表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/134

124羽

 俺と真昼は翠がいるであろう場所へと向かっていた。時々、Noveの連中が現れようとも殴って、蹴飛ばして、組員が止めてくれたりと先へと進んでいる。

 春陽、待ってろよと心の中で伝え進んで行くと、真昼に服を引っ張られ足を止めた。そこに出て来たのは猛獣たちで近くにTamerがいるんだろう。こんなところで足止めされたくねえんだよと怒りを放ちながら、貰っていた麻酔銃で撃ってみるも効果はやはりないか。


 真昼に合図を送り近くにいたであろうTamerを撃ってみる。俺のはハズレだったようだが真昼のは命中したようで悲鳴が上がった瞬間に猛獣たちは悲鳴が上がったほうへと向かった。

 やはり連携されていたことによって、猛獣はその悲鳴のほうへと向かったんだ。お気の毒にと俺たちはその先へと急ぐ。


 進んでいくと壁紙が緑へと変わっていて、徐々に近づいていると認識した。フロアらしきところへ到着し向こう側から歩いてくる人物。

 それは緑のドレスを着飾った春陽だとしても、様子がおかしい。ここで翠が登場するとは思っていたが春陽だけが来るだなんて予想外だった。


「紗良、下がってろ」


 一緒に来ていた紗良は春陽の姿を見て、怒りを持っていたとしても二人とも気をつけてと下がってもらう。翠はどこからやって来ると警戒しながら、春陽に近づこうとした時だ。


 あっぶねえと冷や汗をかきながら、俺に襲いかかって来たのは春陽自身だ。頭にはティアラのように装飾されてあっても、よくよく見たら装置だ。つまり翠かもしくはしなが春陽を操作しているということ。

 くだらねえことに春陽を使うんじゃねえよと言いたくとも、春陽はいとも簡単に俺を傷つける。春陽は自我を失っていたとしても、目からは涙をこぼしていた。うん、うん、俺と真昼が来たから大丈夫と頷いてあげながら必死に春陽を止めに入る。

 幸い、ここには猛獣がいなくてよかったよと安堵を感じつつ、Wizuteriaの曲をどのタイミングで流すかが重要となるな。


 真昼は少し躊躇しながらも、春陽からくる攻撃を交わしていく。てっきり透がいるんじゃないかと思っていたが違う場所にいるんだろうと思いたい。仮に春陽を操作しているのが透だったら、俺は確実に透をやりかねそうだ。

 なんとかしてティアラを外すことさえできればいいが、春陽が止まってくれないとそれ以上の怪我を負うことになるかもしれない。


「夕哉」

「ん?」

「透先生じゃ…ないよね?」

「どういうことだよ」


 真昼は春陽の行動を見て何か違和感を感じたんだろう。春陽は俺たちが止まっていることで静止している。


「僕も状況が読めてない部分がある。けど春陽ちゃん泣いてたでしょ?その理由ってさ、春陽ちゃんにとって大事な人に操られている可能性が高いか、それとも透先生に何かが起きたかの二択だと思う」

 

 真昼がそこまで読み取っていたとは俺はただ春陽を止めなくちゃとそこしか思いついていなかった。確かに春陽は操られていながらも、涙を流すわけ。春陽にとって身近な人が危険な状態だとしたら…。

 それぞれ思考を膨らませていると向こう側の通路から、拍手をしながら入ってくる奴がいる。その人物は翠でおいで春陽と囁くと、春陽は翠の元へと行ってしまった。


「意外と早い到着だね、夕哉、真昼」

「翠、てめえ春陽に何をした!」

「二人の墓場はここに決まってんだよ。春陽に殺されて死にゆく様を見届けようって思ってさ。追加でもう一人いること、忘れないでくれない」


 指を鳴らすと春陽と同様な装置をつけられてしまったらしい疾太がいた。疾太も戦力はないがつけられたことによって、馬鹿力で殴られる羽目となる。


 痛えなと体勢を立て直して、真昼は疾太を止めてくれるらしく、ならと翠と春陽のほうへと向いた。春陽を傷つけず救う方法といったらやはり装置を外すしかないと動こうとしたら、春陽が悲鳴を上げる。

 これはさすがにきついと耳を塞ぎ、悲鳴が終わったかと思いきや、通路から猛獣が出現した。


 やればできるじゃんと褒めている翠が春陽に触れていて、翠に向かって殴り飛ばそうとしたが猛獣が止めに入ってくる。それを見た翠は勝利が目の前にあるかのように高笑いした。

