56話
ライブ終わり、夕哉さんは家まで送ってくれたけれど、一言も喋らず、夕哉さんが伝えようとしていたことは教えてはくれなかった。きっとあの場面を見ていたのだろうと思って、あれ以来連絡は取ってはいない。
その一方、藤ちゃんから頻繁に連絡を取るようになった。そしてWizuteriaプラス岩渕さん含めてのグループチャットもよく来るように。
そして今日は守城大学の入学式で、紗良と翠三人で大学へと向かっていた。翠にはまだ言えなくて、どのタイミングで話そうか迷う。
「こうやって学校行けるのが楽しみすぎて、寝れてない」
「え?そうなの?」
「うん。二度とないと思ってたからさ。今日は両親も来るし、紗良の母さんも来るんだよね?」
「珍しく入学式に来るって言ってた。陽羽の両親は来るんだよね?」
それがとなんて言おうか考えていると、きゃーとなんか知らないけれど、正門がうるさかった。なんだろうと三人でその様子を見ていたら、車の付近になんと藤ちゃんたちがいる。
藤ちゃんたちはファンサービスをしており、そして私を見つけると陽っちゃーんと大きく手を振られた。純連さんも想さんはちょっとごめんねと道を作り、藤ちゃんが私に飛びついてくる。
「陽っちゃん、入学おめでとう!ここに来れば陽っちゃんに会えると思って」
「今日、お仕事なんじゃ」
「そうだよ。今日は入学式のために来てほしいって言われて。終わったら、ひっちゃん家に行くってお母さんにも伝えてあるから」
「お母さんに聞いてないよ」
そんなやり取りをしていたら、翠が離してもらえるというような目つきで藤ちゃんを見ていた。それを察ししたのか純連さんがほらと引き離される。
「それじゃあまた後で。ほら藤」
またねと手を振られ学園長、つまり疾ちゃんのお父さんに挨拶しに向かわれた。翠は少々怒っていながらも、正門で写真を撮っていたら、疾ちゃんと千ーちゃんに催花ちゃんもやって来た。
写真を撮りながら入学式の会場へと向かう途中に、疾ちゃんに聞かれる。
「Wizuteriaのボーカルと付き合うことにしたの?」
「なっなんで」
「あの記事見れば誰だってわかるだろ。身近にとっちゃな」
完全にばれてるし真昼くんがそれを知ったらショックを受けるだろうな。それでも藤ちゃんと付き合うことにしたのは意味がある。それは封印していた記憶が蘇ったことによって、藤ちゃんたちが海外に行っている期間、岩渕さんに会っているからだ。
まだそれは聞き出せていなくて、なぜ岩渕さんだけは藤ちゃんたちと一緒に海外に行かなかったのか。それが不思議だった。
それぞれの学部の列に並び、名前を記入していたら、朝峰さんと声をかけられ声がかかった方角へ身体を向ける。そこには疾ちゃんのお父さんがいらっしゃった。
「入学、おめでとう。少し話がしたいのだが、いいだろうか?」
「はい」
紗良と翠は疑問を抱いているも会場に先へ行ってもらい、私は学園長について行くことにした。学園長室へ入り、そこには疾ちゃんの幼き頃や今の写真が飾られている。
ソファーに座り、向かいの椅子に腰を下ろす疾ちゃんのお父さん。
「学園長、お話というのは?」
「鯨波流史郎という人物について」
その言葉に私は息を呑んだ。なぜ学園長がその名前を知っているのだろうと。
「鯨波流史郎という人物は、現在、海星学園の学園長でもある。名は変わっているが本人だ」
「なぜ私に…?」
「大学生になったら明かしてほしいと本人から頼まれた。これを」
ローテーブルに置かれたのは手紙で、それを受け取り手紙を拝見させてもらった。
朝峰陽羽
守城大学に入ったということは、許してやろう。
ただし、約束はきっちり果たしてもらうぞ。
その約束を果たさなければ、大事な者たちがどうなるか。
姉のようになってほしくなければ、その約束を果たすことだな。
入学、おめでとう。 鯨波流史郎
