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24羽

 修さんの奥さんに歓迎されながら、僕の部屋となるらしい部屋で、勉強に励んでいた。本来なら学校に行けるとしても、行く気になれず、先生たちが出した問題を解いていく。

 昼奈も喜んでくれたのはいいけれど、僕にとってはこの部屋が広すぎた。前に住んでいた部屋より倍あって、僕が好きそうな本もたくさんあるし、一番好きな作家は全部揃っている。


 そこまでしなくてもいいのにと思いつつ、勉強に励んでいると、ノックが聞こえ、修さんの奥さんが軽食を持ってきた。素敵な奥さんであり、よかったら食べてねと言われ扉を閉める。

 これなら昼奈もあっさりいくのも当たり前かと、サンドウィッチを頬張りながら、集中しているとスマホがピコンと鳴った。


 漆月かなと見たら、陽羽ちゃんからで、会いたいという四文字だけ来る。既読スルーしていたからかなと、陽羽ちゃんとのチャットを開き、僕も会いたいと伝えた。

 するとすぐ既読がつき、ここで待ってるねと写真付きでくる。そこは陽羽ちゃんから告白の返事をもらった場所で、時計をみると十七時を回ってた。


 暗くなるから帰ってと伝えるも既読がつかなくて、羽織を着て、財布をポケットに入れ、家を飛び出す。あそこの山は夜になると足元が不安定になるから危険だから気をつけてねとは伝えてあった。

 それでも陽羽ちゃんがいなくなるんじゃないかと、不安で、透先生に連絡するもよりによって音信不通になる。使えない先生と駅の前に停まっているタクシーに乗り、お気に入りの山に連れてってもらう。


 ここからは少し遠くて、何度もチャットを確認するも、既読はついてない。つまりずっとそこにいるのだと、急いでくださいとタクシーの運転手に伝えた。




 山の近くに到着し、スマホ決済で会計を済ませ、タクシーから出た。見た感じ透先生の車はなく、陽羽ちゃん一人で来ているのだと知った。

 すでに暗く、スマホの明かりを使って登って行く。僕がずっと避けていたから、きっと文句を言い出しそうだなと登り切った。そこにはベンチに座っている陽羽ちゃんがいて、陽羽ちゃんと声をかける。


 陽羽ちゃんは僕を見つけたことで、走ってこようとするから走らなくていいよと言うまでもなく、陽羽ちゃんはずてんと転んでしまった。

 駆け寄って大丈夫と声をかけようとした瞬間、全てが真っ暗となり陽羽ちゃんではなく、殺された父さんが倒れ、しかも陽羽ちゃんも倒れていた。


 はっと起き上がり、リアルな夢だったとなぜか心臓がばくんばくんと早くなっている。辺りは慣れない部屋で、修さんのところに来たんだっけ。

 母さんは大丈夫、ごめんねと言っていて、本当に大丈夫なのか、不安が大きい。身体を起こしてスマホを確認してみると、陽羽ちゃんからだった。

 会いたいという四文字で正夢と思ってしまうも、僕も会いたいと送ってみる。そしたら陽羽ちゃんがここで待ってるねとあり、添付写真はもちろんお気に入りの山だ。


 ここで何かが起きるのではと考えてしまうも、正夢通りにはならないよねと、すぐ向かうねと伝えて寝巻きから部屋着に着替える。

 今日は学校だろうし、夕方に来るのだろうけど、一人になりたかったから、出かけてきますと修さんの奥さんに伝えて、息苦しい家から出た。


 コンビニで軽くパンやお菓子と飲み物を買い、お気に入りの山へと向かう。陽羽ちゃんをずっと避けていたことで、別れ話がきたら、僕は耐え切れないかもしれない。

 まあ、軽くいじめしといてと若津たちに言っちゃったからな。あり得るかもと以前住んでいた最寄り駅に到着し、そこからはバスで山へと向かった。


 こんな時間帯にいるわけないよねと数分後、山の入り口前で降りて、山へと入る。まだ蝉の鳴き声がちらほらありながらも、到着したらえっと思わず声を漏らしてしまう。

 なぜなら陽羽ちゃんと清寺さんに氷雨がピクニックしていたのだ。


 うん、帰ろうと降りようとしたら、おい、逃げんなと、大声で氷雨に言われても、下山していく。追いかけて来る足音が聞こえ、追いかけて来ないでよと進んでいたら、後ろから陽羽ちゃんの叫びが聞こえた。

