57羽
陽羽に告白できずライブ以来、連絡をとっていないまま、靴の製作をしていた。変わらない日常に戻り、今日は確か陽羽の入学式だな。そんなことを思い出しながら靴の製作をしていると、裏口から夕哉さんと光太の声がかかる。
今のところ客は来ていなからいいとしても、一体何だと中断をして裏口の方へと向かった。
光太は焦りながらこれ見てくださいとスマホを見せられる。それは速報のニュースで、廃墟ビルが燃え焼死した遺体を発見というニュースだった。
姉貴、店番頼むと大声を出し、スーツに着替え光太が乗って来た車に乗り、光太が車を走らせる。
「遺体の身元は?」
「まだ情報は得ていませんが、出入りをしていた人物がいました。出入りをしていたのは岩渕賢介のようです」
「燃やしたとなればそこに重要な何かが存在したってことになるよな。親父からは何か聞いているか?」
「いえ。ですが組長も現場に向かっているようですよ」
そうなると玲も現場に向かったということでいいのか。ライブであのような態度をとった岩渕賢介。すでに組織の一員なのは変わりはない。ただ証拠を燃やされた以上、岩渕賢介を捕まえるのは不可能だ。
それに焼死した人物は一体誰なのかが気になるな。そのニュースを見ていると知らない電話番号からかかってきて普通に出る。
「はい」
『夕哉、今どこにいんの?店に行ったらいなくて』
「漆月、お前。何があった?」
『あんまり敵組に情報は流したくないけど、俺様の気分が変わる前に戻ってきて。その現場に遭遇したから』
まじかよと驚きが隠せないもののわかったと告げ、光太に店に戻ってもらうことにした。
店に戻ってみるとそこには烏丸もいて、姉貴が超不機嫌でいる。姉貴には下がっててもらい話を聞くことに。漆月はノートパソコンを開いてある女性の写真を見せられた。
「この女は飯塚叶恵。陽羽先輩の姉の同級生。飯塚叶恵は父親が倒産したことにより、守城学園に通えなくなった。そして借金を背負い、闇バイトをしていた。そのバイトが」
カタカタとキーボードを打ち、あるサイトを見せてくれた。ブラックメイド喫茶という喫茶店で店員の格好が黒一色という意味で客を楽しませているようだ。
「裏をとったところ、ある人物が関わっていることが判明した。鯨波流史郎。一度は聞いたことあるっしょ?」
「名前ぐらいはな。確か日本とアメリカを行き来していると聞いたことがある」
「陽羽先輩の姉はこの人に買われ、レッドクレインの長に引き渡されたんだよ。それに陽羽先輩と紗良先輩、それから翠っていう奴も接触してる」
仰天ニュースを聞いているかのような気分でも、漆月は話を進めていく。
「会っていたのは幼き頃だからあまり覚えてはないと思うし、事故に遭った原因で記憶はないはず。あの人は陽羽先輩に正体がバレるのが一番恐れてる」
「何でだよ」
「陽羽先輩はあの人の正体を目撃してしまった人物でもあるからだよ。全ての始まりはあの人から始まってるから。烏丸、例のものを出して」
烏丸はすっと角二サイズの茶封筒を俺に渡し、その中身を取り出してみた。それは鈴鳩一家殺人事件の資料の他に、殺害された一家事件の資料が入っている。そしてそこには思いがけない一家の事件資料も存在した。
「南雲家殺人事件…これって」
「そう。真昼先輩の母方の両親が殺害され、娘二名は遺体もなく行方不明になったやつ。天音はレッドクレインに引き取られ、天美はシルバーウルフに引き取られた。ただ警察内部がその資料だけ処分し、上部のものしか知らない事件」
陽羽の元彼である真昼の母親がシルバーウルフに引き取られていたとはな。
「陽羽先輩を監視するために、あの人から指示をいただいていた。レッドクレインの長は陽羽先輩の姉を、シルバーウルフは陽羽先輩を監視するようにと」
