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17羽

 始業式が始まる前日、真昼くんから連絡がきて、話があるということだった。真昼くんと待ち合わせして、待っているとお待たせとやって来る。

 行こっかと真昼くんが予約したっぽいお店へと行くことになった。どんなところかはついてからのお楽しみと言われた。どんな場所なんだろうかと、歩いて自然溢れる公園へ入った。


 休日だから小学生同士が遊んだり、ピクニックをしている姿を見て、最後の夏を満喫しているのがわかる。公園の中にある小っぽけな喫茶店があり、その中へと入った。

 私は思わず見惚れてしまうほどの勢いで、海の中にでも入ったかのような喫茶店だ。


 壁は水槽となっており、いろんなお魚がたくさん泳いでる。しかも床もガラス張りとなって、下にいお魚さんたちも見れた。明かりも水族館風にやや暗くめとなって、お魚たちの魅力を惹き立てている。

 足元気をつけてねと真昼くんに言われながら歩き、個室へと入った。店員さんがメニュー表を置き、ごゆっくりと言われ去って行く。


 メニューもお店の雰囲気に合わせたメニューで、私はメンダコセットを頼み、真昼くんはペンギンセットを頼んだ。どんな感じなのかなと、真昼くんと話し、真昼くんが本題を出す。


「父さんがいた頃は、本当に優しいお母さんだった。父さんが亡くなった辺りから、母さんに虐待を受けて、お前なんか産まなきゃよかったとか、お前なんか早くいなくなればいいとか、散々言われて。何度も助けに来てくれた児童福祉司さんが来ても、助けを求めなかったのは理由があるんだ」


 時に子供は我慢して、本音を隠すことがあり、誤解されることも多い。大人になっても、本音を吐かず、嘘をついてしまうこともある。

 真昼くんの手は今も震えていて、おかしいなと反対の手で押さえながら引っ込めようとするから、私はその手に触れた。


「大丈夫、ゆっくりでいいよ。無理して吐かなくても、私は待つし、そばにいてほしいって思った時も、私は真昼くんのそばにいるよ」

「ありがとう、陽羽ちゃん」


 真昼くんは少し深呼吸をし、嫌な記憶を思い出してもらう。


「母さんと離れたら、守城学園に通えなくなるのが嫌だった。陽羽ちゃんと離れ離れになりたくなかったから。そんな時に、母さんが昼奈を産んで、昼奈の父親と何年か過ごしてて。学費をずっと払ってくれてたんだ」

「昼奈ちゃんのお父さんって確か」

「IT企業の社長。昼奈も守城学園に通わせてもらってて。大学はちゃんと奨学金で大学に通うつもりではいるけど、昼奈の父親が最近、バイト先に来るようになって、やっぱり一緒に暮らさないかって言われてる」


 真昼くんの家庭がそういう状況になっているとは、なにか提案できることと言ったらなんだろう。考えてると真昼くんがそれでと私に伝えていく。


「花火大会の日、母さんは新しい相手と一緒にいて、しかも昼奈の父親と言い争ってたのが見えた。そしたら、新しい相手は昼奈の父親を殴って、僕はあの場で守るべきだったのに、逃げた」


 真昼くんは何度もお母さんに虐待を受けていたから、その恐怖さが出てしまった。昼奈ちゃんの父親を庇ったら、真昼くんのお母さんはきっと真昼くんに虐待する。

 

 お待たせしましたと店員さんが、メンダコセットとペンギンセットを持って来た。手を繋ぐのをやめ、テーブルを開ける。ごゆっくりと会計の紙を置いていった。


 どう伝えたほうが真昼くんが苦しんでいるものを取り除けるかな。メンダコの形をした料理を見て、真昼くんに言ってみた。


「花火大会で起きた揉め事に関しては、わからない。それでも真昼くんは虐待を受けたくないから、お母さんと一緒にいるんだよね?」

「うん。母さんが暴走しないように、一緒にいる。僕が大人しくしていれば、母さんから虐待を受けることはないから」

「そのこと、昼奈ちゃんのお父さんには?」

「虐待を受けてたのは知ってる。昼奈の父親が母さんと話して、虐待はなくなったけど、昼奈がいなくなったことで、最近は家に帰って来ない日が多い」


 ここは紗良に頼んで調査依頼をしたほうがいいかもしれない。それとも透に頼んでみるのもいいかも。と言ってもすでにお父さんが調べてそうな感じでもありそう。

 そうならここは真昼くんに、会わせてもらったほうがいい。役に立てるかどうかわからずとも、真昼くんのメンタルが壊れないためにも解決しなければならないから。


「真昼くん、お母さんに会わせてほしい」

「会わせられない。あんなお母さんを僕は」

「私は真昼くんの彼女だよ。一緒に解決策、考えよう。もしできるなら昼奈ちゃんのお父さんにも会わせてほしいの」


 真昼くんは少し悩んでしまい、頼んだ料理も段々と冷めているような気もした。少し考えてみて食べよと写真を一枚撮る。そうだねと真昼くんも一枚写真を撮り、少し冷め切った料理を頬張った。



