28話
文化祭二日目となり、いろんな人たちが展示を見に来てくれて、今年はいい結果になりそうと感じた。私と真昼くんは受付をしていると、陽羽と紗良が来てくれる。
「わざわざありがとね」
「いいって。南雲くん、こんにちは。なんかSNSで陽羽たちのクラスが話題になってたよ」
紗良が見せてくれて、素敵な展示室発見とか、最後にミニ写真もらってスマホケースに入れてるとかあった。私たちはハイタッチして、いい評判がもらえてとても嬉しい。
話していたら真昼先輩きちゃったとダボッとした私服姿の漆月くんであって、もの凄く嫌そうな顔立ちをしていた。
「紗良先輩、陽羽先輩ヤッホー」
「漆月さっさと見て、さっさと帰って」
「やだー、てかさ、こんなんSNSに上がってたんだけど」
漆月くんが見せてくれたのは、知らないアカウントで、私が写っている。この子を探したら連絡くださいとあり、んっと首を傾げた。
「知り合いじゃないの?」
「全然。見ていく感じ私のこと探してるっぽいけど誰だろ」
「だから連絡したよ。すぐ来るんじゃないかな」
真昼くんが漆月と漆月くんの耳を掴んで、痛い先輩と言いながら二人はどこかへ行っちゃった。苦笑してしまい、写真見てくるねと紗良は教室へと入っていく。
お父さんにこのこと告げたら、多分削除依頼をするだろうな。受付をしていても、真昼くんは戻って来なくて、どこまで行ったんだろう。受付をしているとあのっと声をかけられそっちに顔を向けた。
ブロンドの髪にエメラルドのような瞳をした外国人が立っていて、えっえええぇぇと私は大声を出してしまい、紗良がどうしたのと教室から出てくる。久しぶりと言われて、紗良も大声を出していた。
「なっなんで?」
「アメリカから帰国して来た。陽羽を一度、見かけたんだけど見失っちゃって、SNSで探しててもらってた。もちろん削除する」
このタイミングで紗良と私の幼馴染が登場するだなんて思いもしなかった。削除したことを確認が取れ、改めて連絡先を交換する。
紗良も交換し合い、懐かしいねと紗良が写真撮ろっと言い出すから、三人の写真を撮った。
「いつ、こっちに来たの?」
「先週に帰国して、大学をここにしてるから、どんな雰囲気なのか見に来た。それにしてもやたらと大きくてびっくりした」
「じゃああたしたち一緒に受ける感じなんだね。陽羽、よかったじゃん。あっでも陽羽、彼氏持ちだから諦めなよ」
そうなのと聞かれて、うんと話していたら、真昼くんと漆月くんが戻って来た。
「真昼くん、お帰り。紹介するね、幼馴染の翠・カジューくん。それで私の彼氏である南雲真昼くんと、それから」
「ちーす、陽羽先輩の情報を教えた漆月夜一でーす」
「初めまして、よろしく。陽羽、おじさんとおばさんにご挨拶したいんだけど、今日は来てない?」
「昨日、お父さんたち来てたの。会いたいって伝えておくね。いつまでこっちに滞在する予定?」
明日帰らなくちゃならないっぽく、今日は透が打ち上げでクラス全員にご飯奢る予定になってるからな。それに後夜祭もあるし、どうしようと悩んでいたら、紗良が提案する。
「おじさんに用事あるから、陽羽ん家一緒に行くよ。それでいいよね?翠」
「うん。忙しいのにごめん。それじゃあ受験会場でまた会おう」
紗良と翠は私たちの教室に入って行き、漆月くんはちょっと嫌そうな顔立ちをしつつ、教室へと入った。真昼くんもハーフの翠に嫉妬しているのか目を合わせようとはしてくれない。
紗良と翠が教室から出て来て、写真を選んでもらい、渡してあげ二人はじゃっと去って行く。続いて漆月くんも気に入ったらしい写真を選び、それを渡してあげた。
「あいつってどんな奴なの?」
