13羽
夏休み後半となり、うるさい蝉たちが合唱していて、私と紗良は図書館の前で待っていた。そろそろ来るはずなんだけどなと、紗良と話していたら、お待たせと真昼くんが登場する。
「ごめん、遅くなって」
「全然。紹介するね、私の親友である文倉紗良。それで私の彼氏である南雲真昼くんです」
よろしくとお互い言い合い、中入ろっかと図書館の中へと入った。図書館の中は冷んやりしていて気持ちいいと思いながら席に座り、受験勉強をしていく。
わからないところはお互い、教えあいつつ、勉強して二時間程度。
紗良のお腹からギュルギュルと悲鳴を上げていて、私たちは笑い合い、昼食食べに行こうと図書館を出てカフェに足を踏み入れる。お洒落なカフェで南雲くんと私は写真をパシャパシャ撮っていたら、紗良に笑われちゃった。
「陽羽は見慣れてたけど、南雲くんも写真撮るの好きなんだね」
「基本、猫ばかりだったけど、陽羽ちゃんの影響で景色も撮るようになったぐらいかな」
恥ずかしいことを言われ、身体が熱くなり、早く中入ろうとドアノブを掴もうとしたら、扉が開いておでこをぶつけてしまう。凛とした顔立ちの人がお店から出てきて、ごめん、大丈夫と気にかけてくれた。
大丈夫ですと伝え紗良と店内に入るも、真昼くんの表情が強張っている。紗良と私は気になり、どうしたのと聞いたら、なんでもないといつもの笑みに戻って中へと入った。
ご飯どれも美味しそうとメニュー表を見て、またシェアしようとなり、真昼くんが注文をしてくれる。飲み物はドリンクバーとなり、持ってくるよと言われたから、アイスティーでと伝えた。
紗良も持ってくるみたいで、その間にスマホをいじっていると、透からメッセージをもらう。明日ならあいつの靴屋に行けそうと来ていて、お願いスタンプを押した。
お待たせと真昼くんと紗良が戻って来て、真昼くんから速攻質問が来たのだ。
「二人は昔っからの幼馴染なんだっけ?」
「うん。小学校に上がる前に紗良は引っ越しちゃったんだよね」
「そう。海星学園ってところに今通ってて。ちょっと色々ありすぎて、大学は守城大学を目指そうと思ってる」
「海星学園…。ちなみに高二の男子って把握できたりできる?」
あんま名前は覚えてないかなと紗良はオレンジジュースを口にしていて、そっかと何か思い詰めた表情でいた。
「知り合いがいるの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど、危険な奴が高二にいるから、気をつけてほしいなって」
「ちなみに誰?」
紗良が南雲くんに聞くと、言いづらそうな表情で、言いたくなかったらいいよと紗良が言う。それでも真昼くんは教えてくれたの。
「漆月夜一。店のバイトが一緒で、相当危なっかしい奴なんだ」
「漆月夜一か。名前は聞いたことあるかも。結構学園内で噂になってたような」
「どんな噂?」
「学園長の知り合いの息子だから、好き放題してるって」
真昼くんの表情は今まで見たことがない表情で、とても怯え切っていた。今度、真昼くんがしてるバイト先に行ってみようかな。そこに漆月くんがいるかどうかもわからない。
料理が届き、気をつけなねと紗良に忠告して、昼食を食べていく。
「南雲くんとその子が同じバイトだっただなんて知らなかったな」
「店長はすごい嫌な顔してるもバイトをクビにできないから、放置状態なんだ」
「真昼くんがバイトしてる場所って」
「飲食店だよ。漆月がいると営業にならないことがほとんど。今日は漆月いないから店長もほっとしてると思う」
そんなに酷い状況なのと私と紗良は苦笑するしかなかった。
「そう言えば、陽羽のお友達あれからどう?」
「襲われたことで、引きこもってるらしいの」
「まあそうなっちゃうよね。二人は平気だったんだよね?」
うんと同時に伝え、紗良は探偵として情報を聞き出しているっぽい。
「清寺さんの彼氏さんが、毎日様子を教えてくれてて。今度真昼くんと一緒に行こうってなってて」
「心の傷は人それぞれだと思うから、あまり無理はさせないようにね」
「もちろん。様子見てお暇する感じにはする」
まだ解決はしていなく、犯人は捕まっていないから、一日でも早く捕まってくれることを願うしかなかった。
その後昼食を食べ終えた後、図書館に戻って、私と紗良は守城大学の受験勉強をし、真昼くんは文常大学の受験勉強をしていくことに。