短い文章であっても、約束という言葉。やっぱり私は鯨波流史郎という人と何かを約束しちゃったんだ。封筒にまだ入っていて取り出してみると、私と知らない人が写っている。つい疾ちゃんのお父さんに聞いてしまった。
「この人が鯨波さん?」
「そうだ。本来なら写真は嫌がる人だが、陽羽ちゃんが忘れないように写ったのだろう」
毛先だけ緑色で短髪に、スーツがよく似合っていて、蛇の杖を持っているおじさん。この人が鯨波流史郎。
「陽羽ちゃん、聞かせてくれ。鯨波流史郎とどんな約束をしたのか」
「ごめんなさい。あまり覚えてなくて…」
「なんでもいい。些細なことでもいいから思い出してくれ」
写真を見ても思い出せそうになく、この時の私はまだ幼かったし、当時のことは覚えてない。何を約束したんだろうと深く考えていたら、一つだけ思い出せることがある。
それは藤ちゃんがまだ日本で入院している時のことだ。
「当時のことは覚えてませんが、私の彼氏が入院していた時期に、夜瀬組の息子と出会ってました。母親に会いに来てたと。けど夜瀬組の息子はずっとキッズコーナーで私たちが遊んでいる場を眺めてたんです。一緒に遊ぶって誘っては見たんですけど、眺めるのが好きだからって言われて」
私はあの時、夜瀬組の息子だとは気づかずに、漆月くんと接触していた。それにライブで見せてくれた写真を撮ってくれたのも漆月くん。
今思えばあの頃から私や藤ちゃんを監視していたってことになる。
「やはり夜瀬組と取引を…。感謝する。お父さんにはこのことを告げたか?」
「思い出したことは全て父に話してますが、このことはまだ知らせてません。今思い出したことなので」
「早めに伝えておくことを勧める。そろそろ時間だ。行こうか」
入学式が始まる時間となってしまい、会場まで送ってってくれ、紗良がとっといてくれた席に座り、入学式が始まった。
入学式でWizuteriaがサプライズでまたもや登場し、さっきあったからサプライズにはなってないけど、藤ちゃんの歌声を聴く。
そう言えば私の会員証がなぜか一番で不思議に思ってたけど、ようやくわかったよ。私がファン一号って言ったからだよね。歌い切った藤ちゃんはやり切った笑顔を見せ、またライブで会おうと言い退場していく。
入学式が終えお父さんたちと合流し、久しぶりに会う翠のご両親と紗良のお母さんに挨拶する。
「ご無沙汰しています、翠のお母さん、お父さん、紗良のお母さん」
「見ないうちに本当に大きくなって。翠から大体は聞いている」
「えぇ、立派になって。昔のことを思い出しちゃうわ」
母さんと突っ込んでいる翠で、紗良のお母さんはごめんなさいねとなぜか謝れる。
「紗良と引き離しちゃって」
「いえ、電話やメッセージでやりとりできてたので、大丈夫です。お父さん、そう言えば透は?」
「今日は仕事だから来れそうにないようだ」
そっか。ちょっと聞きたいことがあったけど、後でメッセージ送ろう。お父さんが予約した店で祝杯をすることにお店へと向かった。
◇
今日は陽羽や他の生徒が入学式だというのに、よりによって張り込みが続くとは思いもしなかった。車で様子を見つつ助手席には佐田が相変わらずハンバーガー五つ目を頬張っている。
「夕哉くん、残念でしたね」
「夕莉から聞いて駆けつけた時は、負のオーラが凄かった。真昼の次はWizuteriaのボーカルと付き合うことになるだなんてな。まあ場の雰囲気を壊したくなくて引き受けちまったんだろう」
正直、俺があの場にいたら大騒ぎになっていたかもしれないと思ってしまうほどだ。夕坊の女に手を出すなってな。ただあれを見れば、陽羽と仲良くしてくれていたのは事実。
夕坊は結構ショックを受けているも、すでに立ち直って仕事に没頭している。つい姐さんが着付けした陽羽と夕坊の写真を見ちまう。いつかこの日が訪れるよなと見ていると、出てきましたと佐田に言われ追跡することにした。
