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62羽

 霜谷さんと一緒に向かった先は、なんとWizuteriaの事務所のようで、藤ちゃんが呼んでいるってことでいいのかな。事務所の中に入ると藤ちゃんたちが活躍してきた作品のポスターが飾られていて、どれも懐かしいなと感じた。

 ここでお待ちくださいと応接室で待つことになり、待つこと十分。扉が開き霜谷さんが戻って来たのかと思えば催花ちゃんだった。


「催花ちゃん!?」

「ごめん。せっかく連絡くれたのに、返事返せなくて」


 催花ちゃんはWizuteriaのスタッフが着ているTシャツを着ていて、もしかして賢介さんの正体を知って脅されてるってことなの。


「今はしのふじたち仕事で出払ってるから、マネージャーに呼んできてもらったの」

「ちょっと待って、催花ちゃん。賢介さんに脅されて?」

「ううん。脅されてはないよ。それに賢ちゃんが悪い人じゃないことはわかってる」

「じゃあわかった上で、藤ちゃんたちのスタッフになったってこと?」


 そういうことかなと催花ちゃんの衝撃な言葉に、なんて言えばいいのか困ってしまった。催花ちゃんが犯罪に手を貸すって催花ちゃんのお父さんが知ったらショックを受けるかもしれない。

 私もいつかはそういう運命を辿ってしまうんじゃないかと感じてしまっている。


「うちは賢ちゃんを止めるために入った。一線を越えさせないために」

「大学はどうするの…?」

「お父さんの容体が良くなったら、大学は行くし、お母さんが病院に行ってる間、三つ子のお世話やらないといけないから」


 まあそこは疾太のお父さんが理解してくれてるから、問題ないんだろうけど、賢介はどう感じてるんだろうか。


「賢介さんは今日」

「マネージャーの代わりにしのふじたちに付き添ってる」


 賢介さんはどっち側なのか分からずとも、催花ちゃんがここにいてほしくはなかった。なんとかならないのだろうかと感じてしまう。

 

「お母さんにはなんて?」

「知らないし、賢ちゃんと付き合った時点で家族が狙われるのは目に見えてる。だから言わない」


 もっと早く思い出していれば催花ちゃんのお父さんや星河教授が火事に巻き込まれることはなかった。ごめんという言葉があるも、催花ちゃんは賢介さんを止めるために入ってる。いくら言っても催花ちゃんは引かないだろうし、藤ちゃんがそれに気づいたら何されるか分からない。

 だからしっかり藤ちゃんを見ておかないと催花ちゃんや家族に危険を与えてしまう。


「わかったけど、このことお父さんに話しても大丈夫?」 

「平気。いずれ警察にばれるのは承知の上だから」

「伝える。もし困ったらすぐ連絡して」

「うん、ありがとう陽羽ちゃん。それから賢ちゃんが言ってたんだけど、ライブの際、しのふじに何か渡さなかった?」


 路上ライブの日は確かお姉ちゃんが藤ちゃんに渡してほしいって手紙はもらってた。だからスタッフに藤ちゃんに渡すよう伝えたな。


「お姉ちゃんが藤ちゃんに渡してほしいって手紙もらって、スタッフに渡したよ」

「そっか。中身は見てないよね?」

「うん。びっちり糊付けされてて中身はちゃんと見てない」


 穏やかではない胸の中で、仮にその手紙が暗殺依頼だった内容だったら、私は過ちを犯したようなものだ。まだそれはお父さんに言えていないし、お姉ちゃんがいつ姿を膨らますか微妙な感じ。

 なぜなら元詐欺師の破島淡と同棲したいとお父さんを説得中なのだから。お父さんが認めていない理由は、姉の行動に関して違和感を感じているから許可は出せず、破島が最近家に来ていることが増えていた。


「ねえ陽羽ちゃん、お姉さんを疑いたくはないけど、しのふじに聞いてもらえないかな?どんな内容だったのか」

「聞いてみる。私も確認しなくてすぐに渡しちゃって」

「いいの。もしかするとスタッフ内にレッドクレインの部下がいたらしのふじたちが激怒すると思う」


 あり得るかもしれない。渡したスタッフがレッドクレインの仲間だったら、藤ちゃんには渡さず犯行はできるはずだ。


 話しているとノックが聞こえ催花ちゃんが開けると霜谷さんで、もうすぐ戻ってくるようなのでと言われた。もう少し話したかったけれど、催花ちゃんは病院にいると賢介さんに伝えているらしく、催花ちゃんは応接室を後にする。


