32羽
一週間後に行われる体育祭で、私たちは放課後、リレーの練習をしていた。アンカーは一番速い疾ちゃんで、最初に走るのは千ーちゃん。二番目が催花ちゃんで、三番目が真昼くん。四番目が私。
アンカーだけが一周走ることになってるから、距離を縮められそうなのが、疾ちゃん。
だから私が最後になってもその分、追い越してやるからと疾ちゃんが励ましてくれた。そのことを聞いていた真昼くんたちで真昼くんが、もの凄い不貞腐れている顔がなんか面白くて私たちは笑い合う。
夕莉さんが作ってくれた靴はすでにもらい、履きなれをしている。靴擦れもしていなく、大丈夫だよね。
「最後の体育祭、張り切らないとな。大学はないって聞いてるし」
「賢ちゃん言ってた。体育祭がないから、サークルでわいわいやってるみたいだよ」
「サークルって何やってるの?」
私が質問すると人差し指を立ててこう言った。
「天文サークルらしくて、普段は顧問とかはいないらしいんだけど、星河教授がたまに特別講義をしてくれるんだって」
だからかと私たちは納得して手をポンと叩き、私も大学に入ったら天文サークルに入ってみようかな。あっ思い出したくないことを、思い出しちゃって、みんなはどうしたのと私に聞いてくる。
「シルバーウルフのボスに、バイト紹介されたの」
それを聞いた真昼くんたちははぁっと大声を上げていて、完全にそのことみんなに伝えるの忘れてた。
「闇バイトだったら、僕がちゃんと叱っとくからいいなね。なんで僕に言わなかったんだろ」
「真昼に焼きもちを焼かせたいだけだろ。それでどんなバイトを紹介されたんだ?」
「猫カフェでボスが店長で私が店員として雇いたいって言われたの」
猫カフェとみんなが一斉に首を傾げるから、雪がどうしてその提案をしてきたのかはまだ正直わからない。それでも雪なりに考えてはいるんだろうなって感じる。
「反社会の業界じゃなくて、ただ単に猫が増えたから猫カフェをやりたいとかじゃない?」
そのことを告げたら、絶対に却下と全員が言っていて、やっぱりマフィアのボスと接触するというか、一緒に働く時点でアウトだということはわかってる。
「たぶん、会食の時に、その答えを出さなきゃならないと思う」
「だったら、陽羽のこと気にかけてくれてる靴屋さんでバイトのほうが良くない?」
催花ちゃんが提案したら、それは嫌だとはっきり言う真昼くん。そうだった、真昼くんは夕哉さんを見て、凄い嫌そうだった。催花ちゃんと千ーちゃんは困惑してしまい、疾ちゃんがこう言う。
「陽羽がしたいことをやらせてやれよ。あれも駄目、これも駄目って、束縛しているようなものじゃねえか。少しは」
疾ちゃんが真昼くんに触れようとしたら、うるさいと真昼くんは振り払って行ってしまった。なんだと疾ちゃんも困惑してしまい、行ってくるねと真昼くんを追いかける。
そんなに遠くには行っていないはずと、探し回っていたら、身体を縮こませている真昼くんを見つけた。
真昼くんと声をかけながら隣にしゃがみ込むと、真昼くんが寄り縋り真昼くんの頭を撫でる。真昼くんは自分でもわかっていながらも、私が他の男にいくんじゃないかと怖いんだよね。
私もそう。真昼くんの優しさが消えた途端に、恐怖や不安が大きくなること。何日も連絡来なかった日々はとても辛かったし、真昼くんのことで頭がいっぱいだった。
「陽羽ちゃん…」
「なあに?」
「ショッピングモールで、陽羽ちゃんが見てた雑誌に写ってた人。僕のライバル」
「ライバル?」
うんと顔を上げて真昼くんは子犬のような麗しき瞳でじっと見つめて私に言った言葉。
「陽羽ちゃんの好みの人なんでしょ?だからライバルの人の近くにいてほしくないもん」
ちょっと目を逸らして拗ねてる真昼くんで、私はぷっと笑っちゃって、だんだんと真昼くんの頬が膨らみ出す。確かに私好みの人であっても、私は真昼くんを選んだ。
「真昼くん」
「なあに?」