 料理を完食し、真昼くんはまだ悩んでいるようで、アイスティーを飲みながら、お魚さんたちを見ていく。真昼くんのお母さん、そして昼奈ちゃんのお父さん。すでに親権争いが始まっていたら、きっと親権は父親になるのは確実かもしれない。

 そこも踏まえて話し合わなければならないってことだよね。


 陽羽ちゃんと呼ばれ、アイスティーをテーブルに置き、真昼くんの顔を見た。真昼くんは決断したような瞳をしている。


「わかった。母さんに一度聞いてみてからでもいいかな?」

「平気だよ」

「ありがとう、陽羽ちゃん」


 真昼くんの家庭事情を聞けて、何か役に立てればいいなと思い始めた。


 そこからは喫茶店を出て、ゆったりと公園を散歩し、あっという間に夕方となってしまう。電車はいつも違うからまた学校でとそれぞれの電車に乗った。

 

 真昼くん、本当に大丈夫かなと心配になりつつ、スマホを取り出す。透、今会えると送ってみると、既読がつき悪い今手が離せないとあった。

 了解スタンプを送り、やっぱりお父さんに聞くのがベストかな。

 

 最寄駅に到着して改札を出たら、夕哉さんとばったり会う。


「夕哉さん、こんばんは」

「こんばんは、陽羽。何かあったのか?話よければ聞くけど」

「顔に出てます?」


 まあなと言われ、少し相談に乗ってもらってもいいのかな。


「実は少し悩んでることがあって」

「そこのベンチに座ってて」


 そう言われて近くにあったベンチに座り、少ししてお待たせと夕哉さんが缶の紅茶を買ってくれて、隣に夕哉さんが座る。悪いとステイオンタブを開けてくれて、ありがとうございますと伝えた。


「んで、どうした?」

「複雑な家庭を持ってる子で、今度両親に会わせてって伝えたんです。本当にそれでよかったのか、迷っちゃって」

「複雑な家庭か。まあ俺の場合も、どんな両親なのか気になって会いに行くけどな。それでも友達の気持ちも汲んであげなくちゃならない。その子が会わせたくないのなら、無理やり会うのではなく、その子が本当にピンチになった場合に助ける」

「言い過ぎちゃったかも…」


 気にすんなとわしゃわしゃっと頭を撫でてくれても、真昼くんを傷つけちゃったんじゃないかって不安になっていく。


「どんな状況であれ、陽羽はその子を助けたい気持ちがあるんだろ?」

「はい」

「だったらその子が答えを出すまで、待っててあげたらどうかな?それまでは距離を離してみるとか、そのことは聞かずにパーッと気分展開に遊びに行くとかな。色々な方法があるから試してみるといいよ」

「試してみます。夕哉さんがいてくれてほっとしました。モヤモヤ晴れてよかったです」


 夕哉さんはみるみると赤くなって行き、夕哉さんもブラックコーヒーを飲もうとしたら、まだ開けてもいなかったようだ。開けて飲む夕哉さんで、少し笑っちゃう。

 夕焼けが綺麗すぎてその景色を写真に収め、スマホで確認する。綺麗に撮れてるじゃんと夕哉さんが褒めてくれた。


「もうすぐで始業式?」

「はい。明日から始業式で、その後文化祭の決め出しをしなくちゃならなくて」

「文化祭か」

「はい。学園全体でやるので、大忙しになるんです。小学生は展示会だけなんですけど、中学生からは展示、物販、ステージ、ゲームの四つがあって、いつも全先生方がくじを引いたやつを生徒がやることになってるんです」


