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51羽

 桜の蕾が見え始め、ちらちらと咲いている木々も多い。今日、卒業式となり、この一年、いろんなことがあったなと、桜を見ていた。

 私は無事に守城大学が決まり、紗良たちも無事に合格。私と紗良に翠は理学部で、疾ちゃんと催花ちゃんは経済学部、千ーちゃんは法学部。真昼くんはどの学部かわからずとも、真昼くんと会えるのは今日で最後になる。


 立ち止まっていたら、陽羽ちゃんと真昼くんの声が聞こえて、振り向くと気まずそうな笑顔でおはようと言われる。あれ以来、私たちは一緒に登校していなかった。


「おはよう、真昼くん。今日で会えるの最後だね」

「そうだね。この一年は得に楽しかった思い出しかなかった。ありがとう」

「こちらこそ、ありがとね」


 感謝を述べながら行こっかと歩き出し、思い出が蘇っちゃって、涙目になる。透も教師を卒業して、刑事へと戻るから盛大な祝いをするとお母さんが張り切ってたな。

 姉も退院をして時々、発作見たいのは起きるけれど、だいぶ慣れてきた。けれど部屋はやっぱり赤に染まってないと落ち着かないとかで一色、ワインレッドの家具や絨毯にカーテンを購入。服も赤系の服が増えていて、少し心配なところはある。


 下駄箱へと行き、上履きに履き替えていると催花ちゃんたちがやって来て、お互いおはようと言いながら教室へと向かった。


「お父さん、やっと帰って来たかと思えば、三つ子にでれでれすぎてさ」

「アタックとかはしてないの?」

「めちゃくちゃ三つ子、お父さんが帰って来たからで、アタックしまくり」

 

 そうなんだと笑い、想像できちゃうなと教室へ入ってみたら、黒板に凄い絵が描かれている。それはクラス全員の似顔絵が描かれていて、中央には卒業おめでとうと書かれてあった。

 それを写真に収めつつ、席に座ると何か包みが入っている。なんだろうと取り出してみたら、桜のカードがリボンに挟まっていて、それを取り出しカードを見た。


 そこには先生と透からのメッセージが添えられている。


 この三年間、よく頑張りましたね。新しい道にも、困難があるかと思いますが、朝峰さんなら乗り越えられると信じています。朝峰さんは、勇気ある行動を常に見ていました。その行動を活かしてくださいね。卒業、おめでとうございます。


 陽羽、この三年間、よく頑張ったな。いろんな事件に巻き込まれてばっかりだったが、学校生活楽しんでくれて本当に良かったと思ってる。これから見守ることはできなくなっちまうけど、何かあったらいつでも連絡しろよ。卒業、おめでとう。


 包みの中はイニシャルのボールペンと、落書きされた透と先生の似顔絵を可愛らしく描かれた小さなポーチだった。裏には私の似顔絵が刻まれている。

 みんなは何このポーチと笑っていて、化粧ポーチに良さそうだった。男子はポーチ使わないと思ったのか、カードケースだったみたい。

 私は家に透にプレゼントする物が置いてあるから、どんな顔するか楽しみだな。

 

 チャイムが鳴り、先生と透が来て、透はすでに涙を流し、しっかししてくださいと先生に注意される透だった。先生と会えるのも最後であり、しっかりと先生の言葉を聞いて卒業式の会場へと向かう。

 


 卒業式が始まって、いろんな思い出を振り替えながら、卒業証書授与で私が一番で、校長先生から受け取る。校長先生からにもよく頑張りましたねと言われながら、深くお辞儀をして着席した。

 全てのクラスの授与が終え、校長の長い話や来校してくださった方のお言葉を聞き、終了間際のこと。


 体育館が暗くなり、何とぞわぞわしていたら、体育館にあるスクリーンが降りてきて、何かと思えばWizuteriaの映像だった。


『こんにちはー!守城高等学校の卒業生たち、そして在校生たち!Wizuteriaが祝福をしよう!校庭にあっつまれー!』


 Wizuteriaがいる場所が本当に校庭で、まさかサプライズでと校長が静粛にとライトが当たる。先生たちは先に卒業生を校庭へと言われ、ついて来てと指示をもらいながら校庭へと出た。

