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126羽

 翠は困惑しているような瞳で私を見ていて、紗良を危険に晒してしまった時はひやひやしてしまった。猛獣たちが夕哉さんや真昼くんに噛みつこうとしているから、止まれと指示を出してあげる。それによって猛獣たちはピタッと止まり、伏せてもらうようにした。

 疾ちゃんはしなさんによって支配されちゃってるから、止めることは難しくとも効果はもうすぐ切れるはず。夕哉さんは無事かと私の近くに来てくれて、平気と答えた。


「こうなることになるのは随分前から知ってたよ。時期に警察がここに到着する。孤島だから逃げるにも時間がかかるはずだよ」

「なんで…あんなに泣いてたじゃん。あれは嘘だってこと?」

「未成年を救おうとしたのも、お仕置きされるのも計画のうち。そもそもがくをここに来させたのが、Noveの敗北に繋がってたんだよ」


 翠は頭を悩ませていて夕哉さんもはてなマークを出すかのように考え込む。鶴の恩返しというメールが届いていた頃、最初は迷惑メールかと思ったけれど、実際は違った。鶴は恩を返しに君の前に現れよう。

 その意味が一体なんなのか知りたかった時は、がくは刑務所に入って聞くに聞けなかった。


 しばらくして守城大学に通い始めた頃、正門でうろうろしている人がいて通報されてもおかしくないがくが私と目が合う。私はスルーして帰ろうと思ったら待ちたまえと腕を掴まれた。

 知らない女の子だったら必ず通報されそうと軽蔑していたら、すまないとすぐ手を離してくれる。


「私に何かようですか?」

「陽羽、少し話せないだろうか?大事な話なんだ」

 

 またなにか姉のことについて聞いてきたらすぐ通報しようと思い、少しだけですよと言って近くにあった公園で話すことになった。別々のベンチに座り、がくに聞かれる。


「記憶は戻っているのだよな?」


 よりによってがくに気づかれていただなんて思いもしなくて、そんなに私は気づかれやすいタイプなのかと思ってしまうほどだ。


「記憶って?」


 誤魔化してみるもやはりかと口にしたことで、がくはそのまま話を続ける。


「守城学園は危険だ。今すぐ海星学園に避難したほうがいい。奴が動き出す。私は奴の犬だったようなものなのだよ…」

「忠告、ありがとう。覚悟はしてるつもりだよ。がくはその人の元へ帰るの?」

「わからぬ。ただもしかすると陽羽を従えるようにしろと命令が下されるかもしれん。だから私は色々と準備をしていたのだよ。以前、鶴の恩返しというメールを見ただろうか?」


 見たよと楽しく遊んでいる子どもたちの様子を見ながら伝えると、がくはあることを言った。


「陽羽がどこまで把握できているかは読めぬが、私はその組織を潰すために一部の人間のみ送らせてもらった。鶴は恩を返しに君の前に現れよう。その意味はこれから起きる組織に必ず捕まるが、私が必ず君を救うと。罪滅ぼしのようなものだ」


 少し笑って言うがくはなぜか死ぬ覚悟を持った表情だった。死んで償ってほしくない。ちゃんと生きて償ってほしいよと言いたかった。けれどがくはすでに覚悟を固めているように見える。


「その鍵を握っているのは、Wizuteriaの藤太郎。そいつのファンならば、大丈夫だろう」

「どう言うこと?」

「いずれわかるさ。ネタバレしてはどこかで聞いているだろう組織に気づかれてしまうからな。陽羽がピンチな時こそ、私が守る」

「お姉ちゃんには酷いことしたのに?」


 疑いの目をしてがくをみるとそれはあれだと誤魔化しながら苦笑いしていた。本当に信じちゃっていいのかわからずとも、少しだけがくを信じてあげようと決める。


「わかったよ。信じてあげる代わりに、変なことお姉ちゃんにまたしたら、夕哉さんか透に言いつけるからね」

「承知した。そろそろ行かねば奴に気づかれるかもしれん。陽羽、ではな」


 がくは立ち上がり公園を出て行って、私は家へと帰った。


 この島に連行されて部屋に閉じ込められた時に見つけたメモに私はここまで計画を実行することに。一つ目は未成年を逃がせという最初のメモで、未成年がどこで作業しているかも記されていたから、そっと部屋を抜けて未成年を探しに向かった。

