127羽
陽羽が遊び疲れて寝てしまった直後に、ちょうど親父さんがやって来た。
「娘がすまなかった。夕哉くん、透くん、陽羽と遊んでくれて感謝する」
陽羽の親父さんは陽羽を抱っこし、一礼して帰られ玄関の扉が閉まった途端に、馬鹿者がと親父の痛い拳骨をもらうこととなる。透はすぐにすいやせん、組長と詫びを入れていて、俺もごめんなさいと謝った。いつかはばれることを覚悟しながら、陽羽と遊んでた。
それに陽羽のご両親が警察官だってことも、十分理解してる。言わば禁断の恋ってやつかな。一応、お袋さんには遊んでもらってることは報告済みだから大丈夫だろうと思ってた。もう遊ぶなって言われそうと下を向いていたら、親父に呼ばれる。
「夕哉」
「はい、組長」
「ここは親父でいい。朝峰警部とは仲が良かったからまだしも別の警察官の娘や息子には絡むな。それが守れるなら陽羽ちゃんと遊んでて構わない」
「いいの?」
もちろんだと言われたときは興奮しすぎて、早く明日にならないかなとウキウキしていたら、親父に忠告をもらった。
「ただし、夕哉」
「何、親父?」
「絶対に昏籐組の息子だということは伏せておけ。それを知ったら陽羽ちゃんはきっと夕哉を避けるだろう。その覚悟はあるのだろう?」
「もちろん、そのつもりで陽羽と遊んでたし、まだ俺は将来のこと諦めてねえから、親父」
その頃から俺は組として動くのではなく、靴職人としてやっていきたいと親父には伝えている。親父もまだ俺を後継者として育ててくれてるのは嬉しいよ。ただ譲れねえもんがあるんだよと親父の瞳をみた。
「もし気づかれたら、関わるなよ」
「そのつもりだよ」
こうして俺は警察官の娘である陽羽と接触する許可が下り、毎日陽羽と一緒に登校したり、下校をすることに。
授業中も陽羽のことばかり考えてたこともあったせいで、先生に注意されては三者面談が終わった後、お袋に軽蔑されていたのを覚えてる。ありゃあ忘れたくても忘れられないぐらいの顔だった。
陽羽に気づかれないまま数週間が過ぎたある日、毎年恒例の行事がやって来る。それは小中高生で遊ぶ時間だ。
その日、陽羽とめちゃくちゃ遊ぼうという計画を透と話していた。
「なあ、透」
「ん?」
「毎年恒例の行事でさ、その」
「まさかまだ一年だっつうのに告る気か?」
ちげえわと赤っ恥になりながら言い、それでも透はニヤニヤしながらそれでそれでと急かされる。
「陽羽のだちはさ、疾太と千夏っていう子なんだって」
「ほほん。疾太が夕坊の女に目をつけたか」
ちげえわと再び言う羽目になりつつも、実際疾太も陽羽が好きなのは知ってた。だがそうじゃなくてと付け足しながら相談を持ちかける。
「クラスメイトと仲良くさせてあげたい。どうしたらいいと思う?」
「あぁクラスメイトが陽羽と仲良くなってほしいってか。んじゃあここは高校生の俺に任せろ。だから夕坊は行事の日、一緒に遊ぼうって誘え」
「それで何して遊ぶ?陽羽はなんとなく警察ごっこしたいとか言いそうなんだけど」
「遊びも俺に考えがあるから、それだけ伝えておけばいいよ」
わかったと透と話していたら、玲ちゃんも入れてと玲からバックハグを受けることになった。
行事の日、校長の話をよく聞いて丸一日遊びまくっていいからみんなは大はしゃぎで校庭や体育館で遊ぶことに。陽羽はどこだと探していたら、見つけて、陽羽も俺を探してたっぽく目があった時の笑顔は堪らんといきなり鼻血が出ちまう。
大丈夫と陽羽がハンカチを貸してくれて、それで拭き取りながらこっちだよと透がいる校庭へ急いだ。
確かこの辺にいたはずなんだけどなと探していたら、透が俺たちを呼んでいて行こっとそのまま手を繋いだまま透たちがいる場所へ。
「これで全員か。んじゃこの人数でかくれんぼすんぞ。鬼やりたい奴いるかー」
はいはいと手をあげる小学生がいて、透の彼女、くれのさんが提案を持ちかける。
「ならさ、小中高一人ずつ鬼になって、見つけた人も鬼になる」
「確かにこの広さだと三人じゃさすがに見つかんないもんな。よしっそれでいいか?」
はーいと手を挙げて小学生は疾ちゃんで、中学生は夕莉さん、高校生は透となった。
「んじゃ行くぞ」
三人が目を瞑って数え始め、私たちは隠れることにする。どこに隠れようと迷っていたら、夕哉さんがこっちと再び手を繋ぎ、いい隠れ場所あるんだと教えてもらうことに。