 校庭にはまじかでWizuteriaが待っていて、ここでしのふじに会えるとはと目をキラキラしてたら、真昼くんの手が被さる。


「真昼くん」

「そんな目であいつ見てほしくない」

「見せてよ」

「いやだ」


 別れても真昼くんにとっては嫌なんだろうなと、わかったよと伝え真昼くんを見てあげた。そしたらきゃーと騒ぎ出して何かと思えば、しのふじがバックハグをする。


「しのふじ」

「迂生のファンをいじめないでもらえるかな?陽っちゃんの元彼さん」

「僕と陽羽ちゃんの関係性をなんで知ってる?」

「そりゃあ、ねっ。陽っちゃんの顔を見ればわかるよ」


 ぎゅうっと抱きしめられてこれ以上やられたら心拍がやばいと思っていると、純連さんがバコンッとしのふじを叩いた。ごめんねとずりずりとしのふじを引きずってステージに戻させた。

 ふうっと離れてくれたものの、しのふじは純連さんに何かを言っているも、全生徒が集まったことで、しのふじはマイクで喋り出す。


「守城高等学校の卒業生たちに、ふさわしい曲をお披露目するよ。動画撮りたい子はもちろん、迂生たちのファンでいてくれている子も、まだ迂生たちのこと知らないよーっていう子も是非是非楽しんでほしい、それじゃあ歌います。さくら」


 純連さんと想さんが演奏していきしのふじが歌い出した。新曲だとしても、私は透にスマホを渡してくれてつい動画を撮る。私が撮っていることに気づいたのか、こっちを向いて歌ってくれたりで、いい卒業式となった。

 さくらという新曲と、初期の曲を披露してくれて、新曲の発売日を宣言し、Wizuteriaは退散する。退散する前、大きく手を振って、陽っちゃん、後で連絡するーと大声で言うから、全身が暑くなってしまった。


 そしてみんなに注目を浴びてしまい、クラスの女子たちにどういう関係なのとグイグイ来てしまう。しかし先生たちが体育館に戻るぞーと掛け声をしてくれて、少しほっとした。


 卒業式が無事に終え、謝恩会となってお世話になった先生に挨拶をし、担当の先生と透に花束を贈る。透はだばーと涙を流し、写真をたくさん撮った。

 食べているとスマホがピコンと鳴り、誰かと思えば夕哉さん。


 卒業おめでとう、渡したい物があるから、帰り際連絡してくれると助かるとあった。ありがとうございます、後ほど連絡しますねと送っていると、早速クラスや他クラスの女子に囲まれ、さっきのことを聞かれてしまった。

 えっととなんて説明すればいいかなと言葉を探していたら、着信が入り確認してみるとしのふじ。ちょっとごめんと会場を出て、出てみた。


「しのふじ」

『今回は繋がった。ねえねえ、まだ守城高等学校にいるからさ、少し話そうよ』

「ファンと接触は控えたほうがいいんじゃないの」

『そう言わずにさ』


 そう言われてもと戸惑っていると、真昼くんではなく、疾ちゃんが代わりに出てくれる。


「陽羽とどういう関係なのかは知りませんが、陽羽が嫌がってるんで今日のところは帰ってもらえますか?えぇ、俺は守城学園長の息子と言えば引き下がってくれますよね?はい、はい、お願いします」


 疾ちゃんが通話を終えると、スマホを返してくれて、通話は切れているっぽい。


「疾ちゃん?」

「あんま使いたくない手口だけど、Wizuteria帰ったっぽいから安心して」

「ありがとう。しのふじと何話したの?」


 秘密だよと私の頭を撫でて、戻ろうぜと私の手を握って、謝恩会を楽しむことに。


 真昼くんはどこかなと探し回っていたら、端っこでスマホをいじっていた。真昼くんと声をかけると真昼くんは微笑んで、どうしたのと聞かれる。

 