普通の格好であっても、夕坊が証言したWizuteriaを支えているスタッフがどこに向かっているのかを追跡する。組織の本拠地だとすれば、Wizuteriaに終止符を打てる。
それに真昼が以前誘拐された場所かもしれないと車で追跡してたら、追跡しているのがばれたのかスピードを上げていく。
「佐田」
はいと車にランプをつけ、止まりなさいとスピードを上げている車に忠告をした。しかしスピードを上げていき、道を開けてくださいと佐田の声が響き渡る。
止まらないなとその車を追いかけていたら、星河さんの声が無線で聞こえた。
『透、追いかけても奴らのアジトには辿り着けない!』
「どういうことですか?」
『透が今追いかけているのは雇われの人!透たちが言ったから、別の人たちが出て来てる。今ら追跡するからスピード違反で捕まえといて』
星河さんたちがビンゴかと了解と告げ、スピードを出している雇われの人を捕まえることに。最初から俺たちがいることを知っていたってことになるな。
「佐田、追い込める場所特定できそうか?」
「この付近はあまりないようです。どうします?車を捨てる可能性もありますが、あっ!地下駐車場に入りましたよ」
車を乗り捨てるということでいいのかは不明だが、俺たちもその地下駐車場に入り車を探す。どこだと探し回っていたら、逃げた車がちゃんと駐車されており、人の姿はなかった。
非常口の扉が開いていてそこから逃げたか、あるいはそう見せかけて違う車に乗ったかと思考を膨らませていると背後から気配を感じ素手で止める。
「舐められたもんだな。まさかここで会うとはよ、破島。佐田をどうした?」
「眠ってもらっただけだ。透、忠告だ。Wizuteriaを探ろうとすれば痛い目に遭うぞ」
「やっぱり、破島はなんか知ってんだな?それと一つ確認だ。漆月夜一が保護したという飯塚叶恵をどこにやった?病室から消えたと報告が上がっている。最後に飯塚叶恵の病室から出て来たのはお前だ」
「我も舐められたもんだな。叶恵を襲うわけがない。陽空に聞いたらどうだ?」
破島は詐欺師だから、破島の言葉は真に受けてはいない。言ったところでこいつは嘘を作り出す。そうとなれば切り札を出すしかねえか。
「会いに来ないせいで、陽空は赤に染まるようなことになっている。なぜそうなったのか教えてもらおうか?」
「そんなはずはない!」
「じゃあこれはどういう意味だよ」
スマホを取り出して、陽空の部屋と陽空の姿を見せてあげると、信じられないような目で体をよろける。やっぱり知らなかった素振りで、破島はやっぱり白だということははっきりした。
「陽羽が鶫という人物に捕まった時の説明はわかるか?」
「…鶫は鶴のことが大嫌いだったと聞いている。昼秋の手伝いをしていると聞いていたが」
凛太郎さんの話では、真昼の父は白だと認識しているから鶫も白で間違いはないんだろうと思っている。ただここで真昼の父親か、シルバーウルフのボスである雪が黒だとはっきりすれば、そのどちらかが陽空を操っている可能性は高いんだろう。
「とにかく陽空のそばにいてあげろ、凛太郎さんも灯里さんも陽空の行動で心配をしている」
「行けるわけない。我は一度、捕まった身。刑を終えても警察一家に足を踏み入れるつもりはない」
「だったらせめて連絡だけでもしてあげろよ」
考えておくと言われてしまい、まだ話は終わっていなくとも、破島は去って行く。スピード違反で罰金は払ってもらいたがったが、俺が払っとくか。
佐田起きろと頬を軽く叩くも起きず、抱っこして助手席に寝かせ仕事場に戻ることにした。
◇
元シルバーウルフだから気づかれることはなく、スムーズに尾行ができている。スピード違反で捕まえられたかは不明であっても、なんだろうこのざわざわした違和感。