「陽空があいつに捕まった根拠は知ってんのか?」
「そこまでは知らないけど、陽羽先輩の姉は破島と会って、陽羽先輩があの人と接触していたことを目撃していたところを思い出したんじゃない?」
陽空は思い出してしまい、破島に相談をしたことで、あの人があの野郎に指示し、陽空はあいつに捕まったってことでいいのか。そして陽空は赤に染まるようになってしまっている。
破島はそのことを知っているのかは不明であっても、近々接触するかもしれないからその時に聞くか。
「それって結構重要なことでいいんだよな?」
「まあそうなるかな。それとあの人から忠告を受けた。藤太郎の邪魔だけはするなって」
「藤太郎ってWizuteriaの?」
「あいつが陽羽先輩に執着しているのは、あの人の命令でもあるから近づいていた」
そうなると陽羽が一番危険になるんじゃないかと恐れが生じる。この前のライブはニュースにもなっており、SNSでは賛否があった。
おめでとうと祝福するファンやファンでない人、その一方ショックを受けているファンやこの子じゃないと予想している人たちも少なくはない。
幸い、陽羽の写真じゃないからいいにしても、陽羽のSNSはあれ以来、Wizuteriaの情報を載せてはいなかった。つまり陽羽があの時点で拒否をしていたら、必ず藤太郎を振りましたと情報が載りバッシングを受けていたのかもしれない。
「あのさ、岩渕賢介の組織名って知ってるんだよな?いくら調べても岩渕賢介は白と確定してしまう」
「シルバーウルフに手を出している組織って言えばわかるかな。組織名はシンプルにヴァイオレットと呼ばれてる」
「ヴァイオレット…」
どっかで聞いたことがあるようなと考えていたら、漆月が見せてくれた。それは一般公開ではなく闇サイトに載っていて、蛇の王と共にこの世界を変えようというホームページだ。
「蛇の王とヴァイオレットの意味って…はっ!」
俺はとんでもねえことを思い出してしまい、英語でヴァイオレットの意味は菫。つまり蛇の王は藤太郎ではなく純連が蛇の王だ。それを悟れないようにわざと藤太郎を目立たせているとしたら。
「漆月」
「なんか思い出した?」
「藤太郎じゃなく、利木純連に注意しておけ。藤太郎はただ単に陽羽に恋をしてるだけだと思うから」
「何でそう言い切れるの?藤太郎だって危だよ。あの顔、テレビで見るたびにムカッてくるし」
漆月は藤太郎の顔を思い出しているのかイライラしていて、利木純連に気をつけてほしいのはもう一つあることだ。
「利木純連というのは芸名で、おそらく名字は紫蛇」
その言葉を口にすると漆月は我が目を疑う瞳をしていた。烏丸も驚きを隠せないほどの表情をしている。
「紫蛇組は絶滅したはずだ」
「紫蛇組は違法行為と殺人未遂をしたことで全員が服役中だとしても、息子ぐらいはいるだろ?確か殺害未遂をした紫蛇組長は警察官を殺したんだよな。確かその警察官は」
「それ、真昼先輩の父親だよ!真昼先輩の父親は一度撃たれてるけど生きてたって真昼先輩から聞いてる」
「そっそうなのか。ならそれを透に伝えれば」
それはできないだろうと烏丸が言い出して、なんでだと聞き出すと烏丸は黎明の名前を口にした。
「黎明はその人物を探していた」
「そう言えば黎明、その人物に接触するために罪を犯すって言ってた」
「それって一番まずくねえか?」
紫蛇組長がどちらについているのかは不明であっても、黎明はその組長を連れて脱獄するかもしれない。沈黙の最中、そんなことを考えていたら、夕哉と姉貴が叫んでいて、スマホを突きつけられた。
東黎明及び紫蛇泰巳が脱獄したというニュース。話している間にまさか脱獄するとは思いもしなかった。
「親父から連絡が来そうだから、親父のところに行ってくる。漆月」