「少し話さない?」

「わかった。どこで話す?」


 教室かなと伝え、教室で話すことにした。

 誰もいなく、まだ消されていない似顔絵を見つつ、お互い座って話す。


「お父さんに打ち明けたよ。お父さんもその会食に同席させてもらうって」

「わかった。なら雪叔父さんに伝えておくね。陽羽ちゃんと会うのは会食だけになるけど、陽羽ちゃんが楽しく大学生活送ってくれることを願ってる」

「私も、真昼くんが楽しく大学生活を送ってほしいかな。それと雪、もう日本に移住してるの?」

「わからないけど、近々変装して店を開く予定ではいる。全然、雪叔父さんの言葉、真に受けなくていいからね」


 真昼くんが言ってくれた通りに、私はお父さんとよく話し合って、夕哉さんのお店でバイトすることを決めた。雪になんて言われるか知らないけど、決めたことだから。


「雪に謝っておいてほしいの」

「うん、伝えとくね。多分、雪叔父さんから連絡来るだろうけど、なんとか止めておくから。それに雪叔父さんのお店手伝うことにしてるから」


 そうなんだと話していたら、トントンと扉を叩く音が聞こえ、そっちに向けるとお母さんとお父さんだった。教室に入って来て、お父さんが真昼くんに伝える。


「真昼くん、娘と仲良くしてくれて感謝する」

「いえ、こうなってしまったのは仕方ないことですし、陽羽ちゃんが危険になることは一番に避けたいので、身を引きます」

「真昼くんのお父さんに伝えてくれ。会食時、全てを打ち明けてもらいたいと」

「はい、伝えておきます」


 陽羽、そろそろと言われ、席から立ち、一度真昼くんとハグをして、私は家へと帰った。



 陽羽ちゃんともう少し話したかったけれど、まあいいかと教室を出て謝恩会に戻り、鞄を持って疾太にじゃあと帰ろうとした。けれど疾太も帰るっぽく、一緒に帰ろうぜと言われ渋々帰ることに。


「なんで僕と帰ろうと思ったわけ?」

「なんとなく。あのさ、父さんから聞いたよ。シルバーウルフに入ったんだろ?真昼の父さんを裏切るってことになるんじゃねえの?」

「…そうかもしれない。けど雪叔父さんの力を借りなきゃ、陽羽ちゃんはあのモノクロ野郎にとられてたのは確実だった」

「陽羽には言ったのか?」


 言えるわけがないと疾太に打ち明け、まじかとトーンを落とす疾太。


「どの道、陽羽ちゃんの周りには野生の狼が多くいる限り、僕は入ってたよ」

「すげえ複雑だな。父さん同士の約束は、今も守られてるけど、いつ父さんが真昼の父さんを裏切るかわからないから気をつけろよ」

「それくらい、わかってるよ。疾太、一つ頼んでもいい?」

「ん?」


 これから陽羽ちゃんの周りにいろんな人が陽羽ちゃんの目の前に現れるのは確実だ。僕は大学も違うし、陽羽ちゃんを守れない。疾太は陽羽ちゃんのこと好きだから、協力はしてくれるだろう。


「大学が始まったら、陽羽ちゃんの前に誰かが現れるかもしれない。その時は、陽羽ちゃんを守ってあげてほしい」

「もちろんって言いたいが、陽羽の幼馴染も合格したっぽいし、あいつが陽羽を守るんじゃねえか?」

「そうだとしても、陽羽ちゃんが困ったらちゃんと助けてあげて。以前のことにならないように」


 疾太は苦笑いして、わかったよと頭を掻きながら言った。本当に大丈夫かは知らずとも、陽羽ちゃんに寄り添ってくれることを信じるしかないか。

 すると疾太がこんなことを言い出す。


「また陽羽たち連れてどっか行けたらいいな」

「僕はお断りするよ。しばらく陽羽ちゃんと会うつもりないからさ」

「陽羽が他の男に取られてもいいのかよ」

「嫌だけど、陽羽ちゃんの幸せは、僕の幸せでもあるから別にいいよ」


 今の段階で陽羽ちゃんは、Wizuteriaに狙われているのは理解している。僕が身を引いて陽羽ちゃんとどうするのか様子見かな。

 様子を見て危険だとはっきりしたら、陽羽ちゃんを助けに行けばいい。


 駅に到着し、それじゃあとお互いの電車に乗って、僕は雪叔父さんに指定された場所へと向かった。



 陽羽から連絡が来て、早速、姉貴と一緒に陽羽ん家へと車を走らせていた。姉貴はもちろん、陽空が心配らしくついて来ている。陽羽ん家の近くにあるパーキングに止め、紗良とお揃いの靴と花束を持って、久しぶりの家を一度みた。