「どんな人というか、マイペースでおっとりしすぎる部分があるけど、冷静に判断するところもあるかな」
「ふうん。真昼先輩とは真逆なタイプか。真昼先輩はせっかちさんで、何かと判断を間違えるし、嫉妬心強めだもんね」
それを言った漆月くんを睨む真昼くんであっても、漆月くんの表情は変わらずだ。
「さっさと帰ってくれない?」
「はいはい。お邪魔虫は退散するよ。あっそうだった。真昼先輩、さっき言ったことは忘れないようにね」
しっしと追い払っている真昼くんで、漆月くんは隣のクラスへと足を運んだ。
「何話してたの?」
「大したことじゃないよ。陽羽ちゃんは、その、幼馴染に恋してたとかは?」
「昔はそうだったけど、海外に移住するって聞いて、最初は手紙のやり取りはしてたの。だけど、私がこんなだからそれきり手紙のやり取りはしなくなった」
翠に恋をしていた時期は紗良も恋をしてたっぽいけど、翠に振られたーって泣きついてたっけな。思い返していると真昼くんは目を細くして、机に肘を置いて、ふうんと拗ねてしまった。
「真昼くん、昔のことだってば。今は真昼くんだけだよ」
「わかってるけど、なーんか翠くんだっけ?陽羽ちゃんのこと探してたっぽかったし、なーんか陽羽ちゃんと一緒にいられなかった分を埋めようとか思っちゃってさ。やっぱり、文常大学やめて、守城大学にしよっかな。あぁどうしよう」
幼馴染三人と一緒プラス疾ちゃんってなると、真昼くんにとってはとても嫌なんだろうな。真昼くんの機嫌を良くするために、椅子をくっつけて真昼くんに寄りかかり手を握った。
「何度も言うけど、私は真昼くんだけだよ。違う大学になっても、私の気持ちは変わらないよ」
「陽羽ちゃん」
真昼くんはぽっと頬を染めてもう拗ねないと言ってくれて、私たちが笑っているとこーらと軽く拳骨を透からもらう。
「いちゃつかない。んでどう?順調?」
「透先生の写真があるおかげで、結構お客さん見に来てくれてます」
なんか照れるなと頭をかく透で、残りの時間頑張れよと透から言われ、休憩時間まで受付をしていった。
◇
一通りみたあたしたちは、陽羽ん家に向かっていた。翠がこのタイミングで日本に来た理由ってもしかしてと聞いてみる。
「翠、あのさ」
「紗良が考えていることを調べに来た。陽羽には黙っといて」
「やっぱり。だけどシルバーウルフは帰国したらしいけど」
「知ってる。シルバーウルフが戻って来たことで、ちょっと騒ぎが起きてて。日本の警察と連携をとるみたい」
翠のご両親はFBI捜査官であり、常にシルバーウルフを追っていると聞いていた。まさかとは思うけど、南雲くんの存在も知っているってことなのかな。
翠に聞こうとしたら、早速そのことについて聞かされてしまう。
「陽羽の彼氏なんだけど、陽羽はそのこと知っている上で付き合っているってことでいいの?」
さすが洞察力鋭すぎる翠で、まあと相槌を打ち、ここで翠が帰って来たことを陽羽のご両親が知ったらさぞ心強いというか、南雲くんを引き離す方向性で考えるだろう。
陽羽があんなに頑張ってるのに、それを阻止してしまっていいのだろうかと思ってしまった。
陽羽ん家の前に到着し、懐かしいと呟きながら、インターホンを押す。あら紗良ちゃんと陽羽のお母さんが出て、扉が開いた。いらっしゃいと声をかけてくれて数秒後、翠くんとびっくりしていて、大きくなったわねと陽羽たちのお母さんは言う。
上がってちょうだいと少し元気になった陽羽のお母さんであり、お邪魔することになった。
リビングへと入って、陽羽のお母さんはお茶とお菓子を用意してくれる。
「翠くんはずっとこっちにいるのかしら?」
「いえ、一度アメリカに戻りますが、大学受験は守城大学を受けます。陽羽が大変な時期にそばにいられずすみません」