「私は真昼くんを選んだ。気持ちは変わらないよ。どんなことがあっても。それに靴屋さんは透の車じゃなきゃ行けないし、バイト先は、通いやすい場所にするつもりだから安心してほしい。それに私に近づいてくる人は限られてるから大丈夫だよ」
そう伝えたら、真昼くんが少し焦っちゃっても、私は気にしてないからと微笑む。真昼くんは私を抱きしめ、陽羽ちゃんを幸せにするーとやや大きめに宣言したのだった。
◇
真昼がなんか叫んでて、二人でいちゃいちゃタイムかと追いかけるのをやめた。その場を写真に収め、ある人に送信し千夏たちのところへと戻る。
真昼を常に観察していた俺は、真昼の表の顔と裏の顔を知っていた。だからいつ、陽羽が奪われてもおかしくはない状況で、二人きりにさせるのはあまりしたくはない。
それでも俺は、陽羽を揶揄い続けて来たことで、陽羽のそばにいる権限は持ってはいなかった。真昼がいつ裏の顔を陽羽に見せるのか、まだ判断しにくいところだけど、陽羽の姉が変な宗教に捕まったと親父から聞いてる。
姉が帰って来たら久しぶりにホームパーティーをやりたいと親父に伝えてあるが、できるかどうかは不明だ。
なんせ、親父はシルバーウルフと取引をしているから、陽羽に手を出せば家族や身内が危険になる。だから俺は動けない状況でありながら、真昼と接していた。
昔は裏の顔なんてなかったのにさと、戻っていたら、スマホが鳴り、電話に出る。
「久しぶり、夕哉」
『なんだこれ?こんな情報はいらねえよ。ったく。んで状況は?』
「陽羽は相変わらず、夕哉のことは思い出してない。けどさっき、バイトの話になって、夕哉の店でバイトしたらって、だちが提案したら、一瞬陽羽の顔赤くなってたよ。夕哉のこと思い出したんじゃないか?」
『過去の俺のことじゃなくて、靴屋の店長ってことか。バイトは募集してないけど、陽羽がやりたいって言うなら歓迎はする。あっ悪い。尾行してるから、また何かあったら情報頼む。じゃっ』
夕哉から切って、夕哉がいま、どこにいるのかなんとなくわかってしまった。陽羽の姉を救うために動いてくれてることで、このことを打ち明けたくても、陽羽には言えねえ。
夕哉とは何度かお袋同士が会食をしていて、その時に夕哉と出会った。組長の息子と遊んで来なさいと言われても、夕哉はその当初、組長の息子とは思えないぐらいの無邪気さがあったな。
そんなんで普通に遊んでいたし、怪我したら我慢ではなくわんわんと泣いて、お母さんと叫んでいたのが印象的だった。
千夏たちのところに戻り、催花が聞いてくる。
「陽羽ちゃんと南雲くんは?」
「ちょっと二人きりにさせたよ。少ししたら戻ってくると思う」
「とうとう、上の段階までいってたってことか」
ちげえわと千夏に軽く拳骨して、二人が戻って来ないと練習にはならないからな。それに陸上競技場を借りられている時間が後もう少ししかないから、早く戻って来いよとメッセージを送っといた。
「これ終わったらどうする?どっか飯でも食いに行くか」
「うちはパス。三つ子の面倒見るよう言われててさ」
「うちもパスかな。お母さんに、受験勉強しなさいって言われてるし」
二人がパスとは珍しいけど、受験がだんだんと近づいているから、勉強に励みたいんだろう。そうなると陽羽と真昼三人で飯に行くとしても、真昼が嫌そうな顔しそうだしやめとくか。
二人が戻って来るまで、三人でサークルどうするか、話し合っていった。
◇
尾行中にまさか疾太から連絡来るとは思わなかった。疾太は何度か、お袋同士との会食でよく遊んでいたことと、交通事故があった時に、目撃したと証言していた瞳は忘れたりしない。
疾太は何かを隠していたが、疾太が隠し通しているわけ。陽羽が目の前で事故ったから、その衝撃でショックを受けていたこと。だから疾太が俺に話してくれるまで、待っていながら、時々連絡はとっている。
