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19羽

 ざあざあという強めな雨で、今日透から真昼くんが休学したことを打ち明けられた。昨日送ってくれた意味がそういう意味をしていたとは知らず、仰天ニュースを聞いているかのようだった。

 授業中、言いすぎちゃったかなと考えてしまって、授業に集中ができない。


 昼休み、いつも真昼くんと一緒に食べてたからなとベンチで、ご飯を食べようとしたら、疾ちゃんが隣に座った。昨日のことで、みんなは疾ちゃんと話さなくなり、新しいグループチャットが存在するのだろう。


「勝手に座ってるけど、一緒に飯食べて平気?」

「全然平気。真昼くんにメッセージ送ったけど、既読がつかなくて、少し心配なの。放課後、伊宮先生に居残りって言われて、真昼くんの詳細を聞くことになってる」

「俺も付き添おっか?」


 平気だよと伝えて卵焼きを頬張り、透はどんなタイミングで知ったんだろうか。何も喋らずもぐもぐ食べていたら、千ーちゃんがこっちを向いて立っていた。

 声をかけようとしたら、千ーちゃんは行ってしまう。するとあーと声を上げながら、何いちゃついてんのと、私と疾ちゃんの間に入る催花ちゃん。


「南雲くんがいないからって、勝手に陽羽ちゃんのそばに寄らないでよね。ご飯食べたらあっち行こ」

「えぇ」

「えぇじゃない。南雲くんが知ったらどんな顔すると思ってんの?」


 それはそうだけど、疾ちゃんを一人にはさせたくないからな。ご飯食べ終わったら、無理やり催花ちゃんに腕を掴まれ、疾ちゃんを置き去りにさせてしまった。

 催花ちゃんはなぜかキョロキョロし、スマホを取り出して、見せてくれたんだ。


 それは私と疾ちゃんが入っていないグループチャットで、私の悪口と疾ちゃんの悪口が書かれてある。文化祭もこの二人なしでやろうぜと若津くんの言葉に賛同している子たちが多かった。

 一致団結できたと思ったのに振り出しになりそうと思ってしまうほどだ。


「これ見てないわと思ったよ。脱退する前に陽羽ちゃんに見せておきたくてさ」

「わざわざありがとね」

「だからさ、二人なしでやるなら、あたしも抜けって感じなんだよ。南雲くんも休学みたいだし」

「でもみんなを手伝わなきゃ」


 いいのいいの、ほっとこと言われてしまい、本当にいいのかなと思ってしまった。目の前でグループチャットを脱退してくれる。


「ちなみに氷雨のメンタル大丈夫そう?」

「んーちょっと以前より元気がないなって気もする」

「なるほどね。あたしが話しつけておくから、陽羽ちゃんは南雲くんのことだけを考えてあげなよ。絶対だからね」


 すごい圧かかってると思いながらも、うんと伝えて教室に戻ることになった。




 放課後、ホームルームは少しギスギスしながらも文化祭の詳細をある程度決めていき、ホームルームが終わる。透が生徒指導室なと言われ、教材をリュックに詰めて、生徒指導室へと向かった。


 何を言われるんだろうと生徒指導室へと入り、少し待っていると透がお待たせと入って来る。着席したことで単刀直入に言われた。


「真昼の母親がな、自殺未遂を図った。その影響で真昼は、精神をやられ休学を選び、母親に付き添うことになってな。これから病院に行くから、真昼のそばにいてやれ。面会時間が終わるまでな」

「でも」

「凛太郎さんから許可は得てるし、俺は廊下で待ってるから、何かあれば言えな」


 お父さんが言ってくれるなら、真昼くんのそばにいようと決め、お見舞いの品を買って、病院に行くことに。待つねと言ったのに、会っちゃっていいのかな。

 