 えっとつい振り向いてみると、追いかけて来たのは陽羽ちゃんで駆け寄る。陽羽ちゃんは身体を起こして砂まみれ状態で、払ってあげると僕の裾を掴む陽羽ちゃん。


「真昼くん…私」

「ずっと避けててごめんね」

「ううん。私のほうこそ、ごめんなさい。真昼くんの気持ち考えずに先走っちゃって」

「いいんだよ。陽羽ちゃん、どうして氷雨たちも来てるの?」


 それはと陽羽ちゃんは、僕の手を握って、氷雨たちのところへと連れていく。二人は陽羽ちゃんが転んだ姿を見て、清寺さんが小さな救急箱を取り出し、治療をしていき、座れよと氷雨に言われるものだから、レジャーシートに座った。

 手当を終えた陽羽ちゃんが鞄から取り出して、ある一枚の写真を見せられる。


 それは父さんの写真が写っていて陽羽ちゃんたちはすでに知ってしまっているんだとはっきりした。


「私のお父さん、それから左にいるのが催花ちゃんのお父さん。それから真ん中にいるのが、真昼くんのお父さん、だよね?」


 なぜ警察学校の写真を僕に見せたのだろうと考えていたら、氷雨から言われた。


「ニュースになってたの知ってるよな?キャットアイランドのこと。俺は南雲の父親と約束してたから黙ってたけど、二人は警察官の娘でもある。そろそろ教えてあげてもいいんじゃないか?」

「…言ったら殺される。だから言えるわけない」

「踏み込んではいけない領域に俺たちは入った。あの時点で、俺たちは対象扱いにされていたのは間違いない。ここで打ち明けないと、後悔するぞ、真昼」


 氷雨から久しぶりに下の名前で呼ばれるだなんていつぶりだろうか。僕と氷雨は小さい頃からの幼馴染ではあったけれど、小学生になった途端に、氷雨は僕と距離を置くようになった。

 それは僕の父さんについてのことなんだろうと理解した上で、離れたんだろうなって。


「はあ、わかったよ。それでもこれを言ったところで、あの人の気持ちは変わらないと思う。それをわかってるなら教えてあげることはできる」


 陽羽ちゃんは嫌な思いをさせちゃったらしく、あの人の顔を思い出してしまったのか身体が震えていた。あの人に陽羽ちゃんを教えたのは僕だと言うことはさすがに言えない。

 それでも陽羽ちゃんが教えてほしいと言われて、知っていることだけを打ち明けていくことにした。


「父さんんの仕事はあまりはっきり覚えてないけど、よくあの島に連れてってくれた」

「キャットアイランド?」

「そう。以前はキャットアイランドじゃなく、普通にある会社だけだった。僕はシベリアン・ハスキーと遊んでたから、どんな会社だったのかは知らない。父さんが亡くなって間もなく、母さんから虐待を受けてた時期に、耐え切れなくて家出した時。出会ったのがシルバーウルフのボスだった」


 陽羽ちゃんと清寺さんは言葉が出ないようで、今覚えばじいちゃんに引き取られていたのだろうと感じる。あの人は僕にとって叔父に値する人だったから。

 あの人が現ボスだと考えると、じいちゃんはすでに他界されていると考えていい。


「そこで明らかになった。僕がマフィアの息子だと知って、怖くなったから船が出るタイミングを見計らって飛び出した。母さんが無事なのか不安が大きかったから」

「そこからはシルバーウルフとは?」

「全く。ただその当時は、あの人が海星学園に通っていたし、陽羽ちゃんたちがあの人と接触しているのも何度か見たよ」


 僕がマフィアの息子だと知った以上、陽羽ちゃんは僕から離れていくんだろう。学校もこれ以上いれないし、修さんはこのことを知らないはずだ。あまり危険な目にはあってほしくないし、昼奈を危険に晒したくはない。

 だからここで陽羽ちゃんを振っておかなければ危険度が増していく一方だ。


「陽羽ちゃん、だから知っちゃった以上、恋人関係でいるのは危険度が増す。別れよう」


 陽羽ちゃんはギュッとスカートを掴んで、嫌だよと僕に言ってくれる。その言葉に僕は嬉しさが増していきながらも、危険に晒したくないと告げた。


「そう言うことだから、疾太、陽羽ちゃんのこと頼んだよ」

「真昼、今はシルバーウルフと無関係なはずだ。それともなんだ?キャットアイランドに行かせたのは真昼ってことなのかよ」


 そうだよと嘘を吐いて、帰ろうとしたら、真昼くんの嘘つきと陽羽ちゃんが行ってしまわれる。ちょっと陽羽ちゃんと清寺さんが追いかけて行き、疾太が嘘だよなと再度言われた。


