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71話

 夏が終え、涼しい秋へと変わりゆく季節の時期だった。凛太郎から署に来てほしいと言われ、署に行った時のことだ。警部補に呼ばれて来たことを告げ、少し待っていると凛太郎は疲れ果てた顔でいる。

 

「休んでないだろう。少し休まないと体持たないぞ」

「立て続けに事件が起きてな。寝てる暇がなかった。ちょっとこっちに来てくれ」


 そう言われやつれた凛太郎の後ろを歩き、応接室へと入った。そこには氷雨の膝で寝ている玲と氷雨の妻があやしながら寝かせている透がいる。

 状況からにして二人の服は血飛沫がかかったような感じで、二人の両親は何者かによって殺されたのだろうと理解した。


「なぜ私を呼んだ?」

「この子たちを引き取ってもらいたいたくて呼んでもらった」

「本当はこの子たちを引き取りたいのだけれど、この子たちの親が裏社会と繋がってることがはっきりしたの」


 裏社会、反社会の人間だったのかと知り、犯罪に手を染めてほしくないという思いで私を呼び出したということか。


「承知した。この子たちが犯罪に手を染めぬよう、育てていく。ちなみに凛太郎、例の児童保護施設と関係しているのか?」

「特定はできなかったが、相次いでいるということはおそらく鈴鳩一家殺人と関係しているかもしれん」

「ならば我々の出番ということか。他の子供たちは?」

「見つけられたのは玲と透だけだ」


 こんな小さな子たちの夫婦を奪うとは、何を考えていると玲の頭を撫でる。


「では私たちは失礼するか」


 透を凛太郎に預け、氷雨は帰って行き、玲のそばに寄り添う。


「一日でも早くその件が落ち着いてくれるといいな」

「全力で終わらせるつもりだ。私も仕事に戻らねばならない。長男が玲で次男が透だ。玲が起きたら帰って平気だ。手続き等はこちら側で済ませておく」


 凛太郎から透をもらい、凛太郎は仕事へ戻って、玲が起きるまで待っててあげた。


 少しして玲が起きたとき、最初は驚いているも、ここはと聞かれたから警察署だと答えてあげる。


「おじさん誰?」

「迎えに来た者だ。家に帰ろう」


 透はまだ寝ており、そのまま抱っこして玲は自力で立ち上がりトコトコと俺についてくる。車に乗り念の為にと用意して置いたチャイルドシートをセットして、そこに透を乗せた。

 玲は車の窓を眺めていても私や組員には伝わっていた感情。怒りと殺意の感情があっても、透はぐっすりと眠っていた。


 車を走らせ本家へと到着し、車から降りた時、玲は私の手を強く握っている。なぜなら迎えに来た者がヤクザだとは誰も思ってはいなかったんだろう。門が開くとそこに妻が待っていて、妻も感じていたのだろう。玲の感情を。

 それでも妻は玲に優しく、時に厳しく育てていきながら、透もすくすくと成長していった。


 仕事をしていく中で、少し大人びた玲が私の部屋に突然と入ってくる。


「どうした?」

「組長」

「まだお前に組長と呼ばれる筋合いはない。普通におじさんで構わないぞ」

「組長がいい」


 玲は正座してズボンをぎゅっと掴み、少し間が開くも追求はせずに待ってあげた。待つこと十分。


「組長、透には言わないでほしいことがあります」

「何をだ?」

「透は自分のこと、兄だって認識してる。だけど実際、自分は里親に引き取られた子で、里親の子は透だけ。自分を早く引き渡していれば、透は今頃、両親と幸せに暮らしてたっ」


 そこで玲が初めて泣き、自分のせいだと言い出した。立ち上がり玲のそばに寄って、玲は何も悪くないと慰める。玲の怒りと殺意は少しずつ消えていくも、この感情だけは残っていたのだな。