「お話できました?」

「はい。聞きたかったことは聞けたので。あの霜谷さん、路上ライブの際、私、スタッフに藤ちゃん宛の手紙を渡したんですけど、受け取ってますか?赤い封筒の」

「ちょっと待ってくださいね。確か朝峰さんがスタッフに渡していたのは知っていましたが、赤い封筒は純連が受け取っています。藤くんに渡している形跡はないようで」

「純連さんがその手紙を…」


 確かに姉は藤ちゃんに渡してほしいと言っていたけれど、純連さんはその封筒を見て、藤ちゃんより先にもらい中身を確認したってことだよね。


「霜谷さん、純連さんって芸名ですか?」

「えぇ。名字は芸名で本名は紫蛇純連と伺ってます」


 ドクンドクンと胸の鼓動が早くなっていき、嘘だと胸に手を当てた。純連くんと初めて会った時、感じていた恐怖心。その恐怖心がなんだったのか今はっきりとわかってしまうだなんて。


「朝峰さん?顔色が」

「霜谷さん、逃げて」

「え?」

「いいから、ここにいちゃ駄目。みんなが殺される」


 私がそのことを霜谷さんに告げていたら、扉が開きそこには純連さんが立っていた。


「なんで賢介が付き添ってんのかなって気になってたら小蛇ちゃんが報告してくれてさ。やっぱりお前、俺たちの敵だな?」


 この状況さすがにまずい状況で、霜谷さんはばれちゃったかとネクタイを緩めながら、正体を明かす。


「僕はシルバーウルフの構成員。色々と情報もらえて光栄だった」

「そう簡単に逃すわけないだろ?」

「そうかもね。だから」


 霜谷さんが私を盾にしていて、そこどいてくれると純連さんに言う。


「藤くんのおもちゃ、傷つけられたくないなら、そこどいてくれると助かるんだけど」

「陽っちゃんを盾にしても、ここはヴァイオレットのアジトだ。それにここには俺の親父がいること忘れないでもらえる?」


 純連さんの背後に中年の男性が現れ霜谷さんが私を庇い、ポタッと頬に血が垂れる。


「霜谷さん!頭から血が」

「平っ気です。こう言うのは慣れてます」


 そう言うももう一発撃たれ、霜谷さんの重さで倒れ込んでしまう。背中に触れると出血をしていて、純連さんの父親という人は霜谷さんを回収しようとする。

 それでも私はしがみついていたら、純連さんに腕を掴まれて、霜谷さんは純連さんの父親に担がれ行ってしまった。


「急所は外してあるから」

「どうしてこんなことするの!」


 血がついたまま私は純連さんにしがみつく。私のせいでまた命が危険にされてしまったことが辛すぎる。純連さんは私の頭を撫で、着替えようと言われてもしばらく動けなかった。




 事前に用意してくれていたらしい服に着替えるも、貴重品は全て没収され連絡したくてもできない。あの時、路上ライブで完全に思い出していたら、霜谷さんは雪の元へと帰れた。

 さっき思い出したのは、クリスマスの日。姉と警察ごっこをして私が目撃しちゃったこと。そこにはシルバーウルフとレッドクレインが取引をしている現場。

 以前、星河教授が教えてくれたあの現場のことを今頃思い出して、そして逃がしてくれたのは紛れもなく純連さんだった。純連さんはシルバーウルフとレッドクレインと親しかったことで、止める代わりにある約束をしたこと。

