2羽
土曜日、透が迎えに来てくれて、一人で行けるのにと頬を膨らませながら、助手席に座り、シートベルトをつける。よろしくねと母が透に言い、暮地さんが経営している靴屋へと出発した。
音楽は私が好きな曲を流してくれて、それを聴きながら外の景色を見る。場所は隣町にあるらしく、それなら一人でも行けそうと思っていたら、お父さんにばれてしまい、結局、透と一緒に行くことになった。
これみんなにばれたら相当やばいかもと思いながらも、透が謝る。
「ごめんな、凛太郎さんに話しちゃって」
「別にいいよ。どちらにせよ、行く時、透に伝えてたと思うから」
「そうか。他に寄りたい場所があるなら、連れてってやるから、遠慮なくいいな」
ありがとうと伝え、暮地さんのお店はホームページでも見たけど、お洒落なお店で楽しみだな。
車を走らせてお店に到着し、車から降りて店内へと入る。いらっしゃいと一人の女性店員がいて、暮地さんはいないようだった。透が女性店員に聞いてくれる。
「暮地店長はいらっしゃいますでしょうか?」
「店長は今出払っていまして、ご用件はなんでしょう…あら?もしかして夕哉が言ってた子かな。ちょっと待っててください」
女性店員はお店の奥へと行ってしまい、私は出来上がったハイヒールやパンプスを見る。いいなと一足を手にしていると、女性店員が戻って来た。
「お待たせしました、店長そろそろ戻って来ると思うので、こちらへどうぞ」
靴をもとあった場所に戻し、女性店員について行き、打ち合わせスペースで待つことに。
「飲み物飲みたかったら、持ってくるよ」
「それじゃあ、アイスティーお願いします」
「そちらは?」
「俺はコーヒーで」
待っててねと女性店員は飲み物を作りに行かれ、テーブルに置いてあった紙をみる。たった一つの靴をお作りいたしますと書かれてあって、裏には多種多様の靴が写っていた。
革靴やスニーカー、ハイヒールにパンプス、ローファーや子供靴まであり、金額を見ると見たくもない金額。見てはいけなかったかもと、そっと紙を置いたら、透がそれを見て、ぼったくりかとボソッと言う。
すると女性店員はぼったくりじゃないですよと飲み物を持って来てくれたのだ。すみませんと透は言い、気にしてませんと女性店員は言う。
「この前、怪我した夕哉が雨の中、座ってるところを助けてくれたんでしょ?」
「私はただ、以前、暮地さんに助けてもらったおかげで、怪我せずに学校行けたので」
「しそうになった?聞いてねえぞ」
「前から走ってくる人を避けようとして、バランス崩した時に助けてくれただけだよ」
透はまた怪しいと言うような目つきで私を見ていて、そうだってばとアイスティーに口をつける。
「怖くなかった?夕哉、こう見えて喧嘩売られるほうだから、ムキになっちゃう癖があってね。傘と絆創膏くれたお礼に靴をプレゼントしたいんだって。だからお金は気にせず、夕哉に甘えてあげてね」
それを聞いた透は拗ねてしまい、聞かれてほしくなかったとズズズッとアイスティーを飲んだ。少しして暮地さんが戻って来て、後はよろしくと女性店員はスタッフルームに入ってしまう。
「なんでお前がいんだよ」
「一人で来させるわけには行かねえよ」
暮地さんは舌打ちしながらも、こっちにと言われ別の椅子に座り、靴を脱いで足のサイズを計り始めた。バインダーに書いていき、私が今履いているのをチェックする。
「靴の色はここから選べ」
一冊を渡されていろんな色があり、少し迷っちゃう。毎日履くものならブラウン系かブラック系かな。でもワイン色とか可愛いかもと、選んでいたら透はこの色なんかいいんじゃないかと聞かれる。
その色は青碧色と言ってにぶい青緑で、とても綺麗に見えた。けど洋服に合わせるのにはちょっと迷っちゃうな。
「ちなみにどんな靴作る気だよ」
「教えねえ。ゆっくりでいいから、いいなって思うの選んでいいから」
暮地さんは透を睨んでおり、透も暮地さんを睨んでいて、この二人絶対、仲良くできないと思い始めた。いろいろ悩んだ結果、ブラウンにして、出来上がるのは大体二週間から三週間かかるらしい。