そこは高等学校の旧校舎にある清掃員部屋でもちろん清掃のおっちゃんが湯呑みを飲んでいた。
「夕坊、今日は行事なんじゃないかね?」
「おっちゃん、その奥借りるわ。今隠れんぼしてて。誰か来たら知らないって言っといて」
「そうかいそうかい。伝えておくよ」
おっちゃんは壁紙を少しずらしそこから取っ手を押して中へと入った。どこに隠れるかは自由って言ってたし大丈夫だよな。その奥へと入り、そこには俺の作業部屋が存在する。
「ここって?」
「ようこそ、俺の秘密基地へ。透がたまに部活に顔出すっていう時はここで暇つぶしてる」
「じゃあ透にばれるんじゃ」
「そんときは、おっちゃんが教えてくれるから平気だよ。そうだ、ちょっと靴脱いでくれる?」
陽羽はんっと首を傾げながらも椅子に座って靴を脱ぎ、これでいいと言われたから足のサイズを測っていく。これはこうで、ここはこうでとやっていたら、陽羽がくすくすと笑い出す。
「そんなに面白い?」
「ううん。なんか本当に靴屋さんに来てるみたいだったから。測ったらどうするの?」
「何日かかるかわからないけど、言っただろ?始めに作る人は陽羽だから。サイズ測ったから次、何して遊ぶ?」
陽羽はボードゲームを取り出して、これやりたいと言い出しそれで誰かが来るのを待つことに。いくら待っても来なくてそっと扉を開けおじちゃんに聞くも、誰も来ていないと言っていた。
どうしよう、これじゃあ陽羽のクラスたちが再び噂を出すかもしれないと思い違う場所に移ったほうがいいかな。そう考えていたら放送が流れ、遊び時間の知らせが入った。よくよく見ると三時となり、あっという間だった。
「夕哉、小学校に戻ろう」
「ごめん。せっかくの行事、台無しにしちゃったかも」
「全然平気だよ。また来年があるもん。またここに来てもいい?」
「いいよ。おっちゃん、ありがとう」
小学校と高校に繋がる裏口から入り戻ってみると、陽羽のクラスはどこに隠れてたのと興味津々だった。陽羽は秘密と言って疾太が教えろよと言っても陽羽は満面の笑みで言わないもんとクラスと馴染めていてよかったよ。
後々聞いた話だと、俺たちは遊ぶ範囲外にいたらしく、見つからなったそうだ。また来年があるとしても、これでひとまず安心かな。ただ俺のクラスだけは違った。俺が一年と遊んでいたことで、クラスに馬鹿にされたとしても平気だった。陽羽の笑顔され見れればそれで十分だと。
夏休みが入った時期も、俺はできるだけ陽羽と遊びたい一心で、陽羽の家付近にある公園でよく遊んでいた。毎日のように遊んでくれて不思議に思い聞いちまう。
「なあ、陽羽」
「なあに?」
「俺と毎日遊んでくれてるけど、同い年の子と遊ばなくていいの?せっかく友達、できたんだろ?」
「んーほとんどのみんなは、家族で海外旅行に行くって言ってたから遊ぶ約束してないよ。夕哉も私と毎日のように遊んでくれてるけど、友達と遊ばないの?」
ぎくっと俺はぎこちない笑みを見せて、クラスではすげえオラオラしてるから友達というかそういう奴はいないって言えなかった。
俺も似たようなことを口にして、そっかと陽羽はボールを投げてくる。本当なら友達がいたほうが親父もお袋も喜んでくれると思う。ただ透から報告をもらってるんだろうな。幼稚園から遊んでくれる奴は誰一人いなかった。大人の言葉は絶対だし、俺と絡んでくれる人は限られてた。
なのに陽羽は警戒もせず、俺と遊んでくれるたった一人の友達であり、俺の初恋。たとえ実らなくても友達のままであり続けたいと願っていた。
たまに親父が陽羽の家族を招いて、バーベキューをした日は俺にとって大切な思い出。姉貴は陽空と遊んでいたとしても、陽羽はいつも俺と遊んではしゃいで、それを見守る親父たち。透もたまに混ぜて遊んでそれが毎日続いてほしかった。
あの事故が起きるまでは……。
寒く今でも雪が降るかのような寒さの中、透はその日、インフルエンザで休むことになり、俺は組員に駅まで送ってもらった。陽羽と駅で合流し楽しく会話をしてた時、何が起きたのかさっぱりだった。
俺と陽羽は引かれ生徒や通りがかりの大人たちが悲鳴を上げている。陽羽の反応がないことで俺は何度も叫んだ。
「陽羽!陽羽、しっかりしろ!」