 去年はいい案だと思っていたけれどあまり評判が悪く、他クラスがとても人気が高かったからな。


「その文化祭って一般人も入れる?」

「入れますよ。よかったら、遊びに来てください」

「絶対に行くよ。もし出し物で靴関係だったら、俺と姉貴手伝うからな。いつでも連絡してくれ」

「はい。もうこんな時間。夕哉さん、ありがとうございました」


 またいつでも聞くよと言ってくれて、先に帰らせてもらうことになった。



 なんか知らないけど、あいつから陽羽の相談にのってくれとメッセージを受け取り、駅で待ち伏せていたら本当に陽羽が出てきた。あいつ、教師でありながらも、何やってんだよと思いながらも、陽羽がスッキリしたようで何よりだ。

 陽羽が言っていた複雑な家庭の子は、おそらく彼氏の南雲真昼のことだろう。紗良はあまり依頼主の情報は漏らさないタイプだが、今回の件にしては俺にも情報が渡っている。


 真昼の母親は昔っから育児放棄や真昼に対しての虐待をしていたことが判明。それによってなのか、真昼が陽羽の優しさに触れ、誰にも手放したくないという執着心が生まれたのかは定かではない。

 それに俺のことも知っていた真昼は、俺が陽羽に想いを寄せていることも、知っていたからあんな顔をしたと解釈するしかなかった。


 若と組員がやって来て、耳元で組長が戻られましたと報告を受ける。まだ伊豆で長いするはずじゃなかったのかよと、組員が止めてくれていた車に乗り、自宅へと向かった。

 

「姐さんは調べ物があるとかで、引き続き伊豆にいるようです」

「親父の容体は良くなったのか?」

「毒が少量だったこともあり、完治はしているようです。ただ組長が戻って来たわけが、シルバーウルフが動き出したからではないかと」


 あの場で何が起きたのかは大体、玲から報告を受けているが、父さんはもしかすると気づいていたから、直々に伊豆へと向かったのかもしれない。

 車を走らせてもらい数分後、自宅に到着し、外では組員がお疲れ様です、夕坊と呼ばれる。出迎えいらねえよと思いながらも、門が開き小さな庭を通って、自宅へと入った。


 中でも組員が行き来していながらも、親父がいる部屋の前に到着し、夕哉、戻りましたと伝える。入れと言われ、失礼しますと襖を開け中へと入った。

 

「夕哉。状況を報告しろ」

「はい。玲が経営しているセライヴニの他に、それ以外の店でも多数被害を受け始めました。しかしセライヴニに描かれいたレッドクレインの紋章は見つからず、模倣犯の模様。玲と連携をとり、荒らされた店は一時期営業はしないこととなりました」

「夏祭りの件は?」

「夜瀬組との抗戦があったようで、玲が仕切っていました。俺は陽羽を守りつつ、烏丸と接触。烏丸が、貴様の大事な想い人には指一本触れさせはせん。ただ警戒は怠るな。犬は待ってはいないと。それと組長が怪我を負っていたこと知っていた」

 

 親父はやはりなと呟き、俺の目ではシルバーウルフが夏祭りにいたとは考えにくかったしな。


「陽羽ちゃんのそれ以降の動きは?」

「部下の情報ですと、陽羽は楽しそうに夏休みを満喫しているようで、周囲を警戒するも夜瀬組、シルバーウルフは見受けられなかったと。明日から学校が始まるということで、どちらかが動き出すのではないかと予想している」

「シルバーウルフは玲が調べてくれるそうだから、レッドクレインを頼めるか?」


 どちらかと言えばシルバーウルフを引き受けたかった。俺を犯罪に染めさせないよう、玲が引き受けてくれたのだろう。


「承知。紗良からレッドクレインの情報はもらっているので、すぐ動きます」


 親父に頭を下げ、部屋を出ると玲が廊下で待っていた。玲は親父を庇えなかったことで、まだ悔いているようにも見える。肩を叩き、思い詰めんなよと伝えて、自分の部屋に入った。

 明日、レッドクレインの拠点でも足を運んでみるとしても、入り口はどこにもない。レッドクレインを使用している人物と接触するためにも情報がいるな。


 紗良はなんだかんだで、依頼者が増えたっぽく、それどころじゃなさそうだから、紗良の母親に連絡する。しかし連絡が取れず、折り返しを待つことにした。



 陽羽ちゃんに会わせていいのか少し不安が大きい。母さんは金がある人に食いついているのは事実。ここで陽羽ちゃんに手を挙げたら、僕はきっと母さんを殺す勢いでやるだろうな。