 それは再会した時に話すから今はとにかく逃げてと言ってくれて、姉と合流し家に帰った。


 私はそれを思い出せていなかったことで、再会した時もそれを口に出さず、接してくれて思い出すまで待っていた。


 着替え終え扉を開けると、純連さんはやっぱ似合うと褒められる。


「純連さん、あの時の約束。再会した時の約束の内容を教えてほしいの」

「さんはいらないよ。呼び捨てでいいって言ってるじゃん」

「純連」

「じゃあ約束果たしてもらう前に、藤の相手してやって」


 藤ちゃんの相手と首を傾げていたら、陽っちゃんと藤ちゃんの声が聞こえて、藤ちゃんたちも帰って来たんだと理解した。



 星河教授と清寺さんが不在で、二人分の仕事を佐田と協力して整理をしていた。二人が狙われた現況って一体なんなのか仕事場で調べていたら、着信が入る。

 真昼からの電話でなんかあったんだろうかと耳にスマホを当てながら資料を漁った。


「真昼?」

『そこに陽羽ちゃんのお父さんいない?緊急で話したいことがあって』

「今、星河教授と催花の父親の見舞いに行ってるから、病院にいると思う。何かあったか?」

『ボスが暴走したから止めに入ってほしい』


 はてなマークが出ていて、なぜシルバーウルフのボスが暴走するようなことがと考えていたら、佐田に何かを送ったらしい。佐田はそれを開いて見せてもらうと、誰かが縛られていてすごい顔をしていた。


『Wizuteriaのマネージャーで、シルバーウルフの構成員。その写真送りつけられて、ボスが指定された場所へと向かった。多分そこに陽羽ちゃんもいるかもしれない』

「ちょいちょい話が全く見えない。陽羽は大学を満喫しているはずだぞ」

『話は後。とにかく動いて。じゃなきゃ陽羽ちゃんにもう二度と会えなくなる。父さんにも伝えるけど、至急動いてほしい』

「わかった。陽羽の父さんに伝えてすぐ動くが、真昼わかってるよな?真昼は絶対に来るんじゃねえぞ」


 それくらいわかってると真昼に言われ、本当に大人しくしてるとは思わない。ただシルバーウルフのボスが暴れるということは大きなことが起きうるってことだ。

 通話を終え佐田にそこがどこにあるのかを特定してもらっている間、凛太郎さんにメッセージを送っといた。



 雪叔父さんがいきなり飛び出して、影山まるさんもいつもと違う表情を出している。明日オープンだっていうのに、影山まるさんは店番頼むわと雪叔父さんを追いかけていった。

 僕はあまり犯罪に染めないようにと、危険な場所には絶対に来るなと指示が出ている。


 行きたくてもあの写真を見れば、死が訪れるということ。それは父さんも雪叔父さんも望んでいなから、ただ僕はここにいるしか…。いや僕は強くなって陽羽ちゃんを守るために、雪叔父さんや影山まるさんに指導をしてもらっていた。

 どこに行ったのか場所は教えてもらってないけど、漆月だったら何かわかるかもしれない。


 最近は漆月とやり取りしていないけれど、電話をかけてみることにした。出ないかと切ろうとしたら真昼先輩と漆月の声が聞こえる。


「授業中、ごめん」

『いいよ。どうかした?』

「シルバーウルフの構成員がWizuteriaのマネージャーって知ってた?」

『いや知らないよー。それがどうかしたの?』


 事情を説明するとまじかーと漆月が話していて、どうにかして雪叔父さんを止められる方法はないのか、一緒に考えてもらう。


『俺様、結構シルバーウルフをボコったから、あんま関わりたくないんだけど、真昼先輩のためなら夜瀬組は動かすよ。ただ、俺様、親父に目つけられてるから、あんま派手なことはできないけど、それでも構わない?』

「雪叔父さんを止められるならそれでいい」

『了解。場所ってわかりそう?』

「僕はあんま詳しくないけど、後で写真を送る。多分、そこに雪叔父さんが行ったと思うから」


 了解と通話を終え写真を送り、すぐ既読がついて、場所わかるかなと待つこと五分。住所を送ってくれて、そっちに向かうねと教えてくれた。

 店員に成り切っている構成員に出かけて来ますと伝え、僕は漆月が特定してくれた住所へ向かうことに。



 真昼先輩がまた俺様の力を必要とするとは思っていなかったけれど、先生に話して教室を後にしながらスマホで烏丸に連絡する。


『坊ちゃん?』

「烏丸、すぐ車を出せるようにしといて。それから俺様の舎弟を送っといた住所に集合するよう伝えといて」

『承知』


 すぐ動けるように準備してもらい、きっと昏籐組にも話はいっているだろうけど、夕哉に一応伝えとくか。スクロールして夕哉を探していたら、星河教授の助手である入江千花が目の前にいた。


