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33羽

 体育祭当日、晴天の空となり、みんな張り切っていて、私も精一杯頑張ろうと決めている。鉢巻を催花ちゃんにつけてもらい、椅子は真昼くんが先に持ってってくれていた。


「よし、できたよ」

「ありがと、催花ちゃん。岩渕さんは今日来るの?」

「来る予定だよ。お父さんとお母さん来るんだっけ?」

「ううん。お父さんは仕事で来れなくっぽくって、お母さんも珍しく用事があるから行けないって言われちゃった」


 ありゃまと催花ちゃんはびっくりしていて、一緒に校庭へと向かう。


「最後なのに見てくれないの、ちょっと残念だね。うちなんか、三つ子が応援するって場所取りしてたよ」

「三つ子ちゃんって来年小学校だっけ?」

「そうそう。お金が足りんってお父さんがしょぼくれてたから、うちもバイトしようって。まあその前に大学受からないと意味がないんだけどね」


 そうだねと体育祭が終わったら受験に備えての授業プラス通常の授業となる。高校最後の体育祭だから、目一杯楽しもう。


 列になる前にみんなで円陣を作って、クラスの代表である疾ちゃんが喋り出す。


「いいかお前ら。最後の体育祭のために、みんなそれぞれ練習してきた成果を、先生と伊宮に見せんぞ。負ける気はない。全力で勝ちに行って、先生と伊宮に感謝を示そう!行くぞ、お前ら!」


 おーと叫び、列となって選手入場と合図で、体育祭が始まった。選手宣言も疾ちゃんが代表として喋り、準備運動をして、種目が始まっていく。


 同じ色の後輩たちを応援しつつ、クラスを応援したりして、放送で次は借り人競争に出る選手はと流れる。私の個人種目でドキドキしてた。

 どんなお題が出るのかなと列に並ぶ。少し緊張してきたと、順番が来てスターターピストルの音で走った。箱が置かれてあるところまで走り、くじを引いて中を確認する。


 思い出の人とあり、生徒以外と書かれてあった。思い出の人って難しくないと、とにかく馴染みのある顔を探す。どうしよう、誰もいないと焦っていたら、陽羽と夕哉さんの声が響く。

 夕哉さんどことキョロキョロしてたら、お洒落な格好でいる夕哉さんを見つけて、夕哉さんの近くにより、お題を見せた。


 夕哉さんはそれを見て、私を抱っこして、走り出し、ちょっと恥ずかしいと思っても、夕哉さんは眩しい笑顔を出している。夕哉さん、いつも照れ隠ししてるのに、なんだか楽しそう。

 次々と抜かして行き、なんと一番になっちゃって、ありがとうございますと伝える。


「夕哉さん、ありがとうございます」

「いいって。俺を選んでくれてありがとな、陽羽」

「はい」


 そしたらいきなり夕哉さんがおでこにキスをして、頑張れよと紙を担当の子に渡し退場していく。周りにいた女子生徒たちがきゃーっとなぜか興奮していて、夕哉さんとおでこを手に当ててしまった。

 真昼くんにばっちり見られていて、なんで夕哉さんが体育祭にいたのか後で確認しよう。


 私、走らなかったけど一番でいいのかなと思っていたら、先生がグッジョブというポーズをしていたからいいのだろう。狩り人競争では、変なお題で困っている生徒がいたり、透が選ばれて走っていたり、三つ子ちゃんが選ばれて走ったり、学園長が走っていたりしていた。

 狩り人競争が終了し、クラスのみんなの元へ戻ってみると、さっきの人誰とか、お題はなんだったのとみんなに急かされる。それはと真昼くんを見ると、私のことを見てくれていないことがはっきりした。

 ちょっとごめんと真昼くんと呼びかけるも、真昼くんが向いてくれず、真昼くんともう一度呼んだら、真昼くんが堂々とみんなの前でキスされちゃった。よっぽど悔しかったんだねと手で唇にそっと触れる。

 