「いいのよ。てことは幼馴染三人が勢揃いってことね。陽羽も喜ぶわよ。陽羽にはすでに会ってるのかしら?」
「はい。会ってきました。それと彼氏さんにもお会いして」
そうと陽羽のお母さん的には翠が陽羽のそばにいてくれたほうがいいと考えてるっぽい。
「おじさんは?」
「立て続けに事件があって、最近は帰って来ないことが多いけれど、今日は帰ってくると思うわよ。陽羽は最終日だから帰りは遅くなるって聞いてる」
「お会いした時に、そう言われました。あの一つ、お伝えしなければならないことがあり、おじさんを待ってていいですか?」
「えぇ。紗良ちゃんはどうする?」
あたしも残りますと伝え、ならちょっと待っててちょうだいと陽羽のお母さんはリビングを出て何かを持ってくるようだ。少しして陽羽のお母さんが戻って来て、陽羽のアルバムを翠に見せて行くことに。
夕哉と写っている写真は省いているようで、少し寂しさを感じてしまった。あたしと夕哉の関係は知らないだろうし、言わないでおこう。翠は一枚一枚見ていき、そばにいたかったと呟いていた。翠がアメリカに行く前に告白された陽羽は嬉しそうだった。
二人を応援しようと決めていたけれど、陽羽が交通事故に遭って、その記憶があるのかはわからない。ただ翠のことは認識していたとしても、記憶はあまり思い出せないよね。
「あの、おばさん」
「ん?」
「何枚か省きました?」
翠が言うものだから、陽羽のお母さんはえぇと言いながら、もう一度席を外して、写真を持って来てくれたのだ。捨ててはいなかったんだと翠に渡すから、一緒に見てみる。
全て、夕哉と一緒に写っている陽羽は本当に幸せそうな笑顔で、陽羽のお母さんが教えてくれた。
「陽羽と写ってる子は夕哉くんと言ってね。とても純粋すぎて一途な子で、普段は車で送り迎えしてもらってたらしいの。それでも陽羽に一目惚れしました、一緒に登校してることをお許しくださいって直々に自宅まで来た時は驚いたわよ」
笑いを必死に堪え、夕哉そんなこと言ってたの。
「夕哉くんは一応、組長の息子っていうこともあって、わざわざ来てくれた。凛さんは少し悩んでたけれど、陽羽と夕哉くんを暖かく見守ってたわ。それなのに悲劇が起きてしまってね。凛さんと夕哉くんのお父さんが話し合って、二人を引き離したわ」
引き離された挙げ句、陽羽は大好きだった夕哉のことを忘れてしまい、それでも夕哉は陽羽を守ると言い張って、ずっと遠くで見守っていた。
いつか陽羽が思い出して、夕哉と結ばれてほしいというのが本当のあたしの願いでもある。
「おばさん、今の彼氏についてはどう感じるんですか?」
「そうね…少し心配ではあるのよ。再び災いが起きてしまうんじゃないかって恐れてね。陽空も…」
陽羽のお母さんは、陽空ちゃんのことを思い出してしまい、少し涙ぐんでいた。すると翠は夕哉が写っている写真を置き、陽羽のお母さんの手を握って言う。
「これからは日本にいるので、陽羽に何が起ころうとも、僕が必ず守り抜きます。それに本当はおじさんが帰って来てから話すべきかと思っていたのですが、陽空はもうすぐで帰ってくると思います。そう伝えてくるよう、僕の両親から言われたので」
「どうして?」
「国際犯罪秘密組織シルバーウルフは、陽空を買い取ったというレッドクレインの長と深い繋がりが存在する。すでにシルバーウルフに、忍ばせている人物から情報が入り、陽羽の彼氏次第で陽空ちゃんが解放されるかもしれないと報告がありました」
おっと、忍ばせているのなら、もっと早く陽羽のお父さんに伝えてあげてよと思ってしまった。しかしシルバーウルフは国際犯罪秘密組織ということもあり、慎重に動かなければ確実に死が訪れるんだろうな。
