69羽
収録が終えて車に乗り帰宅中、陽っちゃんに連絡しても、メッセージ送っても返事がなく、イライラしていたら純連が迂生に抱き枕を投げつける。それをキャッチするも、返事がないから不安がだだ漏れだった。
想と岩ちゃんも落ち着いてと言われ、渋々抱き枕で我慢する。
「旅に出るとしても、連絡してくれてもよくない?」
「俺が悪いよ。陽っちゃんに怖い思いさせて、実の兄を痛めつけたんだから。拒否されてもおかしくはない」
むうと頬を膨らませ、そうだとしても陽っちゃんは元からこっち側の人間なのに、自覚がまだ出てないのかな。今度会ったらちゃんと言わなきゃ。
そしたら岩ちゃんがこんなことを言い出す。
「陽っちゃんは今頃、暗殺一家の娘って知らされてる頃だと思うから、少し考える時間も必要だと思う」
純連も想もうんうんと頷いているから、そうしてあげようとスマホを置いた。
「そう言えばさ、あの人が子どもたち招集かけている理由って聞いてる?聞いても教えてくれなくて」
なんも聞いてないと即答する想と岩ちゃんであっても、純連は何かを知っているような感じだ。
「純連?」
「藤にはまだ言うなって言われてるから、もう少し待っててくれる?」
「むちゃ気になるけど、あの人がそう言うなら仕方ないか」
あの人が何を考えているのかいつもわからなかった。それでも迂生の父親であるから、尊敬しなくてはならない。そう亡きお母さんに言われたから。
それに新しいお母さんはなんというか冷え冷えのイメージがあって、迂生には笑顔を見せず、義理の妹には見せている。その理由を聞きたくても、いつもあなたに言っても無意味と言われてしまうばかりだ。その一方、義妹は迂生に懐いている。
「家族とご飯っていつだっけ?その日に陽っちゃん誘いたかったんだけどな」
「明後日に予定が入ってる」
「陽っちゃん誘うの難しそう。今回ばかりはやめとくとして、佐田ちゃんメンタル大丈夫そうだった?」
岩ちゃんに聞いてみると岩ちゃんは苦笑いして、迂生たちに写真を見せてくれた。佐田ちゃんはこう見えて仕事熱心だったから、警察を辞めたことで爆食している。
「三日後ぐらいに体型変わってるかもしれない」
あり得そうと迂生たちは想像しながら言い、佐田ちゃんの職を奪わせてしまったのは迂生たちとあの人。あの人が佐田ちゃんにシャドと会わせ、受け継いた。それで佐田ちゃんは迂生たちの指示に従ってくれていたってことになる。
後で佐田ちゃんに連絡してみようかなと考えていたら、想が気になることを迂生たちに聞いてきた。
「ねえ、疾太の処分はどうすんの?昏籐組と繋がってた」
「疾太はまだ生かしておけってあの人から言われてるから何もしなくていい。それにその件は親父が動くことになってるから、俺たちは何もしなくていいんだと」
純連は迂生たちより情報が入っているのは、紫蛇組長の息子だから。あの人は迂生がやりたいようにやりなさいってただ言われているだけで、それ以外の情報が入ってこないのはあまり悩ませないためでもあるらしい。
だから迂生はただひたすらに陽っちゃんのことだけに集中していた。マンションに到着して裏のオートロックで家に入ろうとした時。岩ちゃんがロビーのほうを眺めていて、誰かいるのかなと確認したら知らない女の子がロビーにいる。
「岩ちゃんの知り合い?」
「ちょっとな。先行ってて」
なんか怪しいと思っていても純連と想が行こうと言い出すから先へ家の中へと入ることに。誰だったんだろうと気になりつつも、手洗いうがいをしてリビングにあるソファーに座る。
純連はお風呂のスイッチを押して、想は冷蔵庫にある水をコップに注ぎ飲んでいた。
陽っちゃんとどか遊びに行きたいなとイベント情報を見ていたら、岩ちゃんが戻って来るも様子がおかしい。
「岩ちゃん?」
「…悪い、ちょっと病院行って来ても平気?彼女の父親がやばいらしくて」
あぁなるほど、そっか、岩ちゃんの彼女さんのお父さん、佐田ちゃんによって爆発に巻き込まれたんだっけ。
「うん、いいよ」
悪いなとパンッと手を合わせて迂生たちに謝り、岩ちゃんはさっさと迂生たちの家を後にしていく。