清寺さんは違う方面で尾行を開始してもらっている。今のところWizuteriaスタッフらしき人物は警戒せずに歩いていた。
透の車が行ったから油断しているのだろうかと歩いていたら廃墟ビルっぽいところに入っていく。
「清寺さん、廃墟ビルに入って行きました」
すぐそっちに向かうと報告を受け、清寺さんを待ち、清寺さんが来たところで廃墟ビルに潜入した。一階、二階はクリアで三階に行ってみると大きな両扉があり、ここがアジトなのかと清寺さんと一度目を見て同時に扉を開ける。
そこには信じられないものが壁にあちこちへと貼られていた。それは数え切れないほどの陽羽ちゃんの写真。そして中心にあるものは蛇のマークが記されている。
そのマークに見覚えがあり、この騒めきががなんなのか知った時、大きな爆発に巻き込まれた。
◇
まじかよと唖然としてしまうも至急救急車と消防車を呼び、刑事の尾行をしていたらまさか爆発に巻き込まれるとは思いもしなかった。
ここは廃墟ビルでもあり、周囲は何もないし人通りも少ないから燃やすのに手っ取り早い場所。すぐに消防車と救急車が到着し、消火作業が始まる。
ここは昏籐組の縄張りでもあるからすぐさまここを離れるべきであっても、その光景を見ている人物に見覚えがあった。
「ねえ、あんただろ?二人の刑事を爆発に巻き込ませたの」
「それが何?」
「陽羽先輩の友達の彼氏さんでしょ?なんでここにいるわけ?」
「教えるつもりはないし、ここは昏籐組の縄張り。すぐ昏籐組が来る」
陽羽先輩の友達の彼氏が犯人じゃないのはわかってる。だってWizuteriaのスタッフジャンバーを羽織ってない。刑事二人はそのジャンバーを羽織っている人物を追ってここに辿り着いた。
「彼女泣くよ?」
「かもな。俺を疑うのもいいが、藤太郎の邪魔だけはすんなよ。藤太郎を泣かせれば、あのお方が動く。そのことだけは覚えておけ」
俺様の肩を叩きどこかへと行く岩渕賢介であり、見られたくないものがこのビルに存在したってことでいい。何があったのか気になるも、ここにいたら俺様が疑われるかもしれないから去ろうとした時だ。
自力で出て来た刑事がもう一人の刑事を支え倒れてしまい、救急隊がすぐ病院へと搬送していく。行き先を知りたくともおそらく警察病院に違いない。
烏丸、車を出せと伝え車に乗り、烏丸が車を出してくれる。紗良先輩は今頃入学式だし、電話に出るかわからない。繋がんないかと電話を切ろうとしたら、何と少々不機嫌な紗良先輩。
「紗良先輩、緊急事態。陽羽先輩のお父さんそこにいる?いるなら変わって」
『なんでよ』
「刑事二名が襲われたんだ。早く!」
紗良先輩は動揺しながらも、陽羽のお父さんと電話越しで聞こえ、陽羽先輩のお父さんの声が聞こえる。
「何があった?」
「Wizuteriaのスタッフを尾行してたらしい刑事二名が廃墟ビルで爆発事故に巻き込まれた。おそらく誘導されて爆発に巻き込まれたんだと思う」
『なぜそう言い切れる?』
「俺様もWizuteriaのスタッフを尾行してたから。刑事二名は病院に搬送された。かなりの爆発でまだ鎮火できてないからすぐ連絡が」
すると電話越しで着信音が鳴り、そう言うことだからと告げ通話を終えた。
「烏丸、変更。今すぐ海星学園へ向かって」
承知と病院ではなく海星学園へと向かってもらう。僕がお世話になっているのは、海星学園長であり、親父と取引をしている人。つまり岩渕賢介が言っていたあのお方というのはその人となる。
陽羽先輩の身近な人を危険に晒すだなんて、何してんのと言いたいぐらいだった。
「烏丸、さっきの爆発どう感じる?」
「証拠を燃やすような仕草のように見えましたよ。それと出入り口はあの扉のみ。つまり刑事を廃墟ビルに引き寄せたスタッフはおそらくその場で死亡している」
