12羽
透の声が聞こえ目を覚ましたら、大きな部屋でみんなが寝ていたり、起きていたりで、清寺さんは周囲を見渡すもいない。
「平気か?」
「うん。清寺さんどこ行っちゃったの?」
「心配すんな。時期に場所はわかるはずだ。とにかく旅館から出ないようにな」
「透は?」
探してくると私の頭を撫でて、透は行ってしまい、真昼くんも連れて行かれちゃったのかな。この部屋を見渡すも、真昼くんの姿もなく、真昼くんもと思ったら、陽羽ちゃんと駆けつけてくれた。
無事でよかったと真昼くんが座った時点でしがみつく。真昼くんまで連れて行かれたら不安が大きすぎた。真昼くんは大丈夫と優しく触れてくれて、状況が掴めるまでここで待機となったらしい。
「いなくなったのはクラスで男女二名ずつだから、十人が行方不明になったぽい」
「クラスの男子は誰がいなくなったの?」
「氷雨グループの一人って透先生が先生同士で話してた。このまま僕たちは東京に戻ることになるかもしれないから、帰る支度は済ませておいたほうがいいのかもね」
「せっかく明日、楽しみにしてたのに…」
事件になってしまった以上、合宿どころではないんだろうな。みんなも明日のために頑張ってたのにと落ち込んでいたら、旅館の人が生徒さん見つかりましたと大きな声が部屋に広がる。
どこにいたんだろうと一緒に行きたくても行けず、少しして透と先生たちが戻って来た。
今日はここで全員寝るようにと指示を受け、時計をみると深夜の一時だと知り、そのまま私は寝ることになり、真昼くんは男子がいる布団へと行く。
また明日と手を振りながら、布団をかけ直して就寝した。
受験合宿四日
スマホを返してもらい、行方不明になっていた清寺さんたちは念の為、病院に搬送されたらしく、リフレッシュは一緒に行けなかった。
あんなことがあったのに、即帰宅ではなく、少し気分展開してから帰らせてくれるとは思わなかったな。
西伊豆コースを選んだ私たちは堂ヶ島洞窟ツアーの船に乗り、海を眺めていた。清寺さんも楽しみにしてたから、たくさん写真撮ろうと決めている。
海の景色を見ていたら、隣に氷雨くんが来て、何も喋らず一緒に海を見ていた。そしたら氷雨くんがポケットから飴を取り出し、やるよと言われそれをもらう。
「まだ気分は乗れないけど、清寺たちが無事でよかったな」
「うん。詳細は教えてくれないけど、何もされてなくてよかった。氷雨くん、少し気になってたんだけど、合宿に来てからいつもの氷雨くんじゃないから、少し驚いてるの」
「それは、あれだ、あれ」
氷雨くんはほっぺを赤くし、照れくさそうな表情をしていて、なんだろときょとんとしてしまった。段々と恥ずかしくなったらしい氷雨くんは、徐々に私から離れて行き、なんでもないと言いながら走って行っちゃう。
どうしたんだろうと思いながらも、ツアーのガイドさんがイルカがいますよと言われ、そっち方面へと向かった。
イルカの親子が泳いでいて、私はパシャリと撮り、写真を確認してたら、氷雨くんグループの女子たちが絡んでくる。
「ねえ朝峰さーん、一つ頼んでほしいことがあるんだけど」
「誰にも知られたくないから、あっちで話そう」
何と思いながらも、氷雨くんグループの女子たちの一人に手を引っ張られて、誰も来なさそうなところへと行った。そしたらいきなり、ひっぱ叩かれて、お前鬱陶しいんだよと言われてしまう。
「最近、疾太と馴れ馴れしいんだよ。何同じブレスレットつけてるわけ?外せ」
「…嫌です」
外せって言ってんだよと三人がかりでブレスレットを外そうとしていて、外されないように左手を掴んだ。それでも強引に離されてしまい、ブレスレットを取られ、女子のリーダーはそのブレスレットを海に投げた。
これ以上、疾太に近づくなと言われ三人は氷雨くんを探しに向かう。
透から貰ったやつなのにと身体を縮こませ、顔を伏せながら啜り泣いた。なんでこうなるのと涙を流していたら、朝峰と駆け寄ってくれる、氷雨くん。
