」


 そう言いつつ写真を撮るからやめてとスマホを取り上げようとするも避けられる。送信っとと夜一は誰かに送ったらしく、でてってよと伝えた。


「出てって」

「出て行かないというか、本当に再発したのかちゃんと確かめておきたかったんだよね」


 夜一が今から何をするのか知り、藤を庇うも何もしてこない。


「何?俺様が藤太郎に手を出すとでも思った?」

「そんな感じだったから」


 夜一はなんもしないよと丸い椅子に座り、何しに来たんだかと座った。沈黙が続く中でも夜一はずっと藤を見つめている。早く出てってくんないかなとイライラしてたら、陽っちゃんと言いながら藤が起き上がった。


「藤、具合は?」

「んー点滴打ってるから少しは楽かな…。純連と岩ちゃんは?」

「あの人の指示で出かけちゃってる」

「そっか…夜一来てたんだ…。ごめん、今、夜一と張り合えることはできない…。陽っちゃんから連絡は?」


 ううんと首を横に振ると仕方ないよねと涙目でいて、早めに陽っちゃんに会えるよう努力はしたい。


「伝えておけば陽っちゃんと行きたい場所、行けたかな」

「今からでも遅くはない。今はとにかく安静に。大丈夫、陽っちゃんは必ず来てくれる。それまで頑張ろう」


 うんと藤は目を閉じ眠りに入ったことで、夜一が立ち上がる。


「これでわかったでしょ?」


 お大事にと言いながら夜一は去って行き、藤の手を握りながらいつの間にか寝ていた。

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