112羽
翌朝、まるから連絡を受け俺の家で召集をかけ、冬月はまると純連を迎えに行っていた。その一方藤太郎と想に真昼は、姉貴の息子、光希の遊び相手をしている。昔をなんか思い出すなと光希の父親である玲はその光景を見ていた。
きっと俺が赤ん坊の頃に玲や透たちに遊んでもらってたんだろうな。光希は嬉しそうに遊んでいて俺たちはほっこりする。すると大変ですと組員が居間へと入って来て、俺が居間から出て内容を聞き出す。
「何があった?」
「破島がセライヴニの前で倒れていたんです。一応、セライヴニで休ませていますが、いつもの破島らしくなくて」
そういや陽空から破島について多少教えてもらっていたな。脱出できたのであれば、何か情報が聞けるかもしれない。
「わかった。車を回してくれ」
承知しましたと組員は車を出す準備をしてもらい、玲に破島のことを告げたら、あたしも行くと陽空が言い出す。
「あたしも行く。淡に会いたい」
「罠かもしれないから、陽空はここにいてくれ」
「だけど」
「夕哉の言うとおり、待ちましょう。これが罠だと分かれば陽空の命が危険になるの。大丈夫。罠じゃなければここに来させればいい」
姉貴の説得力で陽空は腑に落ちない表情であっても、わかったと諦めてもらい、俺は早速セライヴニへと急いだ。
到着しセライブニの中へと入って、破島はと聞いたらこっちですと組員についていく。ソファーで横になっている破島で、服がボロボロだし傷だらけだった。なぜ救急車呼ばないと聞いたところ、拒否されてしまってと言われる。
とにかく救急箱にあるもので傷の手当てをし、起きるまで待ってあげることに。
しばらくして目を覚ました破島が起きたようで、そばによると夕坊かと言いながら起き上がった。
「何があった?」
「Noveから逃げてきた。だが俺が逃げても、俺は用済み。それより一刻も争う事態になってる。春陽が危険な状態になってんだ」
「どう言うことだ?」
「採血されたパックがいくつもあった。それが春陽の血だと言うこと。毎日ではなさそうだったが、春陽の顔色がだんだんと悪くなってる」
それを聞いて手に何かを持っていたら、壊す勢いだったかもしれない。
「それをいつばら撒くとかは?」
「わからないが、春陽が持つかどうかだ。夕佑がそばにいるから大丈夫だと思うが、早めにあの島へ行ったほうがいい」
行きたくともストップがかかっている以上、その島に行くことができない。なんとか交渉して行くしかないよな。それに冬月とまるが話したいことがあるとかで、今俺の家へと向かってもらってる。
「破島、休ませてあげたいが、今日俺の家で会議が始まる。詳細はみんなの前で言ってほしい」
「伝える。その前に豹馬の妹と会ったか?」
「それなら真昼の家にいてもらってる。呼んだほうがいいか?」
「どんな内容を教えてもらった?」
れらちゃんに教えてもらった情報を包み欠かさず話し、破島はその内容で何か不審なことがあったんだろうか。少しして破島が紙とペンあるかと聞かれ、組員に紙とペンを持ってきてもらう。
組員が破島にどうぞと渡して、破島は何かを書いていった。何を書いてんだと書き終えるのを待っていると、書き終えたらしく、それを見せてもらった。
「これは?」
「Noveは実験した後、おそらく東京に放つつもりだ」
「ちょっと待った。どういうことだ?」
「Noveの目的は春陽の血を利用して売り捌くのもそうだが、その血を利用してキャットアイランドにいる猛獣に撃ち、それを放つ。つまりだ。猛獣が東京に放たれたらどうなると思う?」
猛獣が凶暴化し人を襲うってことだよな。そんなのあり得る話なのかよと愕然としてしまう。破島はもう一つ仮説を立てた。
「その猛獣が放たれた同時に、春陽は首謀者に殺される可能性が高い」
「なんでだよ」
「そこまで情報は掴めなかった。それに豹馬の妹が逃げたことで、おそらく豹馬の妹が動き出す」
豹馬の妹は逃げて来たんだよなと疑問を抱いていたらある言葉を丸で囲んだ。それは親父の名前で、破島はこうも言っていた。
「豹馬は氷雨家と親しかった昏籐家をやるかもしれない」