 自分一人でやれるか不安が大きかったけれど、メモはがくの文字だったから、絶対にどこかにがくがいるのだと理解する。


 見つけたと掃除をしている未成年たちがいてそこには監視役がいなかったから、逃げようと誘う。


「ここから逃げよう」


 言ってみるも未成年たちは帰る場所なんてないよと私に言い、掃除を再開してしまった。それでも私はここにいるのは間違っていると思い、掃除道具を奪い取る。


「大丈夫、私を信じて」


 掃除道具をとった子に紙屑を渡していると、おいっと気づかれ一緒に逃げてもらった。けれど結局捕まってしまっても、紙屑を渡した子たちは時を待つのを待ってもらうことに。

 それがうまく広まってほしいけれど、私の部屋を掃除してくれる子に相談を受けた。


「本当に助かるんだよね?」

「後もう少しの辛抱だから、一緒に乗り越えよう」

「あの…まだ他に伝えられない子たちがいるの。その子たちはとある実験室にいて関係者以外入れない。どうしたらいい?」


 予想外なことで私はがくの計画に載ってるだけ。それにメモには実験室にもいるとは書かれていなかった。がくは知らない場所にいるのかもしれない。ふと気になっていてその子に聞いてみる。


「夕佑さんはその中に入れる?」

「幹部の人逆らったらお仕置きされちゃう…」

「大丈夫。実験室にいる子たちも救うから、まだ伝えられていない子たちに伝えて」


 その子は少々不安を抱いているも、お願いと言われてその子が掃除を終えた後、夕佑さんが部屋に来るのを待つことに。夕佑さんはなんというかNoveの幹部であっても、別の意味でいるのは感じてた。だからきっと協力してくれるんじゃないかな。

 けれどあれ以来、夕佑さんとなかなか会えず会えるのは翠のみだった。翠に怪しまれずやるとしても、この施設にはあちこちに防犯カメラが存在する。それに島から出るにしても船の調達が必要になってくるわけで、少しずつNoveの人たちが反乱を起こすタイミングを狙うしかなかった。


 少しして新しいメモがベッドの後ろに貼られてあり、確認してみると食事を抜くよう指示をもらった。翠になんて言われようとも歯向かい、食事を摂らずそして体に異変が起きる。

 そこで理解したことで料理に何かが盛られていたことで、体調が優れなかった。どうしたら治るのか。一体何を料理に入れたのだろうかと。


 真夜中、激しい頭痛に襲われ目を瞑っていたとしても、寝付けず苦しんでいた時に夕佑さんがそっと部屋の中へと入って、私が寝ているベッド付近に寄る。


「夕…佑さん」

「食事は摂ってない?」


 小さく頷き夕佑さんの手がおでこに触れ、熱がどれくらいあるのか確認しているようだ。夕佑さんはこっそり持って来たらしいお粥を私にくれる。


「僕が作ったお粥。一人で食べられそう?」


 再び頷き夕佑さんに起こしてもらいながら、それをゆっくりと食べている間、誰も来ないか廊下の様子を見てくれていた。食べ終えた私を見て、夕佑さんに言われる。


「実験が行われている薬と全く同じものを料理に入っていたことがわかった。その薬が切れるのは二、三週間程度だがきっとそれ以上の量が入ってるかもしれない。とにかく僕が出すもの以外は口に入れないほうがいい」

「わかりました…。夕佑さん、あの」

「大丈夫。すぐ夕哉たちが来れるよう伝えてあるし、透が一足に来てくれる」


 透がと思っていても、透が来てくれるなら少し安心かもしれないと思い、そのまま私は睡魔に襲われた。夕佑さんが作る料理を少しずつ食べて行き、昼間は病人風に寝込む振りをする日々。

 時々、しなさんに怒られたり罰を受けたとしても耐え続け、そして夕哉さんたちがこっちに来ると夕佑さんに教えてもらった。いよいよかと私はその頃、しなさんと翠に支配されていたから不安が大きかった。もし、藤ちゃんの声が聞こえなくなってしまったら、私はどれだけの人を傷つけてしまうのだろうかと。


 そんな時、部屋に入って来たのはがくで、しなさんに言われて来たのだろうと理解した。


「春陽」

「しなさんに言われて来たの?」

「もちろん。そろそろ従えるようにしろと下されてしまったから、春陽、準備はいいかい?」

「本当に藤ちゃんの声で、正気戻せるんだよね?」


 そのようにしてあると言われ、がくを信じると決めた以上、がくに任せるしかない。後は頼むねとがくに伝え、それ以降の記憶はあまり覚えてない。


 Wizuteriaの曲が流れた瞬間に、私は我に返り状況を読み込んだ。夕哉さんを傷つけるつもりはなかったけれど、翠に怪しまれないよう夕哉さんとやり合う。

 紗良がお兄さんに連れて行かれ、夕哉さんが止めに入ろうとした時、翠の手にナイフがあった。私の大事な人を傷つけさせないために、これ以上翠に罪を重ねないでほしくて私は場に入った。