「なんか用?助手だっていうのに、なんで高校にいるわけ?」

「あなたこそ、授業抜けて何しているんですか?」


 ふうん。気配は消してるけど、何人かいるっぽいな。ここで騒ぎを起こしたら大事になるのに、まさかとは思うけど親父の差金ってやつかな。

 完全に親父に見捨てられたなと、俺様は窓から飛び降りた瞬間、俺様と同様に窓から飛び降りてくる連中がくる。とにかく烏丸が待っている駐車場に向かっていると爆発音が聞こえた。


 あそこって烏丸がいる駐車場じゃんかと追いかけてくる連中を倒しつつ、駐車場へと急いだ。俺様の車が燃えていて、烏丸は逃げ切れたかは不明だ。

 厄介なことしてくれたなと燃えている車を眺めていると、背後から逃げ場はありませんよと入江千花に言われる。


「あんたさ、もしかして星河教授を殺害しようとしたのお前?」

「いえ。私はあのお方の命により、動いていた身。星河教授を殺害しようとしたのはシャド」


 どの道、俺様も殺される運命なのはわかってるけど、この状況かなりあの人に泳がされているような気がした。


「すぐに海星学園に戻って来れば、あなたの大事な人たちには危害を加えないと仰っています」

「ご親切に教えてくれてどうも。ただ俺様は夜瀬家に帰るつもりはないし、これ以上あの人の思い通りにはさせない」

「そうですか。ならこれを見ても戻らないということでよろしいのですね?」


 入江千花が見せて来たのは、紗良先輩が捕まっていることが判明して、その隣にはボコボコにされたっぽい翠・カジューが倒れている。


「彼女に危害が加わってもいいんですか?」

「なんで俺様が紗良先輩を大事にしてるって思ってんの?俺様は紗良先輩をただ利用してるだけ」

「そうですか。なら処分しても構わないということでいいんですね」


 入江千花が何かをし始め、紗良先輩と翠・カジューが閉じ込められている部屋から水が溢れ始めていた。最悪な事態でどうします?今ならまだ止められますよと挑発しやがる。

 星河教授が襲われた辺りからとんとん拍子でことが進みすぎて、どうすりゃあいいと殴りたい気持ちを拳に込めた。


 真昼先輩の頼みを優先すべきか、紗良先輩を救出するか、なんでこんなに悩む必要がある。いつも即決できたじゃん。迷い込んでいたら、着信が入るも今出たらアウトな気がした。


「出なくていいんですか?」

「後でかけ直すからいい。言っといてくんない?何を言われようとも俺様は帰らない」

「そうですか。わかりました。お伝えしときますが、早く彼女の元へいかないと助かりませんから」


 入江千花は連れて来た部下を連れて退散し、スマホを確認したら、烏丸からだ。奴らが来る前に自力でなんとか逃げたんだろう。念の為生きているか連絡を取ってみた。

 すると意外な人物が烏丸のスマホを利用していることがはっきりする。


「なんでてめえが烏丸のスマホを手にしてんだよ」

『やあ、夜一。機嫌が悪いようだね』

「まさか、がくも脱獄しているとは、思いもよらなかった」

『いやぁ、シャドがわざと私の鍵を置いてってくれてね。夜一、よかったら一緒に』


 断固拒否させてもらうと伝えると、がくは高い笑い声を出す。不気味な笑い方でブチッて切りたくとも、烏丸が無事か確認がとりたかった。


『私は弟にも見捨てられ、あのお方にも見捨てられ、駒が少ないんだ』

「へえ、だったら刑務所に戻って暮らしたほうがいいんじゃねえの?」

『私はあんな狭い部屋で過ごすつもりはない。それに妻を迎えに今、妻の家にいる』

「行っても無理だよ。なぜなら陽羽先輩の姉は」


 私を求めているさとぶち切られ、なぜここにいるはずの烏丸のスマホががくに渡っているんだ。考えている暇はなく、ある人物に連絡を取った。

 出るか分からずとも、鳴らし続けたら、今講義中なんだけどと小声で言う、坂東千夏。


「千夏、俺様の最後の頼み事聞いてよ。後一つ余ってるっしょ?」

『今それ言う?わかったよ。ちょっと部屋出るから待ってて』


 電話越しで適当な事情を伝え、出たのを確認し、紗良先輩たちのサークルを教えてもらうことにした。


 ◇


 ピンポーンとインターホンが鳴り、淡かなと部屋を出てモニターを確認するも真っ暗。ただ薄っすらと薔薇の模様が見え、あたしはつい尻餅をついてしまう。

 なんでという言葉が頭の中に入っていき、次第には何度もインターホンを押してくる。会いたくないと身体を縮こませていたら、スマホが鳴り非通知からだ。全部鍵閉めたよねと全ての鍵をチェックしようとしていたらリビングの窓が開いていた。来るわけないよねと足音を立てずに、近づこうとしたらカランと音を立ててしまう。

