61羽
春が終わり梅雨の季節となって、少し空は雨雲が覆っていた。講義は午後からで、私は一人である喫茶店へと向かっていた。
確かこの辺りのはずと探していると可愛いと通りすがりの人が言っていて、そっちに目をやるとハスキー犬が看板犬をしている。
オープンは明日であっても、オープン前に招待をしてくれた。名前はハス喫茶店とありハスキー犬に触れられる喫茶店。本当に喫茶店を開くとはと外にいるハスキー犬を撫でていたら扉が開いた。
そこには真昼くんが出て来て、久しぶりと言われたから、久しぶりと中に入らせてもらう。ハスキー犬が私を囲みこれじゃあ先に進めないと思えば、手を叩く合図でそっちに向かった。
えっと確かまるさんだっけっとぺこっとお辞儀をし、真昼くんが席まで案内してくれる。雰囲気も可愛らしい内装で、メニューもそれなりに考えていたっぽい。
真昼くんにアイスティーとハスケーキを注文して、子犬のハスキー犬を触れる。そしたら雪が来たからなのか一斉に飼い主のほうへと行ってしまった。よしよしと一匹ずつ触れて行き、向かいの椅子に腰を下ろす雪。
「陽羽、以前話してくれたこと、話せるか?」
「うん。藤ちゃんがあの人の息子だってこと。私…」
「陽羽が責任を感じることはない。以前からあのお方が藤太郎に甘やかしている理由がなんなのか、なんとなく気づいていたからな」
「大切な人を失いたくないなら、藤ちゃんのそばにいろって言われたの。それでも私は」
つい後ろに立っている真昼くんを見てしまって、お互い目を逸らしてしまう。雪はニヤニヤしながら隣座れと真昼くんに指示を出して、真昼くんが雪の隣に座った。
「僕はあのお方と取引しているが、藤太郎に関しては僕も手が出せない位置でいる。手を出せばシルバーウルフは全滅するようなもんだからな。ただ岩渕賢介がどう動くかで決まってくるだろう」
「賢介さんが?」
まあなと雪は言い、その続きを真昼くんが教えてくれる。
「岩渕さんのご両親はあのお方に消された。それで飛行機墜落して、岩渕さんだけが残った理由は、そこで取引があったかららしい」
「取引?」
「うん。藤太郎の母親と疾太の父親が取引をして、岩渕賢介はあのお方に狙われないよう守られていたんだ。僕がこのこと知ったのは最近だけどね」
知らなかった。賢介さんが疾太のお父さんに守られていただなんて。
「岩渕さんが藤太郎に協力し始めたのは日本で再会した辺りから。そうですよね?」
「無論。藤太郎の母親は賢介を守りたかったものの、結局賢介はあのお方の指示に従い藤太郎の足となって行動しているってことだ」
「賢介さん、一度もそんなこと言ってくれなかった」
「そりゃあそうだよ。弱みを握られたくないから。ただそれが裏目となって、催花ちゃんのお父さんが火事に巻き込まれた」
催花ちゃんのお父さん、そして星河教授を襲った火事。お父さんが言うに爆薬が存在し、それが爆破して火事となった。
「雪、言ってくれてたよね?私ならできるって」
「言ったよ。陽羽ならできる。僕のヒーローなのだからって」
「少しだけ思い出したよ。藤ちゃんたちが墜落事故に遭って落ち込んでた時、雪がずっと寄り添ってくれてたこと。今更だけど雪がいてくれたから、励ましてくれたから、私、ここまで乗り越えられた。ありがとう」
感謝を述べていると雪は頬を赤くして、そうかそうか、思い出したかと私の頭を撫でる。この手も思い出す。そうやって雪は私を励まし続けてくれてたことを。
わしゃわしゃされてたら、真昼くんの手が雪の手を止め、咳払いをするからその手は引っ込んだ。
「僕のことを少し思い出してくれたのならいい。その他は思い出したのか?」
「ううん。藤ちゃんと過ごした記憶と雪が励ましてくれた時の記憶だけだよ。記憶が薄れていくって本当なんだね」