今度何かあった時は、透に連絡しないで行こうと決め、その日はそれで終わりとなった。車に乗りどこか行くかと聞かれ、小腹が空いたから、ご飯食べたいと伝える。
よしっと透はハンドルを回し車を走らせた。どんな靴が出来上がるのかなと、詳細は教えてはくれなかったけれど、素敵な靴なんだろうな。
「変なやつだと思っていたが、案外いい奴だな。ただあまり油断はすんなよ」
「気をつけるってば。それに私を攫おうとしても、透が守ってくれるから安心できるよ」
こらとゲンコツをもらいながら、私たちは笑う。たとえ学校の友達がいなくても、紗良や透がいてくれるから十分だ。
その夜、今日の出来事をビデオ通話で紗良に打ち明けたら、その靴屋行ってんのとめちゃくちゃ驚いてた。そんなに驚かなくてもと思っていても、気をつけなよと紗良から忠告を受ける。
『いい人だとしても、時に悪さしているかもしれない。それにお店の雰囲気が良くても、裏方では何かがあるかもしれないよ?十分に気をつけて。とにかく、靴もらったらその店には近づかないほうがいいよ。噂ではやばい連中が絡んでるってお母さんから聞いてるから』
「わかってるよ。もらいに行く時も透と一緒に行くから」
『なんかめちゃくちゃ不安になって来た。あたしも一緒に行こうか?』
「平気だって。女性の店員さんもよくしてくれたから」
なぜか紗良は呆れ笑いをしていて、また何かあったら言ってね、おやすみと来たから、おやすみと伝えてビデオ通話を終了した。
ふとなぜ紗良があの靴屋を知ってたんだろうと考えるも、紗良も探偵として色々調べて、たまたまその店に何かあるのだろうと調べてるんだろう。それでも私も履ける靴ってどんなのかなって想像しながら就寝することになった。
◇
陽羽が喜ぶ笑顔を想像しながら、靴を作っていると、スマホが鳴り出して、確認すると紗良から電話だ。出たくないと放置しても、鳴り止まずスピーカーにして、なんだと聞いた。
案の定、馬鹿でかい声で何やってんのと怒鳴られる。耳に当ててなくてよかったよと作業しながら、別にいいだろと伝えた。
『陽羽をこれ以上苦しめんな!』
「紗良には関係ないことだろ。落ちこぼれ紗良。紗良も守城学園だったらこうなることはなかった。それは自覚してんだろ?」
それを伝えると紗良は黙り込み、紗良はこう見えて心配性の癖があるから、陽羽と接触するよう言ったのも紗良だ。まあ次第に、俺は陽羽の笑顔が好きになり、ずっと一緒に登校していたわけである。
『…あたしのせいって言いたいの?』
「紗良を責めてるわけじゃない。後悔してるのはお互い様だろ。もう過去は変えられない。なら今を一生懸命生きている陽羽にできることと言ったら、陽羽の幸せを邪魔しないこと。影ながら守ってたつもりだったけど、限界が来てる。隣を一緒に歩きたい、一緒にどこかへ行きたいと思い始めた」
『組長の息子が警官の娘と一緒にいられるわけない。わかってるでしょ?いつかは逮捕される日が待ってるかもしれない。これ以上、陽羽を苦しめないであげてよ』
何度も陽羽のことを諦めようと、努力はして来たつもりだ。彼女作っては組長の息子ということで、別れることが多かった。陽羽も俺のことを知った時、どんな表情をするのか目に見えている。それでもだ。
俺は陽羽の笑顔を守り続けたい、近くにいたいと強く感じてしまう。
『…あたしから叔父さんには言わないけど、夜瀬組が動き出してるって聞いてる。今も陽羽の周りには夜瀬組が張り付いているらしいの。なんでだと思う?今でも夕哉の想い人だって情報がばれてるんだよ。陽羽を囮にされたら、夕哉、行くでしょ?それが危険だって言ってんの』
「俺は平気だって」
『馬鹿、阿呆!夕哉が捕まったら、陽羽は絶対に悲しむ。記憶がなくても、助けてくれた恩人がヤクザだって知れたら、陽羽は絶対に悲しむよ』
紗良の言っている言葉は正しかった。夜瀬組が動いているのは、俺の耳にも届いている。だが陽羽の近くに寄れないのは元警察官である伊宮透がいるからだ。
