表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/134

118羽

 それぞれ相手をする方角へと走って行き、私と凛太郎は氷雨隼朗ひさめしゅんろうが、いるであろう場所へと向かっていた。なぜ今まで隼朗の動きを止められなかったのか。こうなる前に防ぐことはできなかったのかと考えてしまう。

 凛太郎もそうだ。春陽ちゃんと疾太くんが幼馴染ということで、親しかったというのに、隼朗を止めることができなかった悔いが表情を見てわかってしまう。


 目の前に犯人がいたというのに、気づ蹴なかった理由。もしくは凛太郎は知っていた上で隼朗と接していたのかはわかるまい。ただ星河輝の祖父である星河衛一が止めていたのだろうか。

 まあいい。どちらにせよ。今日、ここで止め春陽ちゃんや疾太くんたちを救う。


 走って行くと途中で一番会いたかった人物がNoveを倒した後だった。その人物は私たちが来たことを知り、振り向いて久しぶり父さんと言ってくる。


「凛太郎、先に行っててくれ」


 凛太郎は先へと行ってもらい、夕佑が私の前へと来た。妻から聞いていて夕佑はずっと一人で背負ってここまで来ていたことを。夕莉や夕哉を巻き込ませないためとはいえ、父親である私までも驚かされるほどだった。

 夕哉は妻から話を全て聞かされたことにより、全てが終えたらちゃんと話すのだろう。


「父さん」

「夕佑にしかできないことを成し遂げろ。全てが終えたらきっちり話してもらうぞ」

「もちろん。これ一応渡しとく」


 夕佑にもらったものはスマホでおそらく夕佑の合図がここから来るのだろうと理解した。夕佑は成すことをしに行き、凛太郎を追いかける。

 途中でNoveに遭遇するも、拳で殴りつつ組員が止めに入ってくれていた。進んでいくと凛太郎が立っているのが見え、近づくに連れて邪魔が入る。海外にいると聞いていたがまさかこの組織にいたとは、紗良やさち、それに夕莉や夕哉が悲しむのはわかっていただろう。


「雷斗、そこをどけ」

「断る。僕はずっとしなを支え続けて来た。叔父さんを殺せと命じられている以上、この先は行かせない。それに夕佑が裏切ったと報告を出しといた。今頃、しなが直々に殺してるはずだ」


 もしや辰二たつじは雷斗の行動に気づき、雷斗によって殺されたのではないか。それと陽羽ちゃんたちが伊豆にいた時、玲を殺すよう命じたのも雷斗なのではないかと感じてしまう。

 紗良はいま、別の通路を通っているがいずれ雷斗と接触するかもしれない。そうなる前に止めなくてはならないと羽織りを脱ぎ捨てた。


 雷斗は指笛を吹くとホワイトタイガーが現れ、凛太郎すまないと私はホワイトタイガーを倒すしかない。家に帰って来ない理由がそこに含まれていたとは知らず、叔父として情けないことだ。

 雷斗を変えてしまった現況はおそらくしなとの出会いだとしても、ここまで変わってしまうとは思いもしなかった。あの頃を思い出してしまう。 


 夕哉が五歳の時……


 

 冬の時期だった。夕哉はその当時、人見知りが多く常に私の着物を掴んでいた。雷斗は夕哉と同い年で雷斗は隠れている夕哉に遊ぼと言っても、夕哉はすぐ私の後ろに隠れる。

 遊んでもらいなさいと言ってみるも、夕哉はぶんぶんと横に振り、私が不在時の時は、玲や透に隠れていたと言っていた。遊んでくれないことで、夕哉がいない間、私に尋ねて来たのをよく覚えている。


「ねえ、叔父さん。なんで夕哉は僕じゃなくて、世話役の玲や透ばっかいるの?僕、何かしたかな…」

「普段は大人ばかりがいるから接し方がわからないだけだ。もう少し踏ん張ってみたらどうだ?」

「そっか。てっきり、幼稚園で何か言われたから拒絶反応起こしてるのかと思ったよ。嫌われてないならよかった。夕哉のところに行ってくる」


 襖を開けて夕哉遊ぼーと叫びながら行く雷斗に私は胸が痛んだ。雷斗が言った言葉。お友達を連れて来ないのもその理由なのかと思い始め、妻を呼び出した。


「あなた、どうかされました?」

「夕哉のことなんだが、幼稚園で何か困ってるとか言っていなかったか?」

「夕哉から直接聞いてはないけれど、送迎している組員から言われたわ。お友達の親御さんからこれ以上関わってほしくはないと。その場に夕哉もいたらしくて、お友達ともなかなかうまくいっていないようなのよ」