「佐田ちゃん大丈夫かな」
「仕方ないんじゃない?あのお方の名で動いてたんだし」
佐田ちゃんにとって署の人たちを裏切りたくはなかった気持ちが強かったのは迂生たちにも伝わっていた。しかしそばにいたくても、佐田ちゃんは裏切りもせず迂生たちを選んだ。
「ねえ純連、想。岩ちゃんが悲しまない方法にしたい。どうすれば岩ちゃんが悲しまなくて済むかな?」
純連と想は意外というような顔立ちをしていて、純連がそうだなと提案をする。
「賢は彼女の家族を大事にしてる。今もそうだと思う。ただあのお方は賢の弱みを握っている以上、俺たちは何もできない。それでも藤が何かをしてあげたいと言うのならば藤がやりたいように進めばいい」
「純連と同感。藤がやりたいことをサポートするのが僕たち。藤のやりたいようにやればいい」
二人はどんな時でも迂生の味方でいてくれるから気が楽になれる。
「岩ちゃんの彼女さんと会おう。岩ちゃんにぶうぶう言われるかもしれないけど、彼女さんと向き合いたい」
「スタッフに伝えておく」
ありがとうと二人に感謝を述べていたら、お風呂が沸きましたと流れ、それぞれの時間を過ごすことにした。
◇
タクシーを拾い坂東千夏ちゃんと一緒に警察病院へと向かっていた。坂東千夏ちゃんは夜瀬組の夜一と幼馴染であって、たまに夜一と一緒にいることを見かけたことがある。
まさか藤太郎たちのマンションを嗅ぎつけるとは思いもしなかったことだ。
「千夏ちゃん、夜一からここ聞いたの?」
「うん。しばらく会えないから、何かあったら賢介さんのところへ行ってって言われて住所教えてもらった」
「そっか。それで催花のお父さんが危険な状態って聞いたけど本当なんだよな?」
「らしいよ。催花が凄い泣きながら電話かけて来て、岩ちゃんと連絡できないって言われたからさ」
スマホの確認全然できてなくて、今チェックしてみると催花から数件着信が入っていた。直接会うことになるだろうから、その時ちゃんと話を聞いてあげよう。
「それとさ、陽羽ちゃんと連絡取れてる?」
「全然。疾太が陽ーちゃんと連絡取れないって大騒ぎしてたけど、陽ーちゃん拉致とかしてないよね?」
「こっちはWizuteriaの収録で陽っちゃん拉致とかはしてない」
なるほどと千夏は何か心当たりがあるような雰囲気であってもあえて聞かなかった。俺の読みだけど、その間に鶫さんがいるのだろうと。
警察病院に到着し、催花の父親がいる病室へと足を踏み入れた。しかしそこにいたのは重傷を負っていたはずの星河教授がベッドに座っている。
どう言うことだと千夏ちゃんに聞こうとしたらすでにいなかった。
「清寺さんは別室で眠ってもらってるよ」
「催花は?」
「清寺さんの娘さんも別室にいてもらってる。まあよくも僕と清寺さんを排除しようとするだなんて信じたくはなかった」
「まさか、前々から気づいてた?」
もちろんと星河教授は言い、星河教授が何かを投げそれをキャッチする。写真のようで見てみるとそれは飛行機が墜落した写真だった。
「これって?」
「見ればわからない?そこに写っている人物を」
墜落した飛行機だけであって、人なんて写ってなんかとよく見たら、豆粒だけど人のような姿がある。
「賢介くんたちが乗っていた飛行機、そこにシャドが乗っていた」
「シャドは捕まったんじゃ」
「いいや。シャドの目的はただ一つ、あのお方を暗殺する計画を持っていた。けどシャドは殺せなかったんだよ。そこに愛する者がいたから」
「愛する者?」
うんと頷き星河教授は点滴スタンドを使いながら立ち上がり、手帳を俺に渡す。そこに挟まれている写真には、丸眼鏡をかけた少年と藤太郎の母親が写っていた。
「シャドは英語でshadowからとってる。日本語に訳すと影、つまり影山迅の母親。あのお方は迅の母親を奪い、藤太郎を産ませた卑怯者」
「嘘だろ?」
「死ぬ間際に教えてくれた。迅によろしくねと。僕は当時、シルバーウルフの構成員だったし、迅の母親が藤太郎の母親だと言うことも知ってた。それでも迅が母親と会わないと言い続けて来たのは、賢介くん、君のためだったんだよ」
