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68羽

 仕事場に戻ってみると店が荒らされていて、何か嫌な予感がし作業部屋に行ってみた。作業部屋も散らかっており、姉貴のスマホが床に落ちている。やられたとスマホを手にし、親父と玲に報告するも応答しない。


「光太!」

「何か見つかりました?」

「姉貴が誘拐された場所がここだった。至急、動ける組員を動かせ。俺は透に連絡する」


 承知と光太は組員に連絡をとってもらい、俺は透に連絡をしてみる。あっちも何かが起きているのは間違いはねえんだろうけど、姉貴には小さな命が宿ってるから早めに救出したい。

 それにさっき藤太郎からの電話、玲の大事なものは預かった。玲と姉貴がそういう関係であるのは、あまり知られていない。だから油断していたのが間違いだった。


 透でねえかと切ろうとしたら、夕坊と聞こえ、透に打ち明ける。


「姉貴が誘拐されたから、至急追跡してほしい」

『嘘だろ…。紗良も狙われたって先ほど報告が上がった。色々とことが進みすぎているが、こっちも探してみる』

「紗良は無事だよな?」

『漆月が助けたから大丈夫だ。紗良の様子を見て俺も動く。何かわかったら知らせてくれ』


 頼むと透に告げ、片付けるのは後にし、姉貴が連れ去られた場所を探すことに。


 

 夕坊と通話を終え、深いため息が出てしまう。仕事場はなぜか寂しさを感じ、あんなに楽しげにやっていたのになぜ佐田は裏切ったのか。

 つい、佐田のデスクに触れ、どんな気持ちで俺たちと仕事をしていたのか想像できなかった。さすがに佐田のデスクトップには、何も残っていないだろうと電源を入れる。


 肉まんのキャラクターが佐田のデスクトップで、さすがに何も残っていないだろうと思っていた。しかし一つだけフォルダーが存在し、フォルダー名は伊宮さんへとある。


 クリックをし、そこには動画といくつかの資料が存在した。資料を見る前に動画を再生する。


『ちゃんと撮れてますかね?』


 ちゃんと撮れているか確認しつつ、佐田は椅子に座って語り始めた。


「伊宮さん、おそらく一人になるかと思って、動画に残します。私は二十五年前、鯨波流史郎に引き取られたんです」



 二十五年前…


 私は当時、六歳でもちろん、物心ついた頃から、鈴鳩児童保護施設で育っていました。数人、上から下までの子がいて、普通に暮らしていた時期。入江千花は一個下でいつも一緒にいました。

 私はなぜ母親と父親がいないのだろうと感じながらも、私にとって家族は施設にいた子たちが家族のようなもの。されど次々と里親に引き取られ、私は佐田家に、千花は入江家に引き取られ、しばらく会えないい日々が続きました。


 私はごく普通の小学校に通い、幸せな人生と聞かれたら、そうでもなかったんです。なぜなら里親に本当の子どもができ、いらない子だと悟ったから。


 それからは半グレ娘となり、結構里親を困らせ、里親の言葉は完全無視して、時折血の繋がっていない弟に手を出そうとまでしました。

 里親が私のことですごい悩んでいるのは目に見えていても、早く私を捨てればいいのにと。


 そんな時、あるニュースを見て、私は咄嗟に鈴鳩児童保護施設へと向かった。なぜなら私を育ててくれた家族の死が入ったから。どうしてと現場へと行き、そこにはまだ警察の人たちがいて、報道陣も多くいた。

 失いたくはなかった、私の宝物。

 信じられなくてその場に立ち尽くしていたら、黒いフードを深く被った人がいて、すぐどこかへと行く。気になりその人を追いかけていくも、その人の姿はなかった。

 が、実際は違くてその人に襲われ、周囲が暗くなったんです。


 気がつけば知らない場所にいるも、そこには施設にいた家族と再会。そして千花にも会えた。


「千花、怪我はしてない?」

「うん。流葉、みんなが集まってるの何か知ってる?」


 ううんと首を横に振り、集められた家族に聞くも、状況が読めていなかった。少ししてある男が現れた。それが鯨波流史郎であり、私たちにこう告げた。


「これからは私がお前たちの父親だ。ちゃんと言うことを聞いていれば、褒美をやる」


 最初は意味不明でほとんどの家族は里親の家に帰りたいと鯨波流史郎に歯向かった。けれど鯨波流史郎は一人一人が好きなものを見せつけ、里親は買ってはくれないだろうと誘惑。