なんで、なんでこうなった。俺のせい?俺が組長の息子だから、敵組に狙われた?そのような言葉がありながらも、陽羽の名前を叫んで、途中で救急車が到着し、意識不明の陽羽は先へ救急車で搬送された。俺のせいだと俺も搬送されている間、一度意識を失うことになる。
気がつくと親父とお袋、それから玲がいたとしても、陽羽はと震えた声で親父に聞くも、親父たちは暗い表情を出していた。俺より陽羽は重症なんだと理解して、何日かは陽羽を守れたなかった思いが強くて暴れてしまう。
陽羽に惹かれなければ陽羽の命は助かったかもしれないと暴れすぎたことで、ベッドに固定されていた俺はそんなことを考える日々が続く。
陽羽の容体を見に行きたくても陽羽が搬送された病院は別の病院らしく、会いたくても会えなかった。何日かして玲がいきなり病室に入って来て嬉しい知らせを受ける。
「陽羽ちゃんが目を覚ましたらしいぞ!よかったな!」
その言葉でよかったと嬉し泣きをしていたら、お袋が入ってくるも何か様子がおかしかった。
「おかん?」
お袋は俺のベッドに座り俺の手を両手で握って、悲しくて寂しい瞳をしながら悪い知らせを受ける。
「夕哉、よく聞いて。陽羽ちゃんは意識障害を持って、夕哉のこと忘れてしまったそうなの」
「え…そんなはずない!会えば思い出してくれるはずだよ!」
そうだとしてもごめんねとお袋は優しく俺を包み込み、そこで知った。俺たちはもう二度と会うことは許されない存在なんだと。その知らせを受けて何週間は絶望に満ち溢れ、食べる気力もなかった。
そんな時に紗良と紗良のお袋さんが見舞いに来てくれて、お袋同士は一度病室を後にする。すると紗良が泣きながらごめんなさいとなぜか謝って来た。
「なんで紗良が謝る必要があるんだよ」
「だってっだってっ。紗良の代わりに仲良くなってあげてって言ったからっ」
「俺はただ陽羽に惹かれてたから、紗良が責任を感じることはないよ。ほら泣くなよ」
紗良は泣き止まずどうしたものかと頭を掻いていたら、雷斗が入って来て何泣かせてんだと怪我人なのにボコられることとなる。雷斗を怒らせるとやべえなと思いながらも、雷斗も責任を感じていた。
なぜなら雷斗も責任を感じているらしく、雷斗は海星学園ではなく守城学園に通っている。学校ではいとこ同士だということは伏せているから、俺が浮いていることも知っていた。
「僕が普通に接してあげていられてたら、別の道があったのかもしれない。ごめん」
「雷斗も謝んなよ。どちらにせよ、俺は組長の息子で狙われてるの知ってるのに、送迎を拒否したからこうなった。バチが当たったって思えば気が楽だよ」
そう言うと雷斗も泣き出しちまったことで、お袋たちが戻って来て紗良と雷斗は泣きながら帰っちまう。
「おかん、あのさ」
「二人が泣いていた理由って何かしら?」
「紗良と雷斗が責任感じてんだよ。紗良は陽羽を守ってほしいって言われたから陽羽に近づいた。雷斗は俺がクラスで浮いているのに、見て見ぬふりしてたせいだって」
「そう…。紗良ちゃんのお願いで陽羽ちゃんと接触してたのね」
そんなところとお袋に説明し、数日後。俺は回復が順調に進んだことで退院した。ただ陽羽と接触禁止令が出されちゃったことで見舞いに行くことはできないまま、俺は小学校を卒業した。
高校に上がるころ、俺は決断をし親父に相談するため、親父の部屋の前に立つ。
「親父、今いい?」
入れと言われたから襖を開け襖を閉めた後、正座をし親父に告ぐ。
「親父、組として動きたい。だから中退してもいいか?」
「靴職人を諦めると言うことか?」
「諦めるつもりはない。ただ陽羽と俺を引いた奴、行方不明になってんだろ?そいつが見つかるまで組として動きたいんだ」
そんな理由でやらせる気はないのは承知の上で、親父の言葉がどんな回答であれ俺は受けるつもりだ。そしたら意外な回答が返ってくる。
「よかろう。犯人が見つかるまで組として動け。ただし、陽羽ちゃんには絶対に会うなよ」
「わかってる。ありがとう、親父」
そこからは高校を中退し最初は玲の舎弟として動きながらも、俺たちを引いた奴の情報は見つからなかった。本当に見つかるのか不明であったとしても、組の仕事をしている時に偶然と陽羽を見かける。