 しまったとそれを拾おうとしたら、外から視線を感じ見たくなくとも、視線を感じる方へと目をやった。


 窓に張り付いているのはがくで、恐怖心のあまり声が出せない。あたしが今、こんな姿だからがくは嬉しそうな表情を出しつつ、土足でリビングの中へと入った。


「久しぶりだね、陽空。ワインレッドがよく似合っているよ」

がく、なんで」

「なんで?決まっているじゃないか。陽空は私の妻に変わりはない。私のために準備を重ねて来たのだろう」


 違うとさっき音を立ててしまった物を、がくに投げるも、がくには当たらず、後ずさる。お母さんは今、料理教室でいなくて、お父さんも捜査に行っちゃってる。淡はちょっと用事があるからと出払っていた。

 がくはゆっくりとあたしに近づき、しゃがんであたしの腕を掴んだ。


 やめてと抵抗していたら、がくを蹴飛ばす人物が現れる。てっきり淡かと思えば、そこに現れてくれたのは私を撃った黎明だった。


「いい加減、陽空ちゃんのこと諦めろ」

「一緒に脱獄した仲じゃないか」

「僕ちんはあんたを探しに来てたんじゃない。紫蛇組長のみだよ。なんでシャドはあんたを逃したのかはいまいち分かんないけどさ、あのお方はもうあんたをゴミ屑と認識してるの分かんないわけ?」

「それくらい百の承知さ。だから私は夜一とてを組もうと思っていてね」


 ゆっくりと立ち上がるがくで、二人が争いを始めようとした瞬間のことだ。この二人の恐怖よりも、とてつもない恐怖心に襲われ、二人の目が愕然として動きが止まった。


「ゆっ夕坊?これはあのー」

「黎明、それから変態野郎。何勝手に入ってやがるんだ?」


 二人がだんまりとしてしまって、答えろと低く喋る夕哉。今まで見たことはなかったけれど、これが昏籐組の若頭の圧。


「話そう。話せば夕坊、理解してくれるじゃん」

「黎明は引っ込んでおけ。おい、変態野郎。また陽空に手を出そうとしてたらしいじゃねえか。あの時は見逃してやったのによ」


 前髪をかき上げながらどういうことなんだよとがくのネクタイを掴んだ。そこに淡が戻って来て、淡に掴まりながら立ち上がる。


「夕哉」

「陽空、夕坊の真の姿を目に焼き付けておけ。これが昏籐組の若頭だということを」


 おい聞いてんのかとがくに言っていても、がくの身体はみるみると震え出す。黎明もなぜか淡の背後に隠れていた。


「刑務所で話したこと全て忘れたわけじゃねえよな?」

「わ忘れるわけない!私は鶫とあのお方を懲らしめたいがために!」

「じゃあなんで陽空の前に現れた?もう二度と陽空の前に現れるなって言ったよな?そんなちっぽけな約束も守れねえのか?」


 がくの顔がみるみると青ざめていき、一度あたしを見て助けを求めていたとしても陽空を見るなと怒鳴る。


「陽空の人生にこれ以上関わるな。それと二度と昏籐組の縄張りに入るなよ。本当は殺したい気持ちが大きいが、掟は守らなくちゃならねえ。だから黎明、お前は親父を暗殺しに来たんだろ?親父を暗殺する前に、こいつの目を潰せ」

「えぇ気色悪い」

「やれ」


 黎明はうえっというような顔立ちをしているも、手には何かを持っていて、あたしは咄嗟に夕哉を突き飛ばし、がくを庇う。


「夕哉、こんなことしなくていい!やめてよ!」

「陽空、そこどけ。破島」


 がく逃げてと言いたかったけれど、破島によってあたしは気を失うことになってしまった。 

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