思い出せたのは事故に遭ってからの記憶で、ただ単に忘れていた記憶の一部。本当はもっと前の記憶を思い出したくても、きっかけがないときっと思い出せないんだろうな。
「白髪のお兄ちゃん」
「真昼、それ言っちゃNO」
「陽羽ちゃんがつけたあだ名。以前さ、父さんが掘り下げようとしてたやつ、あれには続きがあるんだよ」
「続き?」
そうと真昼くんは照れくさそうな表情をしながら、教えてくれたんだ。
「誤解が解いた日、僕と陽羽ちゃんは遊んで、父さんと陽羽ちゃんの母さんが話してたんだよ」
「あれは興味深かったな。僕も耳を傾けながら二人と遊んでいたものだ」
「父さんと陽羽ちゃんの母さん、実は同じ交番勤務をしてた仲だったらしい。そこで鈴鳩一家殺人事件について、父さんが話を聞いてたんだよ」
鈴鳩一家殺人事件という言葉に私は息を呑んだ。
「気になりすぎた陽羽ちゃんは、話に混ざろうとした時、雪叔父さんに引き止められ、途中で鬼ごっこと変わってたんだよ」
衝撃すぎる過去の話で、私ってそんなに事件に興味津々だっただなんて。
「まあ結局、父さんと陽羽ちゃんのお母さんが話し終わった頃、陽羽ちゃん疲れて雪叔父さんにおんぶされてたんだよ」
「このまま連れて帰りたいぐらい寝顔が可愛すぎた。灯里に激怒され、家まで送ってってあげていたものだよ」
全身身体が赤くなるぐらい、恥ずかしさがあり、頼んだアイスティーを飲む。
「陽羽が赤っ恥になっているから、可愛い思い出話はそれくらいにしてやろう。あのお方は陽羽の記憶にあるものを思い出してほしくない。思い出せばいずれ死が訪れるのは確実だ」
「死…」
「心配するな。そうなってしまっても僕と真昼が全力で守る。また何か家族やあの伊宮という男に言いづらいことがあれば、基本、真昼がいるから頼りに来ればいい。真昼が判断して僕と会えるようにセッティングをしてくれる」
「いつでもおいでよ。もしここで話しづらいなって思ったら、僕ん家に行けば雪叔父さんいるからね」
真昼くんがそう言ってくれて、少し気持ちが楽になれたような気がした。ハスケーキが到着して、なにこのケーキと思わず写真を撮ってしまう。
可愛すぎてどこから食べようと迷っていたら、まるさんが出てくる。
「ボス、いい加減手伝ってくださいな。陽羽ちゃん、ボスを叱ってください。この店オープンできた。んんっんんっ」
雪がまるさんの口を塞ぎ、私と真昼くんは苦笑してしまった。なんとなくこういう可愛らしいお店にできたのも、全てまるさんのおかげなんだろうと。雪がやったらきっと中華風になってたと思うし。
そろそろ守城大学に行かないとならないと時間を見て、ケーキを頬張りお会計しようとしたら、陽羽ちゃんは特別だから気にしないでと真昼くんに言われた。
「ありがとう」
「こちらこそ。大学、大丈夫?」
「うん。平気。それじゃあ」
本当は真昼くんともう少し話したかったけれど、翠と紗良を待たせるわけには行かず、真昼くんと別れ電車を待つことに。夕哉さんにそろそろ連絡しておこうかなと考えていたら着信が入った。
見慣れない電話番号で無視するも、何度もかかってくるから、恐る恐る出てみる。
「はい」
『Wizuteriaのマネージャーをしております、霜谷冬季と申します。一度お会いしたいのですが、講義が終わり次第、伺ってもよろしいでしょうか?』
「大丈夫です」
では後ほど伺いますとすぐ切られてしまい、一応藤ちゃんに確認をしてみると迂生たちのマネージャーだよと教えてくれた。なら大丈夫かと電車が到着し、それに乗って大学へと向かう。
なんで私に会いに来るんだろうと不思議に思いながら、電車から降りると翠と一緒の電車に乗ってたみたい。
「おはよう」
「おはよう、陽羽。そう言えばサークルどうするか決めてる?」