その顔は今でも忘れたくても忘れられない絶望の顔で、そして陽羽が障がい者になっちまったこと。声を掛けたくても接触は禁じられていたから、声をかけずにその場を去る。
去った瞬間に俺は耐えきれなくて、その場で立ち崩し泣き叫んだ。すれ違いの人は驚いていたとしても、俺は陽羽の人生を奪っちまったんだという思いが出ちまった。
将来は警察官になる夢も叶わない。陽羽、ごめん、ごめんと頭を地面に突っ伏していたら、陽空の声が聞こえ顔を上げる。
「陽空…」
「夕哉が中退したって透から聞いてたけど何してんの?組長の息子だから組に入ったわけ?」
「なんで知ってんだよ」
「噂で情報をかき集めてた。あたしも警察官になる夢があるから。それに言っておくけど、陽羽は夕哉の家柄知っていながら、遊んでたんだよ。お父さんに注意されても、陽羽は諦めなかった。そんなにへこたれないでよ」
陽空に言われまさかと陽空を置いて、俺は真っ先に家へと戻った。夕坊おかえりと組員に言われながら、親父が使っている部屋の襖を強引に開ける。
「なんだ?」
「陽羽が随分前から俺の家柄知ってた。なんで陽羽と接触許可してくれたんだよ!知られたら会うのはやめろって言ってたじゃねえか!」
怒り混じりで親父に伝えると、親父は新聞を畳みこちらを向いてあることを言われた。
「陽羽ちゃんは朝峰家の子ではないことを凛太郎から聞いた。いずれ陽羽ちゃんは裏社会の人間になる。そうならないためにも、夕哉覚悟はできているな?」
「陽羽が朝峰家の子じゃないって、だとしたら裏社会の有名な一家?」
親父は深く頷き最近玲が教えてくれていた一家。星霜家は裏社会では有名な一家で、陽羽は暗殺一家の娘ってことになる。そこでふと思い出したことがあった。
春陽が以前とった行動は確かに動きが素早く、犯人を痛めつけていたこと。才能が確かにあったし、もし星霜家でしっかり教育を受けていたら、裏社会で名が出てもおかしくはなかったのかもしれない。
紗良が春陽に出会わせてくれたおかげで、今があるんだ。
「翠、俺たちと一緒にしなを止めて、紗良を取り戻そう」
「それはできないよ、夕哉。春陽は返してもらう」
懲りない翠であって、気絶させる方法でやるしかないか。そう考えていた矢先のことだ。春陽の手が離れ春陽のほうを向いたら、そこに雷斗の姿がある。
油断していたと雷斗に春陽を奪われ、それを知った真昼がこっちに来ようとした時。
「真昼!来るな!」
真昼の背後に大人しくしていた猛獣たちが真昼に襲い掛かろうとしている。春陽は雷斗によって気を失っているし、俺の足だと間に合わない。
真昼が猛獣に襲われそうになった瞬間、何もしていないというのに、猛獣たちが一斉に倒れ出した。
俺たちが来た方角から来たのは、透と玲、それから豹馬がやって来た。ただ猛獣に気を取られすぎたことで翠たちはこのフロアにいない。
「夕坊、真昼、無事か?」
「なんとか。それより早く春陽を取り返さないとならない」
「その前に疾太をなんとかしなきゃ」
それなら任せてと夕佑は疾太に近づき、何をする気だと思いきや普通に装置を外した。装置が外れたことによって疾太は倒れそうになり、夕佑が支える。
「疾太は大丈夫なのか?」
「大丈夫とは言えない。豹馬、疾太が起きたら事情を説明して、外に避難」
「わしもしなのところに」
「豹馬は豹馬にしかできないことがある。それがなんなのか一番にわかってるはずだよ。頼むよ」
豹馬の肩を叩き、行こっかと俺たちを誘って俺たちはしながいる場所へと案内してもらうことに。
◇
春陽を担いでいる雷斗の背後を歩きながら、雷斗はこれでよかったのか疑問に抱いていた。しながいるフロアへと到着し、そこには傷を負っている夕哉の父親がいる。
おそらく夕哉の父親はしなの存在に気づいたのだろう。なぜNoveの首謀者がしななのかを。
しなは僕たちが戻って来たことで、雷斗の近くにより、春陽に触れる。
「あたしのおもちゃ回収してくれてありがとう。あのままだったら、春陽が従わなくなっちゃう。それでおじさん、答えは出せた?」
「断るに決まっている」
「あっそ。なら仕方ないか。雷斗、翠に春陽を預けて、おじさんの後始末よろしく」
春陽を僕に預けて雷斗は実の叔父を始末することとなり、僕はそのまましなと一緒にこの島を出ることになった。