 それによって家族は誘惑に負け、鯨波流史郎の指導を受ける日々が続いた。私も家に帰る場所がないからと鯨波流史郎の言うことを聞いて過ごすことに。


 数ヶ月経過し、次から次へと里親の死が相次いでいることが判明した。そこで私は鯨波流史郎が怖くなり、佐田家の家の前に立っていた。

 今更帰っても無意味、そう思って家から立ち去ろうとした時、流葉と久しぶりの義母ははの声が聞こえた。


 義母ははは涙を流しながら、私を抱きしめ無事で良かった、おかえりと言ってくれた言葉に涙が一粒、また一粒流れた。私はいらない子だと思っていたのに、義母ははがどれだけ心配してくれていたのか痛感する。


 その夜、私が大好きなご飯を作ってくれて、お姉ちゃんおかえりと笑顔を向ける義弟と義父ちち。寝る時は川の字で久しぶりに寝た。

 夜中、目が覚めてしまい、この家族を失いたくないという願望が芽生えた。私の大事な家族を失いたくない、そう思い、私は置き手紙を残して、鯨波流史郎の元へといく道中。


 出会ったのは交番にいる警官がパトロール中だった。その警官こそ、南雲昼秋。


「お嬢ちゃん、こんな真夜中にどうしたんだい?」


 自転車を止め私に聞いてくるも、何も言えなかった。警察に言ってしまえば、きっと家族が危険になると。口を閉ざしていたら、南雲巡査は家まで送るよと言われても、ぎゅっと南雲巡査の服を掴む。

 南雲巡査は少し驚くも、家には帰らず交番に連れてってもらった。飲み物をくれて、私が喋るまで南雲巡査は違う仕事に取り掛かる。


 言ってしまったら、この人にも影響が起きるかもしれないとパジャマを強く握り、言えるわけないと思ってた。そしたらこんなことを私に質問してくる。


「鯨が怖い?」


 その言葉になぜというような顔をしていたと思う。南雲巡査には何一つ言っていないのにと。南雲巡査はスマホを取り出して、ある写真を見せてくれた。

 上品な白い毛皮のコートを着た南雲巡査であり、その隣には鯨波流史郎がいたから。


「どういう?」

「僕はねとある一家の長男。でも僕はその一家から抜け出して、警察官になった。悪い連中を捕まえるためにね」

「…いつかはお父さんを捕まえるの?」

「いずれね。大丈夫、君の家族は僕が守ってあげるから、安心しなね」


 南雲巡査は私の頭を撫でて、その翌朝、南雲巡査に送ってもらい、私は佐田家に戻った。


 数ヶ月後、南雲巡査いるかなと会いに行ったらいなくて、交番にいたもう一人の警察官に聞いたところ南雲巡査は辞めざるを得ない事情をもち辞めてしまったらしい。

 私は鯨波流史郎に南雲巡査のことを明かしたことで、佐田家は殺されずに済んだようなもの。もう二度と会えないのかもしれない、そう思いながら、私はハッカーに目覚めた。


 もう一度でいいから会いたい、そういう思いで南雲巡査を探しては、ハッキングをしたことで何度か逮捕される。再び両親には迷惑をかけてしまうも、私の心は闇の底にいた。

 ハッキングはしばらくやめ、闇サイトで情報がないか、確認したところこういう依頼を見かけた。


 シルバーウルフの息子を殺せ。それが真昼くんであり、真昼くんと写っているのが南雲巡査だった。私はもし会えるならとその依頼を引き受ける。

 

 当日、何人か集まっていて、それぞれライフルを渡された。


「相手はシルバーウルフだ。油断はするなよ」


 指示役に言われそれぞれ配置につき、一緒にいた人を気絶させ、誰にも奪わせないと違うビルにいる人たちを全員撃つ。後は指示役だけかなと油断していたところ、気絶させた人が案外早く目を覚ましてしまった。

 何してんだともらったライフルを奪われそうな時、謝って二回発砲してしまい、子供の泣き声が聞こえる。


 