 懐かしいなと思いながら、インターホンを鳴らすと、出て来たのが透だ。


「来てくれたんだな。陽羽、喜ぶよ。その前に二人に話しておきたいことがある。ちょっといいか?」

「なんだ?」

「陽空の姿に絶対驚くなよ。破島のおかげでなんとか、俺と話せる状態までしてくれたが、夕哉はしばらく会ってないだろ?」

「やばそうだったら抜けるから別にいい」


 ならと玄関の扉を開けてくれて、お邪魔すると靴が何足かあり、他にもいるのだと知った。ただ見慣れた靴が二足あり、リビングにお邪魔すると、そこには親父と玲もいる。

 なんでいるんだよと突っ込みたくても、陽羽は普通に親父と話していた。


「あら、夕哉くん、夕莉ちゃん、いらっしゃい」

「お邪魔します」

「夕哉さん、夕莉さんも来てくださってありがとうございます」


 どんな状況と透にこっそり聞いたところ、警察仲間と誤魔化しているようだ。まんまと陽羽受け入れちゃってるじゃねえかよと言いたいぐらいだが、ここで組長とその組員と言ってしまったら、陽羽は恐るかもしれないからってことか。

 いつまで嘘を貫けるかは不明であっても、陽羽の隣を開けてくれる親父でそこに座ることにした。


「陽羽、卒業おめでとう。これは卒業祝い。陽羽の幼馴染って子が来店して同じ靴作ってほしいって頼まれてたんだ」

「そうなんですか?後で連絡しなきゃ。ありがとうございます。夕哉さん」


 開けてみてと伝え、陽羽はシューズボックスを開けてもらう。どうかなと様子を伺っていたら、陽羽は嬉しそうな表情で、再度お礼を言われる。

 ほっとしながらたくさん履いてなと言い、揃ったことでそれぞれコップを手にするから、陽羽の母さんからビールが入ったコップをもらい、透が仕切った。


「では、陽羽、卒業おめでとう!」


 乾杯をして陽羽の母さんが作った料理を頬張ることに。玲と透が芸をいきなりやり始め、それに突っ込む親父で、俺たちは笑いながら料理を頬張る。

 玲と透に引っ張られ、変な踊りをすることになるも、陽羽がこんなに笑ってくれるとは思わなかった。



 

 料理を全て完食し、陽羽の母さんと陽空が洗い物している間、陽羽の部屋を案内してくれる。小学生の時以来だなと思いつつも、中に入ったら鼻血が出そうな勢いだった。


 なぜなら家具等がオレンジや黄色をモチーフにしていて、壁紙はちらほらとこれはキンモクセイの花かが散らばっていた。てっきり陽羽の部屋はWizuteriaのイメージカラーである紫だと思ってたが違うようだ。

 陽羽は少し照れていて、机には俺があげたキンセンカのスノードームもある。


「夕哉さん」

「ん?」

「元日に言ってくれたこと」


 あぁ告るはず予定だったけど言えず、姉貴や玲に光太たちまで大笑いされちゃったやつ。


「大学が慣れ始めたら、その夕哉さんのお店でバイトしたいです」


 おっと、まさかそっちの回答が来るとは思わずで、少々驚くもめちゃくちゃ嬉しいと照れる。


「給料面とか考えておくから、バイトやりたいってなったらすぐ連絡して」

「はい、あの夕哉さん、あれから夕哉さんが大切にしている方の容体はどうですか?」


 嘘ですと即答はできず、元気にしてるらしいよと伝えるしかなかった。俺が大切にしているのは陽羽だってことはまだ言えないが。

 そうだ、渡しそびれる前に、財布からWizuteriaのチケットを取り出して、陽羽に一枚あげる。するとパッと目を輝かせ、いいんですかと聞かれた。いいよと言ったらありがとうございますと陽羽が出す一番の笑みを出してくれる。


 やべえ、陽羽に触れてえと思っていても、我慢我慢と心の中で唱えた。

 