「んー本当は天文部いいなって思ってたんだけど、星河教授いないし、少し迷ってて。翠は結局サークル決めたんだっけ?」
「紗良の付き添いで体験入部してるぐらいだよ。紗良はやる気満々だけど、僕は抜けるかもしれないかな」
そうなんだと相槌を打ち、本当は紗良と三人で天文部に入ろうと決めてた。けど星河教授はまだ意識が戻っておらず、紗良は気になっていた探偵部のサークルに体験入部をしている。
「僕には簡単すぎて、もう少し難易度ある探偵はしたかったぐらいだよ。陽羽がまだ決めないなら、僕も、もう少し考えようかな」
「私のことは気にせず、気になるサークルに入ればいいよ」
そう言うんじゃないよと翠は少し赤くなり、ちょっと気まずさがあった。私と一緒のサークルがいいんだろうけど、私は多分サークルには入らないと思うな。
翠ー陽羽ーと後ろから紗良の声が聞こえ、一緒に歩く。
「遅刻しそうになって焦った」
「昨日、何時までやってたの?」
「十二時過ぎかな。結構、盛り上がっちゃってさ。陽羽も入ればいいのに」
「私は遠慮しておくよ」
気が向いたら入ってよと紗良に言われ、講義室へと入り、先生が来るまで談笑して行った。
◇
靴の依頼はぼちぼち程度で、新作の靴でも考えるかとスケッチブックを取ろうとしたら、ペラッと何かが落ちる。なんだと落ちた封筒をとり、確認してみるとこれってと眺めてたら姉貴に奪われた。
「姉貴、ついに」
「まだおとんには言わないでよ。それと玲にも」
「なんでだよ。めでたいじゃん」
「玲、今荒れてるの知ってるでしょ?あの段階で話せるわけないじゃない」
玲が荒れている理由は、黎明と何度か接触するも逃げられていて、家にいてもイライラオーラが凄いんだわ。姉貴もストレスを与えないように努力はしているものの、いつ爆発するかわかんねえな。
「お袋には話した?」
「もちろん。落ち着いたら話すつもり。だから産休もらうかもしれないから、店員増やしておきなさいよ」
「あぁうん。身体、大事にな」
「ありがとう。夕哉も引っ込んでないで陽羽ちゃんにアタックしておかないと、陽羽ちゃんが好きなバンドに奪われるわよ」
わかってるよと言いながら、姉貴は嬉しそうな表情だった。いつ言うのか知らないけど、めでたいことだから、組員がそのこと知ったら大騒ぎになりそうだな。
さてとデザイン考えるかとスケッチブックをとり、デザインを考えようとしたら着信が入った。誰だと確認してみると疾太からで、店の前にいるとあり作業部屋から店内に行ってみると外から疾太の姿がある。
靴の依頼でもなさそうだなと扉を開け、入れよと合図を送り中へと入ってもらう。お茶を渡し疾太からあることを言われる。
「陽羽にいつ打ち明けるんだよ。ライブの時は雰囲気でそうなったかもしれないけどさ、陽羽の気持ちは違うと思うんだよな」
「そうかもしれないけど、陽羽の幸せを奪うつもりは」
「このままいけば陽羽はあっち側の人間になるぞ。そこで鉢合わせた時、陽羽は夕哉の存在を知ってショック受けるはずだ。そうならないために、早く打ち明けろよ。陽羽、こう見えて夕哉に連絡しようかすげえ迷ってんだからさ」
本当かと聞くとそうだよと言いながら俺が淹れたお茶を飲む疾太。後でメッセージ送ってみるかと考えていたらチャリンとドアベルが鳴った。
誰だと確認したらげっと思わず顔に出ていたと思う。まあ一応、客だし対応するか。
「へえ、ここが陽っちゃんが通ってる靴屋さんか」
「意外と外観と内装、お洒落で客も入りやすそう」
「この靴、かっこいい」
なんなんだこいつらとイラッとしながら、対応しようとしたところ、姉貴が出てきて対応してくれる。
「Wizuteriaの皆様、どのようなお靴をご要望でしょうか?」
「えっとね、今度歌番組で着る衣装に合わせてスニーカーをここで作ってもらいたくて」
「ではこちらに」