って言ってもボスが変わったことで、犯罪的なことは少なくなったとかとお母さんは言ってた。どっちなのかはわからずとも、翠のご両親はFBIでシルバーウルフの情報があるから、お母さんは翠のご両親から情報をもらってる。
このタイミングで翠が日本に訪れるとは思いもしなかったけどと、あたしは夕哉が写ってる写真の一枚をみた。
「真昼くんはシルバーウルフと無関係と聞いてるわよ」
「はい。無関係となっても、所詮、現ボスは叔父に値する。連絡はしていると思います」
そりゃあそうだよねとあたしも、そこが少々心配になっているところではある。ここで真昼くんが黒だとはっきりしたら、真昼くんに何かをされるのではないかと思っていた。
「僕が帰って来た理由も、陽羽の彼氏が白なのか黒なのか見極めるために、帰って来た。ここで黒だとはっきりしたら、陽羽はおそらく、陽空同様なことが起きるかも知れない。そうならないためにやらなくてはいけないんです」
翠が言っている言葉は確かにそうで、陽羽のお父さんも同じようなことは言ってたな。今度、南雲くんがここに来るらしいから、話し終えたら陽羽にどうなったか聞こう。
陽羽のお母さんは、翠が帰って来てくれたことで、安堵を感じたようだ。
◇
文化祭終了間際に、遅れたーと岩渕さんが猛ダッシュでやって来て、遅いと催花ちゃんは少々ご機嫌斜め。本当は催花ちゃんは岩渕さんと回る予定だったものの、サークルが出している物販が猛烈に売れていたようで、再販かけたりで忙しかったっぽい。
楽しんでくださいとパンフレットを渡し、催花ちゃんと一緒に回る岩渕さんである。
岩渕さんが見回ったら終わりかなと、机を真昼くんが片付けようとしたら、待ってと廊下に響き渡った。誰かと思えば夕哉さんで私の目の前でぜえぜえ言っている。
「夕哉さん」
「間に合った。まだ見れる?」
終了間際ですとパンフレットを渡しながら、わかったとパンフレットを受け取り、夕哉さんが教室へと入ってくる。海外行く前に来てくれたのかなと、真昼くんは少々機嫌が悪そうな感じでも机を片付け始めていた。
岩渕さんと催花ちゃんが出てきて、催花ちゃんが撮った写真を選んで、また後でとせっせと岩渕さんは大学の方へと戻られる。残りは夕哉さんだけで、なかなか出て来ないから教室を覗いた。すると私の夕焼けに足を止めていて、夕哉さんと声をかけるも反応がない。夕哉さんの顔を覗いてみるとつうっと涙を流していた。
「陽羽、この写真って」
「私のお気に入りスポットです。夕焼けがとても綺麗に見える場所で、たまに行くんです。そうだ。よかったらこれ差し上げます」
私が撮った夕焼けの写真を小さくしたもので、ありがとなと涙を拭いながら受け取る夕哉さん。夕哉さんにとって思い出の場所だったのかなとふと思ってしまった。
夕哉さんはなくさないように、スマホケースにしまう。
「いい写真ばかりでいい展示だけど、陽羽そのTシャツなんだ」
お腹を抑えながら笑っていて、私もつい笑っちゃう。
「以前、仲の良い友達と先生でキャンプに行ったんです。それで寝ている先生に落書きしたもう一人の先生が書いて」
「そうなんだな。ぐちぐちいう先生にまだ会ってないけど、そろそろ行かないと。終了間際に入らせてくれてありがとう」
「いえ。夕哉さんが来てくれて、私、嬉しいです。昨日、夕莉さんがいらっしゃって、夕哉さんは出張でいないって言われたので。これから行くんですか?」
「まあそんなところ。少し店は空ける感じになるけど、姉貴が店番してるから、困ったら姉貴に相談してな。それじゃあ」
またと夕哉さんを見届けていると後ろから抱きつく真昼くん。
「真昼くん?」
「今度、陽羽ちゃんのお気に入りの場所に連れてって。見たことがなかったから」