朝、毎日校門で生徒に挨拶を交わしているのは、周囲にどれくらいいるのか把握するため。元警官と言っているが、資料を確認したところ、伊宮透は警官を辞めてはいない。
つまりだ。学園の教師として動いているのは、潜入捜査のためだとしたらどうだろうか。学園内に俺と陽羽を事故に巻き込んだ犯人がいるとしたら。
俺は組長の息子として、陽羽は警察官の娘として、情報がばれ、夜瀬組がいい駒だと思ったんだろう。
親父はなんも言ってはいなかったが、脅迫状が仮に送られていたら、事故ではなくこれは事件と変わる。それでも事故として処理を行った陽羽の父、凛太郎は犯人を見つけるまで、内密に今も調査をしているんだろうな。
「陽羽との接触は少なくするつもりだ。それとも親父に頼んで、紗良を守城学園に転入させることもできる」
『あたしは今の学園が気に入ってんの』
「本当か?友達と出かけてる姿、一度も見てねえぞ」
『誰のせいだと思ってんのかな?組長の息子のいとこってばれて、あたしの学校生活台無しにした超お馬鹿さんは』
それは悪かったと言っても、紗良が酷い目にあっている場を目撃し、俺と一緒にいた組員で紗良を守り抜いた。そして思わず口走ってしまったこと。
これ以上、俺のいとこに手出した奴は、昏籐組が黙っちゃいないと。
紗良に手を出そうとした男子たちが後日、それをばら撒いたようで、紗良は学園内で孤立していたとしても、平然と学校生活を送っている。
おばさんとおじさんに謝罪した日、叱られると思っていたが、紗良を救ってくれてありがとうと感謝されたっけな。
「あの時は悪かったな。まじで」
『反省していないように見えるけど、もういいよ。大学は別のところに行くって決めてるから。大学入学した時には、組員と助けに来ないでよね』
「あぁ。変な輩には気をつけろよ。紗良はこう見えて」
『お世辞は結構!それじゃ、おやすみ』
ブチッとキレてしまい可愛くねえと思いながら、陽羽の靴を作っていった。
◇
二週間後、暮地さんから連絡が来て、仕上がったから、見に来てほしいとメッセージが来た。透は陸上部の顧問として、大会に行っちゃったから、後日取りに行きますと伝える。
するとそれじゃあ最寄りの駅で待ってると言われたものだから、着替えて会いに行くことに。
お店じゃないからいいよねと駅に行ってみると、本当に暮地さんが待っていた。暮地さんと大きく手を振ると、気づいてくれて暮地さんが走ってくる。
「今日、平気だった?」
「平気です」
「あの教師はいないんだな」
「はい。今日は陸上部の顧問として大会に行ってるので」
そしたら暮地さんはよっしゃとガッツポーズをして、なぜか喜んでいた。私は思わず笑っちゃって、そしたら暮地さんが照れくさそうな表情で、ほらっと渡される。
「お茶でも飲む?」
ぜひと暮地さんとお洒落なカフェへと入った。暮地さんは店員に私のことを伝えてくれたおかげで、段差がないスペースの席を案内してくれる。
暮地さん、やっぱりいい人すぎると思いながら、早く開けてみてと犬のように見ていて、紙袋から取り出し箱を開けてみた。包装紙を開いてみると可愛いと声が出てしまった。しかも中はクッション製でパンプスっぽい靴。しかも小さなリボンが、透が進めてくれた青碧色。
「可愛くて部屋に飾っておきたい。ありがとう、暮地さん」
「飾るんじゃなく、履いてくれると嬉しい。他に作ってほしいのがあったら無償でやるし」
「いやいや、次回からはお小遣い貯めて、依頼します」
「俺は陽羽のためならいくらでも作るから、遠慮はしないで」
暮地さんに陽羽って呼ばれて、なんでキュンってなるんだろう。暮地さんは嬉しそうな笑顔を浮かべつつ、何か食べるかとメニューを見せてくれて、どれも美味しそう。
迷いに迷って、ケーキセットを頼み、先に届いたアイスティーを飲む。
「あの、暮地さん」
「夕哉でいい。さんはいらないし、タメ口でいいから」
そうは言われてもと思いながらも、一つ気になったことがあって、聞いてみることにした。