 病院に到着し、受付を済ませて病室へと向かった。真昼くんのお母さんの名前を確認し、一度透が病室へと入っていく。少しして透が戻って来たけれど、ごめんと私に謝った。


「陽羽に会いたくないって言われて…」

「ううん。真昼くんも心のケアが必要だと思うし、私は待つって決めたから。これ真昼くんに渡してほしい」


 お見舞いの品を透に渡し、手を合わせて本当にすまんと言いながら再度病室へと入っていく。真昼くんが少しでも元気になる方法ってなんだろうな。

 後で真昼くんが好きなのピックアップして、透に後日渡そう。 


 待つこと十分ぐらいで透が病室から出て、行こっかと病院を出ることに。透の車に乗ってバラードではなく、明るい曲を流し家まで送ってもらう。


「透、真昼くん何か言ってなかった?」

「ごめんって謝ってたよ。それに今の現状の母親を見せたくないって言われたよ」

「そっか。私、お母さんに会いたいって言っちゃったの。それがいけなかったのかなって思っちゃって」

「いや。そんなことなかったらしいぞ。陽羽のために会ってもらおうと帰宅したら、あんな状況になってたらしいからな。だから陽羽は真昼が話したいってきた時に、ちゃんと聞いてあげればいいよ」


 うんと相槌を打ちながら、一日でも早く真昼くんのお母さんがよくなりますようにと願った。



 レッドクレインの本拠地が見えるビルの屋上で、様子を伺っていた。出入りの入り口さえわかれば乗り込むことはできそうであっても、完璧に要塞じゃんか。門はあるものの開かない形式なのかは不明だな。

 普通に要塞にいる人はレッドクレインを使用している一般人っぽく、ワインレッドの服を着ている人がレッドクレインの従業員的な奴か。


 しかしそういった服を着た奴らは一度も見たことがないから、一般人に指示を与えているということでいいのだろう。ただ知った者は殺されるとしたとしても、遺体がどこにも発見されていないこともあり、野放しにされている理由。

 ホームページに登録するのもあれだしな。できれば情報を提供してくれる奴がいてくれれば助かる。そう思った矢先のことだった。


 夕哉くんと疑問系で声をかけられ後ろを振り向くとレッドクレインの服を着た中年のおっさんがいる。どこかであったかと少し考えていると、失礼と一枚の名刺をもらった。

 警視庁特殊捜査課、清寺秀明きよでらひであき。はっと思い出してご無沙汰しておりますと軽く会釈する。


「偵察をしに来たようだね」

「なぜ清寺さんがレッドクレインに?」

「潜入捜査で、なんとかレッドクレインの従業員まで上りつめたが、遺体の詳細はまだ掴めていない。夕哉くんはなぜレッドクレインの調査を?」

「親父に言われてレッドクレインの情報を手に入れろと言われてたもんで。それに破島ってそこにいるんですよね?」


 いると言われ破島があそこにいるわけがなんなのか不明だが、以前破島はカルト宗教に興味を持っていたようには見えなかった。何かがあるのはさておき、清寺さんも調査として潜入捜査しているなら一つ確認しておきたいことがある。


「レッドクレインの長ってあったことありますか?」

「一度もお会いしたことがない。ただ長は陽空ちゃんを買い取るという情報がある」


 買い取る、つまり人身売買ってことか。おそらく破島は陽空に会うために用意はしているような気もしてきたな。


「ありがとうございます、清寺さん。お気をつけて」


 そっちもと言われ、ビルの非常階段を降りて行き止めていた車に乗って、親父に報告しに行った。



 透先生がお見舞いに来た時、陽羽ちゃんも来てるのはなんとなくわかってた。けどこんな母さんを見せたくなくて、会いたくないと伝えてもらった。

 母さんは首を吊ったことでまだ意識は戻ってないけれど、起きた時の母さんの顔が思い浮かんでしまう。死なせてよという瞳。その瞳を見たくないし、僕にとっちゃたった一人の家族だから失いたくない。