「陽羽はそれでも、ちゃんと受け止めようと努力してる。それに陽羽の親父さんもきっと真昼の存在を知ってるはずだ。無関係であっても、いずれ大事なことが起きうるかもしれない。それでも陽羽と別れるって言うのかよ」


 無関係だとしても、あの人とコンビニで接触していた時から、すでにあの人の計画は始まっている。僕があの人に勝てるわけがない。

 黙っていると疾太が、昔父さんと約束したらしいことを打ちかける。


「親父さんに昔言われたこと。真昼はマフィアと無関係だから、真昼が困った時に助けてやれって」

「助けてもらわなくていい。疾太ん家にも迷惑かけたくないから。父さんと疾太の父さんが何を取引していたのかは知らないけど、陽羽ちゃんのお父さんは気づき始めてるんじゃない?それじゃあ」


 疾太を置いて歩き始めると疾太が、学校で待ってるからなと言われるも、返事はせずに下山して行った。



 ここまで来れば大丈夫かなと、ポケットにしまっていたボイスレコーダーを止める。お父さんに言われて試したけど、真昼くんはまだ、私たちには言えない事情があることを感じた。

 真昼くんがマフィアの息子さんだとは事前に、お父さんから聞かされてたけど、このまま真昼くんと別れたら、お父さんが求めている情報が取れないかもしれない。

 

 とにかく真昼くんと継続のまま付き合うことはできないのかなと考えていると、催花ちゃんが南雲くんが降りてくると言い出す。私はすぐさまポケットにしまい、落ち込んでいる様子を出した。

 催花ちゃんが気にしないでと寄り添い始め、真昼くんがどう動くか確認しなければならない。そっと催花ちゃんのポケットにボイスレコーダーを入れて、真昼くんが見え始めた。


 真昼くんが一度足を止め、二人きりにさせてくれると催花ちゃんに言うから、催花ちゃんは疾ちゃんがいるところへ行く。催花ちゃんが見えなくなったところで、真昼くんが強めにギュッと抱きしめてきた。

 ハグしたまま、真昼くんは私に告げる。


「さっきは言いすぎちゃってごめん。こんな僕でも、マフィアの息子でも、陽羽ちゃんは受け入れてくれる?」

「マフィアの息子とかは関係ないよ。真昼くんは真昼くんでしょ?私は、真昼くんと出会って、いつも気遣ってくれて、時々ね、こんな私が真昼くんの彼女でいいのかなって不安もある」


 うんと真昼くんは私の言葉をちゃんと聞いてくれて、片腕を真昼くんの背中に回しちゃんと気持ちを伝える。


「それでも真昼くんは、いつも私に向けてくれてる笑顔は本物だから、私は私のままでいられるの。ただ、真昼くんがこれ以上付き合えないって感じちゃってるなら、我慢しなくていいよ」

「そんなんじゃないっ。僕はいつだって陽羽ちゃんと一緒にいたいっ。でも陽羽ちゃんを傷つけたくないから」

「真昼くんは優しすぎる。自分のことは置いといて、いつも誰かのために動いてくれてる真昼くんも大好き。たまには自分へのご褒美は忘れないで。頑張ってる自分を褒めてあげて。私も、真昼くんの頑張りは見てるから。頼れるかわからずとも、私はいつだって真昼くんの味方だし、ずっとそばにいる」


 以前、真昼くんが私に言ってくれたように、私も真昼くんに伝えたら、好きだよ、陽羽ちゃんと言われて、私もと少しこうしていた。


 スマホでこのまま真昼くんと帰ると二人に送り、途中まで一緒に帰ることに。


「これからは一緒の電車に帰れることになったよ」

「そうなの?」

「そう。しかもさ、陽羽ちゃんの最寄駅前の高層マンションの最上階」


 嘘でしょとびっくりしてたら真昼くんが笑って、これからは行きも帰りも一緒だよと言ってくれる。一緒に登校、一緒に下校かとこっちまで嬉しくなって、一応確認してみた。


「じゃあ学校に来てくれるってことだよね?」

「もちろん。文化祭の準備も手伝おう」


 そのことで、私たちが参加できないことを告げてみると、大丈夫だよと言ってくれる。


「僕もそのグルチャに入ってるけど、言い過ぎたって若津たちが反省してたから、すぐ仲直りはできるんじゃないかな」


 そうだといいなと話していて、最寄駅に到着し、改札口を出た。あそこに住んでるとわざわざ教えてくれて、結構な高さの高層マンション。

 また明日と真昼くんは少し元気を取り戻してくれて、また明日と手を振って家に帰る。


 お父さんに言われたことしっかりやり遂げたけど、真昼くんが本当にマフィアとして動いているとなれば、真昼くんは逮捕、だよね。そんなことになりませんようにと、家の近くまで歩いていたら赤い新車の車があった。