まだ状況が理解できていなく、影山迅は俺たちを恨み、妬み、シルバーウルフとして動いているのかと思っていた。
「迅はね、母親が必死の思いで賢介くんを守ろうとしていたのがわかっていたから、あえて母親と接触を控えていた。母が守ろうとしている者を、奪わせないために」
「つまりその裏にはシルバーウルフが絡んでいたってことなのか?」
「実際は違う。賢介くんを保護管轄に手配したのは、シャドと昏籐組」
シャド、影山迅の父親と昏籐組が俺を藤太郎たちから引き離してくれたってことなのか。
「ここからが本題、昏籐組の娘が誘拐された理由、賢介くんなら何か知ってるんじゃない?」
靴の依頼をしたにも関わらず、昏籐組の娘を誘拐したわけ。これを言ったところで、あのお方が引き下がるわけがない。そうだとしても、星河教授に話す。
「蓮見玲、鈴鳩児童保護施設にいたから、誘き出してる。ただそこに待機してるのは、あのお方に教育された子たちで、平気で簡単に殺せる威力を持ってる。抵抗すれば即死」
「ようは暗殺教育をしていたってわけか。まあ大体はそういう人なんだろうなとは思ってたよ。情報、ありがとう。清寺さんがいる病室。安心して。安定して回復に向かってるから」
星河教授は自分の病室に戻ろうとしていて、星河教授と思わず呼び止める。
「なんで俺を逮捕しない?」
「え?だって賢介くん、何も悪いことしてないでしょ?罪に問われるようなことしてない賢介くんを逮捕はしないよ。また聞きたいことがあったら、坂東さんか直接連絡するから」
星河教授は笑顔で手を振り戻って行き、そうだとしても俺は今まで藤太郎たちがやって来たことを見て見ぬふりをしてきた。それなのに罪に問われないってどうなんだよと、催花の父親がいるという病室の紙をくしゃっとする。
それに脅しまでやってるから脅迫罪とかで捕まるんじゃないのかよ。
立ち止まっていたら、賢ちゃんと催花の声が聞こえ、そっちに目をやると催花が近くにより俺に手紙をくれる。
「以前ね、影山さんって言う人から、いつか時が来たら渡してほしいって頼まれてたの。今かなって思ったから、渡しておくね」
「催花、俺」
「大丈夫、何があっても一線を越えさせないようにうちが賢ちゃんの手握ってるから心配はいらないよ」
催花が俺の手に触れるも多少震えて、本当は怖いだろうにとぎゅっと握り抱きしめてあげた。催花や催花の家族を守れればそれだけで十分と思ってたけど、やらなくちゃならないことが一つ増える。
全てが終えたら影山迅と話そうと決めながら、少しの間、催花を抱いて涙を流した。
◇
ヘックシュン。風邪でも引いたんかなと鼻を啜りながら、そろそろ催花ちゃんがあの手紙を渡してるんやろうな。以前、陽羽ちゃんたちがキャンプをしている際に、催花ちゃんとこっそり会って渡しといたんや。
いつか賢介が自分を責めるのではないかという思いが存在したからであって、実際影から見てはったけど、母はんが守りたかった子がこんなに大きゅうなって嬉しいんやろう。
もう母はんは死んでしもうたが、全てが終えたら賢介と一緒にお墓参りしようと決めとる。
冬月の寝顔を見ておったら扉が開き、陽羽ちゃんが戻ってきよっても、ボスはまだ昼秋さんと話しとるんやろうな。
「話終わったん?」
「はい。まだ混乱はありますけど、自分が何者なのかなんとなくわかりました。あのまるさん」
「なんや?」
「私、一つ思い出したことがあるんです。入院してた時、藤ちゃんのお母さんが私の病室にお見舞いに来てくれて」
藤太郎、わかりやすく言うと某の母はんや。母はんがどないしたんだろうかと、陽羽ちゃんの言葉を待っていると母はんの思いを知ることになる。
「私にはもう一人の息子がいるって言われて、最初はまだ小学生だったから、根掘り葉掘り聞いちゃったんです。どんな子とか、なんでいないのとか。質問攻めで」
陽羽ちゃんは恥ずかしながら、過去を振り返りつつ、教えてくれたんや。
「そしたら藤ちゃんのお母さんが、手帳を取り出してある一枚の写真を見せてくれたんです。それがまんまるの眼鏡をかけた幼い子で、名前は迅って言うのって」
ボスはまるって呼ばれておったから、某の名前ちゃんと伝えてなかったことを思い出した。