 翠が持っていたナイフは遠くに飛ばし、翠の手を握ってもうやめようと伝える。


「翠、夕佑さんから全て聞いたよ。翠は好きだった子のために、家族のためにNoveに居座っていたこと」

「春陽には何もわかるわけない!」


 翠は私の手を振り払い腰につけていたらしい銃を構えた。ただ翠の瞳は揺らぎ、私を殺せるはずがない。私を殺せば翠も殺される。それは一番に避けたいし、それに私にとって翠は幼馴染であり、親友であり、そして初恋だった人。

 夕哉さんは私の腕を引き、夕哉さんが目の前へと出た。


「翠、紗良が必死にお前のこと、調べ尽くしたその日、紗良がどんだけ泣いたと思ってんだ?紗良は悔やんでも悔やみ切れねえほど、苦しんだ。翠と春陽が幸せならと、あえて控えめな手紙を送ってさ。幼馴染なのに、翠も春陽もだ」

「私も?」


 そうだよと優しい瞳で言われながら私の手を握り、教えてくれる。


「紗良は二人にとって幼馴染だろ。幼馴染ならさ、遠慮せずに全て喋ってやれよ。こう見えて、紗良は二人のことが大好きなんだからさ。頼ってほしかったと思うぜ。俺は紗良といとこだから、わかっちまうんだ」


 夕哉さんが紗良といとこ関係だったなんて初めて知り、翠は知っていたようだった。けれどなんとなく紗良らしいやり方だなと夕哉さんの手を握り返す。

 夕哉さんと初めて出会ったのは入学して少し経ったある日の出来事がきっかけだった。




 桜が散り終えた時期、車とかではなく姉と電車に乗って登校をしていた。駅に着くと姉の友達、叶恵ちゃんを見つけると姉は叶恵ちゃんと喋りながら先へと行く。私は置いて行かれないように姉の後ろを歩いていた。

 疾ちゃんと千ーちゃんは車で送り迎えをしてもらっていたから、二人はもう来ているかなとかそんなことを考えてた時。後ろから叫び声が聞こえ、私たちは後ろのほうへと向いた。後ろでは悪そうな顔立ちをした人が、高校生を捕まえている。


 周りにいた生徒たちは叫びながら、校門へと入っていくも、私はなぜか校門じゃない方角へと走ってた。姉に呼ばれてもなぜか私は救わなくちゃという一心があり、ジャンプをして悪い人の顔面を潰す。それによって手が離れ捕まった高校生も叫びながら高校へと向かった。


 悪い人は顔を手で覆いながら立ち上がり、私の首を掴まれてしまう。


「小娘の分際で!」


 苦しいと悪い人の手を掴んで、なんとかしなくちゃと足をジタバタさせていたら、再び悪い人の顔面を潰す小学生。その衝動で私は落とされそうなところ片手でキャッチをしてくれたのが高校生の透だった。

 悪い人は完全に気絶をしたらしく、へへっと笑い出し、大丈夫か、一年と言ってくれたのが夕哉さん。


「ありがとう」

「一年もすげえじゃん。他の人たちは逃げてったのに、見捨てず助けに入ったんだもん。なあ、透」

「偉いぞ。ただ、女の子はもうこんなことするんじゃない。危険だと感じたら、校門にいる警備員に助けてもらえ」


 透に注意されても私、こんなことを夕哉さんと透さんに話していた。


「陽羽は将来、警察官になるんだもん!だから見捨てたりしない!」


 ぷうっと頬を膨らませて、透はわかったわかったと笑いながら頭を撫でてくれる。透は私を下ろして警察を呼んでもらい、私と夕哉さんは先に登校することとなった。


「俺は暮地夕哉。よろしくな。さっきはすげえかっこよかったよ。陽羽、なんであんなことできんの?」

「んーわかんない。いつの間にか体が動くの」


 かっけえと夕哉さんは興奮気味の笑顔で、私はその笑顔が好きだった。それから毎日のように一緒に登校して、一緒に下校する日々を送ることに。

 それは次第に話題となっていて、クラスのみんなは私に近づかなくなった。それでも疾ちゃんと千ーちゃんだけは普通に接してくれてたから、変な感じじゃなかった。ただ疾ちゃんに言われる。