 そしたらやるじゃんと疾ちゃんがちょっかい出していて、若津くんたちが場を盛り上げていた。


「それでお題はなんだったの?」

「思い出の人、生徒以外」

「そんなお題出されてたわけか。それでそれであの人とはどんな関係なの?」


 えっととクラスのみんなに言われて、真昼くんがこれ以上拗ねないか心配になるも打ち明ける。


「私を救ってくれた人で、私の靴を作ってくれてる職人さん。私のことを考えて作ってくれてるの。みんなにも後で紹介するね」


 三角関係とみんなは勘違いをし始めちゃって、そんなんじゃないよと言ったら、真昼くんが僕のライバルでもあると言い出す。ひゅうひゅうと若津くんたちが揶揄い出してきた。

 噂が立ってしまいそうと思っても、私の気持ちは嬉しさが強かったな。


「まだまだ橙組は青組に負けてるから、気合い入れていくぞ」

 

 疾ちゃんが言っていて、みんながおーっと言い出した。



 伊宮透と疾太から体育祭絶対来い、絶対に来いよと言うから来たものの、すごい観客がいた。陽羽が見えてあのTシャツ着てるのか。陽羽の順番はいつだと見ていたら、夕哉くんと呼ばれ振り向くと、学園長つまり疾太の親父がいた。 


「ご無沙汰しております」

「元気そうでよかった。君が中退してしまったのは残念だったよ」

「けじめのつもりだったんですけど、彼女の近くに寄り添い守ってあげたかったと今も思ってます」

「そうか。疾太もよく、そう言っていたよ」


 学園長は俺の隣に立ち、生徒を眺めつつ、俺に言う。


「君が中退し、陽羽ちゃんは笑わなくなってしまった時期があった」

「そうなんですか?」

「あぁ。まるで死を待っているかのような目つきだった。そんな時、現れたのが伊宮透先生で、だんだんと陽羽ちゃんが笑うようになったのだよ」


 笑わなくなった時期があっただなんて初耳だと、教師が待機している場に目をやった。伊宮透は陽羽たちと同じTシャツを着ていて、自分が好きと主張しているように感じてしまう。


「いずれ伊宮先生は、夕哉くんに打ち明けるだろう。なぜ陽羽ちゃんが笑わなくなった理由をな。そろそろ陽羽ちゃんが出る。きっと夕哉くんを探すだろう」


 どう言うことですかと聞こうとしたら、すでに学園長はおらず、ちょっとすいませんと前の方で待機していた。そしたら学園長が言った通り、陽羽は焦って誰かを探していたから、陽羽と叫ぶ。


 すると陽羽は見つけたと笑顔を見せ、こっちに来て、お題を見せられた時、涙が込み上げそうになったよ。思い出の人、生徒以外とあり、こりゃあ俺が行くしかないじゃんと、陽羽を抱っこして一番になりたかった。

 たとえ陽羽の中にある俺は過去の俺じゃなくとも、今の俺を見てくれてる陽羽を受け入れようと。ゴールした後、嬉しくて南雲真昼がいたとしても、陽羽のおでこにキスをした。陽羽は照れていて、頑張れよと伝え回収担当の子に紙を渡し、退場する。


 陽羽のご両親が来ているのかと思ったが、以前渡しといたUSBのデータのおかげで警察が動き出すんだろう。後は後半にあるクラスリレーに出場するんだったな。

 それまではもう少し時間あるし、一旦出るかと出ようとしたら、一眼レフを首に下げている奴がいた。


「誰だお前?」

「ただの教師。って言っても大学の教授をしてる。ちょっといい?」


 あぁとそいつは校舎へ入って行き、勝手に入っちゃっていいのかよと、職員室へと入って屋上の鍵をとり、屋上で話すっぽい。屋上の鍵を開け校庭がよく見えた。


「あまり、公にはしていないことがあるけど、余はシルバーウルフに以前いたことがある」


 衝撃な事実で、こいつが元シルバーウルフだっただなんて信じられない。


「君の従姉妹から連絡来たときはびっくりした。なんせ、余の連絡先を知ってるのは、夜瀬組の息子だけだからね」

「頭に入ってこないんだけど。えっちょっと待った。お前って確か」

「警視庁特殊捜査課として働き、潜入捜査として、教授をしてる。余は十年前に起きた事故について捜査するためにかき集められた一人。それが終わったら一般に戻り、教授としてやっていくつもり。その前に、君と会っておきたかった」


