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77羽

 昨日、まるさんから雪が暴走したとメッセージを見て、最初はお兄ちゃんに止められたけれど、鯨波流史郎と取引はできた。後はどうやって出てくるかが肝心となるも、これを乗り切ればいいと純連さんとのやり取りのチャットを削除しておく。

 ノックが聞こえはーいと扉を開けると真昼くんで、昨日話したことが少々気に食わなかったようだった。


「春陽ちゃん、負ける気は全然ないけど、本当にこのままでいいの?」

「うん。そうじゃなきゃ、また同じことが起きると感じちゃったの。これ以上、誰一人殺させないためにも、やるしかない。真昼くんを指名してもいいかな?」

「もちろん。相手が誰であろうとも絶対に捕まえるし、誰一人春陽ちゃんには触れさせない。構成員も全力でやってくれるみたいだよ」

「お願いね。そろそろ行こ。真昼くんのお父さんたちがいる家に」


 鞄を持って一階へと降りるとお兄ちゃんが待ってくれてて準備万端のようだ。お兄ちゃんが運転をし出発する。今頃告別式だよねと車から見える景色を眺める。

 本当はそこにいたかったのに、お別れもできず、正直辛いなと感じていると真昼くんが手を握ってくれた。大丈夫、私は一人じゃないと握り返していると、お兄ちゃんに言われる。


「復縁はしないの?」


 その言葉に私たちは目を逸らして多分体温が上がってると思った。お兄ちゃんは素直じゃないんだからと言いながら笑われてしまう。


「お兄さん、そこは触れないでくださいよ」

「ごめん。雪から聞いてて、真昼の恋壊したって嘆いてたから」

「雪叔父さんが?」


 そうだよと言っていて、真昼くんはもっと赤くなってしまった。真昼くんと一緒にいたら、毎日が楽しいのは分かってる。でも私には決めている人がいた。

 それを分かっている上で、真昼くんはいつも私と接してくれていたことに感謝しかない。


「二人の幸せが雪昼の幸せでもあるから、二人には絶対幸せになってもらわないとね」

「お兄ちゃん、それ以上は」


 本当のことだよと言いつつも、真昼くんは沸騰しそうな勢いで熱を感じてしまった。





 星霜家のもう一つの家に到着し、車から降りているとぎゃあと叫び声が聞こえる。どうしたんだろうと家の中へ入ってみたら、鶫が廊下で倒れていた。

 叶恵ちゃんとくれのさんがもの凄く笑っていて、真昼くんのお父さんは苦笑いしている。


「どうしたんですか?」

「あんまり使われていなかったことで、ねずみの棲み家になってちょうどねずみの親子が通りかかったんだよ。それで鶫はこの通り」


 なるほどと私たちも苦笑いして、叶恵ちゃんとくれのさんが春陽ちゃん来たよと耳元で伝えるもしばらくは起きなかった。


 鶫が起きたのはそれから数分後で、ぶうぶう言いながらも昨日の件で話し合う。


「相手はおそらく、春陽ちゃんと親しかった人物が指名されると思う」

「玲さん、賢介さん、純連さん、想さん、それから佐田さんが指名されると思います」

「もしかすると夜一があっち側につく可能性も高くはないぞ」


 夜一くんは確か実家に戻ってみるとかでここにはいない。夜一くんがあっち側についたとしても、ここは真昼くんが夜一くんを捕まえるのだろうと感じる。

 

「春陽ちゃんは誰を指名するか決めてあるんだよね?」

「はい。真昼くん、雪、お兄ちゃん、それからここにはいないですけど、透と夕哉さんを指名しようかと」

やつがれを指名してくれるとは光栄だ。シルバーウルフも全力で動かすから心配はいらないだろう」

「そうだとしても、昨晩のあれは少々やりすぎなんじゃないかな?」


 くれのさんに言われ、お兄ちゃんと真昼くん以外が私の顔を見た。みんなが心配してくれるのはとても嬉しい。けれど今の現状、再び同じことが起きるのではないかと感じちゃったから、そのことを告げる。


「このままいたとしても、再び私の大事な人が次々と失うと感じたの。失わないために、たとえゲームが終わったとしても、相手が何をするかはわからない。それでも私の要望を呑んでくれている以上、それに全力で応えたいと思ってる」