 紗良はなんとか翠に感知されていなくてよかったよとこちらも笑う。俺と真昼が笑ったことで、翠は苛立ちを出し背後にいる紗良に気づかないとはな。


 紗良は思いっきり翠を突き飛ばし、春陽がつけている装置を外した瞬間のことだ。そこに仕掛けがあったらしく紗良が倒れ込んでしまう。


「紗良!」

「ったく、こんなところにいるからバチが当たったんだよ」

「翠っ!」

「こりゃあもうすぐ死ぬな。毒が回り始めてる。よかったね、大好きなお父さんのところへと行けるよ」


 くそっと猛獣を追い払い、近くに寄りたくても翠は幼馴染だっつうのに、紗良を蹴り飛ばして猛獣の中心へと入っちまった。夜一がここにいたらマジでどうなっていたかと一瞬頭によぎっても、シルバーウルフが連れているハスキーたちが猛獣を噛み付いてくれている。

 紗良、紗良しっかりしろと気を失っている紗良を揺さぶっても反応がない。やっぱり連れてくるべきじゃなかったと叫び出し、翠をぶん殴るしかないと紗良を寝かせ俺は暴走した。



 うまく行けると思ってたけど予想外なことが起きて、見たことがなかった夕哉の暴走が始まった。紗良ちゃんをあそこに置いていたら、いつ餌食にされるかわからない。とにかく疾太がつけている装置も外せば紗良ちゃんのようになると理解した。

 春陽ちゃんは猛獣に指示を出して僕ではなく夕哉のみ攻撃するようにしている。


 透先生は一体どこにいるのと疾太が持つナイフでやられないよう、なんとかしなければならない。疾太はずっと春陽ちゃんが好きで僕のライバルだった。結局、僕と疾太は春陽ちゃんの恋にあの時からわかっていたとしても、諦められなかったな。

 まあ疾太の場合は、春陽ちゃんをいじめてたから、バチが当たったというべきかはここでは判断しにくいところ。雪叔父さんがこっち側だったら、どれぐらい心強かったかと思っちゃう。それでも僕のために春陽ちゃんと出会わせてくれたこの恩は忘れはしないよ。


 疾太、目を覚まして一緒に春陽ちゃんを救おうよと、強い思いを持ちながら、疾太に挑んでいた。すると千夏ちゃんの声が無線の向こう側で聞こえる。


「千夏ちゃん!?」

『疾太は真実を知っちゃったから、操られてるの』

「どういうこと?」

『疾太のお姉さん、しなさんは氷雨家の人間じゃない。だからだよ。疾太のお姉さんは義理の弟でも手を出す。疾太の両親がお姉さんに会わせていなかったのも、実の姉ではなかったから』


 辻褄が合ったかのように全て理解できてしまった。疾太が生まれたことによって、しなの存在をもみ消したことによって、しなはいまも怒りや憎しみが存在している。

 それに疾太のお父さんはそれでも賢介を実の息子のように育てていたことで、なぜという言葉が復讐へと切り替わったんだ。


「千夏ちゃん、ありがとう。そこってもしかして夜一がいる場所?」

『先輩正解。署に連行されてたけど、力になれるかもしれないからって来たわけ。一応、夕哉のおっさんと烏丸がそっちに行ってくれてるから持ち堪えて。できれば紗良先輩を避難させてくれると助かる』

「わかった。疾太につけられている装置解除頼むよ」


 任せろと夜一が言ってくれたことで、ハッキングしてもらいつつ、疾太を避けながら紗良ちゃんを抱っこして避難する。夕哉、紗良ちゃんも防弾チョッキ着てること忘れてそうだけど弾じゃなく毒針だから大丈夫か心配だ。

 端っこに避難させておき、さてと疾太の相手に戻ろうとしたら、待ってと小声で言う紗良ちゃん。近くにより紗良ちゃんが伝えたいことを聞く。


「翠を説得したい」

「身体、大丈夫?」

「肌に触れてる感覚はあるけど、刺さってないから大丈夫だと思う。素手で抜かないほうがいいよね?」


 針全体に毒があるのならば素手で抜かないほうがいいかもしれない。確かポケットにと探っていると見つけてハンカチで毒針をとった。


「ありがとう、真昼くん」


 紗良ちゃんの声が聞こえたことで夜一は安心を持ち、ハッキングに集中してくれているようだ。


「あれは罠だとしたら春陽を救うのはやっぱり」

「おそらくWizuteriaの曲を流せば変わるかもしれない。それより夕哉はほっといて平気?」

「あれはさすがにあたしも無理。叔父さんかそれとも玲が来なきゃ夕哉の暴走は誰にも止められないよ。翠も夕哉に夢中になってくれるから、また忍び足で近づいてみる」


 気をつけてと紗良ちゃんに伝え、俺は疾太に集中させてもらうことにした。



 さっきは油断して毒針が刺さりそうになったけれど、この防弾チョッキのおかげでなんとか助かった。これで防弾チョッキ着てなかったら、毒針が刺さって毒死になってたかもしれない。