 清々しい顔をして校庭を見つめている奴が俺と向き直して言われる。


「陽羽ちゃんが今、シルバーウルフの息子と付き合ってるのは知ってる?」

「…あぁ」

「昏籐組にも情報は渡ってるんだね。余は一度、陽羽ちゃんにある質問をした。そしたらさ、陽羽ちゃんがこんな回答したんだよ」


 そいつが言った言葉を聞いている時間、時が止まったかのようにも感じてしまっても、陽羽がそんなこと思ってくれてるだなんて、嬉しさが倍増してしまう。

 

「凛太郎さんが認めているかは分からずとも、陽羽ちゃんのそばにいてあげてほしい。これから何かが起きそうな予感だし」

「どうしてそんなことを俺に教えてくれる?」

「君の従姉妹から相談を受けたから、君に教えただけのこと。お礼なら従姉妹にいいなね。それと現ボスは何度か君と接触していたことで、陽羽ちゃんに接近した。まあおそらく情報を与えたのは、陽羽ちゃんの彼氏」


 あの写真を思い出してしまい、なんとか防ぎたいものだ。


「余がシルバーウルフに入っていたことは伏せておいてほしい。特に陽羽ちゃんには」

「なんで?」

「陽羽ちゃんがまだ事故に遭う前、一度接触してる。その時はシルバーウルフの一員として動いていた。思い出してほしくない過去」


 元シルバーウルフ構成員は、忘れていてほしいという顔立ちをしながら、首に下げている一眼レフを手にする。


「シルバーウルフが計画していたことを、陽羽ちゃんに目撃されちゃってね。焦ったよ。しかもレッドクレインの計画も見てしまったことで、当初は陽羽ちゃんを拉致する予定だった。幸い、陽羽ちゃんは交通事故にあい、記憶を失ったことで計画は実行してると思う」


 屋上から校庭を撮る元シルバーウルフ構成員で、シルバーウルフとレッドクレインが立てた計画とは一体なんなのかが気になった。


「その計画って一体」

「シルバーウルフはとある薬を日本にばら撒く計画、その一方レッドクレインはテロを起こす計画を立てていた。すでにレッドクレインが散らばっていることで、その計画はおそらく大きな災いが生まれる」

「ちょっと待った。なぜそこまで詳しく知っていながら、こうしていられる?シルバーウルフはやめようとする奴を放っては置かないだろ?」

「まあそうだね。余がこうしていられるのは、FBIのおかげ。その時に、陽羽ちゃんのお父さんを紹介してもらって、今に至ってるってことかな」


 こいつは司法取引によって免れ、日本で暮らしているというのか。FBIと陽羽の親父さんが深い関係性ってあったのかは知らずとも、こうして元シルバーウルフと接触できたのは幸運だった。


「それから、警察に届けてくれたUSB、罠が仕掛けらてた。危うく、君かそれとも君の部下が捕まるところだったよ」

 

 玲のパソコンで見ちまったけど、大丈夫なのか確認したら、警察のパソコンに入れると駄目だったらしい。


「あぁ言うのは危険度が増すから、相手から貰ったものはとにかく疑うべき」

「今後気をつける。情報は見れなかったってことか?」

「うちには優秀な奴がいるから、なんとかウイルスがかからないように、情報を入手してるから、そのうち昏籐組に依頼をかけるかもしれない」

「わかった。親父にも伝えておく」


 頼むねと言われ、そろそろ戻ろうかと屋上を出て、元構成員は鍵を戻しに行き、俺は校庭へと戻った。



 体育祭をやっているらしいけど、部外者だから入ることは許されていない。さすが守城学園だなと学園の外を歩き、以前真昼先輩の彼女と敵組の昏籐組の息子が事故にあった場所へと行ってみた。