レッドクレインらしき人物を尾行しつつ、組員に指示を与え、動いていた。どこに向かってんだと進んで止まっているから、止まれと指で合図する。
あそこで誰を待ってんだと橋の下で待っている人物を見ていくと、反対側から黎明が現れた。
何を話してるのかはさすがにわからず、レッドクレインらしき人物はどこかへと行く。これ以上、尾行したら黎明に気づかれると思い、撤退しようとしたら、夕坊、そこにいるんでしょーと気づかれていたらしい。
お前らは帰れと指示を出して、俺だけが顔を出し、黎明はにこにこしていた。
「僕ちんに会いに来たのー?」
「違う。さっきのは黎明の仲間?」
「ふっふーん、そうだったらどうする?やっと僕ちんと一緒に、乗り込む気になった?」
どんどん笑顔で近づいて来て、親父に言われたこと。黎明の調子には乗るなと。それにレッドクレインの要塞の門が開いたことで自由に入ることができた。
「黎明と一緒にやるわけない」
「だろうなって思ってたよ。残念だなぁ。まあいいや。どのみち、夕坊には関わってほしくないから、その代わりなんだけど、昏籐組の若頭として、長に会ってほしい。警察もそれを望んでるんじゃない?」
それは一理あるかもしれないし、陽空と接触できるかもしれない。そこで罠に引っかかったら、黎明を凛太郎さんの前に突き出そう。
「接触できなかったらどうする?」
「できるっしょ。あいにく夜瀬組はシルバーウルフをボコボコにしてるんで、警戒されている。善のある組がレッドクレインに現れたら、助けを求めに来るはずだ。そう思わない?」
黎明の調子に乗っている気がするも、破島とも接触できる可能性も高いから一度行ってみるしかなさそうだな。
「考えておく」
「決まり。じゃっ僕ちんは夜瀬組の烏丸と会うから、バイバーイ」
黎明はスキップしながら行き、レッドクレインへと向かった。ここで玲がいたらきっと二人はぶつかり合っていたのは確実。玲がいなくてほっとしたと歩いていたら、隠れて話は聞いてたらしい。
「なんで現れなかったんだよ」
「黎明が変わっちまった原因が少し気になってさ。あえて出なかったし、向こうも自分がいたことに気づいてたと思う。夕坊、一人で乗り込むきか?」
「一般エリアは解放されてるらしいから、直接行く。玲は店もあるし、来なくていい。罠だと思ったら、すぐ脱出するつもりだ」
自分も行くと言い出して、ついて来なくていいのによと思いながらも、断ってもどうせ気配を消して来るのだろうと放置した。
本当に門が開いてあり、一般人がここから出入りをしている。なぜなのかは不明であっても、玲と一緒に乗り込んだ。レッドワインのスーツを着た人たちがチラチラとこちらを見ている。
情報はすでに入っているのだろうと、建物内へと入って、よくわからないことを目撃した。レッドクレインのどこがいいんだがと、受付っぽいところで、聞こうとしたら、破島が現れる。
「いやぁ、夕坊と玲が直々に来るとはな。何用だ?」
「長に会わせてもらいたい。レッドクレインの成り済ましの件で、報告したい」
「歓迎する。ただし来るのは夕坊のみ。玲はここで待っててもらおうか。それができなければ、長は会わないと言っている」
「玲、待ってろ」
承知と玲はロビーにある椅子に座って待っててもらい、ついて来いと破島が案内をした。壁の先に行くにはどうすればいいんだと思っていても、建物内にある一室に連れて来られ、そこにノートパソコンが置かれている。
直接会えるわけではないということかと椅子に座ったら画面がつき、そこに写っていたのはレッドクレインの長と膝の上に座っている陽空がいた。長は陽空の頭を撫でながら、自己紹介をし始める。
しかも想像以上の美貌さのあまり、整いすぎて気色悪いと思ってしまった。
『初めまして、昏籐組若頭、夕哉。この私は麗しき美を求めている、鶴と申す。善の組であり警察と連携していると聞いたが、うちの陽空の件に関してだろうか。すでに警察には話をつけている。陽空が自ら家を出て私のところに来た。誘拐ではない』