「迅は違う場所にいたとしても、大事な息子。会いたくても会えないけれど、幸せでいてくれたらそれだけで十分だって。もし迅と会えたらこう伝えてほしいって」
母はんと最後に会ったのは三歳ぐらいやったかな。某はシルバーウルフに預けられ、母はんは一度も迎えには来なかった。けれどなんとなく感じていた。
いつかは某の前から消える人なんだと。だから気にせず、ボスの付き人としてやってたんや。
「迅、周囲を元気にさせられるほどの力を持ち強く成長をしていってほしいと。それからどんなに離れていたとしても、あなたのことを一度も忘れたりはしない。愛してるって」
陽羽ちゃんに言われた言葉が沁み、涙が出そうやった。某も母はんのことずっと大好きやでと伝えたかったのに、会えるチャンスがあったのに、断ってしもうたんや。
母はんに会うのが少し怖かった気持ちが半分あったからで、会ったとしても母はんを傷つけてしまう言葉をいってしまうんやないかって、ずっと…。
すると陽羽ちゃんがハンカチを貸してくれて、某に言ってくれる。
「今度、お兄ちゃんたちと一緒にお墓参り行きませんか?会えなかったとしても、まるさんのお母さんは、まるさんの幸せを望んでるから、報告しに行きましょう」
そうやなとハンカチを借り涙を拭っていたら、扉が開きボスが入って来たんや。
「何泣いてんだ?」
「雪、それはその」
「言わんでえぇよ、陽羽ちゃん。それでボス、どないするん?」
「昼兄と話して、しばらくここにいる。構成員に後で連絡をとってくれるそうだ」
それなら任せてもえぇってことでえぇんやな。となれば今後の動きも確認しておく必要がある。
「ボス、今後の動きは?」
「冬月の具合が良くなったら考える。それまではまるも休んでおけ。店のことで任せっきりだったしな」
「ならそうさせてもらいますわ。陽羽ちゃん、冬月が目覚ましよったら教えてな」
はいと陽羽ちゃんの返事をもらい、一度退室することにして、借りた一室で一眠りすることにしたんや。
◇
姉貴を拉致できるような場所を探すも見つからず、残りはWizuteriaの事務所かと思考を膨らませる。そうは言っても、スタッフはそう簡単に答えてはくれそうにないな。
もう夜中だし一度家に戻るかと光太と話して家に向かってる最中のことだ。スマホが鳴り透かと確認したら、玲の舎弟からだった。
「どうした?」
『夕莉さんが戻って来やした!』
「場所は?」
『家に帰って来てまっせ』
わかったと伝え至急帰宅することに。
自宅に戻ってみると、舎弟たちが若頭と泣きついてきて、姉貴が相当荒れてんなと理解した。親父はどこ行ったんだよと思いつつも、姉貴の部屋の前からただ寄らぬオーラが出ている。てっきり暴れてんのかと思っていたが、違うようだった。
そっと襖を開け姉貴の部屋を覗くと物は散らかり放題で、すでに暴れていたことがはっきりする。姉貴と声をかけようとしたら、舎弟たちが姐さんと声に出していた。
「お袋」
「今はそっとしておきなさい。組長が呼んでるわ」
親父帰って来てたのかと姉貴は一旦後回しにし、親父がいる部屋へと入る。入るともの凄い圧があり、こりゃあ怒りがいつ沸騰してもおかしくはない状況だ。
「夕哉」
「はい」
「玲が過ちをする前に止め、連れ戻せ」
「姉貴が無事に帰って来たわけに繋がってるんですか?」
俺の質問で怒りが多少消えたのを感じ、ちょうど失礼しますと透が入ってくる。俺の横に正座をした。
「透、呼び出してすまなかったな」
「いえ、凛太郎さんと話し、一度俺はこっちに戻ることにしたので」
「え?じゃあ刑事やめんの?」
「潜入捜査ということで、なんとかなってるから平気だよ。それで組長、お話というのは?」
親父はお袋を下げさせ、お袋が出たとことで打ち明けられる。
「玲と透を引き取った理由を明かしておく必要があってな。なぜ昏籐組で育てていたのか」
玲と透が昏籐組で育ったわけは、俺は教わっていなかったし、玲は俺に甘えてくるも、過去の話をあまり話さないタイプだった。
親父は後悔しているような表情を出しているも、俺と透に打ち明けていく。