「小娘、貴様何もんだ?」

「知らない方が身のためだよ、おじさん」


 私の首を掴んでいた知らない人は私の首を絞めようとしたところ、鯨波流史郎が知らない人を簡単に殺した。


「上出来だ、流葉」

「お父さん、行かせてほしい」

「行かせるわけには行かない。片付けておけ」


 鯨波流史郎の部下に遺体を運ばせ、私は才能を活かし警察官になれと鯨波流史郎に言われた。

 言われた通りに動かなければ、佐田家が再び襲われる可能性もあり、義父ちち義母ははは警察官目指すと言った時、あんなに喜んでもらえるとは思わなかった。

 そしてしばらくして朝峰警部と出会い、私が何者なのかを知った上で置いてくれた。



『これが私の過去です。今まで黙ってきたことをごめんなさい。星河さんと清寺さんを事故に合わせたのも私です。二人が入った瞬間に、遠隔操作で爆発させました』


 深々と頭を下げる佐田で、数秒顔を上げなくて、顔を上げると少し目を麗している。


『鯨波流史郎の指示に従わなければ、今も私の大事な家族の命が奪われる。それを防ぐために犯しました。星河さんは元シルバーウルフの構成員、そしてレッドクレインに潜入していた清寺さんの正体を鯨波流史郎に打ち明けたんです。二人を排除しろと』


 佐田は鼻を啜りながらで、とても後悔していることがはっきりする。相談すれば、俺たちだけにでも報告してくれれば、防げたのかもしれない。

 涙を拭い鼻を思いっきりかむ佐田は俺にあるものを託す。


『伊宮さん、朝峰警部には言えてませんが、もう一つ。フォルダーに入っている資料は、私の家族、つまり鈴鳩児童保護施設にいた子たちのリストです。その子たちは全員、犯罪を犯し、鯨波流史郎に守られ、今もどこかで犯罪を犯しています。それを止められるのは、ただ一人、春陽ちゃん、つまり陽羽ちゃんのことです』


 腰が抜けるほどの驚きで、まさかここで陽羽に繋がっているとは思いもしなかった。


『鈴鳩児童保護施設に陽羽ちゃんがやって来た日、陽羽ちゃんのご両親は陽羽ちゃんにあるものを託した。それをまだ陽羽ちゃんは持っているはず。鯨波を逮捕できるほどのものかと。だから陽羽ちゃんが鯨波と接触する前にそれを手に入れないと、鯨波流史郎は永遠に裁けない』


 陽羽がいつも身につけていたものと言っても、同じものをつけていたイメージはなかったな。


『私もなんとか入手できるよう探りは入れますが、とにかく陽羽ちゃんがずっと持っていた物をすぐに回収してくださいね。全てが終えたら、私も出頭します。ご武運を』


 ここで動画は終わってしまい、とにかく凛太郎さんに見せようと思っていたが、動画は一回のみで児童的に削除されてしまった。そういう設定で動画を作っておいたのだろう。

 まずは夕莉がどこに誘拐されたのかが気になるな。すでにあの廃墟ビルは燃えたことによって使用されていない。


 そう考えると考えられるのはただ一つ。Wizuteriaの事務所。凛太郎さんが戻って来る前に、夕莉を助けたくとも情報がなさすぎる。佐田がいてくれればと思っていても仕方がない。

 佐田がくれた資料をざっと見て、手当たり次第探していくと、そこには思いがけない人物の名前があった。


「入江千花…」


 つい声に出してしまうも、学園長はこのこと知らないだろう。念の為、聞いておくかとスマホを手にした時だ。凛太郎さんからで、星河さんが意識を取り戻したとあり、すぐ病院へと向かった。



 普通に店番をしていた時に、このようなことが起きるだなんて考えられなかった。ごく普通の客かと思えば、いきなりスプレーをかけられ、そこから意識朦朧とし、気を失ったらこれだ。

 固く縛られ思うように解けず、周りには紫のスカジャンを羽織っている連中がいる。


 なぜそうなったのかは分からずとも、考えられるのはただ一つ。昏籐組の恨み。そうだとしても、あたしは今まで誘拐なんてされたことは一度もなかった。

 なぜなら組ということは伏せて、育てられたようなもの。ほとんどの友人もあたしが組の娘だとは思ってもいない。


 なんとかしてここから脱出しなければと、縄が解けるようにやっていたら、一斉に連中が整列する。足音で何人来るのかすぐにわかり、一人は杖をついている足音。それからもう一人はヒールの足音。二人だ。

 なにか想像したくない人物に出会すのではないかとその方角に目をやる。登場して来たのは、短髪に毛先が緑色で、歳はおとんより上か同じぐらいの人。それからヒールを履いてやって来たのは、守城大学のパンフレットに載っていた入江千花。