「私が捕まった日に、チケット販売してたみたいで、今回は行けないって思ってたんです」

「陽羽のSNSみて、好きなんだなーって思ったからさ」


 えっと陽羽が困惑し始めていて、俺はスマホをポケットから取り出して、陽羽のアカを見せてあげる。そしたらこう回答がきた。


「Wizuteriaのことは一言も書いてない。乗っ取り…」

「ちょっと見せてくれる?」


 はいと陽羽が載せている投稿と、俺が見えている投稿を見比べてみる。そしたらWizuteriaの投稿のみ、閲覧者が見えるようになっているっぽい。

 これは組で動いてとっ捕まえるしかないようだな。


「俺が見えている投稿の日付って、陽羽が行ってる日?」

「そうです。推し活情報は載せないので」

「一応、親父さんにも話はしたほうがいい。SNSは稀に乗っ取られるケースが起きるから気をつけろよ」


 気をつけますと言われるも、SNSは意外と怖いことが多いから、陽羽にはやってほしくないと言いたいぐらいだよ。それでも陽羽の支えになっているから、また何か見かけたら教えてあげよう。


「なんか、怖いですね。誰が私に成りすまして、投稿してるのかな」

「わからないけど、今度のは俺も一緒に行くから、突き止めてみるよ」


 これでどう投稿するのかは不明であっても、何かが起きるのは確かだ。陽羽の母さんが二人とも降りて来なさいと声がかかり、リビングへと戻る。


 リビングに戻ってみると透とれ玲はベロンベロンな状態で、ここで発言されたらヤバい奴と思っていても、夕坊と俺に飛びかかってきた。

 親父止めてくれと親父をみるも、陽羽の親父さんと酒を楽しく飲んでいて、姉貴はリビングにはいなく、陽空の部屋にいるのだろうと理解する。


「夕坊?」


 陽羽がきょとんとした表情で俺のあだ名を言うから、これで思い出してくれるかと思ったけれど違うようだった。そしたらお袋もいたらしく、頭を冷やしなさいと玲と透をリビングから追い出したのだ。

 ここで言うべきか迷っていたら、二人を追い出したお袋が気になさらないでねと陽羽をソファーに誘導した。お袋はまだ俺のことを知ってほしくない様子で、お袋から目の合図で座りなさいとくる。空いているところに座って、陽羽に打ち明けた。


「陽羽ちゃん、卒業おめでとう。これは私と夫から卒業祝いと思ってちょうだい」


 用意してたのかと何を用意していたのかと思えば、やや大きめの木箱で、陽羽が開ける。そこには昏籐組のイメージカラーとなるオレンジと黄色の振袖だ。


「靴は夕哉に頼んでちょうだいね」

「おっお母さん!?」

「貰っておきなさい」


 陽羽は俺のお袋を見て、陽羽のお母さんを何度も見て、ありがとうございますとお袋に礼を言う。


「成人式に着てほしいの」


 お袋、すでに嫁としてみていて、少々苦笑してしまうほどだ。陽羽はまだ俺のこと覚えちゃいないって言うのによ。すでに陽羽の母さんと親父さんからは了承済みのようだ。


「サイズ合うかしら?ちょっと着てみましょう」


 スイッチ入っちゃったよと思いながら、一度離席する陽羽とお袋で、なんかすみませんと謝罪する。そしたら陽羽の母さんが言ってくれた。


「陽羽はまだあんな感じであっても、私たちにとっては二人の幸せを望んでいたもの。凛さんが夕哉くんのこと認めているから、私もあなたのことを認める。どうか、陽羽のこと頼みますね」

「はい。全力で守り抜くつもりです」

「ただ凛さん、もう一人陽羽を任せている子がいるから、その子に負けないようにね。私は夕哉くんを応援するわ」


 努力しますと話し合っていたら、お袋が戻って来て、ほら照れないでと陽羽をリビングに入れさせる。陽羽の振袖姿に鼻血がたらんと垂れながらも、親父もいいじゃないかと笑っていた。

 そしたら戻って来た玲と透が、めっちゃ可愛いとこっち向いてと撮影し始める。するとほら二人並んでと言われ、なんでだよと言いつつも、陽羽の隣に立ち撮影が止まらなかった。 

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