「止めたかったけど、雪が暴走するかもしれないと感じたから、春陽から電話をかけさせた。僕だったら絶対に出なかったでしょ?」

「そうだな。すぐポケットにしまっていたものだ。勝つためにもどうやって春陽は逃げるつもりだ?」

「そこは考えてある。昏籐組の縄張りを把握して、五つの町が昏籐組の領域だと教えてもらった。一日ずつ、その町にいようと考えてる」


 お兄ちゃんが事前に用意してくれた資料を広げ、HAN・RA・SHOESがある町、玲さんが経営しているセライブニがある町、守城学園がある町、真昼くんがバイトしていた町、そして朝峰家がある町が昏籐組の縄張り。


「ふうむ。そうとなると春陽を守る人と捕まえる人を決めなくてはならないのではないか?」


 鶫に言われ真昼くんが説明をする。


「一日目の様子を見て、相手側がどう動くかを確認して、調整はしていく。最初は僕が春陽ちゃんを守る。それに春陽ちゃんはハンデがあるからすぐ見つかるかもしれない。そこで最初は車椅子で様子見る。もちろん変装はする」

「もし五人揃って来たら、構成員と組員が止めつつ逃げてもらう形にしようかなと」


 真昼くんとお兄ちゃんが説明すると、ちょっと疑問と手を挙げたのはまるさんだった。


「これって警察には話してあるんか?伝えておかないと後々面倒なことになると思うんやけど」

「そこは輝さんの力を借りようと思ってるよ。それに元々暴れることは伝えてくれてあるみたいだからなんとかしてくれると思う」

「それならえぇんやけど、春陽ちゃんの育て親が亡くなった今、昏籐組は警察とうまくやれるのかが不安なんや」


 一理あるかもしれない。今まではそうだったかもしれないけど、お父さんが亡くなって昏籐組の立場が悪くなるんじゃないかと感じる。

 沈黙となってしまい、みんないい答えが出ないでいると、お兄ちゃんがポンッと閃いた。


「ならさ、守城学園に絞らない?全校は一週間休ませてもらって」

「それが一番いいかもね。迷惑にならないし、学園長に話せば貸してくれるよ」

「さすがくれの。いいアイディアだね。どうする?このこと伝えるか、それとも相手は五つの町を歩き回ってもらうか。そこは春陽が決めればいい」

「相手には五つの町を歩き回ってもらう。ただ学校が休みってわかったらすぐ学校に来るかもしれない。そこは疾ちゃんのお父さんと交渉したい」


 そうだねとみんなが言ってくれて、その方法で動くことになった。守城学園は結構広いから乗り切れる自信はある。後は夕哉さんと透に伝えて、疾ちゃんのお父さんに相談かな。


「では春陽、疾ちゃんという奴と連絡を後でしてくれたまえ。我が輩たちはできる限りのサポート準備をしておく」

「ありがとう、鶫。みんな、当日よろしくお願いします」


 頭を下げみんながもちろんと言い、疾ちゃんと連絡をすることにした。



 衝撃なことでまだ受け入れるのには時間がかかるも、まさか陽羽のご両親が亡くなるとは信じられなかった。しかも葬式に陽羽の姿はなく、俺たちは心配という言葉が大きく膨れ上がっている。