「わかってる。俺様の前に黎明が現れるかもしれないから家に帰るよ。烏丸」
二人が店を出て行き姉貴に店番を頼んで、俺は光太と一緒に親父がいる場所へと向かうことに。
◇
催花ちゃんのお父さんと星河教授が爆発に巻き込まれ、急遽私たちは病院へと急いだ。手術室の前には催花ちゃんと催花ちゃんのお母さん、それから賢介さんがいた。
催花ちゃんのお父さんは仕事で、入学式には来ていなく、お父さんも責任を感じてしまっているのが伝わる。
お父さんは申し訳ないと頭を深く下げ、本来入学式に行かせる予定だったそうだ。しかし催花ちゃんのお父さんは入学式ではなく仕事を選んだという。
催花ちゃんのお母さんが立ち上がり、頭を下げたままのお父さんの前に立って頭を上げてくださいとお父さんに言った。
「昔っからあの人は子供たちではなく仕事を最優先にするのは承知していました。不運が起きてしまったことは、朝峰警部ではありません。どうかお気になさらないでください」
すると手術のランプが消え扉が開き、医師が出てきて手術は成功しましたと報告をもらう。
よかったと催花ちゃんは賢介さんに抱きつき、よかったねと催花ちゃんのお父さんが運ばれて行き、催花ちゃんと催花ちゃんのお母さんは付き添っていく。
「もう一人運ばれたとお聞きしましたが」
先生は言いにくいそうな表情でも、こちらへと案内をしてもらい、もう一つの手術室前には透と佐田さんが祈りのポーズをしていた。
「もう一人の医師が対応をしていますが、腹部に何かが刺さっていたようで危険な状況のようです」
そんなと愕然としてしまい、医師は会釈をして行ってしまわれる。催花ちゃんのお父さんより酷い状況だなんて。
「透、佐田、現場に行ってきたのだろ?」
「凛太郎さん…。佐田、凛太郎さんが来たから」
佐田さんは少々目が腫れていても、お父さんの顔を見てお父さんたちは一度ここから離れる。星河教授と催花ちゃんのお父さんが狙われた原因って一体なんだろう。
せっかく星河教授の授業、楽しみにしてたのになと椅子に座って手術が終わるのを待つことに。
◇
フリースペースに誰もいないことを確認し、佐田が現場で撮った写真と、盗撮された陽羽の写真を見せながら報告をする。
「現場には焼死した遺体、そして缶に入っていた陽羽の写真が入っていました」
「身元は?」
「まだ身元は特定できていませんが、陽羽ちゃんの写真を置いた人物は特定できました。飯塚叶恵二十一歳、以前闇バイトであるブラックメイド喫茶でバイトをしていた子です」
「叶恵ちゃんか…。遺体もその可能性はありそうだな…」
なぜよりによって陽空の友達がそれを置いたのかが疑問点だ。すると佐田のパソコンからメールが届いたようで、確認してもらうと遺体の身元が判明したっぽい。
「朝峰さん、身元が判明しました。焼死した人物は馬場瑛二38歳。ブラックメイド喫茶店で店長をしていたようです」
「ブラックメイド喫茶って」
「口封じか何かだろう。馬場瑛二は誰かに告げようとしたところ、何者かによって殺された。叶恵ちゃんもその現場に居合わせていたとなれば、叶恵ちゃんを殺人容疑で確保しなければならない。二人は叶恵ちゃんの居場所を探ってくれ。輝は私がついている」
了解ですと佐田はまだいたいようであっても、俺と一緒に飯塚叶恵を探しに向かうことになった。
◇
真っ赤な口紅をつけ、黒いロングシャツワンピースに黒いハイヒールを履いて化粧室から出る。すでにニュースではあそこが燃えたことが話題となっているも、気にせず街中を歩いた。
爆発する直前……
鶫に指示されあの廃墟ビルへと入り、四階に閉じ込めていたらしい店長と遭遇。店長は縛られていて、口元はガムテープで塞がれていた。