 朝の時間帯、車はまばらで走っているから、車同士が事故ってもおかしくはない。されどその日だけは車がほとんど通っておらず、小学生二人が巻き込まれた。


 あの日、何が起きたのかは俺様には分からないことだけど、一つ言えるとしたら、親父は朝、姿がなかったということ。組員や世話役の奴にも、烏丸に聞いても教えてくれなかったしな。

 すでに十年前の出来事だから、世間では忘れているだろうけど、俺様はずっと引っかかっていた。


 親父が何かを吹き込んで、一般人に伝えあのようになってしまったんじゃないか。それでも親父にはアリバイがあり、夜瀬組の仕業ではないと出ている。

 

 唯一、鍵を握ってるのはあの場に居合わせた人物。そいつさえ捕まえれば、情報が引き出せるかもしれない。


 立ち止まっていたらレッドクレインの奴らが、守城高等学校の方面へと行こうとしている。ここで真昼先輩の彼女に手を出そうってんなら、止めるしかないじゃん。

 黎明の情報によればレッドクレインは真昼先輩の彼女の姉が監禁されていると聞いている。しかし自己判断でその中へと入ったため、警察は侵入ができない。


 真昼先輩の幸せを邪魔しないでくんないかなと尾行をしてみた。今はちょうど体育祭で紛れるのは可能だ。ひかっちに一応連絡しておくかとスマホを手にした時。

 背後から殺気を感じ、避けていなければ即死だったと思う。へえレッドクレインにこんな奴がいるとは信じられない。殺し屋がいるようで、もしかすると十年前の犯人だったりして。体型は鍛えられていて、烏丸より少し若げの奴は、俺様に向け、ナイフを手にする。


 ふうん、狙いは俺様だったってわけか。面白いじゃんと言いたいところだけど、ここで顔をばれるわけにはいかない。アクロバットを使って、じゃっと逃げた。

 しかし最悪な事態でナイフを投げられ、俺様の肩に刺さり、負傷する。烏丸は変装して真昼先輩を見守ってるから、こっちには来れない。どうすると近づいてくるレッドクレインで、逃げたとしても追われる身になる。


 そんな時だった。レッドクレインを倒す昏籐夕哉が現れ、俺様にナイフを投げた奴は去って行く。気絶したレッドクレインはどっから出したのか、紐でくくり逃げないように縛った。

 そして俺様が怪我していることを知り、大丈夫かと寄り添って、警察を呼ぼうとするから止めに入る。


「あのな、ナイフ刺さっている以上、只事じゃねえ。とにかく救急車と警察呼ぶから待ってろ」

「頼んでもいないのにやめてくれない?」

「いいから、手当してもらえ」


 本当に正義のヒーローって感じで腹が立つと思っていても、昏籐夕哉は俺様の正体を知らない。まあいいやとパトカーと救急車が数分後に到着し、レッドクレインは逮捕され、俺様は病院で処置してもらうことになった。

  

 