「夕焼けの写真んところ?」
「うん。あいつ、なんか陽羽ちゃんのお気に入りスポット知ってたから、ちょっと焼きもち」
もう、真昼くんってばと照れながら、天気のいい日に行こっと伝え、後夜祭の準備ができるまで展示をゆっくり見て行った。
◇
あの場所は陽羽との思い出の場所であって、俺のことは忘れてるけど、そういう場所は覚えてるもんだなと写真を見つめる。行けるかどうかわからなかったけど、ギリギリまじかで行けてよかったと校門を出ようとした。
そしたら靴屋の店長と呼ばれ振り向くと、陽羽とよく一緒にいる奴が来る。教師だから忙しくて会えないのかと思っていた。
「来てくれてありがとな。陽羽喜んでたと思う。それから陽羽が悩んでる時に、相談に乗ってあげてくれたことも」
「いや別に俺は、陽羽のためにって動いてるだけだからさ。しばらく連絡来ても返事できないことがあるから、もしなんかあったら姉貴に言ってくれるとありがたい」
「そうなのか。仕事、落ち着いたら、飯でも食いに行こう。この前の礼だ。仕事、頑張れよ」
伊宮もなと告げ、俺は校門を出て、さてと黎明と接触するっかなと歩き始める。黎明は玲と似たような行動を起こすみたいだから、身構えておかなきゃなと指定された場所へと行った。
外国に行くことになってるから、一度どっかに外国行ってお土産買って来ないと怪しまれる。それか玲が今、アメリカに行ってるから、送ってもらうとかでも。
いや、玲のお土産センスいつもよくわからない物ばかりで、伊豆の土産も変な置き物を俺にくれたしな。やっぱりどっか行くかと予定を考えながら、指定された店へと到着。
中に入ってみると半グレっぽい学生たちが煙草を吸ったりしていて、暴走族の特攻服を着ている連中も見かけた。こんな場所に黎明がいるんかねと、適当に座り店員が水を置いて何飲むっすかと聞かれたから、コーヒーでと伝える。
まだ黎明は来ていないようで、以前とっ捕まえたやつに、到着したと報告した。すぐ既読がつき、もうすぐ着きますとあって、待つこと五分後。
ドアベルが鳴った途端、暴走族が慌てて出て行き、なんだと扉のほうを向けた。
前髪が斜めっていて、女のような顔立ちをし、オーバーオールを着こなしている人物が黎明なのか。店員に何かを聞いていて、俺と目が合った瞬間、パッと輝かせて夕坊とそこから飛び込んでくる。
やばっと逃げようとしたら後ろから飛びつかれて、こんなに大きくなってと玲がよくいう言葉を言われた。すりすりしてくるから、やめろと言うもなかなか止めてはくれなかった。とっ捕まえた奴もいて、苦笑いをしている。
「組から抜けてごめんよぉ。夕坊のためならなんでもやっちゃう。記念に一枚撮っていい?もう撮ってるけど」
こんな奴が組にいたのは想像しにくいと思ってしまうも、親父が言ってたこと。玲とタックを組ませていたこともあり、あだ名が玲黎となっていたらしい。
「いやぁ、夕坊の靴屋さんにもちょくちょく行ってた。めっちゃいい靴で、ほらこれも夕坊が作ったスニーカーっしょ?」
「スニーカーは姉貴担当だよ」
「なっ。しょぼん。なら、黎ちゃんに靴作って。それ履きたい」
玲と性格似すぎて調子狂うとはあっとため息を出していたら、黎明様とあいつが声かけてくれたことで、黎明が店員に合図を送る。そしたら半グレ学生たちを追い出した。誰もいなくなったことで、黎明から打ち明けられる。
「レッドクレインを恨んでいるのは事実。玲の店を荒らせば、夕坊が動いてくれると思って、可愛い部下たちに指示しただけ。玲に言うかは夕坊が決めればいい」
「ならなぜあんなカードを置いた?」