 その日は玲の大好物を妻が作り、透には打ち明けないことを約束してあげた。


 玲と透を引き取って数ヶ月後、玲が小学校から帰って来たものの、様子がおかしいと組員に言われ、玲の部屋に入ろうとする。しかし玲の叫び声が聞こえ、襖を開けたら玲は暴れていて、落ち着けと玲を抑えた。

 それでも暴れる玲であり、玲が怪我をしたら困ると組員に部屋にあるものを全て撤去してもらう。


 数分後、玲は落ち着きを見せたと思えば泣き出して、抑えるのをやめ抱きしめてやる。玲が暴れるのは時々あるが、こんなに暴れるとは初めてのケースで、相当ショックな出来事があったのだろう。

 私がついていると玲を慰めていき、妻も寄り添い、透も玲兄と心配そうな瞳で見ていた。透には刺激が強いと感じ、組員に透を引き離してもらう。


 落ち着きを見せたところで、何があったと玲の涙を拭ってやる。


「暴れて、ごめんなさいっ」

「暴れてもいいのだよ。ただし、物に当たるのは良くないことだ。それは十分にわかっているな?」


 はい、組長と鼻を啜るからティッシュで鼻をかませた。玲は多少ヒクヒクしながらも、何があったのかを教えてくれる。


「…施設で一緒だった子と偶然会って言われた。玲の里親を殺した奴は、裏社会で有名な暗殺一家に殺されたって」


 そこで頭に浮かんだのは星霜家だってことを。なぜそこまで玲が知っているのか、少し興味が湧いた。


「信じたくなかったっ。だって自分、一度その一家に会ったことあるからっ」


 まさか星霜家と接触していたとは知らず、星霜家の家はどこにあるのか情報が掴めていない。どんなに探しても不可能な一家をどうやって引っ張り出すかが肝心となる。


「憧れの一家が自分の家族を殺すわけないっ」


 子どもは夢を見がちな部分があるも、玲にとっては憧れの一家だったのだろう。


「他に何か言ってなかった?」

「自分たちが大きくなったら、大きなことを起こすって言ってた。自分もその一人に加わるって。意味わからない」


 玲はここにいたからわからずとも、鈴鳩児童保護施設にいた子たちはおそらく、そういう訓練を受けているかもしれない。


「玲は私たち組員が必ず守り抜く。心配無用だ。恐れることはない」


 玲の頭を撫でてやり、玲に言われる。


「組長、自分がそうならないように指導してほしい。だから組に入れてください」


 妻は口元を押さえて笑いを必死に堪え、そうかそうかと私も笑ってしまった。私たちが笑ったことで、玲は本気だってばと多少照れくさそうにしている。


「わかった。ならまずはしっかりと勉学に励みなさい。それと柔道は習ってもらうぞ。何かあった時のために、護身に効くからな。わかったか?」


 はい、組長と玲に言われ、そこからは透も知ってのほか、昏籐組の教訓を教えていくこととなった。




 現在…




「これが玲と透を引き取った理由だ」

「俺が正真正銘の士柳家の子だったってことか。なんか鳥肌がやばい」

「過去を教えてくれたけど、姉貴がなんであんなに凹んでいる理由がある?」

「夕莉を逃すために、玲は拳を使ってほとんどヴァイオレットを倒したそうだ。本来なら一緒に逃げるはずだったものの、脱獄した紫蛇組長に捕まり、夕莉は助けようとした。だが玲は逃げろと言ったことで逃げて来たらしい」


 夕莉があれほど凹むのは、何もできなかった未熟さ。とは言え、夕莉は組を継がせないために、自由の道を与えていた。護身はあるが、そこまでの力はつけていない。

 夕莉は子を授かっているから、あまりストレスを与えないよう、妻がなんとかするだろう。その命は絶対に落とすな。玲が帰った時、どれだけ時間がかかろうとも、玲には幸せになってもらいたいものだ。もちろん、透も、夕哉も。