「お初にかかる、昏籐夕莉。私の名は鯨波流史郎。夜瀬組と手を組んでいる者と言えばわかるか」

「狙いは何?」

「狙いは玲に決まっている。玲と黎明がこっち側に戻ってくれば解放してやろう。二人は私の息子だ」

「ふざけないで。玲があなたの子なんかじゃない。玲は士柳家の子のはず」


 言い切ると鯨波流史郎は大笑いをし、周りにいる連中も大笑いをする。


「玲は所詮、里親に引き取られた身。聞いてないか?玲が住んでいた場所は鈴鳩児童保護施設だということを」


 玲が児童保護施設で育っていただなんて、一度も聞いたことはなかった。ただおとんは知り合いの子とだけとしか。あれじゃあ透はと思わず聞いてしまう。


「透は玲の弟でいいのよね?」

「透?あぁあいつは元々士柳家の長男として生まれるはずだった。だが玲が先にいたことにより次男へとなった。玲をすぐ引き渡してくれれば、透は幸せに暮らしていただろうに」


 てっきり二人は本当の兄弟だと思い込んでいたけれど、赤の他人だったってこと。このこと二人は知っていながら、お互い信頼し合っている。ううん、二人はそれを知らずに育ったか、もしくは玲だけが知っていて、透はこのことを知らない。

 鯨波流史郎は冷ややかな目であたしに言い切る。


「玲は必ずこちら側に戻る」

「いいえ。玲は昏籐組の一員だし、あたしが認めた男。あなたに絶対つかない。あたしは玲を信じる」

「信じるのはいいが、後で後悔しても遅いからな」


 そう言って鯨波流史郎は入江千花を連れて去って行き、玲があっち側に行かないことをただ祈るしかなかった。



 夕莉を連れ去った連中を探すも、なかなか見つからず、もしかすると夜瀬組の敷地内かもしれない。組長はなぜか音信不通になっちまっているし、後手がかりになるものはと思考を膨らませていたら、黎明が現れる。

 

「玲」

「黎明、てめえ何してんだ?夕莉をどこに連れてったんだよ」

「やだなぁ、僕ちんを疑うんだなんて最低だよ。まあ実際、組長を暗殺しようとしてたのは事実だけどさ。玲、自分でもわかってんでしょ?帰らなくちゃならない場所があるってことを」


 あそこには帰る気もなれねえよと思っていても、夕莉が連れ去られた現況がなんなのか薄々感じていた。組長は夕莉や夕坊、それから透には打ち明けないでほしいと告げてる。

 それは自分が鈴鳩児童保護施設にいた人間で、士柳家に引き取られ生活をしていた。


「玲が帰って来ないと大事なもん失うよ」

「帰るわけねえだろ?自分はこれ以上、家族を失わないために、ここまでやって来た。たとえ何度自分の女に手を出そうとしても、必ず救ってみせる」

「あの人はそう簡単に見逃してはくれない。僕ちんは一度帰るけど、ここで選択肢を間違えれば絶対後悔する」


 じゃっと黎明は灯里の居場所を吐かずに行ってしまう。舎弟たちが追いかけますかと聞かれ、いやと答える。スマホを取り出し、透に電話をしようと思ったが、夕坊から数件電話が入っていた。


「お前ら、先に帰ってろ。もしかしたら夕莉が帰ってくるかもしれない」

「玲さんはどうするんですか?」

「野暮用済ませたら、帰るから。もし夕坊が帰って来てたら伝えろ。しばらく家には帰れないと」

「さっきのことっすか?」


 舎弟は自分がいなくなることを恐れている。すぐ帰るよと伝え舎弟を家に帰らせることにした。舎弟がいなくなったことで、ある人に電話をかける。

 出るわけないかと切ろうとしたら、玲くんと懐かしい声が聞こえた。


「夜分すみません、氷雨さん」

『何かあったようだな。先ほど、鶫から報告を受け、春陽ちゃんは無事保護できたようだ』

「そうですか。夕坊の姉が奪われ、狙いは自分のようです」

『鯨波が子どもたちに招集をかけているのは知っていた。もうすぐ大きなことが起きうる。玲、選択肢を誤るな』


 黎明と同じことを言われるとは思わず、はいと返事をする。


「氷雨さん、自分と透を組長に会わせてくださってありがとうございます」

『礼など不要だ。玲、死ぬなよ』


 もう一度はいと告げ失礼しますと通話を終える。待ち受けは自分と夕莉の写真で、今から迎えに行くからなとポケットにしまい、心当たりがある場所へと急いだ。

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