「追い詰めるつもりはなかったとは言い切れない。ただ、事故に遭ってしまった人は、重要なことを知っていた。それを吐かせるために追い詰めていたところ、バーンと引かれたわけ。正直、驚いた。おそらく口封じのために、事故を起こしたんだろうね」
重要なことって一体なんだと、思考を膨らませていたら、店員がポテトを持ってきて、それを頬張る黎明。
「レッドクレインを恨んでいる理由って聞いてもいいか?」
「両親の命を奪われた。僕ちんね、組を離れたのは両親が迎えに来たことで、夕坊と過ごしたのはたったの二年。それまでは夕坊のお兄ちゃんとして、面倒見てあげなさいって組長から言われてた」
黎明と過ごしたのはたったの二年か。黎明は現在三十歳だっけ。まだ小学生でありながらも、親父よく玲と黎明に俺の世話役をさせたな。
曖昧だけど、他に組員はいたけれど、基本的には玲がずっと一緒にいたからな。歳が近い人がいれば安心感を持たせるみたいな感覚でいたのだろう。
「なんで僕ちんが両親と離れて、組長のところにいたのは、聞きそびれちゃったけど、レッドクレインに捕まって、目の前で殺されたショックはまだ痛いよー」
黎明が抱きついて、おいおいとおでこにチョップしても、離れないまま、話を進めていく。
「だからね、僕ちんはレッドクレインを恨んでる奴らをかき集めて、襲撃しようって考えてるの。通路もしっかりわかったからいつでも侵入はできる」
「なんで昏籐組に戻って来なかったんだよ」
「えっへん。だってー人を殺めることは昏籐組は御法度でしょ?だから今は昏籐組の敵組、夜瀬組と手を組んでまーす」
黎明が満面な笑みで言うものだから、ここって夜瀬組のたまり場ってことかよと、黎明から離れ、距離を離した。玲明は冷んやりとした笑みへと切り替わり、ポテトを頬張りながら、俺に忠告をする。
「僕ちんのこと話してもいいけど、もう一つ教えてあげよっか。レッドクレインの長の宝物を奪う。奪った瞬間をこの目で焼きつけるまで、レッドクレインの連中を追いかけ回すつもり。さあ夕坊はどっちの味方になる?レッドクレインに手を貸すか、夕坊の想い人のために、僕ちんと手を組むか。じっくり考えてね。それじゃっ行こっか」
店長ご馳走様と言いながら、黎明は部下を連れて、先へと帰ってしまい、最悪な選択肢をもらっちまった。とにかく親父に報告しに帰るかと、会計をしようとしたら、支払いは結構ですと言われてしまっても、コーヒー代は払い、帰ることに。
◇
後夜祭ではキャンプファイヤーで踊ったり、花火が打ち上げられていたりで、楽しくワイワイ楽しんだ後。校庭に設置されている大きなモニターで、学園長が登場する。
先生たちが集まれーと言っていて、私たちもモニターの近くへと寄った。高く評価されたクラスの発表が行われ、私たちはドキドキしながら、その発表を聞く。
まず最初は小学校の展示で一番評価が高かったのは、なんと真昼くんの妹、昼奈ちゃんが発表され、やったねと真昼くんとハイタッチする。
中学校は二年四組の劇が高く評価され、そして高校の発表を聞く。
『高等学校で一番高く評価されたクラスは、三年一組、時の流れの展示』
その言葉に私たちは大はしゃぎして、追記で学園長が言ってくれた。
『展示では背景が主に展示されていたにも関わらず、クラスTシャツに、笑いを与えてくれたと何票も書かれていたようだ。伊宮先生にも拍手を』
近くにいた透は恥ずかしそうに笑っていて、よっ伊宮ーと疾ちゃんが場を盛り上げている。
大学は岩渕さんが入っているサークルが選ばれ、よかったねと催花ちゃんとハイタッチした。後日、学園長から呼ばれたクラスには、素敵なプレゼントが届くから楽しみ。
後夜祭が終えて、片付けは明後日となるため、透はクラスを集めて、打ち上げをしに行った。