焦りを出しながら氷雨くんは私の涙を拭いつつ、ほらっと氷雨くんがつけているブレスレットをはめてくれた。
「後でしっかり叱っとく。悪い。俺がつい、こっちを選んだからあいつらもこっちを選んじまって…」
「ううん。氷雨くんは悪くないっ」
「だけど俺のせいで苦しめてるのは確かだ。この詫びは帰ったらちゃんと返させてくれ」
氷雨くんと話していると、氷雨、お前と透がやって来て、じゃっと氷雨くんは退散していく。透は犬のように威嚇してて、ったくと言いながら、大丈夫かと言われ、私は透の裾を引っ張る。
「氷雨くんグループの女子たちにブレスレット奪われて、海に流されちゃった…。そしたら氷雨くんが来て、氷雨くんのブレスレットをつけてくれたの。このブレスレットの意味って本当は何を示してるの?」
透は周囲に誰もいないか確認をし、私に説明をしてくれた。
「ブレスレットにはGPSが仕組んである。万が一、誘拐されてもそのブレスレットを辿って、探し出せるからな。氷雨も一応、学園長の息子ってことで、渡していただけだ。ただ他のクラスメイトたちには打ち明けるなよ」
「…はい」
透の力を借りながら立ち上がり、みんながいるところへと戻って、景色を撮っていくことに。
堂ヶ島洞窟へと入った瞬間、美しすぎる景色に見惚れながらも写真を撮っていった。真昼くんや清寺さんに後でアルバムにし送ってあげよう。
それとSNSにも行ったこと、帰ったら投稿するとして、景色を見ていくとピコンとスマホが鳴る。誰かと思えばフォロワーされましたという通知が来て、誰だろうと確認してみた。それは夕哉さんのお店のアカウントで、そうだと閃いちゃう。
夕哉さんにもお土産買って行こうと決め、夕哉さんが喜ぶ顔がなぜか浮かび上がる。つい私は夕哉さんにメッセージを送った。夕哉さん、この景色お裾分けです。と送り、絶景の写真を添付する。
するとすぐ既読がついて綺麗なところだなと返信が来て、わっと目を輝かせている可愛らしい熊さんスタンプも来た。
お土産買って行きますねと送ってみたら、びっくりスタンプが来て、待ってるなと返事と嬉しそうな熊さんスタンプ。このスタンプ好きなのかなと長押ししてスタンプ情報を見る。
可愛すぎて熊のスタンプを購入し、また連絡する時に使おうと決めた。
堂ヶ島洞窟を楽しんだ後、船から降りてお土産屋さんへと足を運ぶ。どれがいいかなと色々みて行き、家族の分と紗良に、清寺さん、それから夕哉さんはどんなのが好きなんだろうか。食べ物系か小物系、どうしようと見ていくと、堂ヶ島洞窟のように美しい青色をしたピアスとイヤリングがある。
それを手にし、夕哉さんが喜ぶ顔を想像してみた。つけている夕哉さんの顔、想像するだけで嬉しくなってしまい、つい男性用のピアスを手にする。
そしたら透が近くに寄って来て、誰に渡すんだと怪訝そうに見ていた。
「これは夕哉さんにって思って。夕哉さんに出会ってから、真昼くんや清寺さんたちと仲良くなれたから、そのお礼みたいなものだよ。だから今度連れてって」
「連れてってやるよ。じゃあこれは俺からプレゼントな」
透は女性用のイヤリングを手にし、いいよと言うも、にっと笑って会計に行っちゃう。なんでと思っていても、真昼くんがこのこと知ったら、絶対拗ねちゃうよね。だからえっとと真昼くんとお揃いになりそうなのを探していく。
ピンっと来るものがなく、探し回っていると、大切な人にという文字が見えてそっちに行ってみた。しかし時間がかかるらしくて断念し、違うものをカゴに入れる。会計を済ませ、東伊豆コースに行った班と合流して新幹線に乗った。
真昼くんと隣に座って、お互い写真を見せ合いして、真昼くんが撮った写真はどれも綺麗すぎる。
「真昼くん、写真撮るの上手すぎだよ」
「そうかな。陽羽ちゃんが撮った写真も上手だよ。僕もやっぱりそっちに行けっばよかったかな。そうだった。はい、これ陽羽ちゃんに。たまたまさ、ガラス工房体験させてくれて作った」
真昼くんは私の手のひらに小さなガラスがついているネックレスをくれて、ありがとうと伝えた。