図書館が閉まるチャイムが鳴ってしまい、あっという間だったねと話しながら図書館をでる。綺麗な夕日があって綺麗だなと見ていたら、紗良がここでと言う。
「駅まで一緒に行かなくていいの?」
「うん。これからちょっと会わなくちゃならない人がいて。南雲くん、陽羽のことよろしくね」
それを告げたら行っちゃって、遠慮してくれたのかなとふと思ってしまった。帰ろっかと真昼くんが手を出して来たから、その手をとって歩む。
「今度さ、清寺さんと岩渕さん四人で、どっか行かない?」
「気分展開に行こ。そうだ、夏祭りなんかどうかな?」
「いいね。陽羽ちゃんの浴衣姿みたいし」
真昼くんが言うから少し体温が上がっていそうで、浴衣は全然着てなかったなと思い返す。清寺さんはまだあんな感じだし、岩渕さんに聞いてみよ。
駅に到着して、真昼くんは電車に乗って帰り、私はそのまま自宅方面へと歩いていたら、偶然と夕哉さんに出会った。しかもスーツ姿で雰囲気がとても違う。
「こんばんは、夕哉さん」
「陽羽、こんばんは。偶然だな。あいつはいないのか?」
「今日は彼氏と友達で受験勉強してたんです。あの明日、お店に伺っても大丈夫ですか?お土産渡したくて」
「わかった。午前中は出払ってると思うから、午後に来てくれると嬉しいかも。もしいなかったら待ってもらう形になるけど平気か?」
はいと返事をしてさよならと伝え、自宅へと帰った。
ただいまと玄関を開けたらちょうどお姉ちゃんが出かけるみたいだった。行って来ますと言うから、行ってらっしゃいと伝えて、靴を脱ぐ。
「おかえり。あら、もう行っちゃったの」
「バイト?」
「友達とご飯食べに行くみたいなのよ。ここ最近物騒なことばかりだから、控えてほしかったんだけど。まああの子は護身術身につけてるから、大丈夫と信じたいわ。手洗いしてきなさい」
うんと靴を揃え手洗いうがいをし、リビングに入ってみると、ゴミ箱に夕哉さんからもらったクーポンが捨てられてた。お姉ちゃん、いらなかったのかとゴミ箱から回収する。
捨てるなら返してくれればよかったのにと思いながらもそのクーポンを拾い、手帳に挟んだ。
「お父さんから聞いたわよ。素敵な彼氏さんできてよかったわね。今度うちに連れてきてちょうだい。挨拶したいもの」
「うちに呼んじゃっていいの?」
「もちろん。呼ぶ時は事前に知らせてね」
お母さんは私が彼氏できたことで、安心感を出していて、真昼くんに聞いてみよう。夕飯を食べお風呂上がり、お父さんの部屋である調べものをしていた。
それは紗良のお父さんが撲殺で亡くなった事件で、凶器は近くにあったやや大きめの石で何度も殴られたそうだ。現場は紗良ん家付近にある大きな公園。発見時刻は朝で、犬の散歩をしていたご夫婦が紗良の父親を発見し、通報した。
公園辺りは夜暗くなっているため、目撃者はいなく、現在も紗良の父親を殺した犯人は見つかっていないという。凶器が見つかったとしても、指紋はついていなかった。
紗良が以前言ってたことが本当なら、何を知ってしまったんだろうか。考えていると扉が開き、お父さんが珍しいなと入って来た。
「気になる事件でもあったのか?」
「紗良のお父さんがなぜ亡くなったのか、動機としては何かの情報を掴んで、その人と接触し、その人に殺されたってことでいいんだよね?」
「そう捉えるのが一般的な答えだ。紗良の父親は二度殺されている。一度撲殺されたと思えば、その時点では意識があったようだ」
「つまり違う人に殺されたってことなの?」
そうだとお父さんは椅子に座りデスクトップに電源を入れ、本当は見せてはいけない資料を見せてくれた。
「ここをみてみろ。身体を引きずった跡が残っている。それに一度殴られたが、それを上書きするように何度も殴られた形跡が残っていた。石を見ればわかるはずだ」
血痕がついた石をよくみると左側には一回だとしても右側のほうだけ血痕が広がっていた。
「どうしてそこまで…」
「知られたくはない情報は誰もが持っているものだ。陽羽、夏休みだからといって、あまり夜遅くまで出歩かないようにな」
「お母さんにもさっき言われたよ。うん、私は大丈夫だけど、お姉ちゃん大丈夫?」
「陽空は護身術を習わせているから問題はないだろう」
お母さんと全く同じ答えで、本当に大丈夫かなと不安になってしまう。それでもお父さんとお母さんがそう言うなら、大丈夫だよねと資料を棚に戻し、おやすみなさいと伝えて、就寝することにした。
◇