 伊宮に聞いても教えてはくれなかったから、きっと大きなことがあったから、陽羽はここにいないと勝手に理解していた。


 後で陽羽の姉ちゃんに聞くとしても、顔はすげえことになっていて、話しかけるタイミングがない。今は休んでもらい少ししたら聞くか。


「疾太…」

「俺たちは何もできねえよ。紗良も翠も何も聞いてないんだよな?」


 全くとハモる二人であっても、二人は何かを知っているような顔立ちだった。俺と千夏は小学生から幼馴染関係ではあるものの、情報量は紗良と翠が多いんだろうな。

 俺たちにも話してほしい部分はあるけれど、きっと藤太郎が絡んでるんだろうと感じる。


 告別式が終わり、陽羽の姉は彼氏っぽい人と一緒に帰られ、伊宮は夕哉と夕哉の家族と帰られた。俺たちも帰るかと車に乗ろうとした時、スマホが鳴る。

 誰だと確認したら陽羽からで、父さんに用事があるらしい。


「父さん、陽羽が話したいことがあるって来てるんだけど」

「ならうちに来なさいと伝えなさい」


 わかったと陽羽に俺ん家で待ってるとメッセージを送り、家に帰ることになった。



 陽羽のいない葬式が終え、タクシーで家へと帰る。あたしは淡に寄りかかり、まだ涙が溢れそうだった。


「淡、あたし…」

「陽羽はわかってくれる。どの道、あぁするしかなかった。いつか分かり合えるその日まで、このことは誰にも言わない」

「そうだとしても、お父さんとお母さんが守り続けてきた陽羽は悪い方向へと向かってるような気がする」

「それを防ぐのが陽空の役目ではないのか?」


 そうだとしても、あたしは幾度も陽羽を憎み嫉み、そして言っちゃいけない言葉を発した。きっともうあたしのこと姉として見ていないと感じる。

 なぜなら本当の兄が現れ、その兄はとても陽羽に優しかったことだ。なぜあたしは陽羽を受け入れられなくなってしまったのだろうかとあの日以来考えてしまっている。


「ねえ淡」

「なんだ?」

「実家は昏籐組の縄張り。しばらく帰るつもりはないけど、いつでも帰って来ていいと伝えて」


 伝えておくと淡は言ってくれて、私は疲れでそのまま少し眠ることにした。



 陽空が寝たのを確認しスマホをいじり、ある人に電話をかける。鳴らし続けると合言葉をと男性の声が聞こえ合言葉を伝える。


「冬の月と春の太陽、霜に星する」

『よろしい。用件はなんだ?』

「無事に葬式が終え、清掃も完了しました。そちらに届くと思うので、後のことは頼みます」

『承知した。淡、絶対に気づかれるな。あの人を裏切ったら、確実に消される。それだけは避けておけ』


 はいと伝えるともう一つ言われた。


『もうすぐ準備が整うが、万が一に備え何がなんでも、春陽がしようとしていることは絶対に避けなければならない』

「すでに報告が?」

『妻の方に連絡がいっているようだ。それを塞がなければ、東京は終わりだと思え』


 承知しましたと伝えるとではなと切れてしまい、春陽、つまり陽羽が何かをしようとしているってことなのだろう。おそらく召集がかかっているのはそういうことだと認識すればいいのか。

 陽空は知っておいてほしくない情報だとしても、陽空も来るよう命じられそうだな。


 


 数分後、今住んでいる場所に到着し、従業員に遺骨等を運んでもらい、我は陽空を抱っこし寝室まで運ぶ。大人しくしていたがくが話したそうな雰囲気で、陽空をベッドに寝かせた後、我の部屋で話を聞くことに。