 翠がNoveにいる理由、おかんと色々調べてわかったよ。翠が犯罪に手を染めているのかも。全てはNoveへの復讐だとしてもNoveに居続けて来たのはこの日を待っていたからなんだよね。


 翠が小学生の時、クラスメイトの女の子と仲が良かったのにある病で命を落とした。その病は稀血ラロウエの血がなければ生きられない病。翠はそこで春陽が稀血ラロウエの血があることを知ってNoveに貢献して治療費を稼いでた。

 されどクラスメイトの女の子は中学になる前に死亡してしまい、組織を抜けることもできなくなって今に至ってるんだよね。それから翠の両親が死亡した理由も、やっとわかったよ。両親は潜入でNoveへと入っていて、そこでとある実験の被験体にさせられ、死亡してしまったこと。


 翠はその時から辛かったはずなのに、手紙にはそんなこと書かれていなくて、翠はあっちで幸せに暮らしてるんだって思っていたあたしが馬鹿だったよ。休みくらい会いに行ってあげていたら、翠は変わっていたのかな。

 ううん、あたしは翠と春陽を避けて逃げ出してた。二人の恋を邪魔しちゃいけないと思って、二人の幸せを望んでいたから、あまり深く考えないように暮らしていた。幼馴染なのに、親友なのに、二人が抱えていることを、ちゃんと向き合おうとしなかった。


 翠の背後へと入り今度こそと翠に触れようとした時だった。あたしの前に現れたのは海外にいるはずの兄、雷斗がいる。


「にいに…なんで…」

「組長、殺し終えた?」

「いや、組長はしながご指名したから今頃、しなによって殺されてるんじゃない?紗良には僕のこと知られたくはなかった」


 そこであたしは考えたくもない答えが浮かんでしまった。おとんを殺したのはにいにだってこと。


「おとんを殺したの、にいになの?」


 にいにの口から聞きたくはないけど、おとんを殺した犯人は捕まってはいないから不思議に思ってた。警察内部の誰かなんじゃないかってずっと考えてたよ。よりによって息子に殺されるだなんて、おとんはどんな気持ちだったんだろうか。

 涙を必死に堪えながら黙っているにいにに、なんとか言ってよと叫ぶ。するとにいには拳銃をあたしに向けてこう言われた。


「もちろん。僕が殺したよ。だってしなの悪いこと全部公にするって言うからさ、殺してあげた。しなは僕にとって女神のような存在。しながいなくなれば僕はきっと自殺すると思う」

「そんな理由でおとんを殺すだなんて!」

「そんな理由って紗良もしなが悪いって言いたい?なら妹も殺さないと」


 引き金を引きたとえ妹であっても、平気で殺せるにいにが悲しく思えた。銃声の音が一発あったとしても、あたしは無傷でそれを止めたのは夕哉。

「俺の大事な妹に手出すんじゃねえよ!まさか紗良の親父さんを殺したの雷斗だなんて信じたくはなかった!悪い、紗良。佐田さんから実は随分前に情報もらってたんだわ。紗良の親父さんを殺したのは実の息子だって。紗良はさ、雷斗のことすげえ好きだったから、言えなかった。お袋さんはすでに知ってる」


 ポタッと雫が垂れ、あたしがおとんの死因について調べていた時、おかんに言われてたことがあった。


「紗良、もうお父さんのこと調べなくていい」

「なんでよ。おとんを殺した犯人はまだ捕まってないんだよ。早く見つけて罪を償ってもらわなくちゃ」


 もういいのとおかんはあたしを抱きしめて、ごめんねとなぜかあたしに謝りながら泣いていた。これ以上、調べていたらおかんを苦しめるだけなのかもしれないと、おとんの死因について調べるのをやめたっけ。