姉貴がウインクしてもう一つのミーティング室へと案内をして、打ち合わせをし始めた。俺は疾太がいるほうに戻ると着信が入る。誰かと思えば疾太からメッセージで、俺がいること言うなと言われた。
なるほどな。立場上、氷雨家と昏籐組が関わっているってことは伏せている。足音立てずにスタッフルームに入ってもらい、そこから裏口の扉まで案内した。
「悪い」
「いいって。家まで送ろうか?」
「いい。運転手に途中で来てもらうから。早めに連絡してあげろよ」
忠告をもらい疾太はさっさと俺の店から離れ、ふうっと落ち着いたら、やっぱりと隣でボソッと喋る人物がいて驚く。えっと確か名前は薫衣想だったか。
「疾太が昏籐組と繋がっていた。メモメモ」
「メモすんな。いつからいた?」
「トイレって言ってついて来た。言っておくけど、藤は陽っちゃんを手放さない。昏籐組の若頭さん」
俺の正体、ばれてるじゃんと油断はあまりしない方がよさそうだな。
「それからもう一つ。あのお方はもう時期陽っちゃんと接触する。その時は陽っちゃんにもう会えないことを意味してるから、思い出作りはしといたほうがいい」
「どういうことだよ」
「それ以上は言えない。じゃっ」
ささっと薫衣想は店へと戻って行き、なんだこの胸騒ぎ。陽羽に再び災いが降りかかるようなそんな感覚があった。スタッフルームで、姉貴が接客している様子を防犯カメラの映像で見つつも、薫衣想はあまり喋っておらず、頷く程度。
打ち合わせが終わったのか立ち上がり、さっき薫衣想が目をキラキラさせていた靴を購入して帰って行った。
帰ったわよと姉貴が入って来て、どんな様子だったのか聞くと普通ねと回答が来る。
「普通だった?」
「うん。こだわりとかは強かったけど、私でも作れるスニーカーだったわよ。それで一旦一人抜けたけどそっち行ってた?」
「勘が鋭すぎだわ。俺と疾太の関係性がばれたかもしれないし、俺が組の若頭だということも知ってた」
「一応、おとんには話しておいたほうがいいわよ。いつ疾太くんが襲われてもおかしくはないんだから」
伝えるよと姉貴に言ったら、早速姉貴は三人分のスニーカーに取り掛かるみたいで、邪魔しないようにと言われた。これがおそらく姉貴が作れる最後なのかもしれないと感じ、俺は新しい靴ではなくスタッフ募集のチラシを制作することに。
◇
講義が終え二人は探偵部のサークルへと行き、私は霜谷さんに講義終わりましたとショートメッセージを送る。そしたらすぐ既読がつき、もうすぐ着きますと返事を貰えた。
大学の正門で待っているとスーツを着た人が走っていて、朝峰さんと霜谷さんが到着する。霜谷さんは私に名刺を渡してくれながら、再度自己紹介をしてくれた。
「僕はWizuteriaのマネージャーをしています、霜谷冬季と申します。一度路上ライブで騒動があった際に一度お会いしたかと思いますが」
「はい、覚えてます。あの、なぜ会いたいと仰ってくださったんですか?」
「藤くんに申しつけられ、朝峰さんをとある場所に連れてってほしいと頼まれまして」
「藤ちゃんが?」
はいとハンカチで汗を拭き取る霜谷さんで、それならそうと事前に話してくれればよかったのにな。霜谷さんはタクシーを呼び、それに乗って藤ちゃんが言うとある場所へと向かう。
「一つ、これは藤くんたちには黙っておいてほしいことがあります。僕はもう一つの顔がありまして」
霜谷さんはスマホをいじり写真を見せてもらうと背中には白い狼の刺青が入っていた。白い狼…もしかしてと驚きが隠せないほどだ。
「僕はシルバーウルフの構成員。ですので何かあった際は、僕が全力で朝峰さんをお守りいたします」
「雪から何も聞いてない」
「内密に動いていたものなので。ボスは常にあの三人を警戒していました。起きてしまう前に阻止したいというボスの願いで、この僕がマネージャーとして動いているんです。もちろんこのタクシーの運転手もシルバーウルフの構成員なのでご安心を」