 夕哉と別々で陽羽の応援をしに行ってたけれど、警察が教師たちに話をしていて、陽羽の副担任である伊宮さんが警察と一緒に行くのが見えた。

 こっそり見に行くとそこに漆月が夕哉と話しているのが見え、嘘でしょと愕然としてしまう。漆月は救急車に乗り、病院へと搬送され、夕哉と声をかけたら、こっちに来た。


「何があったの?」

「レッドクレインが救急車で運ばれた通りがかりの奴に傷を負わせてたから、とっ捕まえた。これでレッドクレインにの敷地に再度、令状持って警察が動けるだろ」


 なんでわざわざ漆月を攻撃する必要があった。しかも夕哉はまだ漆月がどんな奴なのか知らないでいる。まだ確証はしていないけれど、助けた子は夜瀬組の息子だよ。

 そう言いたいけれど、夕哉は陽羽の応援をしたいだろうから、後日ちゃんと伝えよう。


「夕哉」

「ん?」

「どこの病院に搬送されたかわかる?」

「いや、ただ行きつけの病院があるからって救急隊と話してたから多分そこじゃねえか?」


 行きつけの病院はさすがに知らず、学校の時に聞いたほうがいいかもしれない。するとスマホが鳴り誰かと思えば星河さん。夜一の病院は隣町にある病院に搬送されたっぽい。ちょっと様子を見に行ってあげてと送られてきた。


「夕哉は陽羽の応援よろしく。あたし、病院行ってくる」


 おいっと言われるもタクシーを拾って、病院へと急いだ。不審な点が何個かある。


 なぜ、漆月は守城学園の付近にいたのか。

 なぜ、レッドクレインが漆月を襲ったのか。

 なぜ、夕哉に自分のことを話さなかったのか。


 考えれば考えるほど、もやもやがあり、数分後。病院に到着してスマホ決済で支払い、病院の中へと入った。搬送された漆月の場所を教えてもらい、救急治療室の前で待つ。

 すると包帯を巻かれた漆月がいて、なんでというような顔立ちであたしを見ていた。


「なんでいるわけ?」

「怪我は?」

「なんともない。何?俺様に惚れてるから心配してくれてるわけ?嬉しいな」

「そんなんじゃない」


 ふうんと腕を押さえながら待合椅子に腰を下ろし、隣来てよと言われたから隣に座る。そしたら案の定、あたしの肩に頭を乗せても、怪我人だから仕方なく我慢することに。


「紗良先輩は優しいね。こんな俺様のこと、気にかけてくれてる」

「だからそんなんじゃ」

「知ってるよ。どうせあれでしょ?探偵として情報をかき集めたい一心で来たことぐらい。俺様さ、破島淡に正体見破られそう、って言ってもすでに正体は気づかれてるような感じ。それで狙われたってわけ。あぁ最悪。俺様のこと、嫌いになった?」

「それとこれとは別でしょ」


 あたしが言ったら、漆月は目を細めてにやっと笑い、言うんじゃなかったとそっぽを向く。


「紗良先輩には言っちゃお。俺様は夜瀬組の息子。そして真昼先輩の肩代わりをしてる」

「肩代わり?」

「真昼先輩というより、母親がね、大きな借金を抱えてんの。それを俺様が支払ったってわけ。なんか知らないけど、後日、支払った分が戻っててさ。誰の仕業ーって調べた結果、真昼先輩の義父が支払って終了となった。弱みをせっかく掴んでたのにあり得なくない?」


 肩代わりしたにも関わらず、金額を支配済み。確か南雲くんの義父はIT企業の社長だから。いや、何かが引っ掛かると考えていると、ほおにツンツンとやられ漆月のほうを向く。


「紗良先輩の力でさ、ちょっと義父について調べてくんない?金額は払うからさ」

「あたしは受験も控えてるからしばらくは無理。他を頼って」

「むぅけち先輩。せっかく紗良先輩が好きそうなスイーツ店に連れてってあげようと思ったのに」


 ほらっとスマホに写っている写真は、予約でなかなか入れないスイーツ店だった。唾を呑み込み、天使と悪魔が浮き出てしまう。

 絶対に誘惑に乗っちゃ駄目と天使は言い、やってあげて、スイーツ店に行こうよと囁く悪魔。


 行かないならキャンセルしなきゃと、漆月がキャンセルしようとしていて、ちょっと待ってと悪魔に負けた。


「行く」

「決まり。クリスマスに予約してあるから、それまでに情報かき集めといて」

「わかったけど、受験勉強もやらせてよね」


 わかってるとあたしに寄りかかるのをやめて、迎えが来るまで付き添うことに。



 お昼を食べて午後の午後の部が始まっていて、みんなで頑張れと声を掛け合っていた。夕哉さんにちゃんとお礼がしたくとも、休憩時間に夕哉さんがいなかったから、帰っちゃったかなと思っちゃう。