「なあ、最近五年一組の男子と連んでるんだろ?」

「夕哉のこと?」

「変なことされてない?大丈夫?あいつさ、こう見えて」


 疾ちゃんが言おうとしたら夕哉さんが教室に来て、ちょっと疾太借りるなと言われて去っていく。何を言いたかったんだろうときょとんしてしまうも、千ーちゃんと楽しくお喋りをしていった。

 二人がいない時、廊下を歩いていたら、あの子だよとヒソヒソと話題となっていて、あれが夕哉の女かとか、手出したら殺されそうだから近寄らないでおこうとか。そんな噂が広まっていた。なぜかその噂を聞きたくなくて、私は小学校を飛び出し高等学校へと入ってしまう。


 いつも夕哉さんと一緒にいた透に会いたくて、誰に聞けばいいのかおろおろしてたら、どうしたと透が駆けつけてくれた。つい私は透に飛びつく。


「どうした、陽羽。迷子になっちまったか?」


 ううんと首を横に振りそのまま私は透に抱っこされ、透の友達にちょっと送ってくるわとそのまま小学校へと戻ることに。


「友達に何か言われた?」

「夕哉の陰口が…」

「そっかそっか。まあ夕哉はそういう家柄だから慣れてる。だから気にすんな」

「陽羽は夕哉の悪口聞きたくないもん。どうしたらなくなるのかな」


 そうだなと透は言いながら、小学校の門が見えて来て警備員に生徒手帳を見せて入っていく。またひそひそと話している生徒がいて、つい透の服を掴んでしまった。

 大丈夫と透が笑顔を見せてくれて、職員室へと入って行き、私は担当の先生のもとへ降ろされる。けれど私は透から離れないことで、透はしゃがんでこう言った。


「みんなのひそひそが消えなくても気にしないことだ。陽羽は夕哉のこと好きなら、夕哉とそばにいればいいんだよ。それでもやだなって思った時は、俺のところに来てもいいし、直接夕哉のところに行けばいい」

「うん…」

「夕哉だってそれを望んでると思うぞ。ほら、噂をすれば」


 透が見ている方角に目をやると夕哉さんがいて、俺のことでごめんなと謝ってくる。ぶんぶんと横に振り、夕哉は悪くないって伝えた。


「夕哉は悪くないよ」

「ありがとう、陽羽。先生、変な噂立ててしまってごめんなさい。てか透、なんでいんの?」


 夕哉さんは透に送ってもらったことを知らず、透はふざけて遊びに来ちゃったと言う。本当かと疑いの目をしていて冗談だよと突っ込みを入れながら、透は先生にお辞儀をした後、高等学校へと戻って行った。

 その日の夕方、ひそひそは消えなかったけれど、透の言葉で気にせず下校をしていたら、私の名を呼ぶ夕哉さんで後ろを振り向く。


「一緒に帰ろう。クラスとどう?やっぱり変わんない感じ?」

「うん。あっでも疾ちゃんと千ーちゃんがいてくれるからそんなに気にしないかな」


 ほっと胸を撫で下ろす夕哉さんであり、疾ちゃんが以前言いかけていたことを聞き出そうと思った。


「夕哉、この前疾ちゃんが言ってたことってなあに?」

「ん?あー俺の家柄だよ。俺さ、親同士が仲良くて疾太とよく遊ぶんだ。だから疾太は親父がやってる職業を言いたかったんだと思うよ」

「どんなお仕事?」

「えっとーそれは、警察ができないことを引き受けるお仕事、かな」


 そんなお仕事ないよと言っても、夕哉さんは誤魔化してたから、余計に気になってしまう。紗良のように尾行してみるも、すぐ夕哉さんや透はいなくなってしまった。

 どこ行ったんだろうときょろきょろしていたら、ごついおじさんたちに絡まれてしまう。


「おい、お嬢ちゃん。迷子か?」

「迷子じゃないです。お友達を探してます」

「どんなお友達だ?おじさんたちが一緒に探してやるよ。ほら、行こうか」


 おじさんたちが私を掴もうとしたら、知らないお兄ちゃんが私を助けてくれる。しっ失礼しましたとごついおじさんたちはお辞儀をして去って行った。


「ったく。お嬢を怖がらせるなってあれほど言ってんだけどな。お嬢ちゃん、怪我はない?」

「はい」

「それはよかったよ。ここは物騒な輩が多く歩いてるから、一人で来るのはおすすめはしない。駅まで自分が送っててあげる」

「あの、お友達を探してて。この子知りませんか?」


 似顔絵で描いたやつを見せ、一度笑われてしまったけれど、探すのに難しい子だなとその人は言う。やっぱり駄目だったと落ち込んでいたら、目の前に透と夕哉さんがいてなぜか二人は怖い顔をしていた。