飲食店でバイトをしお客さんからオーダーをもらって、厨房にメニューを伝えていく。すみませーんとお客さんの声がかかりレジ打ちをしていった。
ありがとうございましたと伝え、テーブルを拭いていたら、にいにと言う声に振り向く。
大きく手を振る昼奈と修さん夫婦が来ていて、こちらへと案内してあげた。昼奈はだいぶ義母に慣れたようで、安堵を感じつつ、メニュー表とお水を置いてあげる。
昼奈はいつものお子様ランチで修さん夫婦は、日替わりディナーを注文。失礼しますと一度離れ、厨房にメニューを伝えた。
修さんはまだ僕を引き取ろうとしているようだが、母さんは絶対に嫌と言い張っているらしい。なぜなら僕は修さんの子じゃないからなんだろう。
グラスを拭いていると、漆月が隣に来て、まだ吹ききれていないグラスを一緒に吹き始めた。
「またここで話す?」
「それが何?」
「バイトしなくても、優雅に暮らせるし、お金も困らない。いいな、あぁいう家柄に生まれたかったよ」
「あのさ、言っておくけど、昼奈やそのご両親に手を出したら、容赦はしない」
そう怒んなよと言われながらも、漆月は昼奈をロックオンしていて、早めに食べて帰ってほしいものだ。ドアベルが鳴りいらっしゃいませと言いながらグラスを拭き終わり、行ってみると氷雨たちだった。
なんで店に来るんだよと思いつつ案内をし、立ち去ろうとしたら、氷雨に言われる。
「バイト何時まで?」
「なんですか?」
「だから何時までなんだよ」
あんまり関わりたくないと思っていても、二十一時までと伝え、氷雨たちから離れた。
「十七番テーブルのオーダー引き受けてくれない?」
「なんでだよ」
「なんでも。僕の彼女をいじめてた奴らが来てんだよ。休みの日まで顔見たくないから」
ふうんと漆月は氷雨たちを見ていて、ベルが鳴ったから、漆月が珍しくオーダーを引き受けに行ってくれる。いつもならやりたくないと言い出し、僕任せなのにな。
店長もそれを見て、いつもやってくれればなと僕に愚痴を言いながら、バイトが終わるまで、漆月が変なことしないよう監視していった。
僕の友達が来ていると思い込んだ修さんたちは、話をせず帰って行きにいにバイバイと手を振るから手を振ってあげる。もうすぐ二十一時で、氷雨グループは先に帰っているようで、氷雨が残っていた。
何しに来たんだかと思いながらも、お疲れ様でしたーと厨房にいる店長や料理人たちに伝え、裏から出た。スマホを取り出し終わったと送り、数秒後、氷雨が店から出てくる。
「話って何?」
「場所変えねえ?」
「ここでよくない?」
そう言うなよと言われながら、コンビニに寄ってアイス棒を渡され、渋々それをいただきながら氷雨の相談に乗ることに。
「今まで黙っていたことがあってさ。もちろん、朝峰には言うなって伝えてたから、本人から聞いてないだろうけど、SNSを作った日から朝峰と繋がってた。朝峰が撮る景色はどれも良くて、朝峰も俺のこと知らずにフォローしてくれてて。そこからだよ。朝峰のこと、好きになったの」
「陽羽ちゃんが誰をフォローするとかは、僕に止める権利はない。なのに、なんでいじめるような行為をし続けてきた?普通違くない?好きな人がいるなら、守るべきものじゃん。それなのに、氷雨のやり方は間違ってるし、陽羽ちゃんがどれだけ傷ついてきたのか、わかってたのに」
「…親父から言われてて。朝峰のことは諦めろって。何度聞いても親父は教えてはくれない。それが苛立ってつい朝峰に当てちまった。なあ頼む。その詫びとこの長かった片思いを吹っ切るために、一日でいい。朝峰と過ごさせてくれないか?もちろん、南雲も伊宮も一緒で構わないから」
パンッと手を合わせて僕に頼む氷雨で、なんか裏がありそうと目を細めながアイス棒を咥えた。僕がいいよと言うまでこのポーズでいるのだろうと思い、アイス棒をとって伝える。
「そこまで言うなら、陽羽ちゃんに連絡すれば?ただし陽羽ちゃんに何かしたら、透先生に愚痴る」
「ありがとう、南雲。それでなんだけど、今度さーーー」
◇
透と一緒に夕哉さんのお店へと向かっていて、透がくれたイヤリングもつけてきちゃった。透がなぜかそのイヤリングつけて来るんだぞと言われてしまいつけている。
夕哉さんになんて言われるんだろうと、ドキドキしながら、HAN・RA・SHOESに到着し、車から降りた。
お店の扉を開けいらっしゃいと女性店員がにこにこしながら、夕哉、陽羽ちゃん来たわよと大声で呼び、少しして夕哉さんが出てくる。