 三年クラスリレーに出る選手はと放送が流れ、私たちは待機するところへと向かった。


 青組との差は後もう少しで、ここで点を取らなければ、優勝は見えない。待機場では私がいることで、青組のクラスは勝てそうというような目で見ていた。

 大丈夫だよねとぎゅっと拳を作っていると私の拳を開いて握る真昼くんが大丈夫だよと言ってくれる。疾ちゃんも、催花ちゃんも、千ーちゃんも、気にしないと笑ってくれた。


 円陣組もうぜと疾ちゃんが言うから、円陣を組み、疾ちゃんが励ましの言葉を言ってくれる。


「千夏、催花、真昼、陽羽、練習した通りにやろう。どんなに抜かされようとも、自分ができることを精一杯やっていく。バトンはみんなの思いもあることを忘れずに。行くぞ!」


 掛け声を合わせ、三年クラスリレーの始まりですという合図で入場し、それぞれ待機する。一番は千ーちゃんで、千ーちゃん頑張れーと大声で叫んだ。

 スターターピストルが鳴り、走り出してみんなの声援が響き渡る。


 千ーちゃんが催花ちゃんにバトンを渡した時、青組と差をとってくれて、橙組が一番乗り。千ーちゃんとハイタッチして私は準備をしつつ、千ーちゃんが真昼くんにバトンを渡した。

 ドキドキしてきたと思いながらも、真昼くんが徐々に近づいて来て、小走りになりながらバトンを受け取る。


 背後から陽羽ちゃん頑張れーと真昼くんの声援を聞き、全力で走るも、すぐ青組や他クラスに抜かされてしまう。走っていたら、陽羽頑張れと夕哉さんや透の声も聞こえ、疾ちゃんにバトンを渡そうとした時、ずてんと転けてしまった。

 早く、疾ちゃんにバトン渡さなくちゃと立ち上がって、疾ちゃんとバトンを渡し、疾ちゃんが走って行く。


 催花ちゃんと真昼くんの手を借りて、コースから抜け疾ちゃんの応援をしていった。疾ちゃんの足は早くて、次々と追い越し青組と並ぶ。

 お願いと私と催花ちゃんは祈りのポーズをして、勝敗が決まった。




 閉会式の時間となり、まずは学年から発表されて一年は三組、二年は五組、そして三年生は青組の二組となり、残念だったねとお互い言い合う。

 けど団体はまだだからそれに賭けるしかないと、校長先生が団体の発表を行った。


 みんなは祈りポーズをして、隣の列でいる二組は青団っしょと余裕を持っている。校長先生は先生から紙を渡され、それを読み上げていった。


「団体の優勝は、橙組」


 その言葉に私たちは大はしゃぎして、良かったとお互いハグをし合う。決めてはクラスリレーだったらしく、その差は一点差だったらしくて、疾ちゃんが一位を獲得してくれたおかげだ。

 

 閉会式を終え、私たちは透と先生を胴上げし、最後は大活躍だった疾ちゃんを胴上げする。いい思い出が作れて良かったと、カメラマンに集合写真を撮ってもらった後、スマホでみんなと撮り合う。撮っていたら夕哉さんを見かけ、私は夕哉さんのところへといった。


「優勝、おめでとう」

「夕哉さん、来てくださってありがとうございました。あの、海外に行かれてたんじゃ」

「学園行事見て来た。また海外に戻らなくちゃだけど、陽羽、本当によかったな。優勝祝いにこれよかったら使って。クラスのみんなにもな」


 夕哉さんがくれたのはHAN・RA・SHOESのクーポン券で、再びお礼を伝え、夕哉さんはそれじゃあなと帰られる。わざわざ見に来てくれただなんてと嬉しい気持ちになりつつ、みんなの元へ戻ってクーポンを配布した。

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