壁にはレッドクレインの紋章が赤いスプレーで描かれていて、すぐに誰がここに運んだのか。罰当たりな人だなと思いながらガムテープを外してあげる。
「助けてくれ!今までのことも全て忘れてやるからこの縄を解いてくれ!」
「あなたを助けるわけない。散々、人を売りつけて、金儲けして、誰があなたを助けると思う?」
「助けてくれたら俺の財産やるから頼む!」
「そんなお金いらないし、そもそも私はお金なんて興味がないんだよね。あの人と接触するのが私の目的だった。それなのにさ、なんで私の大事な友達をあの人に売ったの?」
それはと口ずさみどうせあの人の目的はあの変態野郎に渡したかっただけなんだろうけどさ。
「まあいいや。どちらにせよ、あなたを逃したとしても、あなたは神によって制裁される。あのマークの意味はそう意味を示してるから解くつもりもない」
「鯨波さんに逆らえないから、朝峰陽空を渡したんだ!本当は違う人に買ってもらう予定だった!」
「言っちゃいけない言葉発しちゃったね」
それを伝えたら違う違うと何度も言っていて、燃えにくい缶を店長の側に置き、下から足音が聞こえる。
「じゃあね、店長。来世ではいい人になってることを願うよ」
待てと言われるも、私は窓から飛び降りた瞬間、爆発し、やっぱり爆薬が仕込まれていたと理解する。本当は正面から出たかったけれど、岩渕賢介が眺めていたから裏から出て着替えに行った。
現在……
一流のレストランへと入るもお客さんは誰一人おらず、中央のテーブルに座ると厨房から現れる。てっきり鶫が出てくるのかと思えばボスだった。
「ボス、いるならいるって教えてよ」
「いつ情報が漏れるか分からないから連絡はしないつもりだよ。それで情報は得られそうだった?」
「店長はやっぱり、陽空をあの人に渡していたことがはっきりしたよ。それからレッドクレインの紋章もあった。おそらく店長をあの場に置いていたのも陽空の命令なんだよね?」
「まだ確証はできない。ただ鶫は陽空から連絡を受けたが、拒否をしたらしい。それによって一度釈放された鶴がわざわざ、鶫のところまで連れて行ったと」
どの段階で陽空が鶴の後継者となり動いていたのかはまだ特定ができていない。されど爆薬を用意したのはきっとヴァイオレットだろうな。
なぜならあそこには陽羽ちゃんの幼き頃から今の姿までの写真が存在していたのだから。全て燃やされるくらいならと鶫が事前に用意したものを置いた。
「昼秋さん、これからどう動くんですか?シルバーウルフに協力要請を?」
「するつもりはないよ。シルバーウルフのボスは雪だし、世話になるつもりもない。ただ妻と息子は保護してもらってるけどね」
「息子さんは納得してるんですか?」
「僕の下で動くのは荷が重いと思って、雪のそばにいるよう伝えてある」
どっちにいても危ないんじゃないのと思っていても、息子さんは陽羽ちゃんの元彼と聞いている。なんかとてつもない複雑な気持ちがあるんだろうな。
それに陽羽ちゃんは新しい彼氏ができて、息子さんは今頃荒れてそうな気もする。
すると扉が開き誰かと思えばくれのさんで、人使い荒いと愚痴を溢しながら入ってきた。
「鶫、私に調達させといて、後で文句言われたら絶対に調達しに行かないんだから」
ボンッと保冷バックをどっさり置いて何が入っているんだろうと、気になっていたら食材よとくれのさんが教えてくれる。ここのお店で使う食材か。
「昼秋さん、さっきニュースで見ましたけど、紫蛇元組長が脱獄したらしいよ。それと東黎明も」
「脱獄させたのはシャドに違いない。鶫が戻って来たら動くから二人も準備の方を頼むね。それから陽空ちゃんの様子を見に行ってくれる?」
「破島さんに接触したらどうすればいい?」
「破島をこちら側に着かせる方向で話してほしい」