「確かに親父と疾太の親父さんは仲良いと思うけど、そんな理由でやる動機って?」
「両親の仇。豹馬の両親はNoveにいたが、裏切ったことで獅子屋に処分された。だから公になることはなかったこともあり、豹馬はずっと藤太郎を監視しつつ待ち続けた」
見た感じまだ昼奈ちゃんや雪恋ちゃんぐらいの年齢だとしても、れらちゃんは兄である豹馬の背中を見て育っていたとしたら。いや、ちょっと待った。
親父が伊豆で刺されたわけ、烏丸がホテルにいた理由も、もしかすると豹馬がそこにいたとしか考えられない。
「だけどさ、なぜれらちゃんが親父をやろうと思ってんだ?見た感じやるような子じゃなかったぞ」
「虎次に手懐けられていた。つまり何か起こすのは間違いはない」
よりによって虎次かよと思い出すだけで腹が立っちまうほどだ。
「まあとにかく、夕坊にだけ情報を渡すのもあれだ。昏籐家でその先は話す」
確かにと俺だけ先に聞いちゃあれだしなと破島を支えつつ、車に乗って家へと戻った。
◇
この島に連れて来られて何日か経ち、春陽が心配になるも接触は禁じられている。春陽、大丈夫かなと思いながら、俺は車に乗って猛獣の餌をあげていた。
幹部ではないから情報はあまり教えてもらっていなくとも、これから何かが起きるんだと感じている。Noveの連中はなぜこのようなことをしているのか未だわかっていない。それに未成年の子を見かけ、声をかけようとしたら、かけるなと夕佑に指摘された。
なぜならその子たちは家出をした理由で、居場所が欲しいという思いで、Noveについて来てしまったらしい。しかもそのやり方が獅子屋警部らしく、獅子屋警部はもはや処罰が重くなるのは確定だった。
それに気づかない警察もどうかと思うが、これが裏社会がやっていることなんだと知れた。失敗すればもちろん罰を受け、必要がなかったら殺される。
いくらNoveを消滅させようとも新たな組織が生まれ、裏社会はあり続ける感じだ。なぜ裏社会が生まれてしまったのだろうかと、最近になって思うようになった。
餌を与えていくと海のほうから船が見え、誰かが来たんだと思っていると、餌はそれぐらいにしておけと指示をもらい、トングをバケツに入れる。
車は建物の付近に止め、車から降りていると、父さんがやって来て、指示役に耳元で囁き、指示役は一礼して退散した。
「会議がこれから行われる。それまでは春陽ちゃんのそばにいてあげろ」
「接触は禁じられてるんじゃ」
「今回だけだ。食事をちゃんと摂っていないらしいから、疾太、説得して食べさせろ」
そんなに酷い状況になってるのかよと心配になり、早速春陽がいる部屋へと案内してくれる。春陽が食事を摂らない理由ってなんだと考えても、思いつかなかった。
春陽がいるという部屋の前では嫌そうな表情を出している翠で、肩を掴まれる。
「春陽がちゃんと食事摂れるようにしといてよ。じゃなきゃ、疾太の大事なものを奪うから」
そう言って翠は行ってしまわれ、父さんにも頼んだと父さんも行ってしまった。
一応ノックをして部屋に入ってみると、テーブルには冷め切った食事があり、春陽は背を向け身体を縮こませて寝ている。ベッドに座り春陽の顔をみると顔色がとても悪いように見えた。
寝言で夕哉さんと呟いており、俺じゃなくてごめんなと春陽の頬に触れる。そしたら頰が熱くもしかしてとおでこに触れると結構熱かった。もしや食事を摂らなかったことで、熱でも出したんじゃと思い、扉を開け監視役の人に医者はいるかと聞く。
「医者ってこの島にいんの?」
「どうかしたか?」
「春陽が熱を出してる。いるなら早く医者を呼んでくれ」
伝えたら監視役の人がため息を出しながら無線で呼んでくれるようだった。春陽、もうすぐ来るからなと待っていると白衣を着た人がやってきて確認をしてもらう。
ただの熱だよなと診てもらうと、医者についている無線で何かを言っていて、少しするとストレッチャーが来た。それに春陽を乗せ、付き添いたかったものの、ここで待つよう言われてしまう。
春陽に一体何が起きたんだよと待つこと数分後、扉が開きストレッチャーで春陽が戻ってきた。だが俺には知らせてくれず、そのままでいいのか分からずとも、春陽が起きるまで待ってあげる。