 帰ってみると母さんが珍しく帰っていルらしく、ヒールが脱ぎ捨てられていた。こういうところもだらしないとヒールを揃えてあげ、ただいまとリビングへ入る。

 そしたら母さんが包丁を持って首を刺そうとしていたから、何やってんのと包丁を取ろうとも死なせて、真昼と言い出す。母さんの化粧は泣いたせいで崩れていて、そこまで精神的に追いやられたのと包丁が僕の手に掠った。

 

 母さん離してと何度も伝え、母さんは子供のように泣きじゃくり手が緩んだことで包丁を流しに置く。母さんを慰め、僕がいるからと慰めていった。




 母さんがしっかり寝たことで、話すのはまた今度になりそう。机に置かれていた請求書があり、それを確認したら闇金で金を借りていたことが判明する。

 部屋が散らかっていたのはそういうことだったのかと理解し、これを修さんに言ったら、確実に母さんは自殺しかねない。


 母さんを自殺に追い込みたくはないから、学校を辞めざるを得ないかもしれないな。そうしたら陽羽ちゃんはなんて思うのだろう。

 悩んでいるとスマホが鳴り、誰かと思えば漆月からで、出たくはないけれど頼れるのはこいつしかいないと出る。


「漆月…」

『あーやっぱり闇金そっち行った?行くなってあれほど言っといたんだけど仕方ないか。俺様がぼこっておくからさ、請求書は後で送っといてくれれば、払っとく。どうする?』

「漆月に借りを貸したくない。でも助けてほしい」

『いただいた。んじゃ手配は済ましておくから、真昼先輩は気にせず生活しなよ。暗ーい顔してたら彼女離れていくから』


 わかってると伝えて漆月はまたバイトでと切られた。精神科にそろそろ連れて行きたくても、母さんが行くかどうかだ。漆月が仲介となってくれていることは、母さんも知らず、今日初めて闇金が来たのだろう。

 それによって精神的に追い詰められ、自殺を図ろうとした。

 

 この事情を知っているのは漆月であり、よく闇金と取引をしていると聞いたことがあり、バイト中、漆月に言われたこと。


〝お前のお袋、闇金で金借りてるっぽいけど、俺様が止めてるがいつまで持つかわからない〟


 この金額は母さんがやり始めたスナックに経営するための頭金で、まだ払っていないことが理解した。経営はうまくいっていようとも、母さんの好きなブランド品が増えていたのは確か。

 しかし部屋を見渡すとブランド品が全てないことに気づいた。全て持っていかれたからなんだろう。請求書を茶封筒に入れ、漆月の自宅を書いていく。


 付箋に借りはきっちり返すと添えて、切手を貼りのりでしっかり封を閉じ、家の前にある郵便ポストに入れた。



 闇金会社に手を出していたとは前から知ってたから、俺様が仲介となって俺様の金で真昼先輩と家族を守っていた。まさか俺様に連絡せず、乗り込むとはやるねえ。

 後でしばくとして、真昼先輩の困った顔はめちゃくちゃ好物だから庇っちゃうんだな。もっと俺様に頼ればいいのに、遠慮ガチなんだから。


 よっとと身体を起こし、捕まえといたシルバーウルフの一人をパンツ一丁にしといて殴る。


「てめえのボスは一体何をしようとしてる?真昼先輩の大事な人に最近近づいてるようだけどさ。それとも破島淡の指示で動いてる?」


 黙秘し続けているシルバーウルフであり、拷問したほうが吐いてくれるか。拷問道具をと伝え、それでも吐かなければ新しいシルバーウルフを捕まえればいい話。

 花火大会で真昼先輩と大事な人を見ていたら、やたらと近づいている輩がいて、そいつがシルバーウルフだとわかった時は、喜びが隠せなかった。


 拷問道具が俺様の隣に置いてくれて、どれにしようかなと選んでいると、シルバーウルフは拷問が嫌なようで教えてくれる。


「ボスは朝峰陽羽を好んでいる。詳細はわからねえ。信じてくれ!」


 ごく普通にある台詞と思いっきり殴った。そんな言葉は信じないとポタッポタッと垂れていて、だから知らないとまだ吠えるから、殴り続ける。


「朝峰陽羽を想っていいのはただ一人、真昼先輩。真昼先輩から奪おうとする奴らは誰であろうとも、俺様が排除する。そうボスに伝えとけ」


 ある程度殴りもう気を失っているようで、簡単にいっちゃったかと道具を置いた。マフィアがここに来る前に撤退することに。

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