 その人は私が探している子だと認識してくれたのか、しゃがんでまたなと私の頭を撫でて去っていく。


「陽羽、なんでこの町にいるんだよ。家こっちじゃないだろ?」

「えっと…夕哉のお家探してて迷子になっちゃったら、あのお兄ちゃんが助けてくれた」

「助けてくれた?え?何があった?」

「ごついおじさんたちに囲まれて、夕哉を探してあげるって言われたの」


 二人は一度背を向けて二人で喋るから、入れてとぴょんぴょん跳ねてたら、二人が振り向いて夕哉さんが言う。


「ひとまず、俺ん家、行こっか。後でご両親に迎えに来るよう伝えるから」


 いいのとわくわくしながら、透が車を手配し、それに乗って夕哉の家にお邪魔することになった。


 夕哉の家に到着して大きい家、大きいお庭とはしゃぎながら、疾ちゃんと同じレベルの人だったんだと目を輝かせていた。俺の部屋こっちだよと教えてもらい、夕哉さんの部屋へとお邪魔する。

 そこにはいろんな靴の雑誌があって、棚に置かれてある一足を手にした。


「靴好きなの?」

「うん!いつか靴職人になりたくて、まずは自分のコレクションを集めてんだ。まあ俺はまだ子供だからキッズサイズのしか履けないけど、大きくなったら好きな靴いっぱい作りたい。もし靴職人になれたら、一番最初に作ってあげる」

「嬉しい、夕哉。私は将来、警察官になるけど、お休みの日、夕哉のお店に行っていっぱい買いにくるね」


 私と夕哉さんは約束と指切りげんまんをして、夕哉さんのコレクションを聞いたり、透を混ぜて遊んだりしていたら、えっお母さん、夕哉が女の子連れてると叫びながら行ってしまったのは夕莉さん。


「姉貴に言っておくの忘れてた。完全に俺の」

「ちゃんと姐さんにはっ」

「お姉ちゃん?」


 ぐはっと一発お腹に攻撃をした夕哉で、母さんのことなと訂正をしていた。


「お袋に言ってあるなら大丈夫だろ。ここで親父が帰って来たら俺、やべえかも。早く陽羽のご両親来てくれないかな」

「そんなにお父さん怖いの?」

「そりゃあ鬼のような人だからな」


 夕哉さんと透は苦笑いしていて、どんな人なんだろうと思いながらも、遊んでいたら襖が開く。夕哉さんと透は青ざめていき袴を着たおじさんがお父さんなのだろうと理解した。

 二人を叱らないでほしいという思いで、正座をし頭を下げて伝える。


「朝峰陽羽と申します!ごめんなさい!私が夕哉のお家に行きたいとわがまま言いました!夕哉と透を叱らないでください!」


 怒鳴られる覚悟だったけれど、しんと静まり返ってやっぱり怒ってると思っていたら、夕哉さんのお父さんは大爆笑をしていた。怒られないと顔を上げたら、いいんだよ、陽羽ちゃんと呼ばれる。


「馬鹿息子から聞いていたから、怒るつもりはない。ただ一つだけ約束してくれるか?」

「はい!」

「駅降りた時、おっかない人たち多かっただろう?この街に来るときは必ず夕哉と透に連れてってもらいなさい」

「気をつけます」


 それならいいと夕哉のお父さんは再び笑いながらどこかへと行かれてしまった。


 遊び疲れた私はいつの間にかお父さんの車の中で眠っていて、お父さんは少し怒っているような表情。


「お父さん…ごめんなさい」

「夕哉くんの家柄を知っていながら、夕哉くんと遊んでたのか?」

「お父さんもやっぱり反対するの?家柄はそうかもしれないけど、夕哉の将来は靴職人って言ってたし、怖くなんてないよ」


 お父さんは難しそうな表情のまま、もうすぐ家に着きそうでこの話はまた後でになりそう。


 車庫に入り車から降りようとしたら、陽羽、待ちなさいと言われる。


「陽羽のお友達だから、あまりお友達と離れさせたくはない。だがこれだけは守ってくれ」

「なあに?」

「夕哉くんが仮に家柄を継ぐと決まったのなら、夕哉くんとは関わらないでほしい。陽羽に万が一のことがあったら、お父さんとお母さん、それにお姉ちゃんだって悲しむ。約束、守れるね?」

「約束、守るよ。だって私は将来警察官となってお父さんとお仕事したいし、夕哉が悪いことしたら、夕哉を止められるのは私だけだと思うもん」


 お父さんは少し笑ってため息を出しているも、そうだなとお父さんは言い、ただいまーと家の中へと入った。

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