了解、ボスと私は早速、陽空の様子を見に行くことにした。
◇
鼻歌を歌いながら僕ちんは昏籐組の本家の前に立っていた。懐かしいなと眺めていたら組員に声をかけられ、僕ちんは組員を襲う。パンパンッと払いさてと中に突入しますかなと一歩踏み出した時、気配を消していたらしい玲にしばかれる。
「やっほー玲」
「俺の部下を倒して囚人がなぜ本家へと入ろうとする?」
「玲は相変わらずだね。僕ちんが脱獄したのは決まってんじゃん。組長のあ・ん・さ・つ。だよ」
口にしたら玲に首を絞められそうで、玲から距離を離すと周囲に組員がぞろぞろと集まって来た。
「組長はあいにくここにはいねえよ」
「残念」
「もう一人脱獄した奴はどうした?どこにいる?」
「玲に教えるつもりないじゃん。透には感謝してるよ。逮捕してくれて、しかも紫蛇組長がいる刑務所に入れたのはラッキーだった」
玲の合図で組員が僕ちんを襲いかかり、昔の僕ちんじゃないことを証明してあげるっと組員を次々と倒していく。組長がいないならどこにいるんだろうなと考えつつ、玲とやり合っていたら、パトカーの音が聞こえる。
事前に通報されているとはさすが玲だねと玲に銃を向けた。
「玲、ここで死んでもらいたいけど、玲だけは殺すなって命令もらってるんだよね。またどこかで会おう」
「逃がすかよ!」
玲が僕ちんの服を掴もうとも、車が到着してそれに乗り待ったねと手を振りながら車を出してもらう。
「ありがと、千花ちゃん。紫蛇さんは?」
「弟に会ってくるみたい。黎明、ありがとう」
「いいよいいよ。このまま陽空ちゃんのところに連れてってくれるんだよね?」
「連れて行きます。ただ犬には気をつけてくださいと」
わかってるよと脱獄に協力してくれた警官からもらっといたスマホをいじる。新レッドクレインの長となった陽空ちゃんに殺されてもおかしくはない。
僕ちんは陽空ちゃんを打ってしまったんだから。それでも直接会って謝りたかった。あの時はごめんなさいって。
車を走らせて数分後、陽空ちゃんと陽羽ちゃんが住む自宅に到着し、お母さんが外出していることも確認が取れ、インターホンを押す。
しかし反応がなく陽空ちゃん、インターホン鳴らしても出ない派なのかな。そう思っていると玄関の扉が開いて出て来たのはなんと破島だった。
「さっき透から連絡を受けてな。黎明が脱獄したから、陽空のそばにいてほしいと」
「ふうん。そっかそっか。陽空ちゃんに謝りに来たんだけど。それとも陽空ちゃんを操ってるのは破島だったりして」
「戯言を。我は昔の自分とは違う。我はあのお方に近づくためにシルバーウルフとレッドクレインに情報を与えていただけだ」
「へえ。そう言うわりにはなんで陽空ちゃんがやっていた行為を見逃してたわけ?」
破島は黙り込んでしまい、実際操られていたのは破島だったりと考えていたら、高笑いをし始める。
「陽空は何もやってなどいない。ずっと家に引きこもっていた。この我が証言できる」
陽空ちゃんがずっと家にいたのならば、陽空ちゃんがやったと思い込んでいたことは誰が。思考を膨らませていたら、近所の人に脱獄者と叫ばれ、やばっと千花ちゃんを置いて逃げるしかなかった。
◇
黎明が行ったところで入江千花は深く頭を下げ車に乗り、立ち去ったことで、我のシャツを掴む陽空。
「いなくなったから平気だ」
「淡、いろいろとごめん」
「構わない。こう言うのは慣れている。それであの店長はすでに死んだが、あの人に会いにいくつもりか?」
「うん。鶫に連絡したけど、拒否された以上、あたしが動くしかない。アポ取って会わせてもらいたい。あたしが握っている情報を提供すると」
妹のためなのか、それとも自分のためなのかは分からずとも、陽空を支えるために我はあの人と連絡をすることにした。