 私は組のことで忙しかったことで、いつも組員や妻に任せてばかりだった。その頃から夕哉が困ったり、悩んでいる時は常に話を聞き、徐々に雷斗と遊ぶようになったな。

 そして紗良が生まれた時はなぜかお互い取り合いをして、紗良が泣くもんだから二人を叱った。二人は不貞腐れていたとしても、共に育った仲だ。それなのに雷斗はなぜ変わり果ててしまったのだろうと、ホワイトタイガーを倒す。


 倒したとしても次のホワイトタイガーが私を襲い、後何頭いるんだと一度ホワイトタイガーから距離を離した。


「紗良がここに来ている。こんなことやめるんだ」

「ここに来たとしても、僕は引き下がるつもりはないよ、叔父さん」


 何かが来ると感じた瞬間のことだった。一瞬で何が起きたのかわからないまま、雷斗が傷を負う羽目となる。雷斗と叫びながら近づこうとしたところ、来るんじゃないと雷斗が止めに入った。

 ホワイトタイガーが噛み付いたとかではなさそうで、一体誰がと周囲を警戒していたら、雷斗の背後に光太がいる。


「光太!何をしている!お前は夕哉と一緒に行ったはずだ!」

「組長、すいやせん。僕はどうしてもこいつが許せないんです。僕の家族をズタズタにしたのは文倉雷斗。近づくためには昏籐組に入る必要があった。けどそこには文倉雷斗はいなく、妹の紗良ちゃんしかいなかった」

  

 光太はナイフを持っていて、このまま光太を殺人者にはさせたくはない。怒りを出しながら光太はナイフを雷斗に向け質問をする。


「なぜ僕の家族を壊した?なぜ姉は死ななければならなかった?なぜ両親はお前に会った時から僕を見捨てた?」


 光太が質問するも雷斗は答えず、答えろと今でも雷斗に降りかかりそうになり、光太を止めに入った。光太からナイフをとり、抑えるも光太は答えろと一点張り。

 光太を拾って来たのは夕哉であり、半グレで家に帰りたくないということだったから、夕哉の下で動いてもらうよう指示した。まさかこの日を待っていたとは。昏籐の掟を破るな、光太となんとかこの状況を変えなければならない。


 ゆっくりと立ち上がる雷斗でホワイトタイガーが私たちに唸り出す。


「僕に恨み持つ人はいくらでもいるから、誰の家族をやったのか忘れたよ」


 そう言った雷斗は嘲笑い、光太が暴れ出してしまい。光太を気絶させるしかないか。そう思った時のことだった。そこに現れたのは烏丸だ。


「おやおや、まさか紗良お嬢さんの兄がNoveの人間だったとは、さぞ紗良お嬢さんは悲しみ、苦しんだでしょう」

「烏の分際で口を挟まないでくれない?」

「それはできぬまい。なぜなら紗良お嬢さんは夜一坊ちゃんとお付き合いされている」


 雷斗はそのことに関して気づかなかったようで、あの馬鹿と舌打ちををしている。烏丸が場に入ってくれたとしても、光太を解放したら雷斗を殴り殺す可能性があった。


「光太、いい加減にしろ。いくら憎かろうが昏籐組の掟は破れさせない。わかっているだろ?夕哉が知ったら、どんな顔が浮かぶと思う?」


 夕哉はこう見えて一人一人の組員をしっかり見て、そして大切に想っているんだぞ。その想いを無駄にさせるなと抑え込んでいたら、光太は暴れることをやめ、啜り泣く。

 光太を抑えるのをやめ、光太はすみません、組長と涙を拭き取る光太の背中を軽く押してやった。


 平気かと聞いたら平気ですと言いながら、ホワイトタイガーが再び私たちを襲い始めていく。



 後ろの方で何かが起きていたとしても、私は隼朗とケリをつけなければならなかった。私と灯里が春陽の両親のもとへ到着した時……。


 春陽たちに真実を告げようとした際、私と灯里が撃たれたかのように見せかけた時は私も灯里も死んだかと思えた。されど起きた場所はどこかの一室で寝ていて状況が読めないでいると扉が開く。