「雨の日、傷だらけだったのはどうして?」
夕哉さんは真顔になって唐突すぎたよねとアイスティーを飲んでいると、んーっと言いづらそうだった。
「ごめんなさい」
「謝る必要はない。俺はあの日、大切なものを守るために、人を殴った」
「守らなければならないこと?」
「そう。俺にはね、大事な人がいる。その人の周りには怖い連中が潜んでるから、大切な人を守るために、そいつらを殴った。結局、ボロ負けで、あそこでぶっ倒れてたかな。だけど、大事な人は無事だったから、ほっとしてる」
幸せそうな表情で、夕哉さんには大事な人がいるのに、何浮かれてるんだろう。それでも勇気を出して聞けてよかった。
「夕哉さんの大事な人、無事でよかったですね」
ちゃんと笑顔が作れているかわからない。私は透がいるだけで十分だと頼んだケーキが届き、それを頬張る。そしたら窓の外が暗くなり、ふと窓を見たら窓にくっついている透がいて、思わず吹き出しそうになった。
なんでいんのと透は店の中へと入り、夕哉さんに手を出そうとするから止めに入る。
「透、やめて。てかなんでいんの?大会どうした?」
「もう一人顧問いるから、その先生に託した。で?俺に何も言わず、なんで会ってる?」
「せっかくのデートを邪魔しないでもらいたい。それとも、何?俺と陽羽の関係性を断ち切ろうとしても無理な話だ」
「いい加減にしろよ!」
透は夕哉さんの服を鷲掴みにして、私はため息が出てしまった。ちゃんと透に言っておくべきだったと後悔がありながらも、お店の迷惑になるからと透の怒りを鎮めさせ、隣の席に座らせる。
「陽羽、凛太郎さんにちくるからな。言われてただろ?こいつと会うときは俺の同行が必要だということを」
「…ごめんなさい」
「はあ、ったく。連絡してくるから、話したいことがあるなら、さっさと話せよ」
そう言って透は父に報告しに行ってしまい、ごめんなさいと夕哉さんに伝えた。
「気にしてないからいい。無理やり車に乗せようとしちゃったから警戒されるのは仕方ない。本当にあの時は悪かった」
頭を下げる夕哉さんで、頭を上げてくださいと伝える。最初は少し怖かったけど、夕哉さんがどんな人なのか知れたからよかった。
夕哉さんは顔を上げ、食べよっかと残っているケーキを頬張っていると、透が戻ってくる。透はコーヒーを頼み、戻って来たから夕哉さんは少々機嫌を悪くした。
この感じ気まずいと最後のケーキを頬張る。父は怒ってるよねと後で透に聞くとして、このまま何も喋らず帰るのはな。何か話題を出さなくちゃと、アイスティーを飲み干してしまった。
どうしようと思っていたら二人に言われる。
「なにか飲む?」
「なんか飲むか?」
二人がハモるから私はつい笑っちゃって、二人はばちばちしてしまった。こう見えて本当は仲良いんじゃないかって思っちゃうぐらい。
「笑いすぎだ、陽羽。アイスティーでいいか?」
「うん、お願い。透」
すみませーんと透が注文し、余計に夕哉さんはイライラオーラを出していた。しまったとあわあわしていると、気を遣ってくれたのか、トイレ行ってくると席を再び外してくれる透。
いなくなったことで、夕哉さんが私に聞いた。
「この前から気になってたけど、あいつとどういう関係だよ。教師だろ?休みに教師と生徒が一緒にいるのっておかしくないか?」
「えっと…」
お父さんが警察官だってことは伏せるよう、常に注意されている。だからなんて説明をすればいいのだろうと迷っていたらピンと来ちゃった。
「おっお姉ちゃんの彼氏さんなの。なぜか私の心配をしてくれて、たまに一緒に外出してくれることがあるの」
ふうんとまだ信用をしてくれず、ここで根掘り葉掘り聞かれたら完全にアウトだ。正直に言いたいけど言えないと、透が頼んでくれたアイスティーが到着し、それを飲む。
「まあ陽羽のプライバシーをズカズカ入るつもりはないから。もうこんな時間か。寄るところあるから、これ使って。お釣りは返さなくていいから」
一万円を取り出して、夕哉さんはじゃっと行ってしまって、ちょうど透が戻って来た。