「破島、以前話していたことで私が全てを終えたらこれを陽空に渡してくれないか?」


 それは手紙であり、おそらく読まずに破り捨てるのではないかと思ってしまった。


「これが償いとは思ってはいない」

がく、あれに挑むつもりか?」

「いや、私は参加しないが、陽空があのお方の手の中に入るのは嫌でね。あのお方の弱みを潰す」


 それをしたらがくはあのお方に消されるのは確実であっても、がくがやるとしたら止めることはできない。


「これは預かっておく」


 感謝すると言われがくはそれの準備をしに向かわれ、机の引き出しにその手紙を保管し、陽空のそばに寄り添うことにした。



 久々に家に帰ったものの誰一人いなく、あのお方と一緒にいるのだろうと感じた。烏丸に連絡してみるも音信不通で

、何してんだよと自分の部屋へと入る。

 親父の居場所は海星学園かそれとも別の場所にいるかもしれないな。


 俺様の机には俺様のノートパソコンが置かれてあり開いてみる。パスワードを入力して確認するも使用されていないことがはっきりした。

 烏丸は一体どこへいったんだかとノートパソコンを閉じ、大きな鞄に着替え等を入れる。


 こんなもんかなと鞄を背負い、扉を開けると佐田流葉と入江千花がいた。


「烏丸見てない?」

「組長と一緒にいます。一緒に来てもらえませんか?それとその荷物は置いてください」


 簡単に逃さないってことかと鞄を置き、二人について行くことに。入江千花はともかく、佐田流葉は複雑な気持ちでいるんだろうな。

 車に乗るとそこには黎明がいて、おっひさと言われるも無視した。


「夜一冷たいじゃん。もしかして僕ちんのこと嫌いになった?ねえ、ねえってば」

「しつこい」

「ふうん、やっぱり僕ちんのこと嫌いになったのかぁ。まあいいや。そうだ、目隠し目隠しぃ」


 そう言って視界が真っ暗となり、場所を知られたくはないような感じだった。目隠しをしたまま黎明に聞く。


「あのお方なんか言ってた?」

「いや、なんも。まあお仕置きは来るんじゃないかな?」


 予想はしてるけど、危険を感じたら逃げ切るしかないかも。それから気になったことがあって、聞いてみることに。


「藤太郎は?」

「さあ。なんも情報はないけど、病院に搬送されたとは聞いたよ」


 あれは本当のことだったんだと理解した上で、春陽先輩が変なこと考えてないか少々不安になった。




 車を走らせ数分後、車が停車し降りてと黎明に言われたから降り、目隠しが外される。あまり行ったことがない場所で、周りには鯨のアートがいくつもあった。

 ここが鯨波流史郎が住んでいる豪邸かと三人の後をついていく。歩いていると白髪の女の子とそして真昼先輩の妹が遊んでいて、思わず足を止めてしまう。

 

 なんで真昼先輩の妹がいんだよと立ち止まっていたら、早く夜一と黎明に急かされ行くしかなかった。真昼先輩の妹は安全な場所にいるはずじゃないのか。

 まさか真昼先輩の妹の実父は鯨波流史郎と手を組んでいたとしたら。


 真昼先輩に報告したくても、スマホとパソコンは家に置いて来ちゃったし連絡できない。


 一室の前で立ち止まり入ってくださいと佐田流葉に言われ、その中へと入った。そこには鯨波流史郎と親父に烏丸、それから紫蛇組長までもがいる。


「今までどこにいた?」


 わかってるくせに聞いてくるとはと思っていても、嘘を吐けばどうなるのか目に見えていた。だから正直に伝える。


「昼秋さんの仲間と一緒にいた。春陽先輩も一緒にいたよ」

「春陽はどこにいる?」

「俺様はそこまで知らない。知っているとしたら真昼先輩のみ。ただ昨日、春陽先輩と取引したんじゃないの?」

「あぁもちろんだ。もしかしたら逃げる可能性が高いとこちら側は見ている」


 春陽先輩を信じていないだなんて最低だなと思いながら、昼秋さんに言われていたことを話す。


「昼秋さんから伝言。春陽先輩を奪ったとしても、すでに準備は整ったってさ。なんの準備かは教えてくれなかったけど、今回の件で潰すと言ってた」

「そうか。夢を見すぎているようだな。勝つのは我々のほうだ。お前は本来こちら側についてもらいたいが、今回だけは許す。ただし春陽との取引で春陽が負けた場合、こちら側に戻ってもらう。それでいいな?」


 意外だった。てっきり力づくで俺様をこちら側に付かせるのかと思っていた。


「じゃあ普通に帰っていいわけ?」

「あぁ。それと春陽に伝えろ。ゲームをやる前に、藤太郎の見舞いに行ってやれと」

「伝える。それからさ、真昼先輩の妹なんだけど」

「お前には関係のないことだ」


 やっぱり教えてはくれないかとチラッと烏丸をみるも、烏丸は親父側につくっていうことでいいんだろう。すると親父が立ち上がり俺様の前に来て、常につけてろとブレスレットをもらった。

 へえこれで俺様がどこに行くか監視するってことかよと親父から奪いつけてやる。


「夜一、勝手な真似はするなよ」

「親父こそ」


 そんなことを言いながら部屋を出ると、烏丸も出てきた。


「烏丸…」

「坊ちゃん、申し訳ございません」


 深々と頭を下げる烏丸であり、気にしてないと烏丸の肩を叩く。


「烏丸、真昼先輩の妹と雪の娘をよろしく頼む。おそらくあの子たちは人質と見ていいのかもしれない」


 承知と烏丸は顔をあげ、じゃあなと黎明と一緒に歩く。


「黎明」

「なあに?」

「黎明はどっち派なの?あの人の言いなりになるつもり?」

「んーどうかな。どちらにせよ、春陽ちゃんがこちら側に来ない限り、どうすることもできないからさ」


 ぐーんと背伸びをする黎明であり、黎明の本来の目的はそれじゃないと、なんとなく感じ始めた。

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