 おかんはその日に真実を聞かされていたんだと知り、にいにがNoveの一員で警察内部にもNoveの連中がいるから探ることも不可能だってことを。


 にいには普通に打ってきて夕哉は拳を作ってにいにを止め始めた。


「僕から教えたほうが刺激強かったかな。なんてね。春陽、ご主人様のところへ戻ろう」


 翠が手を差し伸べて春陽がその手をとり、さっき来た通路へ戻ろうとしているから、止めに入る。


「行かせない!こんなことしても意味がないくらいわかってるでしょ!春陽を元に戻して!」

「無理だよ。いくら止めに来ようとも春陽は僕のものでもあるし、しなのものでもあるから」


 ついあたしは翠の頬をひっぱ叩き、痛いなと手を当てる翠。春陽は誰のものでもない。そう伝えようとしたらWizuteriaの曲がどこからか聴こえてくる。

 藤太郎たちがやってるんだと曲が流れ始めていくと、春陽が翠の手を離して苦しみ出した。それに気づいた夕哉と真昼くんだとしても、夕哉はにいにと、真昼くんは疾太を止めてる。だからあたしが翠を止めなくちゃならないんだ。


「本当のこと話してよ。本当は辛いんでしょ?春陽が苦しむ姿、一番見たくないのは翠なんじゃないの?」

「辛くなんてない」

「嘘ついてることぐらいわかってんだよ。あたしが探偵をして人の動作や仕草で嘘ついてることぐらい身についてる」


 翠は多少下を向き一人で抱え込まないでと翠の肩に触れようと思ったら、その手を掴んだのは春陽だった。


「春陽?」

「翠はっ」


 春陽が言いかけた時、ブチッと放送が切れたような音がして、女性の声が聞こえる。


『春陽、大事なお友達殺されたくなかったら、やることはただ一つ。ご主人様の指示に従え。じゃなきゃ大事なお友達は餌食になってもらうから。ちゃんと見てるからね』


 春陽に吹き込んだ後ブチッとこのフロアから聞こえなくなり、春陽はあたしの手を離して停止してしまう。翠が指示を与えないと動かないってこと。

 翠は顔を上げて春陽に何かを吹き込み、春陽は夕哉に向かって再び攻撃し始めた。


「翠…」

「僕はもう引き下がることはできない。それに紗良を殺すなって言う条件なんだよ」

「え?さっきはあたしを殺そうとしたじゃない!」

「あれは嘘だよ。毒針じゃなくて麻酔針。紗良は雷斗と春陽によって生かされてる」


 意味がわからないと夕哉とぶつかり合っているにいにを見てしまう。おとんを殺した犯人なのに、妹を守るためって。春陽もなんであたしを守るためにあんなことをしているの。


「とにかくいくら説得しにこようとも、引き下がることはできない。だから紗良、おとなしく寝てて」


 翠がいきなりハグしてきて突き飛ばす前、首に注射針が入って打たれた。これは麻酔とあたしは緑の胸で眠ってしまう。



 紗良と叫ぶ夕哉の声がするも、二人は邪魔をしてくれている春陽たちがいるから近寄ることはできない。紗良を抱っこし雷斗がそれを見て、夕哉の邪魔をすることをやめた。夕哉は雷斗が逃げることを知って止めようとするも、春陽が邪魔をしてくれる。

 雷斗は紗良を抱っこし退室してもらって、春陽と声をかけると僕のところへと戻り、猛獣を夕哉の周りに行かせた。


「紗良に何をしやがった!」

「うるさいからただ眠ってもらっただけだよ。夕哉、今ここで春陽を諦めてくれれば、命だけは助けてやってもいい。あぁそれとも春陽に殺されるほうがまし?」

「ふざけんな。春陽がそんなこと望んでないことぐらい翠だってわかってんだろ」

「春陽は望んでいなくても僕は望むかな。邪魔者がいなくなれば春陽は僕を求めるから」


 夕哉は猛獣たちを振り払い、僕を殴ろうとしても無駄なんだよ。そう思ってた。目の前には指示を出していないのに春陽が夕哉を止めに入る。


「もうっやめてっ」

「春陽、下がっていい」

「嫌だ。翠がこれ以上罪を犯さないで。手に持っているナイフで夕哉さんを刺そうとしてるの見たくない」


 春陽が振り向く姿に隠し持っていたナイフを落としてしまう。春陽はいつ、どこで自分をコントロールしていたのか僕、いやNove全体はまんまと春陽の演技に騙されていた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