部屋にあった本を借りて待っていたら、春陽が起き、大丈夫かとそばに寄った。
「疾ちゃん…私」
「俺がついてる」
春陽の手を握って安心させようとしたら、強引に扉が開き、翠が入ってくる。春陽は咄嗟に俺の手を引っ込め布団に潜ってしまった。
「熱があるんだったら早く言ってよ。ご飯、お粥作ってもらうよう伝えといたから、それしっかり食べないと疾太が罰受ける。疾太、しっかり食べさせといてよ」
言い方あるだろと言いたくとも、その言葉を飲み込みわかったよと伝え、翠は会議へと戻る。それによって春陽は半分、顔を出し、ごめんと涙目で言うもんだから気にすんなと頭を撫でてあげた。
「疾ちゃん」
「ん?」
「一つ頼みたいことがあるの。多分、夕哉さんや真昼くんたちがここに到着した頃は、私じゃなくなるかも知れない。正気を取り戻せる方法はきっと」
春陽がいったその先の言葉で、俺は涙ぐみながら伝えるなと春陽に告げ、お粥が到着した。それをゆっくり食べていく春陽で、春陽が春陽でなくなるのは嫌だ。
しかし、ここには鶴がいるからどうすることもできない。いずれ俺もそう言う運命を辿らされてしまうのではないかと思ってしまうほどだ。
完食した春陽はぐっすり眠り、会議が終わるまで、どうやって春陽を救うか考えていった。
◇
疲れたと一度近くにあったベンチに座り、靴をみると靴擦れをしていて、やっぱり履き慣れていない靴にしなければよかったと絆創膏を探す。鞄を漁るも絆創膏がなく、よりによって絆創膏を持ち歩いていなかったことに気づいた。
どうしたものかと一度靴を脱ぎ、ハンカチで靴擦れになっているところに当てる。
今頃、夕哉の家で会議が行われていたとしても、あたしは別行動をとっていた。それは翠の家族について。全然記憶にはなかったけれど、ご両親と会ったとき違和感を感じた。
昔の写真を探し出して今のご両親を見比べてみると別人だったことに発覚。おかんもそれに気づいて調査をしているものの、情報がないと騒いでいた。だからあたしも情報が入手できそうな場所を探し回ってる。
やっぱり直接Noveに聞いたほうがいいのかなと考えていたら、ほいっとあたしに絆創膏をくれる人がいた。ありがとうございますと顔をあげたらそこにはなんと猫田虎次。思わず叫びそうになったところ、口を塞がれてしまった。
「反応おもろ。なあに、探ってるのかは知らないけど、これ以上探ろうとしたら、紗良ちゃんも連れてっちゃうぞ」
そう言いながらあたしの隣に座り、絆創膏を取り上げられてしまって、その絆創膏で靴擦れのところに貼ってくれる。いますぐ通報したいけれど、証拠がない以上どうすることもできない。悔しいと鞄をギュッと掴む。
「なんであたしだってわかったの?」
「あちこちに見張りつけてること忘れないように。それに紗良ちゃんの近くを見ていれば、小生のペットが見つかりそうでさ。この子なんだけど」
勝手にスマホを見せられ写真には可愛らしい女の子が動物の格好をしていた。これ一番あかんパターンでこの証拠があれば逮捕できるレベルなのではと冷たい視線で見てしまう。
それを察ししたのかすぐスマホをポケットにしまい、豹馬の妹だよと付け足された。
「その子がどうかしたんですか?」
「迷子になっちゃったって豹馬が泣きついててさ。見つけたら帰ってあげるよう伝えてよ。豹お兄ちゃんはしばらくこっちには来れない事情ができたから」
ここで警察呼びたいと思いつつも見つけたら伝えると猫田虎次に言おうとしたら、夜一が歩いている姿に頼んだよと退散していく。あなたにれらちゃんの情報流すもんかとあっかんべえをし、夜一が到着した。
「何話してた?」
「れらちゃんのこと、早速言われたよ。きっとあたしたちが保護していること気づいていながら言ったんだろうけど。そういや、夕哉の家に向かったんじゃないの?」
「組員に紗良先輩が危ないってあたふたしてたから引き返した。行こう、夕哉の家に。紗良先輩が狙われるのはもう懲り懲りだよ」
恥ずかしいこと言わないでよとバシッと思わず叩いてしまい、夜一の手を握って夕哉の家へと向かうことに。