いやいや、驚く以上のあまり言葉が出ないんですけど。それでも霜谷さんは話を進めていく。
「ボスがあのお方と取引しているのはご存知ですよね?」
「詳細はお聞きしてませんけど、取引をしているとは伺ってます」
「取引というのは朝峰さん、あなたの命の保証と引き換えに、ボスは大事なものを手放したんです」
「えっ…」
霜谷さんはもう一つのスマホを取り出し見せてくれたのは、雪と一緒に写っている女性。雪肌で綺麗な髪質に幸せそうな笑顔。
「この人は?」
「小雪さんと言って、ボスの婚約者だった人です。小雪さんは現在、あのお方の妻と伺ってます」
「どうして…」
「小雪さんも同意の上でその取引をしました。小さな命を守るために」
小さな命ってまさかと霜谷さんの顔をついみると、ボスには子がいるんですと悲しげそうな瞳で言われた。
「ボスは甥っ子のために、妊娠していた小雪さんを渡し、朝峰さんの命を今も繋いでいるんです」
「雪の子は?」
「今年で小学生になったそうですよ。今は海星学園に通っているようです。ただ…ボスの子はあのお方の子と勘違いしているようで、ボス的には辛いんでしょう」
私のためにそこまでして取引をするだなんて、なんで今まで言ってくれなかったんだろう。
「ボスは決めているんです。小雪さんと娘を取り返すために動いている。だからボスはあなたと接触をしたんですよ」
今まで明らかになっていなかったことが、明らかとなり、後で真昼くん家に行かなくちゃ。
「警察に相談は」
「できるわけないですよ。なんせ犯罪組織ですから、警察が捕まえるのは組織のみ。たとえ永遠に娘に会えなくなっても、終止符を打ちたいと仰っていました」
真昼くんのお父さんは弟のために動いているってことなのかな。頭の中がごちゃごちゃになりすぎて、整理するのに時間がかかりそうだ。
「朝峰さん、そこで僕たちの思いを受け入れてくれませんか?」
「なんでしょうか?」
「僕たちは全力でお守りする代わりに、あのお方と出会い、その取引を解消させてほしいんです。すぐにとは言いません。少し考えてもらえませんか?」
「わかりました」
急なお願いですみませんと霜谷さんに言われ、いえと回答しながら雪の家族を奪っていた罪悪感を感じるようになった。
◇
真昼とまるに店番を頼み、僕は変装をして警察病院へと足を踏み入れていた。今も輝は意識がないようで僕がもっと早く駆けつけていれば、こうなることはなかっただろうに。
見ているとほっほっほっとサンタクロースのような声がして、そちらに目をやると三頭身ぐらいのじじいと見慣れない人物がいた。じじいはともかくライオンのような目つきが気に食わない。
「久しゅうのう、雪昼。元気にしておったか?」
「なぜ僕だと?」
「仕草じゃよ。雪昼は特徴な仕草をする。すぐにわかったわい」
変装しても無意味だったかと変装を脱ぎ捨ていつもの格好に戻る。
「雪昼がやったのか?」
「僕ではない。ただあのお方が絡んでいるのは間違いないだろう」
「そうか。獅子屋、輝の顔が見えぬ。抱っこじゃ」
甘えん坊だなと獅子屋という刑事はじじいを抱っこし、輝の顔を見た。じじいにとって輝は孫だからな。ただ輝はじじいがいることは知らない。
「輝の命を奪おうとした奴は、雪昼に任せよう。目星はついているのじゃろう?」
「ついてはいるが、相手はシャドという男だ。そう簡単に会えまい」
「ふむ。なら獅子屋、シャドを見つけ雪昼に手渡せ。そういうのは得意であろう?」
「承知しました。見つけ次第、報告させていただきます」
頼んじゃよ、雪昼、獅子屋と言われ、僕はじじいの孫、輝を襲ったシャドが現れるまである程度準備をすることにした。