 そこに現れたのは春陽にそっくりな男、つまり春陽は父親似ということ。


「気分はどうだ?」

「混乱がありすぎる」

「だろうな。こうでもしなければ、鯨は別の方法でお前を殺そうとしていたのは事実だ。その理由がなんだか、凛太郎は自覚しているだろ?」


 自覚はしていた。それは私が隼朗と繋がっていたことを知られた理由で、おそらく危険だと感じ私とそれから灯里を消そうと考えていたんだろう。

 それに鯨波と契約したことを破棄しようとしたのもある。その契約というのは、春陽が成人した際、鯨波に渡す契約。その契約を交わし、私と灯里は春陽を引き取り育てて行った。

 育てていくうちにつれて、愛情が芽生え、春陽を手放したくないという思いがあったことで、陽空までもが裏の世界へと入ってしまったのだ。


「自覚はしている。そのせいで愛娘まで被害を受けた。私と灯里の責任でもある」

「自覚しているのならいい。ただ一つ、陽空は凛太郎と灯里のせいではないと。陽空は本当に賢い子だ。家族のために凛太郎の娘は、自ら裏社会へと入った。その理由はなんだと思う?」


 その問いにつうっと涙が流れ溢れる。陽空はいつか私や灯里のように、警察官になるため努力をしていたと思っていた。それは違く、春陽の存在を知り、陽空は春陽が犯罪に手を染めないよう自ら裏社会へと入り、たとえ自分が犠牲になったとしても、自分なりに春陽を守ろうとしていたことを。

 いい娘だなと私にハンカチを貸してくれる月人であり、それを借りて涙を拭いた。


「それで私はどうすればいい?」

「鯨はそう長くはないと聞いているが、鯨より厄介な組織が存在している。そこは灯里から多少は聞いているだろう?」

「その組織はまだ存在しているということなのか?」

「あぁ。名はNoveという組織で、新しい時代を創り出そうとしている組織。猛獣を使って混乱させながら、逃げ場をなくすために、爆薬を利用して封鎖させる計画」

「つまり県外に出させないようにするということか?」

「詳細はわからないが、おそらく東京を支配し、国を築き上げようと企んでいるんだろう」


 衝撃なことでそういう組織が実在するとは思いもしなかったことだ。それを防ぐために裏社会で動く人間もいるということを改めて知る。


「春陽はその道具になる。その前に止めなければならない。凛太郎、力を貸してくれるな?」

「無論。月人の娘であっても、私の娘のようなものだ」


 感謝すると言われ、私は月人と一緒に、この日が来るまで待ち続けていた。




 現在……




 隼朗はずっと黙り込んでおり、私は拳銃を構えていた。周囲には水が存在しており鮫がいるのだろうと認識している。


「隼朗、撃たせないでくれ。わかっているのだろう?こんなことしても意味がないということを。娘を止められるのは隼朗、お前だけだ」

「しなはもう私では止められない。あの子を止められるのは誰一人いないということだ。それに陽空ちゃんを苦しめていたのも、しななのだよ」

「…わかっている。破島から聞いた。しなちゃんは文常大学に通い、陽空の友達でクラブに誘ったのも、破島に会わせたのも、しなちゃんなんだろう?」

「その通り。全ては春の太陽を奪うために、陽空ちゃんに近づいたと」


 あの時、陽空の友達をよく調べておけば、陽空はあそこまで苦しまずに済んだのかもしれないと当初は思っていた。されど陽空はあることを言っていた。

 春陽とちゃんと向き合っていなかったことでバチが当たったからいいのと。そんなことはないと言うも、陽空に言われる。


「春陽に全てを奪われたような感覚で、いつも心が支配されてた。ハンデを持っていつもお母さんやお父さんは春陽ばかり。次第に憎しみや嫉妬の邪心が生まれちゃって、昔みたいに接してあげられない。今もそう。春陽がいるだけでイライラいちゃうの」


 陽空の言葉で私と灯里は何も言えなかった。実の娘からそのような言葉を聞きたくはなくとも、そうさせてしまったのはやはり私と灯里。

 