 ワインレッドを着た人がポストに何かをいれ、こっそりパシャリと車のナンバーをとる。その人は私に気づかず車に乗って私と反対方面へと向かった。


 いなくなったことを確認して急いでポストの中身を確認してみる。やや大きめな包みでワインレッドの包装紙。お父さん、帰って来てないかなとただいまと大声で言ってみるも、お父さんの靴はなかった。

 そのまま私は包みを剥がし、確認してみるとそこには姉のスマホと一枚のバラ柄メッセージカード。お父さん、あたしのことはもう探さないで。今までありがとうと記されていた。

 お父さんにすぐ連絡するも、仕事中だから出ないよねと鳴らしてみたら、どうしたとお父さんの声。


「お父さん!お姉ちゃんのスマホとメッセージカードが届いたの!今送る!」


 通話のままにし、パシャッと撮って、それからさっき撮った写真も添付した。


『陽羽、どこで?』

「今さっき、帰宅中にワインレッドのスーツを着た男が家のポストに入れてた。紗良が教えてくれた人物じゃなかったけど、きっとお姉ちゃんはそこにいる」

『すぐ家に向かうから、お母さんには見せないようにしてあげてくれ』


 わかったと伝え通話を終え、お母さんが見ないようにと一度、私の部屋にある引き出しにしまっといた。そっとお父さんとお母さんの寝室を覗くと、お母さんはぐっすり寝てるみたい。

 お姉ちゃんは無事なのか、待つこと数分後。車のエンジン音が聞こえ、一階に降りてみるとお父さんとそれから紗良も着た。


「お母さんは?」

「ぐっすり寝てる」

「そうか。私の部屋で話そう。先に行っててくれ」


 お邪魔しますと紗良は言い、案内して、私はさっき届いたものをとって、お父さんの部屋へ入る。お父さんが飲み物とお菓子を持ってきてくれて、本題へと入った。


「この人、あの店に入ってたの覚えてる。よく撮れたね、陽羽」

「自分でもびっくりした。もしかしたら車の中にお姉ちゃんがいたのかもしれない」

「陽空のスマホは壊れているが、修復はできるだろう。そこに何かがあるかもしれない。それで紗良ちゃん、この日、何があったのか説明をしてくれるか?」


 はいっと紗良は一冊のファイルを取り出し、説明を行う。


 姉はワインレッドのワンピースとワインレッドのハイヒール、それから鞄等も統一されていたようで、高級店へと入った。そこで張り込みをしていたところ、ある組を恨んでいる人物、破島淡と接触し、陽羽がすでに襲われたことを打ち明けられたらしい。

 これ以上踏み込んだら容赦はしない、お利口にしておけなど言われたようでも、粘り強く張り込みを続けた結果、この前見せてくれた一枚を撮れた。


「お姉ちゃん、赤系の服を買わない原因ってこの人が原因?」

「だろうな。ただ令状を持っても、陽空の居場所は見つからない場所にいるのは、把握している」

「それともう一つ確認が取れて、ハイヒールは陽羽が最近通ってる靴屋で作ってもらったらしいの」

「夕哉さんのお店なら、なんでクーポン捨てちゃったんだろう…」


 間違えてクーポンを捨てちゃったのかなと思っていても、お姉ちゃんはとあるカルト集団によって、弱みを握られここに行っちゃったんだ。


「このまま引き続き調査をしてもらいたいが、紗良ちゃんに危険が起きるかもしれないから、ここまでにしてもらいたい。破島が再び、紗良ちゃんを襲うケースだって起きるはずだ」

「お母さんにもそう言われましたですし、受験も控えてるのであたしは一度この件や他の依頼はストップさせてもらいます。その代わり母が責任を持って引き続き行ってくれるようです」

「そうか。なら紗良ちゃんのお母さんに依頼料は払わせてもらう」


 かしこまりましたと紗良はお父さんに返事をして、真昼くんはどうだったとお父さんに聞かれた。


「ボイスレコーダーはちゃんと取れたけど、真昼くんに怪しまれるかと思って、催花ちゃんに預けてもらってる。真昼くんがマフィアの息子であることは判明した。このまま真昼くんと付き合っていていいんだよね?」