「あれ?あいつは?」
「用事があるからって言っちゃった」
「ちゃんと伝えたいこと言えたか?」
「お礼は言えたからいいかな。でも…」
本当はいろんなこと聞きたかった。なぜそこまでしてくれるのか。それに私の名字じゃなくて、下の名前で呼んでくれた理由も知りたい。
「またどこかで会えたら、その時に聞けばいいよ」
「うん…」
アイスコーヒーを飲みながら、やばっと電話に出る透。私もスマホを取り出してみると、一件のメッセージが入っていた。
さっきはごめんな。本当は嫌だけど、また会いたいから、あいつの予定も聞いといて。それじゃあな。
可愛らしい熊のスタンプでまたなとセリフもついていた。可愛いと笑みが溢れていると、透がムスッとしながら連絡している。もしかして先生になんか言われてるのかなと思いながら、夕哉さんにメッセージを送った。
また会える日、楽しみにしておくね。お仕事、応援してます。
いつも使ってる鳥のスタンプでファイトとセリフが入ったのを送り、透の電話が終わるのを待った。
◇
家まで陽羽を送り届けた後、俺は学校と真逆の方角に向かっていた。指定の場所に到着し、表向きはバーであっても、裏方は特殊捜査課の仕事場となっている。
凛太郎さん含め、ここには五人の人員が特殊捜査課だ。今はそれぞれ捜査に行っているらしく、いるのは凛太郎さんのみ。
「凛太郎さん」
「いよいよ昏籐組が動き出すか…。接触してどうだった?」
「夕坊、俺のことはあまり覚えていなかったから、ちょうどよかったって思ってます。夕坊が守りたい子を近くで守らせてくれて感謝してます」
「組を抜けて警察官になった透は、大切な夕哉くんから離れて本当によかったのか?」
「はい。俺はあの時、一緒に登校するつもりでした。それなのに、俺は風邪を引いて、一緒に登校できなかったこともあり、事故は起きてしまった。俺が寝込んでいなかったら、二人を守り抜けたかもしれません」
俺は組長に拾われ、夕坊の付き人だった。それなのにその時は発熱を出してしまって高校を休む羽目となったせいだ。
知らせを受けた時、俺は事故現場へ行こうとしたが、組長にお前は寝ていなさいと叱られ不安がただ大きかった。
熱をしっかり治した後、夕坊が搬送された病院へ行くも、夕坊は俺のことを忘れていたな。ただ陽羽に会いたいと涙目で組長に言っていた。そこから夕坊のためにと、俺は組長と話し合い、組を辞め、警察官を目指すことに。
幸い刺青を入れる前だったから、警察学校に入ることに成功をした。一応組に入っていたことがばれる可能性が高いと考え、教師の免許も取得することに。
そして警察官となって俺は特殊捜査課、つまり凛太郎さんの元で働くことになった。今は潜入捜査として教師となりつつ、凛太郎さんに週一報告をしている。
「陽羽と夕哉くんを殺害しようとした動機、透はどう考えている?」
「俺の憶測ですが、組に入っていた時、夕坊は五歳年下の陽羽に一目惚れ。それを知った何者かが、陽羽の家族関係を調べ上げ、凛太郎さんの娘だと発覚した。それにより、組長の息子、それから凛太郎さんの娘を殺害しようとした。しかし、二人を巻き込んだ、運転手は組と関係はなく、事故処理としてその一件は幕を閉じた」
「だがその運転手は昨日、遺体で発見されている。透が入っていた昏籐組ではないとしたら、夜瀬組か。それとも別の人物が運転手に指示を出していた。そう捉えるのがいいだろう」
これからどうしますと凛太郎さんに聞いてみると、凛太郎さんから指示を受ける。
「透は引き続き、教師として陽羽のそばにいてくれ。それから紗良ちゃんから情報をもらっているか?」
「はい。夜瀬組が陽羽に張りついている。警戒はしていますが、しばらく陽羽は送迎するべきかと」
「いや、ここで勘づかれたら夜瀬組が逃げる可能性が高い。通学中は空いている者たちで、見守ってもらっているから平気だ。教師としての仕事も全うしておけ」
そこ言うと苦笑いしつつも、了解ですと伝え、俺は守城学園に戻って、教師の仕事をしに戻った。