 ガラガラと引き戸が開き、中に入ってくる漆月。


「今日バイトなんじゃないの?」

「真昼先輩が心配だから、寄っただけだよ。ちゃんと食えてる?」

「食堂があるからそこで食べてる。心配いらないよ」

「彼女、心配してんじゃない?連絡しなくていいの?」


 さっき来たけど、断ったと伝えたらまじでという表情をしていて、まじだよと母さんの寝顔を見ながら言う。


「あんなに陽羽ちゃんって騒いでた真昼先輩が断るとか。頭打ってない?平気か?」

「僕は平気だよ。用がないならバイト行ってよ。店長を困らせないであげてよね」


 わかってるってと僕に差し入れを渡して、じゃあっと漆月はバイトへと向かった。袋の中身を見たら、母さんと食べようとしていたアイスで、ぽたっと涙が出てしまう。

 余計なことしなくていいのにと一つは冷凍庫にしまい、食べることに。美味しいと呟きながら、陽羽ちゃんにメッセージ送ろうか迷う。


 なぜなら陽羽ちゃんが氷雨と仲良くしていることに、腹が立ってるから。まだ送れそうにないやとスマホをポケットにしまう。

 母さん、このアイス、美味しいよと食べていたら、天美と修さんの声が病室に響き渡った。


「修さん、すみません。連絡しちゃって」

「いやいい。真昼、大丈夫か?」

「なんとか。学校は休学させてもらっちゃいます」


 そんなのいいと僕の隣に座る修さんで、昼奈に見せたら相当なショックを受けるはずだから、昼奈には伏せているのだろう。


「天美が自殺未遂するだなんて信じられない。俺が昼奈を奪ったせいで」

「いや、修さんのせいじゃないですよ。修さんは昼奈だけを考えてほしいんです。それに僕は母さんにずっと寄り添いたいんで、親権は移しません。お金に困ろうが、僕の母親はこの人だけなんで」


 母さんの手を握り、そうかと修さんは少し落ち込んでいたとしても、何か困ったらまた連絡を入れてくれと、修さんは病室を後にされた。

 本当はあの時、花火大会で争っていたのは、僕に関してのことだろう。母さんは何一つ言わないけど、母さんは僕まで修さんのところに行くことを恐れて、心が壊れたとしかいいようがない。


 僕はずっと母さんのそばにいるから大丈夫だよと、最後の一口を食べて、一度帰宅することにした。



 週末、まだ少し暑さがありながらも、疾ちゃんのクルーザーでとある場所へと向かっていた。本当は真昼くんも誘いたかったけれど、真昼くんはあれ以来連絡が途絶えてしまっている。

 チケットがギリギリだったもので、私と疾ちゃん、催花ちゃんと岩渕さん、それから千ーちゃんを疾ちゃんから誘ったら来てくれた。


 しかし千ーちゃんは真顔で岩渕さんのトークを聞いており、その一方催花ちゃんと疾ちゃんは爆笑している。いつかは岩渕さん、お笑い芸人でもなれるんじゃないかぐらいのトークが面白いのにな。

 どうして来てくれたんだろうかと不思議に思っていたら、あれじゃないと見える景色に、船がいくつか停船していた。停めて運転手さんはクルーザーで待っているらしく、私たちは受付でチケットを見せ、中へと入る。

 いろんなお客さんが来ていて、子連れも多く、道端では猫がたくさんいたのだ。やっぱり真昼くん連れてくればよかったと撮影モードになる。


 写真をいくつか撮っていき、今度は真昼くんと一緒に来よう。進んで行き猛獣フロアがあって、ホワイトタイガーやライオン、虎や豹などいた。

 みんなで撮り合うも、千ーちゃんだけは笑ってはくれない。


 お昼の時間となって岩渕さんと疾ちゃんがみんなの分を買いに行ってくれている。


「陽羽、足疲れてない?大丈夫?」

「大丈夫だよ。ネコ科の動物たちがたくさんいて、癒されるね」

「あんなにいたら、南雲くんずっといそうだよね。帰りたくないとか言いそうだもん」


 だねと催花ちゃんと話していたら、なんでよと千ーちゃんが言い出す。


「南雲が休学してるのに、なんで平然といられるわけ?普通さ、彼女なんだから寄り添うはずじゃん」

「真昼くんが会いたくないって言われちゃったの。だから距離置いてるだけで」


 ばっかみたいと坂東さんは鞄を持ってどこかへ行こうとするから、待ってよと声をかけても、ほっときなよと催花ちゃんに言われてしまう。


「すでに脱退しからあっちのグループチャットの状況はわかんないんだけど、結構荒れてるらしいんだよね」

「荒れてる?」

 うんと催花ちゃんは、遠ざかって行く千ーちゃんをみて話してくれた。


「氷雨と同じことやってて馬鹿じゃないのって反論してる子たちが増えてるっぽい。反論し始めたのは坂東さんなんだよ」

「え?」

「いまいち詳細はよくわからないけど、坂東さん。氷雨のことずっと片想いしてて、氷雨の悪口がたくさん書かれてあったから、それが苦痛らしいみたい」


 記憶がないからあんまり覚えてないけど、あの日からずっと疾ちゃんのこと好きだっただなんて。言われてみれば疾ちゃんに近づくなって言われた時、少し寂しそうにしてた。もしかしてと立ち上がって、探してくると走る。