「玲が過ちを犯す前に、止めなければならない。それがいつになるのかは不明だが、もう一つ。陽空ちゃんも止めてほしいと灯里から聞いている」

「陽空が新しいレッドクレインの長って感じはわかってたけど、透は?」


 透は石のように固まってしまい、ツンツンと突く夕哉で倒れてしまった。知らなかったようだなと透はほっとき話を進めていく。


「灯里からの情報だが、陽空は鯨波と接触し、新しい宗教を作れと言われているらしい」

「確かに陽羽ん家尋ねたとき、破島がそんなこと言ってた。破島もなかなか鯨波に逆らえなくなってるって言うのも言ってたしな」

「だろうな。戦力が大きれば大きいほど威力は増す。すでにシルバーウルフを動かし、ブツはどこかに保管されてあるのだろう」

「警察と手を組んで、捜査しろってことなら透は今まで通り、刑事やっててもいいんじゃ」


 ちょっと違うと我に戻ったらしい透は体勢を立て直し、なぜ組に戻る必要があるのか夕哉に告げる。


「今回、警察と協力しない方向性なんだよ」

「なんで?」

「刑事は超えてはいけない一線が存在する。今回踏み込むのはその一線を越えるからだ」

「一線?悪い連中なんだから、捕まえればいいわけじゃねえの?」

「証拠が一つも残さない相手だ。いくら逮捕状を作っていったとしても、冤罪となってしまうからだ。それをメディアが掴んだら、警察側の立場が悪くなる。それはリスクが大きい。そこで警察に暴れることを許可を得た上で乗り込むんだよ」


 なるほどと夕哉はポンと手を叩き、それで組長と透がこっちを向く。


「相手は鯨波流史郎とは言え、周りには夜瀬組、そしてヴァイオレットがいるはず。戦力的にはこっち側が不利と感じるんですが、何か手はあるんですか?」

「一応考えてはいるが、効くか?」


 はいと二人が言うもので、これを聞いたら絶対に二人は嫌がる顔をするだろうな。


「シルバーウルフと、それから南雲昼秋が率いている組織と手を組む予定だ」


 伝えると二人はあぁと驚くほどでもない様子だった。てっきり二人は嫌い意識があるから、あまり関わりたくないという一面があってもおかしくはないと言うのに。


「俺もそう言う考えでいたんです。陽羽の兄が拉致された現場で遭遇したのがシルバーウルフと真昼の父親。あまり話はしなかったんですが、目的は違えど鯨波を止めたいのは同じはずだと思うんで」


 透がそう言うもので、夕哉からも意見を聞く。


「俺はあんま、シルバーウルフと関わったことはないけど、陽羽の彼氏なら手伝ってくれそうだなって思って。それにもう一人手を貸してくれそうな奴がいる。えっと名前は確か翠・カジュー」


 まさか夕哉からその名を聞くとは思わなくて、動転しまうほどだった。夕哉も透も私が驚いていることに、二人も驚いていて説明してあげる。


「カジュー家はFBIとして動いているが、裏は大物と言えるほどの一家だぞ」

「裏社会に手を染めてるってこと?」

「いや、裏社会に手を染めると言うより、密偵組織だ。FBIが手に負えない情報を入手する凄腕だぞ。もしかしたらすでにヴァイオレット内に侵入してるかもしれん」


 わおっと再び二人は驚いていて、だからか。紗良が狙われたかと思っていたが、翠くんも密偵組織の一員として動いていたのならば、翠くんが狙われていてもおかしくはない。


「飛行船が戻ってくる期間、私たちは準備を進めていく。夕哉、紗良の容体を見つつ、翠くんに直接聞いて来てくれ。なぜ襲われたのかをな」

「わかった」

「透は玲の代わりに組を動かし、シルバーウルフと接触して、ボスと話がしたいことを伝えて来い」

「了解。組長は?」


 凛太郎に会ってくると二人に告げ、それぞれ動いてもらうことにした。



 漆月がしばらく会えないとだけメッセージを残し、陽羽も全く同じ文面だった。まああたしは明日退院するから、話を聞いてもらいたかったな。

 あたしたちが捕まっていた時に、もしかしたら陽羽も襲われて連絡がつけないのかもしれない。翠がいる病室にでも行こうかなとベッドから降りて、翠がいる病室へと行こうとしたら烏丸がお見舞いに来た。