「でもね、お父さん。この道を選んだのは他でもないよ。お父さんとお母さんが必死に守ろうとしている春陽を、あたしも守りたい。だって春陽はあたしの大事な妹だもん」


 陽空は太陽のような笑顔を出してそう言ってくれたことに心が救われた。陽空は今頃、破島と一緒にがくを止めているのだろう。


「大事な娘がこの世界へと入り、凛太郎や灯里は心が痛むだろ?なら迷う必要はない。私を撃て」

「生きて償ってもらうに決まっている!」


 来ると感じ私を食そうとする鮫を撃ったものの、そう簡単に鮫は倒れることはなく、水の中へと飛び込んだ。隼朗は鮫に指示を与えられるほどの者。どうやって指示を出しているのかはわからずとも、隼朗を止めなくてはならない。

 鯨波流史郎は以前から、隼朗がしてきたことを知っていた。それなのに私たちは気づきもできなかった。亡き鯨波流史郎に聞きたいものだと襲いかかってくる鮫に何発も銃弾を当てていく。月人が言っていたように普通の鮫より凶暴化しているようで、床にひびが入っていた。このまま鮫が飛びかかってくることで振動によりそのひびが広がる恐れがある。


 一刻も早く隼朗を説得し、首謀者であるしなのもとへ行きたいところだが、そう簡単には行かせてはくれないようだ。



 凛太郎に向けて鮫につけている装置で指示を与えながら、その光景を見ていた。私は数え切れないほどの罪を犯し、いずれ天罰が来るのは目に見えている。なぜしなはあのような子になってしまったのか、考えても答えは見つからなかった。

 欲しいものは全て与え、何かをやりたいと言った時は習い事は全てやらせてあげ、何不自由なくすくすくと育っていたと思っていた。


 何がいけなかったのだろうと凛太郎を見ていたら、無線でしなの声が聞こえる。


『お父さん』

「なんだ?」

『陽空たちが倉庫に向かってる。鮫をそっちに移動させて。じゃなきゃ、このまま大事な疾太を元に戻させないよ』

「承知したが、陽空の父親がそっちにいくかもしれないぞ。それでもいいのか?」


 平気と言っており仕方あるまいと凛太郎に襲いかかってくれている鮫たちを、倉庫がある水回りのところへと移動させた。行ったことで再び拳銃を構える凛太郎は不審を抱いている。


「鮫はどこへ行った?」

「答えるつもりはない。凛太郎、今なら間に合う。直ちにここから離れろ」

「断る。私の愛娘を取り返すまでは」


 血の繋がっていない春陽ちゃんのことを愛娘と呼べるのか。春陽ちゃんを育てたのは無論、凛太郎と灯里。灯里は一度、Noveから脱出した成功者。

 獅勇の両親が殺されたあの日、私もそこにいたな……。私は灯里が好きだった。その恋は叶うことはできなかったとしても、この組織はもう止められはしないと、手に持っていたスイッチを押した。通路を完全に塞ぎそして水圧が上がって待てと言われるも、私が立つ場所のみが上がっていき、凛太郎がどんどんと見えなくなる。


 上へと到着した頃には全て水に覆われている頃だろうと、歩き出す。このフロアはまだ誰一人到着していないようで、しなとそして春陽ちゃんがいる場所へと向かった。



 ホワイトタイガーに挑んでいたら、凛太郎がいるフロアが封鎖され状況が読めないでいる。一体何が起きたと思っていたとしても、ホワイトタイガーは私や光太、烏丸に襲いかかってきた。

 雷斗は冷笑しながら私たちを見ていて、なんとか食い止め凛太郎のところへ行かなければならない。すると雷斗が言い出す。


「封鎖されたってことは一人死亡確定かな。あのフロアは鮫がうようよいて、今頃食われてるんじゃない?」


 注意はしていたがそのような仕組みが存在するとはなんとかしなければ、凛太郎が死してしまう。それは一番に避けたいことであり、どうすればあのフロアと行ける。

 考えながら襲いかかってくるホワイトタイガーを止めていたら、無線から夜一くんの声が聞こえた。


『夕哉のおっさん!聞こえてる?』

「聞こえてるとも。何かあったか?」

『紗良先輩がやばいことになったから至急こっちに来て!烏丸もすぐに!これじゃあ夕哉が持たない!』


 どういう状況になっているのかわからないが、凛太郎とそれから紗良が無事でいてくれることを信じるしかない。ホワイトタイガーを殴り、雷斗を止めようとした時。ぴたりとホワイトタイガーが伏せをする。


「叔父さんを殺すのは後になった。しなが叔父さんをご指名だ。よかったな」


 罠かもしれないと思いながらも、おそらく夕哉もそこにいると推測してついていくことに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