そりゃあそうだよな。自分の意思で動いているから保護管轄にはならないし、陽空は成人している。どこにいようが陽空が助けを求めない限り、警察は動けない。
だが凛太郎さんはそれでも陽空を救うため、うちの親父と話し合いが何度も行われている。
『さて、本題に入らせてもらおうか。レッドクレインを汚している人物について。少し破島には聞いている』
破島がいた頃は黎明もいたと親父と玲が言ってたから、破島は黎明とどこかで会っているんだろう。
「レッドクレインを汚しているのは、黎明と言って親父が黎明を一時期預かっていた子。そして俺の世話役としてそばにいてくれたものの、両親が迎えに来たことで、組と離れた。それ以来は組には顔を出さずにいたから、詳細は知らない」
俺が話しているにも関わらず、陽空に触りすぎなんだよと、イライラしながらその続きを伝えた。
「ただ先日、黎明と接触でき、現在は俺たちの敵組となる夜瀬組と手を組んでいると聞いた。黎明の仲間は、元レッドクレインを使用していた遺族であり、いずれここを襲撃すると言っていた。そして長の大事なものを奪うと」
『大事なものを奪うか。奪えるものなら奪ってみせればいい。その前に黎明たちには死を与えるつもりだ。血に染まりゆく黎明を拝める日が待ち遠しい』
こいつイカれてるのに平然としている陽空であり、なぜこんな奴のそばにいようと思ったのか不思議なくらいだ。
『そうそう、破島。例のものを』
一度部屋を後にし、なんだと待っていたら、破島が戻って来て、赤い封筒を渡される。開けてみろと破島に言われ、その中身を確認したら、怒りしかなく鶴と叫んだ。
鶴は大笑いして、いい写真だろとせせ笑い、こいつ何がしたいんだよと写真を叩きつける。
『君の想い人じゃないか。記念に撮っておくがいい』
「ふざけんな!陽羽が一体何をしたっていうんだよ!これ以上、陽羽を傷つけるな!」
『それはできぬ。なぜなら、陽羽は我々の計画を知ってしまった。幸い、交通事故に遭ってくれたおかげで、順調に進んでいること感謝するよ』
計画、つまり計画を知ったことで、交通事故に遭っちまったってことかよ。
『夕哉、言っておくが我々は交通事故の犯人ではないことは伝えておこう』
「どういうことだ」
『我々の先代は陽羽を拉致する計画を企んでいた。しかし交通事故に遭った影響によって、記憶が抹消されたと聞いている』
「あんたらは当時のことは何も知らないということなんだな?」
無論ときて、だとすれば夜瀬組の仕業で間違いはないってことなのだろうか。まだ不明点が多くあるも、こいつを信じていいのか、正直悩みどころだ。
カルト集団の長であり、いくらでも洗脳させ、従わせることは可能。陽空はずっと違う方面を見ているから不自然だった。
「陽空」
声をかけても反応がなく、すでにやられちまったってことかよ。鶴は俺のことを見て、くくくっと笑っている。これは非常に厄介なことになり始めてるな。
そう思いきや陽空がイヤホンを外し、何とこちらを向いて、テレビ見てたんかいとずっこけた。
「反応がないから何かされてるんじゃないかって焦った。紛らわせんな」
『話を聞くなって言われてたから、もう終わり?』
『まだもう少し話すから、もう少し待ちたまえ』
陽空はわかったとイヤホンを付け直していて、これで陽空が完璧にそうなったら、無理じいでも陽空のもとへと向かってたと思う。
「紛らすようなことはするんじゃねえよ」
『よいではないか。最近、陽空が私から離れようとはしなくてね。参ったものだよ』
怪しい教義でもして、従わせているんじゃねえのかと疑いを感じてしまうほどだ。
『昏籐組と手を組む気はないが、一つ情報を提供しよう。その代わり、私の指示に一回だけ従ってもらう。どうだ?悪い話ではないだろう』
何か裏がありそうで、情報なら紗良や紗良の母親に聞けばいい。破島の様子は煙草を吸って、笑っていてやっぱり何かがあるのだと確信する。