「どうして?漆月の頼みで?」

「いえ、違います」


 珍しいとあたしはベッドに座り、なぜ烏丸が来たのか教えてもらうことに。


「坊ちゃんはただただだ紗良さんを助けに向かった。それなのに昏籐組の連中がこれ以上、紗良さんには近づくなと言われ、坊ちゃんは傷ついてます」

「まあ、仕方ないんじゃない?昏籐組と夜瀬組は敵組なんだし」

「その後、玲は昏籐組から離れ、今はこっち側についている」


 こっち側と疑問に思っているとスマホを見せてくれて、玲が羽織ってるジャンパーにえっと声が出てしまう。


「違うよね?」

「違くはありません。玲は鈴鳩児童保護施設にいた子どもの一人。所詮、玲も組を裏切る行為をしたということ」


 待って、待ってよ。あの玲が組を裏切るわけがない。叔父さんもおばさんも何も言ってはいなかった。


「紗良さん、あなたはどちらを選びますか?組を裏切った玲を信じるか、一途である坊ちゃんを信じるか」

「漆月は無事なの?」

「えぇ。今は安全な場所にいて、追跡されないようにとスマホはこちらに。それから陽羽さんも一緒にいますよ」


 漆月が陽羽と一緒なら、あの文面も納得がいく。そうだとしてもこのこと夕莉さんが知ったらショックを受けるんじゃ。


「このこと、夕莉さんは?」

「夕莉さんを助けた代わりに、玲は身代わりになったと聞いています」


 こんなところで呑気にしてる場合じゃないと着替えを詰めて、行こうとしたらお待ちくださいと烏丸に止められてしまう。


「今行ったとしても何もできません」

「何もしなくても寄り添ってあげなくちゃ」

「紗良さん、落ち着いて」


 落ち着いてなんていられないよと離してと叫んでいたら、パジャマ姿の翠が何おっさんと烏丸の腕を掴む。


「紗良が嫌がってる。紗良、大丈夫?」

「平気。それより早く帰らなくちゃ」

「帰っても無意味だと思うよ」

「なんでよ」


 あたしは一刻も早く夕莉さんのそばにいたいのに、なんで烏丸も翠も止めてくるの。


「僕らはあの程度で、何一つ抵抗することもできず、すぐ捕まった。それは紗良も一番にわかってるはずなんじゃない?」

「そうだとしても夕莉さんが心配で」

「すぐ行きたい気持ちはあるかもしれない。それでも紗良、ただそばにいるだけじゃなくて、やるべきことはあるはずだよ。夕莉さんのために、何かをしてあげるのが紗良の役目だと思う」


 そうだとしても夕莉さん、相当ショックを受けてしまうんじゃないかと思ってしまうほどだ。悩んでいると何してんだと現れたのは夕哉だった。


「なんで烏丸がいんだよ。漆月は?」

「若頭に言うつもりはない。紗良さん、坊ちゃんのこと考えてあげてください。では」


 烏丸は一礼をして去って行き、なんだったんだと疑問を抱いている夕哉。


「夕莉さんは?」

「結構荒れて落ち込んでるけど、母さんが寄り添ってるから平気だと思う。紗良、それから翠、組長の頼みでなぜ襲われたのか教えてもらえないか?」

「すぐ睡魔に襲われたから、あんまり覚えてないよ。翠は?」


 翠は言いにくいような表情であっても、屋上で話さないと聞かれたから、屋上で聞いてあげることにした。

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