「お疲れ様です、夕哉さん。夕哉さんに出会ってから、私の人生はがらんと変わって、友達もできたんです。そのお礼です」
「俺は何もしてないし、陽羽の頑張りが友達に伝わったんだと思う。わざわざありがとな。開けてもいい?」
はいっと緊張しながら夕哉さんが袋から出し、片手で口元を隠し、頬がみるみると赤くなっていた。夕哉さんはつけているお洒落なピアスを外し、すぐつけてくれて眩しい笑顔でありがとなと言ってくれる。
「陽羽はイヤリングか。似合いすぎてやばい。鼻血出そうな勢い」
「夕哉さんも素敵です。よかった。気に入ってくれて」
「また靴サービス作るよ。今度はどんな靴がいい?」
「ちょっとくしゃくしゃになっちゃったんですけど、これを使って依頼したいことがあって」
夕哉さんがじゃあこっちで話そうと打ち合わせスペースで話すことになり、なぜか透はちょっと出かけると行ってしまった。よかったのかなと思いながらも、女性店員がアイスティーをくれて、それを一口飲み、夕哉さんに相談する。
「下駄風の靴って作れますか?今度、夏祭りで浴衣が着たくて、どうせなら運動靴じゃなく下駄が履きたくて」
「下駄は初めて作るけど、下駄風のサンダルなら作れるかも」
「よかった。夏祭りは月末にあるんですけど、大丈夫ですか?」
「全然平気。今の所、依頼が来てないからすぐ取り掛かるよ。あっそうだ。姉貴ー」
女性店員がお姉さんだったとはと思わなくて、どうしたと夕哉さんのお姉さんが現れた。夕哉さんはお姉さんの耳元で何かを囁き、お姉さんはくすくす笑いながら了解、店長と言われる。
「これから時間まだある?」
「はい」
「なら、俺の姉貴と一緒に行ってきてほしいところがある。あいつが戻って来てからでいいから」
なんだろうと思いながらも足のサイズはすでに頭の中に入っているようで、夕哉さんは仕事に取り掛かるようだった。透が戻って来たことで、透の車でショッピングモールへと向かう。
「陽羽ちゃん、お土産ありがとね。夕哉、陽羽ちゃんから連絡もらった時、すごい喜んでたから」
「そうなんですか?」
「もちろん。それにお姉ちゃんにもお土産、ありがとう。後で夕哉と一緒に食べるね」
ぜひと伝え、透もよかったなと言ってくれた。
ショッピングモールに到着し、透は車で待っているようで、夕哉さんのお姉さんと一緒に、着物屋さんへと足を運んだ。ふと思って、あのと声をかける。
「浴衣、持参してくればよかったですか?」
「これはお姉ちゃんから贈らせて。陽羽ちゃん、どれが似合うかしら」
「でも」
「夕哉があんなに張り切ってるんだもの。そのお礼よ」
いいのかなと全身赤くなりつつも、夕哉さんのお姉さんと一緒に浴衣を選んでいく。何着か選び、お姉さんが識別していき、お姉さんがいいじゃないとパシャリ撮った。
ベースはクリーム色で向日葵が入っており、帯はオレンジ色。お店の人もよく似合っていますよと言われ、これを買ってもらうことになった。
下駄はいかがいたしましょうと言われ、お姉さんが説明をしてくれて、巾着も髪飾りもセットで買ってくれる。
「ありがとうございます」
「いいのいいの。夕哉に一応、送っといたから、下駄風もそれに合わせて作ってくれると思うから楽しみにしててね」
「楽しみにしておきます」
お姉さんと連絡先、交換して写真も送ってくれたから透にも送っといた。車に戻ったらグッジョブサインをくれて、夏祭りが待ち遠しい。
お店までお姉さんを送り、夏休みの宿題をある程度終わらせたくて、透にわからないところを教えてもらった。
◇
姉貴、マジでナイスと思いながらまずは下駄のベースとなる黒を使用して作業をしていた。完全ではないけれど、あの色合いは絶対に昏籐組の色合いで、嫁にしたらこんな感じと言ってるようなもんだった。
姉貴何やってんだよと思っていても、想像するだけで捗っちまうじゃねえか。
車の音が聞こえ姉貴が戻って来たとしても、作業を行っていたら、どうだったと姉貴に言われる。
「可愛すぎて一緒に歩きたいぐらいだったよ。夏祭りの日、休んでいい?」
「そんなにまじかでみたいなら、紗良と一緒に行けばいいじゃない」
「接触しているところ、陽羽に見られたらアウトだから、変装して出店してる」
「通報されないことを願うわよ。それじゃあ、先、上がらせてもらうから。お疲れ」
お疲れと言いながら、あれと後ろを振り向くも姉貴の姿はなかった。あぁなるほど。玲と今日は外食だったかと、陽羽が喜ぶ顔を想像しながら作っていった。