 ずっと苦しかったんだ。私と疾ちゃんが話している時、いつもそこに入りたいけど入れなかった思い。昔みたいに千ーちゃんは、話したかったんじゃないかな。

 千ーちゃんどこと周囲を見てもいなくて、あちこち探し回っていたら、透から電話がかかってくる。


「透?」

『陽羽、もしかしてキャットアイランドに行っちまった?』

「うんというかすでに入園しちゃって満喫中だけど」

『とにかく引き返せ。すまん、いたたたたた。星河さんやめてください』


 星河教授と思いながらも、電話代わってと聞こえ星河教授のお言葉を受けた。


『そのキャットアイランドは存在しない動物園。つまり偽物で罠だから今すぐ引き返して。いい?みんなには後で警察が話してくれるからすぐ離れるんだよ。いいね?』

「ごめんなさい」

『透のミスだから陽羽ちゃんが謝ることは一ミリもないから。気をつけて帰ってくるんだよ』


 つうつうと切れてしまい、早く疾ちゃんに伝えなくちゃと、疾ちゃんたちのところに戻ろうとした時のこと。心臓が早鐘していき、前から歩いてくる人物。白髪の短髪、白と青の中華風の服を着て、揺れる金色のピアス。

 会いたくなかった人、会ってはいけない人がなんでと、はあはあと息苦しくなる。しゃがみ込み、早く逃げなきゃと思っても、陽ー羽ー見ーつけたと抱きしめられた。


「よちよーち。よくここまで来れた。偉い偉い。そんなにやつがれに会いたかった表情を見せてくれるとは光栄だ」


 突き飛ばそうともこの人の身体は頑丈で、透に電話しなきゃとスマホを取り出そうとしたら、その人の手が乗っかり、だーめと笑顔で言われる。


「あらら、首輪ちゃーんとつけてないならいただこうか」


 きゃっとその人に抱っこされて、降ろしてと言っても、やなこったと言われてしまった。疾ちゃんたちと合流したくても、疾ちゃんたちがいる真逆を歩き出す。

 関係者以外立入禁止が見え、この先に行ったらとその人の服をギュッと掴んだ。行きたくないと思っていたら、おいと疾ちゃんの声が聞こえる。


「陽羽をどこに連れて行く気だ?」

「氷雨疾太、君と遊んでる暇はない。陽羽はやつがれと共に、来てもらう必要がある。心配はいらない。用が終わればすぐ氷雨疾太の元に返そう」

「そんなの信じるわけがない。それにもうすぐ、警察が到着する。逃げ場はない」


 忠告感謝するとその人が言った瞬間、仲間がいたようで、疾ちゃんを気絶させられてしまった。疾ちゃんと叫んでも遠ざかって行き、関係者以外立入禁止の中へと入ってしまう。

 関係者立入禁止の中にやや大きめな建物が存在し、そこにはシベリアン・ハスキーが多くいた。キャットアイランドなのに人懐っこそうな瞳をしているハスキーたちが尻尾を振ってご主人様を囲む。


「陽羽が来たから喜んでる。後でたっぷり遊んでもらおう」


 私が犬より猫派になった理由はこの人が原因だ。部屋まで連れて行かれると女性たちがいて、あとは頼んだと言われる。こちらへと女性たちに囲まれながら行くと、げっと声が漏れてしまうほどだ。

 あの人と似せた色合いの中華風の服で、逃げたくても逃げ場なく着替える羽目となった。


 なんであの時点で気づかなかったんだろうと、とほほとなりながら着替え終え、髪型をセットしてもらい、メイクもやってくれる。

 着替え終えた私は、女性の一人に案内をしてもらい、あの人がいるという部屋へと入った。


 豪華な中華料理が置かれており、座ってと言われたから座ることに。ニコニコしているこの人は、なぜ今となって私の前に現れたのか疑問だ。


「食事取る前に、写真撮っていい?」

「嫌です」


 そう言わずにと距離感近すぎても、無愛想な写真を撮り始めていく。笑って笑ってと言うも笑えるわけないとそっぽを向いたら、首に何か違和感を感じた。

 触れてみると小さなダイヤがついていて、この人が鏡を見せてくれると青いベルベッドリボンチョーカーがついてる。


「何がしたいの?」

「それ聞く?」

 