「やっぱり。岩渕賢介があの馬に居合わせたのって」
「私の読みですが、あそこは思い出の場所でもあったのでは?」
思い出の場所を焼き払うのはあのお方の指示か、それともあそこには証拠となるものが存在するから、火を放ったとしか言いようがない。
海星学園に到着し大学にある学園長室へと急いだ。ノックもせずに入ってみると、そこには親父もいた。
「ノックもせずに何用だ?」
「学園長、あそこには何があるんですか?」
煙草を吸っている学園長であり、灰皿に煙草を捨てる。
「何も指示を与えていない。そんなに焦ってどうした?夜一」
「どうしたって陽羽先輩の身近な人の父親が殺されそうに」
親父から平手打ちをもらい、いったいなと親父を睨む。それでも親父はいつも学園長の味方で俺様の味方となってくれているのは烏丸だけだ。
「朝峰陽羽が約束を果たさない限り、そういう運命が起きるということは頭に入れておいてもらいたい」
「約束って?」
「夜一に言うつもりはない。知りたければ藤太郎の邪魔だけはするな。邪魔をすれば夜一の大事なものを奪うこともできる。それは一番に避けたいだろう?」
この手で殴り倒したい気分であっても、親父の鴉のような目が気に食わなくて、学園長の部屋を出ていった。俺様の大事なものと足を止め、これってまさかと思いっきり走った。
俺様が大事にしているのはたったの二人。一人はお袋でもう一人は紗良先輩。紗良先輩は一度、破島淡と接触している。
なぜ守城大学の教授をしている星河輝が今日に限って刑事の仕事をしていたのか。なぜなら星河輝はシルバーウルフの元構成員だったからだ。そいつを排除しておけばいつだって陽羽先輩を狙えるチャンスが訪れる。
どうして今まで気づかなかったと車で待機をしてもらっている烏丸の元へ走りながら夕哉に連絡した。
あいつまだ落ち込んでんのかなとかけても応答が来なくて、あの馬鹿と車にたどり着き夕哉の店までと烏丸に告ぐ。こうなったら親父のことは気にせず、自分で動くしかない。
「夜一坊ちゃん」
「いいから出して。陽羽先輩の身近な人が襲われるかもしれないから早く」
本当は親父のために昏籐組の弱みを握ろうと必死だったけど、付き合いきれないと確信してしまった。
「坊ちゃんよろしいのですか?昏籐組の縄張りに再び入ることを」
「わかってる。藤太郎に先手を打たれた以上、俺様は用済み。だから親父もあんな態度をとった。親父はあの人の顔色を窺ってばかりで腹が立つ」
「いらっしゃったのですか?」
「久しぶりにいたよ。藤太郎の活躍を見て戻って来たんじゃない?」
烏丸にそう言いながらノートパソコンを開き、闇サイトで情報を得ていく。廃墟ビルに爆発を仕込ませていた人物は、本当にスタッフなのか。調べていくとえっと思わず口にしてしまった。
なぜなら二人を巻き込ませたのは飯塚叶恵で、確かに身を隠せる場所に避難してもらっていたのになぜだ。
夕哉の店に行って確認するにしても、すでに飯塚叶恵は火の海で死亡しているかもしれない。
◇
はあはあと息切れしながら鎮火した現場では、焼死した遺体があったそうで、佐田と二人で手を一度合わせ、遺体を確認する。
焼死した遺体は性別がまだわからないようで、なぜこの廃墟ビルに入ったのかが不明だ。それに星河さんと清寺さんを巻き込むとはな。
「伊宮巡査部長、佐田巡査お疲れ様です。身元はまだ不明ですが、遺体の付近にあったお菓子の缶らしい箱にこんなものが」
見せてもらうとそこには盗撮したっぽい陽羽の写真がいくつもあり、思わずぐしゃっとしそうになりかけた。
「後は何か見つかったか?」
「いえ、それ以外は全て燃えていて証拠らしきものはありませんでした」
「他にも何か見つかったら教えてくれ。佐田、行くぞ」
佐田と一緒に星河さんと清寺さんが搬送された病院へと向かった。