「ごめん、真昼くんが喜びそうなもの、こっちにはなくって。これにしちゃった」
リュックから取り出し、気に入ってくれるかなと真昼くんに手渡す。中身を拝見した真昼くんはくすくす笑って、涙目になりながらありがとうと言われた。
「びっくりした。陽羽ちゃんがまさかこれを僕にくれるとは思わなくて。こっちのお土産屋でも見かけたんだよ」
「ごめん」
「いいよ。陽羽ちゃんから貰ったやつは大切にするから」
「今度はちゃんとしたもの選ぶね」
真昼くんはまだ笑っていて、私も笑ってしまう。真昼くんに渡したのはよくわからない置物だ。リフレッシュできたことで、駅に着いたらそれぞれ帰ることになっている。
おそらくお父さんが駅まで迎えに来てくれているのだろう。
駅に到着して透の言葉を聞き、解散となってそれぞれの親が迎えに来ていた。お父さんはどこだろうかと、きょろきょろしていたら、お父さんがやって来る。
「待たせたな。そちらさんは?」
「初めまして、陽羽さんとお付き合いさせていただいている、南雲真昼と申します」
「君か。こちらこそ、いつも陽羽が世話になっている。家まで送ろう」
「いえ。お構いなく。陽羽ちゃん、また。失礼します」
真昼くんは軽く会釈をして、一人で帰ってしまい、大丈夫かなと思いながらも、車に乗って帰ることに。
「陽羽、災難だったな」
「透から聞いたの?」
「ある程度はな。お友達を襲った連中は県警に任せてある。いずれ捕まるだろう」
いずれ捕まるとしても、私はまだモヤモヤが晴れなかった。食堂で起きた出来事と、清寺さんたちを襲った人たちは同一人物ではないのかと。そんなことを考えながら、私はいつの間にか眠ってしまった。
◇
まさか陽羽から連絡もらえるとは思わなくて、あまりの嬉しさに依頼されていた靴全て作っちまった。お土産ってなんだろうなとウキウキしながら、依頼主に出来上がった報告メールをしていく。
お袋からしばらく親父は伊豆で療養するらしく、若頭頼んだわよと連絡が来た。店は姉貴に任せて、組の仕事でもするかとスーツを来て、裏に止めていた車に乗り、出発した。
「若、夜瀬組に乗り込む気ですか?」
「そんなことしなくても、あっちからやって来るだろ。それでセライヴニの状況は?」
「玲さんが不在時に、結構荒らされたようです。荒らした連中は、ただのチンピラだったようで、警察に突き出しました」
「そうか。他の店舗は荒らされていないんだよな?」
はいと言っていて、狙いはセライヴニだったってことか。玲が経営しているクラブはざっと二十軒ぐらい存在する。なぜ他の店を荒らさなかったのか、それとも何かの予兆だったとしたら。
それに玲が狙われた理由がセライヴニと関係していたら、常連か誰かの仕業と考えていいんだろう。車を走らせてもらい、セライヴニに到着して、店内へと入った。
結構荒らされてんなと掃除をしている店員たちで、お疲れ様ですと俺に言ってくる。すでにチンピラはいなくても、スプレーで紋章が描かれてある。
このマーク、宗教集団のマークで、ヤクザとやり合うってか。それか破島のやり方なのかは知らないが、警察に突き出したチンピラはきっと、黙秘し続けるに違いない。
「警察には報告した?」
「伝えてあり、朝峰警部にも知れ渡ってるはずです」
厄介な連中が同時に動き出しているということでよさそうだ。こっちは宗教集団レッドクレインが動き、伊豆では国際犯罪秘密組織シルバーウルフが動いていた。同時に動かせる奴はただ一人、破島淡のみ。
こうなったら二手に分かれて二つの組織をぶっ壊すのがいいか、それとも一つずつ組織を壊したほうがいいか。もう少し状況を読んでから、動くとしよう。
するとスマホが鳴り確認してみると、紗良からで話があるからうちに来れないと来た。変な了解スタンプを押し、店が元通りになるまでは営業しないことを伝え、紗良の家に連れてってもらう。
「よろしかったのですか?」
「あの状況じゃ営業はできないだろ。それに玲も同じことを言うはずだ。怪我人が出なくてよかったよ」