「危ないことをしてほしくはないが、真昼くんと一緒にいればシルバーウルフの情報も手に入るかもしれない。陽羽、すまない」

「全然。むしろ、お父さんの役に立てるのが一番嬉しいもん。警察官にはなれないけど、事件を解決できることなら、なんでも私、協力するよ」


 ありがとう、陽羽と私の頭を撫でるお父さんで、紗良は少し寂しげを出している。

 話していたらインターホンが鳴り、お父さんが出てくるみたい。


「文化祭、そういえば何になったの?」

「展示。私が提案したものでやってるんだけど、ちょっと色々あってね。それで私たちは文化祭の準備さぼりながら、真昼くんについて調べてた」

「南雲くんのお父さんについての射殺事件、何度か見たことあるけど、犯人はすでに服役中なんだよね?」

「そう聞いてるけど?」


 紗良は顎に手を当てており、何かを考えていて思い当たる節があるのかなと考えていたら、お父さんが戻ってくる。


「催花ちゃんがわざわざ届けに来てくれた」

「催花ちゃんは?」

「疾太くんの車で帰った」


 そっか、明日お礼伝えようと決め、早速ドライブレコーダーを聴いてもらうことになった。


 お父さんと紗良はどんな反応をするのだろうかと聴き終えると、紗良から回答がくる。


「南雲くんに違和感があるんですけど、おじさん的にはどう思います?」

「あの人というのは現ボスのことだろう。私の読みでは真昼くんは当初から現ボスと面識があり、現ボスに陽羽のことを打ち明けていたのだろう。そうでなければ海星学園の生徒が陽羽たちに接触はまずない」

「あたしもそう感じてしまいます。陽羽、覚えている範囲でいいの。現ボスと昔話していたことって思い出せない?」


 そう言われても写真を見ても思い出せなかった。思い出せそうなことってと考えていたら、あっと思い出す。


「私が障がいを持って落ち込んでた時に、雪がハスキーをたくさん連れて来てた。そこでその…」


 一番辛かった時期、障がいを持つ自分が大嫌いで、死にたいというネガティブが発動していた。それをお父さんに言ってしまったらと、口を閉じていたら、お父さんに言われる。


「無理に言わなくていい。辛かったのだろう。現ボスにそのことを打ち明けたら、どんな言葉が返ってきたか思い出せそうか?」


 雪が言ってくれた言葉はまだ思い出せなくて、ごめんなさいとお父さんに伝える。わかったとお父さんはそれ以上追求はして来なかった。


「今日はここまでにしよう。二人とも協力、感謝する。それでなんだが、夕飯何が食べたい?二人の好物を出前でとろう」


 私と紗良は顔を見せ合ってじゃあと、極上寿司を出前で頼んでもらうことに。



 マンションに戻りただいまと言ったら、にいにおかえりと飛びついて来た。昼奈は可愛らしいワンピースを着ていて、すでに昼奈を甘やかしすぎではと思ってしまう。

 お帰りなさいと修さんの奥さんも来て、ただいまと伝えながら靴を脱いでリビングへと入った。昼奈はお絵描きをしていたようで、テーブルが多少散らかっている。片付けようとしたらそのままでいいわよと言われるもので、僕は部屋へと入った瞬間、笑いながら顔を隠す。


 陽羽ちゃんだけならともかく、疾太と清寺さんがいたことで、何かあるんじゃないかってわかっていた。それでも僕は包み隠さず、情報を与え、そして陽羽ちゃんが言った言葉。

 僕はちゃんと聞いたよ。それがたとえ嘘で言ったとしても、陽羽ちゃんを誰にも手放すつもりもさらさらない。このままシルバーウルフと無関係だということを証明しつつ、じっくり陽羽ちゃんが僕から離れられないようにしてあげよう。


 笑っていたらスマホが鳴って、誰かと思えば若津からで、そろそろ限界と来たから、陽羽ちゃんたちと仲直りして。明日から学校行くからと報告する。

 そしたら若津からこんな言葉をもらった。こんなことして、いつかばれるんじゃないか?と。わかってる。言っておくけど、あの店は僕の知り合いがやってるところだということは忘れないようにねと忠告文もつけておいた。

 了解スタンプがきて、これで若津たちは僕から逆らえないことになる。あの店は、シルバーウルフがこっそり経営している店であり、半グレ生徒が集まる場でもあった。


 早く陽羽ちゃんとの登校が楽しみだなと、一応透先生に明日学校行きますと送ったら、わっと嬉しそうなスタンプがきて、待ってるなと言ってくれる。

 明日、陽羽ちゃんにノート見せてもらおうと、まだ残っていた宿題をやっていくことにした。

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