 気になりますと小さなダイヤに触れていたら、この人は席に座って、中華料理を頬張りながら言った。


「約束を果たしてもらう。やつがれが経営する店でバイト。簡単なバイトだし、違法なバイトじゃない。猫カフェで働いてもらう。やつがれが店長で、陽羽が店員。最初はバレずに店をやりながら、陽羽を奪う計画を立ててた。しかーし、それじゃあ不信感を与えるのではないかと」

「あなたと働きたくない。ストレスになって仕事になりそうにないです。それに今年は受験も控えてるのでお断りします。それからあなたと約束した覚えがありません」


 言い切ると箸をポトッと落とし、数秒後固まって、周りにいる構成員たちがざわざわし始めていく。するとこの人は何かのスイッチを取り出し、ボタンを押した。

 そしたら椅子に固定されてしまい、この人は私の上に乗っかって、写真を突きつけられる。


「指切りげんまんしても、約束を忘れたとは言わせない」

「ごめんなさい。不安定時期だった時にお会いしたかと思いますけど、その当初の記憶はあまりないんです。一番辛かった時期だったので」

「今すぐ思い出してもらわないと、友達のところには戻させない。やつがれのことは、はっきり覚えていると言うのに」

「髪の色が特徴だったので、それくらいは覚えてます。白髪のお兄ちゃんだって」


 この人は石にでもなったかのようにバタンっと倒れてしまって、構成員の人が早く謝ってくださいと慌てていた。まるで矢が刺さったかのように全く動く気配がない。

 記憶を思い出すとしても、その当初は小学生で、この人は中学生だったからな。思い出そうとしても、思い出せない。するとこの前、私のそばに来た猫がぴょんっと私の膝に乗る。


 この人の飼い猫だったんだと触りたくても、固定されて触ることができない。構成員の方に外してくれませんと聞くも、できないと手でぶんぶんやられてしまう。

 んーとなんとか約束したことを思い出そうとしていたら、だからやめときって言ったんのにと、スタッフと名乗っていた人が登場する。あの人からスイッチをとり、解除してくれて自由となったからその猫に触れた。


「ほんま、ごめんなぁ。ボス、陽羽ちゃんのことになると、周りが見えなくなるんや。一つ確認やんやけど、その猫、覚えてへん?」

「猫?」


 にゃあと私に会えて嬉しいというような鳴き声で、その猫とスタッフを何度も見てしまう。


「きなこ?」

「そうや。きなこやで。ちゃんと洗ったら真っ白で今は名前ちゃうんけど、ボスは陽羽ちゃんが飼えないということで、引き取ったんや。寂しい思いさせちゃってごめんなぁ」


 きなことほおにすりすりして、きなこがこんな真っ白な猫だったとは思わなかったな。


「今なんて言うの?」

「リナムと言ってな。白花の意味を持つんや。よかったなぁ、リナム」


 この人がきなこを飼ってくれてたんだなんて信じられない。だってこの人、いつもきなこに噛まれたり、引っ掻かれてたから。


「ボスが起きる前に、帰らせたる。ついておいでや」


 リナムを降ろしてあげ、足音を立てずにあの部屋から出て行った。



 気をつけてなとエリアに戻してあげ、リナムが行こうとしたから、抱っこするとやっぱり引っ掻かれる。服を処分されなくてほんまによかったよと、リナムを撫でつつ、建物に戻った。

 ボスは普通に会食をしたかったんやろうけど、あれはさすがにやり過ぎやと戻ったら、陽羽がいないと陽羽ちゃんが着てた衣装に抱きついていたのだ。いやらしいと思いながらも、帰ってもらいましたと報告を上げる。


「なぜ、やつがれの許可なく帰した!」


 しがみつくボスであって、ペシッと叩く。


「ボス、今回はさすがにやり過ぎやと思いますよ。氷雨疾太がいる以上手出しはできへん。それはわかってますよな?」

「陽羽と会食したかった」

「今度セッティングしますんで。それに伝えときやしたよ。猫カフェの店員になってあげてくださいってなぁ。まあいい返事が来るかわからへんけど、リナムも猫カフェの猫としてやるとは伝えときやした」


 そうなのかと目を輝かせ、ボスがこれ以上暴走しないようにせねばとシルバーウルフは一旦、本拠地へ帰国することを決めたのだった。

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