ここで怪我人が起きてしまえば、破島のところに行っていたんだからな。
紗良が住むマンションに到着し、オートロックのところで部屋番号を入力する。はーいと開き、中へ入って紗良が住む階に到着し、インターホンを鳴らした。
少しして早かったねと寝巻き姿の紗良が出てくる。入ってと言われ、中に入り、どうしたと声をかけた。すると破島淡の情報ファイルを渡される。
「この短時間で調べられたの凄くない?情報かき集めたんだから、美味しいご飯連れてって」
「よく手に入ったもんだな」
「伝があってね。その人たちにいろいろ聞いたら、破島淡の現在の情報を入手できた」
伝かと思いながらも資料を読んでいく。
破島は現在、レッドクレインにいるらしく、レッドクレインは主にカルト集団であり、長は表に現れないそうだ。場所も特定してあるが、入るのは困難のようで、入り口は入った者しか知らないという。要するに要塞のようなものっぽいな。
「あたしもまじかで見てはないけど、中で行われていることを知った者は、これみたい」
首を切るような素振りをし、警察が手を出せないわけは、証拠が一切見つからないからなんだろう。証拠さえ見つければ、カルト集団はすぐ終わるとして、問題はシルバーウルフだ。
玲からの情報だとシルバーウルフが陽羽を狙っているわけ。それを探らないと、陽羽に危険な目が起きる。
「シルバーウルフの情報は?」
「探ってはいるんだけど、お手上げ状態。お母さんも苦戦して、徹夜状態らしいよ。本当に日本にいるのかも危うくなってる」
つまりシルバーウルフと名乗っている人物が、陽羽を狙っているってことでいいのかはまだ判断しにくいな。俺の方でもシルバーウルフについて調べてみるか。
「これは返す。一通り読んだから」
「了解。叔父さんの容体はどう?」
「しばらく伊豆で療養するらしいから、しばらく忙しくなる。紗良も十分に気をつけてな」
「うん。夕哉もね」
それじゃあと紗良の家を出て、シルバーウルフについて、調べて行くことにした。
◇
とある場所に、シルバーウルフの群れが存在していた。
「ボス、ボス起きてくださいな。こんなんところで寝てたら風邪引きますん」
目がしょぼしょぼしつつ、欠伸しながら起き上がって、まだ眠いと抱き枕に抱きつく。スピーっといこうとしたら、ガブッと噛まれ、よちよちと猫に戯れついた。
僕を起こした構成員は深いため息を出し、寝っ転がりながら報告を聞く。
「朝峰陽羽と接触はかなり厳しかったようで、その場で居合わせた昏籐組と夜瀬組を排除したそうや。その後の旅館でも攫おうと寸前邪魔者が入り、連れ出せなかったと報告が上がってるで」
「予想していた通り、あいつは動き出したってわけか。はははっ面白くなってきてる。陽羽を誘き出すためには、そうだな。猫の手でも借りようか」
猫に触れ合い、陽羽が僕だけを見てもらうため、構成員に指示を出した。
「陽羽を誘惑するために、僕も店を開こうと思う。物件をチョイスしといて」
「ボスがやってるとなればいずれ気付かれるはずや。だったら」
「いいや、この手で陽羽を奪う。そして約束を果たしてもらおうか。すっぽかしたら、きついお仕置きをたっぷり」
陽羽の顔が浮かび上がり、クククッと笑っていたら、ガブッと再び猫に噛まれる。
「では手配しておきますが、その格好で店をやらないようにしてくださいな」
構成員は一礼をして部屋を出て行き、猫を床に下ろしてあげ、立ち上がり手帳を開いた。手帳に挟まれている一枚の写真で、陽羽と僕のツーショットの写真。
僕が何者かも知らない陽羽とは一度だけ、会ったことがあった。
それは絶望に満ちた陽羽で、その顔が堪らなく好きになってしまい、それ以来僕はなんとしてでも陽羽を手に入れたいと準備を進めている。
またあの絶望した顔になってもらうためには、陽羽の身近な人が陽羽のことを嫌いにさせなくてはならない。さあまずは誰から行こうかと、写真を取り出し君に決めたと壁に貼り付けた。