そこで断れば昏籐組に何が起きるのかも想像がつく。レッドクレインに協力はしたくないし、借りを作っておきたくはない。ここは従って様子を見たほうが、いいや、焦るな。
現状、この空気に呑み込まれているのは俺で、誘惑に乗せられている。さっきの写真もあれはフェイク写真だ。陽羽があんな姿を見せるわけないと写真をつい見てしまう。
それでも陽羽がこんな姿で目の前に現れたら、俺はイチコロだと思ってしまった。ぶんぶんとしっかりしろと頬を叩き、答えを出した。
「断る。情報がなくとも自力で探し出す」
『承知した。いい提案だとは思っていたんだがまあいい』
陽空に合図をして陽空が立ち、それではと陽空を残して、鶴は部屋から出る。陽空は鶴が座っていたところに座り、イヤホンを外した。
『久しぶり、夕哉…』
「平気か?」
『んーまあ平気かな。誰かに言われてここに来たの?』
「いや、独断だよ。なんであいつと一緒にいようとか思ったんだよ。それとも脅されてこっちに来た?」
聞いてみると陽空は視線を下にし、ぎゅっとスカートを握っているから、脅されているのは確かなことだ。ここで陽空が助けを俺に言ってくれないと、助けることはできない。
陽空行ってくれと待っていたら、我慢した笑みを浮かべ、俺に告ぐ。
『陽羽にちゃんと話してあげてほしい』
「陽空、違うだろ!ちゃんと言えよ!」
『あたしは大丈夫だから、お願い。シルバーウルフに陽羽を奪われたくない。ちゃんと話して、陽羽を守ってあげて。それができるのは、夕哉だけなんだよ』
陽空、なんでだよ、なんで自分を犠牲にしようとしてるんだ。じゃあねとブチッと切れてしまい、答えてくれよとその場で崩れ、大声を出す。
このまま帰れるわけねえだろと床に何度も拳を当てた。そしたら破島が俺の拳を握る。
「あんたの拳は、大切なものを守る為の拳だろ。こんな床を殴っていても意味がない」
「破島?」
「さっとっとと帰れ。次来たら、鶴様は容赦しないから覚悟しておけ」
俺のポケットに何かを入れ、背中を叩かれ立ち上がり、玲がいるロビーに戻った。ポケットをここで漁ったらいかないと思い、レッドクレインの拠点から離れ、玲の店でポケットを確認する。
それはUSBメモリーであり、玲と俺は顔を見せ合う。これって重要なものが入ってるんじゃと、玲が使っているパソコンを使い、確認をした。
そこには信じられない写真が多く存在し、これを警察に渡せば、レッドクレインは壊滅する。
「これ、すぐ陽羽の親父に渡しに行こう」
「そうだな。なぜ破島はこれを見せてくれたんだ」
破島が考えていることは一体なんなのかわからずとも、これで陽空を救えるなと俺と玲はハイタッチした。
◇
鶴様の元へ戻り、あれを渡したところで、揉み消されるのは間違いはないのは確定だ。そうだとしても、レッドクレインには計り知れないほどの闇が存在している。
そして今回、大きな闇がもうすぐ訪れようとしているなか、陽空を招き入れた理由。それは陽羽が陽空に話している可能性が高いと目論見、鶴様のそばにいさせている。
「鶴様」
「夕哉がどう動くのか楽しみだ。ところで破島、例のものも渡したかい?」
「渡しといたが、うまくいくかは不明だ」
「夕哉は陽羽のために、陽空を取り返そうと必死なのは見え見え。そこに落とし穴を落とし、我々の計画を夕哉に擦りつけ、昏籐組は崩壊させる。それが描いたシナリオなのだろう」
その通り、夕坊が捕まえれば昏籐組も崩落する。そして夜瀬組も黎明も刑務所へと入ってもらい、その後、レッドクレインの計画が実行される。
「それまでは引き続き、仲介を頼むぞ」
「承知。陽空はどうする?」
「すでに私から離れないよう仕掛けた。色々と忙しくなりそうだ」
計画実行後、日本から離れてどこかの国に滞在すると聞いている。どこかはまだ教えてもらっていないが、我もそろそろ準備をしておこうと自室へと戻った。




